桑江夢孝

今の仕事を始める前は、色んな事をやっていました。

高校生の時は、笑う事や人を笑わせる事が好きで、芸人のような事をやってみたり、大学生になると、色々な種類の人と話がしてみたいという理由で、先輩と一緒に飲食店を始めました。

卒業して上京した時の仕事は放送作家で、その後アパレル会社を起業したり、音楽や芸能関係などエンターテイメントの仕事をしたり。

それらを並行してやっていたのですが、自分の行いによって30歳ぐらいのとき、全部なくなってしまったんですよね。

そんな頃に妻と出会いました。

妻は脳下垂体腫瘍という病気を持っていたのですが、少しでも妻の体調が良くなるようにと考えた結果、東洋医学の可能性に気がつきました。

それからは国内を始め中国や南米まで歩き回りましたね。ここでアルコールと薬草の効能をかけ合わせて身体のバランスを整えるという『薬酒』に出会いました。

東洋医学に基づいた食事を摂ることで、15年くらい生理のこなかった妻も二人の子供を授かることができたのです。自然の生命力と古人の知恵の詰まったこの素晴らしい伝統療法は本当にすごいなと。この良さをもっと知ってほしいと思い、路地裏で美味しい薬草のお酒を出すお店を作ったのが、11年ほど前のことですね。

現在は薬膳のビール、エナジー用、ビューティー用など、数々の種類をブレンドし、Barで提供しています。またライセンスを取ったので、今は他の飲食店さんにも販売して、薬酒友達を広げているところです。今は10軒くらいですが、今年の目標は30軒に増やすことですね。

もともと薬膳酒というのは紀元前からある文化なんです。

日本でも戦後食生活が変わってしまい、生活習慣病などの慢性的な病気が増えました。

ある症状だけに対して行う対症療法が西洋医学であるのに対し、気、血、水の流れを全体的に見るような全体療法が東洋医学なのです。身体が本来あるべき姿に戻して行く、とイメージしてもらえればいいかもしれません。今は統合医療とか予防医学、代替医療なども広く知られるようになってきたので、東洋医学もここと掛け合わせてやるといいかなと。そういうときに飲食店が力になれたらいいですよね。

お客様がお店に来て、ご自身に合った薬草と出会い、自分の身体を自分で調えられるようになり、それを周りの人にも広めて行けば、生活習慣病や現代病が減って、国家の医療費が何兆円も下がるのではないでしょうか。並行して開設したオンラインショップでは、お酒の飲めない方のために、お味噌やコーヒー、ビネガーなども扱っています。

短期的な目標としては、2020年までにビジネスパートナーを100人くらいに増やしていきたいと思っています。最近はHanakoという雑誌の表紙に薬酒日本酒が出たり、テレビにも取り上げられて、だんだん認知が増えてきたのでより多くの人に知っていただきたいです。

そのためにも薬草に興味のある方、ビジネス的な事や、身体の事で困っている方にも是非お話をさせていただきたいと思います。

また、長期的には全世界から仕入れている薬草を生かして、アフリカ大陸、南米、アジア、ヨーロッパそれぞれの場所でそれぞれの特色を活かしたお店を出したり、50歳くらいまでにお酒自体を作る共同体のような場所を作りたいと思っています。

自分が薬草園をして、土づくりから始めてサトウキビからラム酒を作り、それをお客様のところまで届けるというように、最初から最後までそのコミューで作り上げて行くのです。

その中に治療できる場所を作って、ビジネスパートナー達がそれまでやって来た事と組み合わせて、治療とアート、治療とエンターテイメントというように、色んなものが医療と入り混じって大きなテーマとなる感じ。私自身、薬草のお蔭で子どもにも恵まれましたから、これからの子ども達が幸せになれるような環境を作って行きたいですね。

薬草はもともと自然にある物で、誰のものでもなくみんなの物です。

自分に合った美味しい薬酒を飲んで、人が本来持つ自然治癒力で身体の状態を整えて行く。

自然の素晴らしい生命力というものを、多くの方に実感していただきたいです。

☆取材・記事作成・構成＝上村、川角、佐久間