株式会社リンクアンドモチベーション

小笹 芳央

伝説の人事、リンモチ小笹氏に聞いた、就職論2.0

新概念「アイカンパニー」「タイムスイッチ法」とは?
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今回は、ベンチャー稲門会特別インタビュー第1弾として、株式会社リンク アンド モチベーションの小笹様に取材させて頂きました。

小笹様は早稲田大学卒業後にリクルートに入社し、『伝説の人事』と呼ばれた方です。現在は株式会社リンク アンド モチベーションの代表取締役会長を務める傍ら、『ベンチャー稲門会』で代表幹事も務められております。

そんな小笹様に、今回『就職論2.0』というテーマで、お話をお伺いしました。

<目次>
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1. リンク アンドモチベーション会長 小笹芳央氏の就職活動

2. 「アイカンパニー」が求められる就職論2.0 〜就活編〜

3. 「アイカンパニー」が求められる就職論2.0 〜働き方編〜

4. 最後に 〜ベンチャー稲門会について〜

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リンクアンドモチベーション会長 小笹 芳央氏の就職活動


【経歴】

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1961年生 大阪府出身。
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。
組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、
2000年株式会社リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。
2013年代表取締役会長就任。
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–– 本日は、貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございます。

今回、1章ではリンク アンド モチベーション会長 小笹様の就職活動について伺います。次に、2章ではそうした中で見えてくる新たな概念「アイカンパニー」が求められる就職論2.0 〜就活編〜について、3章ではさらに入社後に焦点を当てた〜働き方編〜についてお聞きしていきます。

最後には、小笹様が幹事を務めておられますベンチャー稲門会についても伺いましょう。

それでは、早速ですが小笹様が経験された就職活動についてお伺いできればと思います。

小笹様は早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社されたとお聞きしました。高学歴な学生といえば大手志向という傾向が今以上に強かったかと思いますが、小笹様はどのようにして就職活動を行い、入社を決断されたのでしょうか。

小笹:学生時代、私は1浪(浪人)1留(留年)を経験していたので、周囲に対してどこか劣等感を抱くと共に、「どこかでこの遅れを取り戻したい」という気持ちがありました。

当時出会ったリクルートという会社はまだ無名のベンチャー企業でしたが、就職活動で関わるうちに「ここなら、自分が主体となって会社を大きくしていけるかもしれない」と思ったのです。

–– 自分が会社の成長に深く関わっていけるというイメージが、小笹様の心を動かしたのですね。

小笹:はい。その頃抱いていた外すことのできない(働く上での)条件というものが2つあって、1つ目が『若くして仕事を任せてもらえる』こと。2つ目が、『一緒に働く人たちの価値観や考え方が合う』ということです。


これらは、それまでの経験と人との関わりの中から創り上げた私のものさしでした。そのものさしで計ってみて、会社にとっても私にとっても最も良い選択だと考え、リクルートを選びました。

–– ハッキリとした判断基準のもと、下された決断だったのですね。
 一方で、周りとは違う道を選んだ小笹様に対し、親御さんの反応はいかがでしたか?

小笹:私は「この先どうなるかわからないリスクもあるが、将来がハッキリ見えない方が面白い」と思っていましたが、親は心配していましたね。リクルートという会社をまだ誰も知らないような頃でしたから。

親には『その、ヤクルトみたいな会社はなんだ?』と聞かれましたよ(笑)

––親御さんはそのような反応だったということですが、周囲の学生も大手志向の方が多かったのでしょうか?

小笹:そうですね。やはり、周りにいた高学歴な学生を見ていると大手企業や官僚職を目指して就職活動をしている人が多かったです。

一方で、私の場合は、年功序列な大手企業の中で生きていくことを想像した時に、10年先、20年先の成長がある程度予測できてしまったんです。それが、私には閉塞感のように感じられてしまったのです。

「アイカンパニー」が求められる就職論2.0 〜就活編〜


––そのような背景でリクルートを選ばれたということですが、当時と現在とを比較すると、就職論にも多くの違いがあるかと思います。

リクルート時代に“伝説の人事”と呼ばれた小笹様は、これからの時代の就職論についてどのようにお考えですか?

小笹:私は、これからの時代において「アイカンパニー」という概念が大切になってくると考えています。


「アイカンパニー」とは、自分株式会社のことです。自分自身を1つの株式会社に見立て、その経営者としてアイカンパニーを優良企業や、人気企業に育んでいく。会社に依存することなく、自立的に自らのキャリアを形成していく考え方ですね。

これまでの会社と個人の関係性は、“会社に自分の人生を預けている”ような「相互依存型」が一般的だったと思います。その一方で、今、終身雇用制度の衰退を含め、会社に自分の人生を預けることにリスクを感じる方々が増えています。

そのため、個人が様々な働き方や生き方を選択するようになり、それを認める会社も増えてきました。

私は、この新しい会社と個人の関係性を『相互選択型』と呼んでいます。 この関係性上では、個人は企業に依存するのでなく、自立が求められ、自らの市場価値を常に客観的に捉える必要がでてきます。

ですので、自分という会社の価値を最大化するためにどうすれば良いかという考え方をもって、企業選びをすることが重要だと思います。

––勉強になります。。「アイカンパニー」という考えに基づいた上では、どのような基準で企業選びをするとよいのでしょうか?

小笹:自分自身の価値の最大化、成長のためにどうすれば良いかと考えた際には、『仕事や権限を任せてもらえるか』が大切になってくると思っています。

なぜかというと、裁量権や役職が自分自身を押し上げて成長できるので、アイカンパニーとしての自分の価値を上げやすいからです。

そのように考えると、私は優秀な人がベンチャー企業に就職するという文化・選択が
もっとあっても良いのではないかと思っています。

というのも、ベンチャー企業だと人数も少なく、1人1人の裁量権が大きいケースが多いですよね。また、若くして重要なポストを獲得しやすいのも、大きな特徴かもしれません。


––とはいえ、なかなか高学歴な人がベンチャー企業に飛び込むのは勇気がいるかと思うのですが。。。

小笹:実際に、日本とアメリカの高学歴な学生の進路を比較すると面白いくらいに違うのですが、日本の学生はご存知の通り大手志向・集団意識という傾向が強い。

一方で、アメリカの学生は面白いベンチャー企業へ挑戦したり、起業したりする人が多いのです。

私は高学歴な人は、受験という場において鍛錬した人だと思っています。そのような人こそ、より大きな成長を実現できる選択肢を持ってもらいたいなと思っています。

–– アイカンパニーの考え方について、とても学びになりました。アイカンパニー基準で会社を選ぶ際に、大切な考え方はありますか?

小笹氏:『自分軸』を持つことが大切かと思います。自分軸というのは他人や世の中に合わせた軸ではなく、自らの言葉や経験から創り出す唯一無二の軸のことです。

就職論1.0の意見や盲目的な大企業志向、親フィルターで決めるのでなく、自分自身の軸に従って決めないと自分という会社の価値最大化には繋がりません。

–– 就職活動に取り組む学生の中には、この『自分軸』が見つからずに悩んでいる学生も少なくないように思います。そうした学生はどうすれば軸を見つけることができるのでしょうか。

小笹:自分軸を見出すためには自己分析が欠かせません。具体的には、自身が企業を選ぶ際の『MUST』と『WANT』の条件を見極め、優先順位を明確にすることが大切です。


例えば、私の場合は先程も述べたとおり、『若くして仕事を任せてもらえる』ことと『一緒に働く人たちの価値観や考え方が合う』ということは、MUSTの条件。給与や福利厚生などは、WANTの条件でした。

そうすると、“私の場合”は大手に行くよりもリクルートに行く方が良いという意思決定ができるようになるのです。

このようにして自分自身のものさしを創り出せたら、それを基準に企業や業界を比較、検討できるようになれるので、自分軸を見つけ出しやすいと思いますよ。

大切なのは、大手だからということで盲目的になるのでなく、自分軸をもって会社を選ぶことだと思っています。

–– 勉強になります。一方で、自分の中で『MUST』と『WANT』の優先順位を明確に区切るのが簡単でない人も多いかと思いますが、どのようにすると見つけることができるのでしょうか?

小笹:そうですね。まず、そもそも前提として自分1人で探す必要はないと思います。むしろ、自分1人で見出す方が難しいと思いますよ。

自分軸が見つからずにいる人は、まず『自分軸で生きている人と触れ合うこと』、そして『世代・価値観の異なる人とたくさん話すこと』を意識してみてください。

社会人からすると、学生というのはまだ視野が狭い状況があります。そのため、刺激になるような情報や自分軸を形成するような機会に触れにくいということがあると思います。

先ほど挙げたような人たちと触れ合うことは非常に刺激的であり、自分自身の価値観を見つめ直すきっかけになるでしょう。

–– 自分軸が見つかるとどのようなメリットがあるのですか?

小笹:盲目的に就活をしていると、「自分はこの会社に入れてもらったのだ」という受動的な意識になってしまいます。

このような人は、何事にも受け身になりがちです。「役割・仕事を与えてもらう」「教育してもらう」という状態になってしまうのです。こうすると、最初に述べたような「相互依存型」の関係性になってしまう。

一方で、自分軸を決めて企業を選ぶと「自分がこの会社を選んだんだ」という気持ちが強くなります。そうすると、相互選択型の関係性を築くことができ、アイカンパニーとしての自分の市場価値を高めることができるのです。

「アイカンパニー」が求められる就職論2.0 〜働き方編〜


––就職論2.0ということで、 実際にここまでは会社選びというところについてお伺いしました。ここからは会社に入った後の働き方についてもお伺いできればと思います。

日々働く上で、モチベーションを保つことが難しいという意見を多く聞くのですが、
差し支えなければ、ぜひ働く若者に向けてアドバイスを頂ければと思います。

小笹:そうですね。弊社は『モチベーション』と名のつく会社でもあるので、ぜひお話させて頂ければと思います。

まず、先ほども触れましたが、私は就職2.0時代には自らを1つの株式会社と見立てて経営する「アイカンパニー」という考え方が非常に重要になってくると思っています。

そうした中では、モチベーションをセルフコントロールすることも自分株式会社を経営する上で必要不可欠な仕事の1つです。

ただ、このモチベーションというものはずっと高い状態を維持できるものではないので、
その維持や管理が非常に難しいものであると考える方が多いように感じています。

このモチベーションというものと向き合い続けてきた私から言えることは、『モチベーションとは上がる時もあれば、下がる時もある。だから、モチベーションを上げることより、整えることが必要である。』ということです。

–– モチベーションを高いまま維持しようとしている方にとっては、新鮮かつ本質的な言葉かもしれませんね。そもそも、モチベーションとは波があるものなのだ、ということですね。

具体的には、モチベーションを整えるためにはどのようにしたらよいのですか?

小笹:私がモチベーションを整えるために、私自身も行っている方法を2つお伝えしますね。

まず1つ目は、『タイムスイッチ法』と呼んでいるものです。一言で言うと、これは時間のものさしを変える方法ですね。


例えば、重たい仕事を数日後に控えていたりすると、緊張や不安で気持ちが下がってしまうことってありませんか?そういう時、私はExcelシートに5年・10年単位の目標や野望を書いておいて、それを眺めるようにしています。そうすると、目の前の苦難を乗り越えていけそうな気持ちになるのです。

これは、短期のものさししから長期のものさしに持ち変えることで、モチベーションをコントロールする方法ですね。逆に、長期のものさしから短期のものさしに持ち変えることでコントロールすることもあります。

–– 『タイムスイッチ法』。大きな目標や期間の長い目標をやり遂げる時には欠かせないですね。

小笹:2つ目が、『ズームスイッチ法』と呼んでいるものです。こちらは、一言で言うと空間や視界を変えるという意識で使います。


例えば、新人の社員が何かミスを起こしてしまったとします。やはり、最初は落ち込んでしまいますよね。
そういった時、私はこう伝えてあげるようにしています。

「新人の君が会社を潰すような規模のミスを起こすことなんてできないだろう。君が起こしてしまったそのミスは、代表目線からしたら、本当に大したことではないんだよ」

–– 必要以上に多く受け止めてしまっていたことに気づき、気持ちが軽くなりますね。

小笹:そうなんです。考えている範囲を広げてあげただけなんですけどね。

これから社会へ出ていく学生の方々は、悩んでいる時や落ち込んでいる時に思い出して試してみてください。自分なりのストレスコントロール方法を知っておくと、必ず役に立ちますからね。

ちなみに私は地球儀をオフィスに置いていて、落ち込んだときはその地球儀を見ながら
「この地球儀から見たら小さな悩みだな」と思うようにしています(笑)

最後に 〜ベンチャー稲門会について〜


––最後に、今回は『ベンチャー稲門会特別インタビュー』ということで、小笹様はベンチャー稲門会の幹事長でもあるかと思いますが、改めてベンチャー稲門会の活動について教えてください。

小笹:ベンチャー稲門会は、早稲田大学出身のベンチャー企業経営者の会です。
「起業家精神が最も旺盛な大学を創る」をミッションに掲げ、活動しています。

具体的には、定期的に会員の社長同士が集まるイベントを開催したり、
学生と関わるイベントを開催したりしています。
開催する食事会や勉強会では、普段なかなか触れる機会のない研ぎ澄まされた情報や貴重な人脈、経営者としての成長につながるような学びが詰まっています。


–– ベンチャー稲門会としてこれからは、どのような展開を考えていらっしゃるのですか。

小笹:今は早稲田卒の社長同士の活動がメインとなっていますが、今後は学生など、もっと多くのステークホルダーに向けて活動の輪を広げていきたいですね。

そうしてベンチャー企業の環境を知り、挑み、成長していってくれる学生が増えていったら嬉しいなと思っています。


ベンチャー稲門会も、平野事務局長を中心に、新事務局体制を構築しました。
今回のようなインタビュー企画をしたり、会員向けのコンテンツを増やしたりと、
頑張っていますし、私も代表幹事として、全面的にサポートしています。

そのため最後に、少しだけ宣伝となってしまいますが、
現在ベンチャー稲門会の会員を募集しているので、もし皆様の周りで早稲田卒の経営者がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介いただけると嬉しいです。

ベンチャー稲門会↓

––小笹様、 本日は貴重なお話をありがとうございました。


執筆=山崎
編集=平野・竹田

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