佐藤武志

【経歴】

22歳に父親の会社（当時社名は有限会社協和電材工業）に入社。入社18年目、39歳で代表取締役に就任。ケィディケィ株式会社は樹脂（エンジニアリングプラスチック）加工および販売業務を事業とし、大田区から「優工場」認定を受ける他、平成26年度「東京都中小企業技能人材育成大賞」知事奨励賞,平成29年12月に経済産業庁「地域未来牽引企業」に認定される。

ケィディケィ株式会社はもともと父が始めた会社で、私はいわゆる二代目です。

実は入社した当時は仕事に対して目標はなかったんです。

それが、父と共に取締役をしていたおじが突然退職し、そのおじが抱えていたクライアントを引き受けた事で変わりました。がむしゃらに頑張って、営業して……そうしたらいつの間にか父の営業成績まで超えてしまうようになりました。

若かったこともあり、「20代で社長になってやるー」の思いだけで仕事していました。

そして、入社18年目の2007年、念願だった社長に就任したはずが、度重なる未曾有な出来事に会社の売り上げは最高期の１／３にまで落ちこみ、悩むことが仕事になってしまいました。どうやって売上げをあげるか？と、いう思いからどんな仕事でも引き受けていこうと決めました。ちょうどその時かかってきた一本の電話が、現在の事業に繋がるきっかけになったんです。

半導体製造装置に使用される部品でした。

当時の弊社の設備では難しい内容の仕事で、正直「こんなのできるか！」と思ってしまったほどです。ましてやリーマンショックの影響で半導体の仕事も激減し、弊社も赤字が増える状況でした・・・でも、色々と考え悩んだ結果、これはチャンスなんだと捉え、先代社長である父の反対を押し切って、勝手に三千万円ほど設備投資をしました。そして、その後三年にわたり一億円規模まで設備投資が続いてしまいました。

ケィディケィ株式会社は、半導体製造装置に使われる部品など、精密な精度が要求されるプラスチック部品を製作しています。一般的にプラスチックは金型に樹脂を流す成型加工が主ですが、弊社は工作機械を使用しプラスチックの素材から切削加工という方法で部品を製作しています。金属に比べてやわらかく、熱変異の多いプラスチックで精度を保ち加工することは非常に難しく職人の技能が必要とされます。私はあえて、そこにこだわりたいと思っています。

きっかけは、20代の後半くらいに感じたインターネットの存在が大きいですね。

それまでは、お客さんとの信頼関係で仕事を頂いてましたが、インターネットの存在で今まで知らなかったモノが知ることが出来たり、世界中からモノが買えるようになるとお客さんはより良いものをより安く買うことが出来る様になる！危機感を持ちました。

それと同時に、情報社会やITの台頭なんかで、半導体というものがどんどん必要になってくる。そうしたときに、半導体の製造装置の部品として、精密なプラスチックを提供する仕事ができれば、と思っていたんです。

そういう状況の中で経営を考えていくうちに、自分の中に「下請けじゃなくてケィディケィというブランドを作りたい」という気持ちが大きくなりました。

職人の技術で一つ一つ質が高い製品を作っていくことが、ブランドにつながっていく。そう思って、一つ一つの製品を丁寧に作ってきました。私たちが扱っているのはプラスチックはデリケートな素材なので、いくら機械の性能がよくなっても職人の技能が必要になってくるんですよ。

そういった経緯で、プラスチック切削加工の精度にこだわりを持って、現在の事業を進めています。職人の高い技術とハイテクな機械を使って安定した部品を作る。

これがケィディケィにしかできない仕事なんだ。

次のステップは、次世代の構築です。

事業規模を拡大させようとか、従業員をいっぱい増やそうとかではなく、世の中に必要とされている分を見極めながら構築を進めています。

今の従業員たちは高いスキルをもって、質の高い商品を作ってくれています。

しかし、人間は歳を取ります。この技能を絶やさないために次世代育成を目下のテーマとしています。背丈にあった範囲で、自分たちの強みである自社ブランドのクオリティを活かし高品質な部品を、これからも作り続けていきたいと思っています。