TOPPANエッジ株式会社

藤原 徹

つけて寝るだけ、体調のリズムがわかる

女性の日々の健康管理に寄与する「わたしの温度」
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今回のインタビューはトッパン・フォームズ株式会社総合販促部の藤原徹、次世代商品開発部長の名和成明の両氏に、同社の女性の健康管理に貢献する「わたしの温度」についてお伺いしました。

トッパン・フォームズ株式会社 藤原徹氏のONLY STORY

寝ている間に自分を知る?新時代のヘルスケア


––今回はトッパン・フォームズ株式会社の「わたしの温度」についてお伺いします。「わたしの温度」とはどういったものでしょうか。

藤原氏:「わたしの温度」は女性のホルモンバランスによる体調の変化を簡単に把握できるヘルスケアIoTサービスです。衣服内の温度データを計測するデバイスとデバイスをつけるナイトブラ、計測結果が届くアプリの3つを利用し、寝ている間に温度リズムを計測することができるんです。

––温度リズムですか。

名和氏:はい、男性の方はご存じない方が多いのですが、女性には1カ月の間に2種類の女性ホルモンが変動することによって、体温が上昇したり低下したりするタイミングがあるんです。それぞれ高温期と低温期といいます。さらにホルモン動態でみると排卵期と黄体期、月経期と卵胞期の4つに分かれます。

心やからだの状態はこの4つの期間によって大きく変わり、例えば妊娠のしやすさや太りやすさ、肌荒れのしやすさなどが変化します。そのほかにはメンタル面の不調、頭痛や体調不良といった症状が現れることもあります。

このような体調の変化が事前にわかれば、備えることによって仕事や趣味をより楽しむことができるようになります。それを可能にするのが「わたしの温度」なんです。

––自分のことを知ることでより前向きに過ごせるサービスだと感じました。これまでは自分のリズムを把握できるような商品は発売されてこなかったのでしょうか。

名和氏:安静時の基礎体温を計測する婦人体温計があります。ただ「基礎体温は妊活をするために測るもの」というのがほとんどの人のイメージだと思います。

しかし、からだのリズムを把握することは、妊活のほかにも頑張れる時期を見極められたり、ダイエットや美容の手助けにもなります。つまり、からだの状態把握はその人の目的に応じて、その時期に合わせた行動変容につながるんです。

––これまではからだのリズムを把握するメリットが周知されていなかったため、方法があっても実践されていなかったということなんですね。

藤原氏:それだけでなく、婦人体温計での計測が難しく続けられないという理由も大きいですね。

従来の方法ですと毎朝決まった時間に目を覚まし、何よりもまず舌下で5分間検温しなくてはなりません。ただし活動してしまうと正しい数字が出ないので、布団の中でじっとしていなければなりません。トイレに行ったり、動かないまま二度寝してしまうと正しい数値を測定できないんです。

その上3カ月は続けないと明確な周期は判明しないので、多くの女性がこの難関のために基礎体温を計測することがなかなか続かなかったという現実があります。その問題を解決するために、「わたしの温度」は誰でも簡単に自分のリズムを知ることができるようになっているんです。

心とからだの悩みを抱える全ての女性に朗報!


––計測の方法が異なるということでしょうか。「わたしの温度」の測定方法を教えてください。

名和氏:ポケットがついた専用のナイトブラにデバイスを入れてつけて寝ることで、寝ている間に自然にからだのリズムが計測できる仕組みです。朝起きてアプリを開けば、すでに自分のからだの状態がグラフやアイコンでわかりやすく表示されており、その人の状態にに合わせた食事や健康のアドバイスも届きます。


毎日同じ時間に起きたり、安静にして5分間計測したりという、毎朝の煩わしさがないので、子供を授かりたいという強いモチベーションがない方でも継続できるのが大きなポイントです。

––その簡便さが「わたしの温度」の強みになるんでしょうか。

名和氏:はい、その通りです。以前、30名の女性に婦人体温計と「わたしの温度」を1カ月半、併用してもらい性能の検証を行いました。その結果、「わたしの温度」は高温期と低温期の変化がない14%の人を除いたほぼ全員が計測できたのに対し、婦人体温計では4割の人がリズムを示すことができなかったんです。

婦人体温計の計測では、先ほども話題に上がった通り、二度寝してしまったり、トイレに行ってしまったり、そもそも測定自体を忘れてしまったりで、正確な数値が出なかったようです。

また、高温期と低温期はわずか0.25~0.5度の温度差なので、その温度変化を正確に把握できるという点も「わたしの温度」の特徴です。

藤原氏:正しく自分のリズムを把握しログを取っていくことで、だんだんと予兆がわかっていき、対策が取れます。自分のからだの変化に悩み始める時期からきちんと自分のリズムがわかるようになれば、ストレスが軽減し前向きに過ごせると思うんです。

––というと、ターゲットはやはり若い層になるんでしょうか。

名和氏:年齢に関係なく心やからだの不調や変化に悩みを持つ女性たち、そして女性パートナーがいる男性や女性従業員のいる経営者さまにもこのサービスを知っていただけたらと思います。

今は40~60歳代の女性も働く時代になりましたが、この年代はとかくホルモンバランスが乱れがちな年代でもあることからさまざまな不調が起こり得ます。こうした年齢層の女性も自身のリズムを把握することによって安心感と余裕が生まれます。パートナーと共有すれば互いに思いやりが生まれてきますので、男性にも知っていただきたいですね。

––「わたしの温度」が広く認知されることは、女性はもちろん男性にとっても意識改革の機会になりそうです。

藤原氏:そう思いますね。「わたしの温度」を通じて、男性にも「女性のからだにはリズムがあり、それによる悩みがある」ことを理解してもらうことで男性にも良い影響があれば、これほどうれしいことはありません。

名和氏:私の妻は「わたしの温度」を使っており、私はそのデータを共有してもらっているんですね。彼女が今、どのような時期かわかれば、「今日はコンビニで甘いものを買って帰ろうかな」というように相手に配慮した行動が生まれ、ケンカも減ったり家庭内が明るくなったりします。

このような配慮が家庭だけでなく、職場や社会にも広がれば社会全体のQOLが向上すると思っています。

新事業は無線通信と個人情報管理技術の融合


––「わたしの温度」を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

名和氏:トッパンフォームズは帳票類をはじめとする印刷物の製造・販売で知られていますが、需要の変化に伴いサービスの幅を広げ、最近はデジタル製品を扱うことが増えました。そうした中、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードに活用される無線通信の開発技術が得意領域となっています。

そのような中、ワクチン接種券やクレジットカードの請求明細書などの個人情報が含まれるものをご家庭へお送りする事業が中核になっており、そのためのビッグデータの管理技術を保有しています。

そうした技術によってウエアラブルデバイスとアプリのスマートな送受信や個人情報の整理を行うヘルスケア事業に応用展開しようと2017年に研究開発をスタートさせました。

––その中で特に女性向けの分野を選んだのはなぜでしょうか。

名和氏:女性の社会進出が目覚ましいこと、出産や結婚が高齢化していること、性別を問わずヘルスケア関連の需要が高まっていることなど、自社技術と、社会問題との掛け算から方向性を定めました。

また、日本全体の国庫負担の医療費は今や10兆円を超え、今後もさらに増えるのは確実だといわれています。そうした状況に弊社のセンサー技術、温度センシング技術がどう貢献できるかを考えました。

––実際に「わたしの温度」を使った人からはどのような反応をいただきましたか。

名和氏:アンケート結果では、「業務の優先順位が以前よりもうまくつけられるようになった」「からだの状態に合わせ定時帰宅や休暇取得を調整した」「生産性が上がった」など、喜びの声をよくいただきます。

また妊活層200人中、34%ほどが妊活に好影響があったそうで、実際に十数名の方から「妊娠ができました」といった声が届いたときには、大きな喜びを感じましたね。

藤原氏:婦人体温計での検温では、朝の計測がストレスになってしまい、そこからホルモンバランスが崩れ、本来の温度リズムが計測できないという本末転倒な結果になってしまう方もいらっしゃいました。そのような方々からは「わたしの温度を使えばきれいなグラフになることがうれしい」といった声も届きました。

名和氏:「わたしの温度」を使った6割の女性が、「簡単にはわからない自分の状態を知ることができて楽しい」と言ってくれたことからは、知らなかった自分を知ることに楽しさやうれしさを感じるのだと、改めて気づき、面白いなと思いました。

女性にとってのワンストップサービス目指して


––今後の事業展望をお聞かせください。

名和氏:ソリューション企業パートナー企業とも連携しながら、女性にとってのワンストッププラットフォームを目指しています。またこれまでビッグデータの管理を行ってきたので、それを利活用しながら将来はパーソナルヘルスレコードを推し進め得られるような健康事業を展開していきたいと思います。
見えないヘルスケア情報を価値のある情報にして、企業や個人にタイムリーな形で届けることで、日々の生活や事業運営に貢献していきたいと思います。

ゆくゆくは、かかりつけの医療機関や健康診断の結果など多くの情報を掛け合わせることで、病気の予防や未病というところにまで寄与できればと思っています。



––最後に、この記事を読まれる経営者層の方たちへ向けたメッセージをお願いします。

名和氏:最近、フェムテックが注目されていますが、女性の活躍、女性支援の社会浸透はとても難しいものだと感じています。これは男性中心の社会構造や男女間のタブー視などが根強く残っているためです。

しかし、そんな中でも女性の起業家やプロジェクトリーダーが頑張っているのを見るにつれ、私や藤原のような年齢層の男性がフェムテックを自分事として、企業や自治体へ女性支援の働きかけをすべきなんだと痛感しています。

そうした先進的な考え方を持つ経営者さまとご一緒できるとしたら、世の中をより良くする動きが加速していくだろうと思います。
ぜひ、ご連絡をいただきたいと思っています。

執筆=増田
校正=笠原

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