山口和也

「自分って、本当にビジネスのことをわかっていなかったな…」新卒でブラック企業に入ってしまった私は、心底そう思いました。

入社前、私はその会社を「やりがいがありそうだ」と感じていました。従業員は1,000人以上。

「新規事業の部署に配属する」「上場を目指していて、株も従業員に買わせている」など、非常に魅力的な言葉を聞かされていましたから。自分の実力を試したいという思いもあったので、ブラックでもやりがいのありそうな企業を選んだ経緯もありました。

ところが、そこはただのブラック企業ではなかったんです。金になれば何でもアリ、挨拶は全部「押忍！」、売れない営業マンは、営業所長が固く丸めた新聞紙の棒でケツバット…。暴力がまかり通る毎日に、「学生時代に、就業体験をしておいた方が良い」と思うようになったんです。

学生時代の就活では、イメージだけでビジネスを捉えてしまいます。社会やビジネスの全体像を知りませんから、自分の進むべき道や会社の選び方も知らないんです。

また、これは後に外資系企業のAsiaPacific&Japan地域で働く中で感じたことなのですが、今、日本の地位は急速に落ちていて、最弱であると言っても過言ではありません。

まとまった時間が取れる学生の内から、「自分で企画を考え」「それを実際にやってみて」「改良を重ねて損益分岐点を超える」というビジネスを経験でき、ビジネスとは何かという本質を掴むための場づくりをしたい。

このような問題意識から早稲田大学ビジネススクール在学中に「海外新興国ベトナムにおける実店舗を用いた研修ビジネスの成功要因に関する研究」という修論を書き、2013年夏に4人からスタートさせました。これが「海外ビジネス武者修行プログラム」の始まりです。

「海外ビジネス武者修行プログラム」は、ベトナムの世界遺産都市ホイアンにある７実店舗（お土産屋、レストラン、ベトナム人向け語学学校、ツアーデスク、ハンバーガー屋、カフェ、バー）を舞台にした超実践的プログラムです。

目的は、「自分が定めた将来的なゴールに向けて何が必要かを考え、それを自ら達成すること」ができる能力『自走式エンジン』を搭載すること。参加者は3〜4名でチームを組み、ビジネスプランを共同で企画し、カタチにしていきます。

最終的に各チームのビジネスプランが損益分岐点を何日で超えるかを、公開されている店舗の実売上データを基に発表してもらいます。

チームでどうやるか？マーケティングやプロモーションはどうするか？など、自分の想いとお客様の視点を融合させることで本質的なことが身につき、理論と実践を何度も繰り返すことで、ビジネスが自分の血肉になるのです。また、チームでやることで、プログラムが終わった後も、仲間の存在が自分の自走式エンジンを持ち続ける支えになります。

自分で決める権限を与えられて、きちんと結果が出る仕事をし、適切なタイミングでファリシテーター（促進する人）の支援を受けながら、新興国で地元の方々と絡んでビジネスを経験できる。これにより、一過性ではない一生もののスキルを手に入れることができるのです。

今の日本に必要なのは、若い世代の選択肢を増やすこと。そのためにも、武者修行プログラムへの参加人数を、2年以内に年間1,000人にすることを目標にしています。毎年1,000人参加するようなプログラムにまで成長すれば、日本にインパクトを与えることができると信じているからです。

また、「大学生ネットワークを活用したマーケティング支援事業」と「企業版武者修行」も展開したいですね。

「大学生ネットワークを活用したマーケティング支援事業」は、大学生にマーケティングリサーチをしたい企業に対して、学生自身がアポを取り、取材、ビジネスをするグループを作る取り組みです。

日本国内で活躍できる場所を作ることで、武者修行修了生もさらに勉強できるようになりますから、面白いのではと思っていますね。

「企業版武者修行」では、春休み（２月＆３月）や夏休み（８月＆９月）以外は空いているベトナムの店舗を、海外進出をお考えの企業が、新卒や若い社員の教育、幹部育成の研修できる場として提供します。

ちなみに、弊社の定義するグローバル人材というのは、英語を話せる人でも、海外で働く人でもなく「どういう状況であっても結果を出し、社会に価値を創造できる人」です。そのために、自走式エンジン®を搭載することは不可欠なんです。

グローバル人材になって、社会への価値の創造を一人一人が自分の力でできるようになれば、日本は変わります。

夢は「武者修行プログラム」のノウハウを、大学、企業、個人などに色々な形で提供し、日本でも世界でも、どこでも活躍できて、どこでも価値を創造できる日本人をどんどん輩出していくことです。今からその世界を想像するだけで、わくわくしますね。

http://mushashugyo.jp/company/
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