「インサイドセールス」と「フィールドセールス」という、2つの営業手法を聞いたことがあるでしょうか。
インサイドセールスは、顧客のもとに直接訪問することはなく、オンライン上で営業をする手法 のことです。「内勤営業」と呼ばれることもあります。一方、フィールドセールスは、顧客のもとに直接訪問して営業をする手法を意味します。こちらは「外勤営業」と呼ばれることもあります。
近年では日本でも、「営業」と一括りにせず、営業部門をインサイドセールスとフィールドセールスに分ける企業が増えています。
この記事では、インサイドセールスとフィールドセールスの違いを説明しつつ、営業を効率化する方法を解説します。
インサイドセールスとは?
インサイドセールスは顧客のもとに直接訪問することなく、オンライン上で営業をする手法のことです。インサイドセールスが用いられる理由として、リモートワークの導入やSaaSの普及が挙げられます。
オンラインで営業活動を行い、営業活動をより効率化する動きが活発化しています。
インサイドセールスで用いられる手法
一般的には以下のような手法を取り入れている企業が多いでしょう。
それぞれの手法についてどのような活動をするのか、解説します。
オンラインセミナー
自社サービスのメリットやベネフィットを伝える 競合他社との比較を交えつつ、自社サービスの必要性を伝える 競合他社との比較を交えつつ、自社の優位性を伝える
オンライン面談
顧客の悩みをヒアリングする 市場から見た顧客のポジションを伝えるなどを通して、市場などの情報を提供する
メール
自社商品のキャンペーンなどを伝える ノウハウなどのお得な情報などを伝える
電話
ニーズや課題をヒアリングする どう課題が解決されるかなどの仮説を伝える オンライン面談や商談を提案する
インサイドセールスでは、課題をヒアリングして自社の商材を訴求し、見込み客の育成につなげることができます。
インサイドセールスには2つのポジションがある
インサイドセールスを2つのポジションに分ける企業も見受けられます。BDSとSDRと呼ばれるポジションです。それぞれで役割が異なるため、しっかり押さえておきましょう。
BDR(アウトバウンド型)
Business Development Representativeの略で「新規開拓型」の営業と呼ばれます。まだ自社と接点のない見込み客にアプローチをかけたり、顧客リストをもとに一社ずつアプローチをかけたりする手法です。
営業に大きくリソースを割く必要があります が、ターゲットのニーズに沿った提案ができれば契約につながりやすいでしょう。
SDR(インバウンド型)
Sales Development Representativeの略で「反響型」の営業と呼ばれています。問合せや資料請求など顧客からアプローチがあったときに、商談の提案を行います。また、リードの育成(リードナーチャリング)のスキルも求められます。ターゲットはBDRと違い広範囲であり、SNSやメルマガなど企業により多種多様な導線が存在します。
ターゲットからのお問合せを待つため、営業にかけるリソースを少なくできる点がメリット です。ただし、安定して問合せを獲得するためには、メルマガ会員やSNSのフォロワーを集め、集客する必要があります。
フィールドセールスとは?
フィールドセールスとは、顧客の元を直接訪問する営業方法を指します。インサイドセールスからのパスを決めるようなポジションであり、受注へと繋げることに注力します。
インサイドセールスから顧客の情報を念入りに引き継ぎ、顧客への理解を深め、商談で受注に繋げることが、フィールドセールスの成果に直結します。
フィールドセールスの強みは顧客との関係を構築しやすい ことです。長時間話したり、深堀して話したりすることができるため、信頼を得やすいでしょう。
インサイドセールスとフィールドセールスで営業を分業するメリット
企業によっては、インサイドセールスとフィールドセールスを両方同じ社員が行うこともあります。1人で顧客に向き合うため、引き継ぎのリスクを抑えられるという点がメリットです。
しかし、インサイドセールスとフィールドセールスで営業部門を分業している企業も増えています。ここからは、具体的なシーンを織り交ぜながら、インサイドセールスとフィールドセールスで営業部門を分業するメリットとデメリットを述べていきます。
時間の使い方を効率化できる 新人の育成を効率化できる
1.時間の使い方を効率化できる
まず、時間を有効活用することができるというメリットが挙げられます。
顧客の元を訪問して、契約に繋がらなかった場合、大きな時間ロスになりかねません。しかし、インサイドセールスとフィールドセールスで分業することによって、フィールドセールスが商談やコンペに訪問している間、インサイドセールスは別の顧客にアプローチ できます。
商談のため訪問している時間により確度の高い顧客を逃すリスクを軽減できることが、分業化のメリットと言えるでしょう。
2.新人の育成を効率化できる
インサイドセールスとフィールドセールスの分業化は、新人育成の効率化につながります。「マーケティングからフィールドセールスまで全て完璧にこなす人材」を育成することは非常に難しいです。
インサイドセールスとフィールドセールスを分業すると、それぞれに必要な知識やスキルを教えることに専念でき、人材育成を効率化できます。
インサイドセールスとフィールドセールスで営業を分業するデメリット
インサイドセールスとフィールドセールスを分業するデメリットもあります。ここでは、分業をするデメリットを具体的に解説します。
マネジメントの手間が増える 部署間の関係構築を考慮する必要がある
1.マネジメントの手間が増える
部署を分けるとポジションも増えます。それにより、マネジメントや組織体制を新たに作る手間が増えます。
インサイドセールスとフィールドセールスを1つの部署でまとめるなら、「営業部門」という一つの部署の管理だけで済みます。
しかし、インサイドセールスとフィールドセールスで営業を分業することにより、「インサイドセールスのマネージャー」と「フィールドセールスのマネージャー」などのように、2つのポジションが必要になり、それぞれに新たな組織を構築しなければなりません。
2.部署間の関係構築を考慮する必要がある
インサイドセールスとフィールドセールスは部門間連携を密に取る必要があります。インサイドセールスが商談のアポイントメントを取らなければ、フィールドセールスは商談のために顧客を訪問できないためです。
また、インサイドセールスから顧客の情報をしっかりと引き継がなければ、ニーズに沿った提案ができず、受注に至らないこともあります。
インサイドセールスとフィールドセールスは、常にチームワークが良好な状態を維持し続けることが求められます。 ツールを利用して顧客データを一元管理するなどの工夫が必要になります。
インサイドセールスとフィールドセールスの分業を成功させるコツ
ここでは、インサイドセールスとフィールドセールスを駆使して営業を効率化する方法を解説します。以下のように、インサイドセールスとフィールドセールスのメリットを活かしているケースが見られます。
インサイドセールスで顧客のヒアリングをする インサイドセールスで確度を高める 部署間の情報共有を念入りに行う
それぞれについて解説します。
1.インサイドセールスで顧客のヒアリングをする
インサイドセールスは顧客と初めに接点を持つポジションであり、顧客が自社に持つ印象を左右します。顧客との初めての接点では、いかに顧客に他社との優位性をアピールできるか が求められるためです。
もし自社のサービスが競合に劣る、この担当者は少し信用ならないといった印象を持たれてしまった場合、顧客の確度は下がるでしょう。
また、インサイドセールスがナーチャリングを行うことで、フィールドセールスが確度の高い顧客に絞って効率よく営業できます。インサイドセールスでは、顧客のニーズを聞き出し、購買意欲を高めることが重要です。
商談では、主に以下のような点をクリアすることで、受注の確度を高められる可能性が上がります。
顧客の課題をヒアリングできるかどうか 顧客との関係を構築できるかどうか 顧客からの信頼を得られるかどうか
2.インサイドセールスで確度を高める
インサイドセールスの時点でニーズを詳しく聞くことにより、直接訪問するフィールドセールスが商談から契約につなげやすくなります。また、ニーズのヒアリングだけではなく、顧客からも信頼されやすくなります。
インサイドセールス従事者は、顧客に業務の面だけではなくプライベートの側面もリサーチをすることが多いでしょう。課題やニーズのヒアリングのみに留まらず、人間関係の構築も共におこなっていくことが、インサイドセールスが顧客の確度を高めるポイントになります。
自社のイメージが良い状態のままでフィールドセールスにパスを回す ことで、受注率は大きくアップするでしょう。
3.部署間の情報共有を念入りに行う
インサイドセールスとフィールドセールスの分業を行うと、他部署間の情報共有で齟齬が生じる可能性があります。 逆に言えば、ここで情報共有を正確に行っていれば、商談を円滑に進めることにも繋がります。
フィールドセールスが商談の際に、顧客の理解度が深い旨を伝えることも、受注に繋げるにあたって大きく役に立つでしょう。
インサイドセールスからフィールドセールスにアポイントメントを共有する際に、フォーマットを作成しておいたり、朝礼や中間ミーティングや終礼を行ったり、様々な策を凝らすことで、双方の部署に情報の偏りが生じないようにすることを心掛けている企業も存在します。
インサイドセールスとフィールドセールスが連携すべき部門
インサイドセールスとフィールドセールスは「マーケティング部門」「カスタマーサクセス部門」のような部門がその例です。
マーケティング部門では市場調査から始まりリード客のリスト化を行い、カスタマーサクセス部門ではフィールドセールスと契約が決まった顧客のコンサルタントのような役割を果たすポジションです。
この項目では、フィールドセールスが他部門と連携するコツを解説します。
インサイドセールスとマーケティング部門との連携
インサイドセールスは、最も初めに顧客に接触するポジションですが、誰に接触するのかを定めなければ、インサイドセールスは無鉄砲にアプローチをかけることになります。
マーケティングは以下のような活動を行っているため、情報を共有することでアプローチするターゲットが絞り込めます。
市場調査などをもとに、ターゲットやペルソナを設定する ターゲットになり得る企業をリストアップする どのようなアプローチ方法(SNSやメールなどの媒体)が最善なのかを見極める 自社HPや自社ブログなどの運用・最適化
インサイドセールスがより良いパフォーマンスを発揮できるよう、マーケティング部門が戦略策定や顧客リスト作りを担います。インサイドセールスが顧客にアプローチする際には、マーケティング部門からの情報を正確に引き継ぐ必要があります。
フィールドセールスとカスタマーサクセス部門との連携
カスタマーサクセス部門では、フィールドセールスが受注してきた案件の最適化を担うようなポジションを任される場合が多いでしょう。
フィールドセールスから顧客情報を引き継ぎ、顧客との長期的な関係を築くというポジションです。カスタマーサクセスの存在のおかげで、フィールドセールスは商談に専念できる ようになります。
インサイドセールスとフィールドセールスが築いてきた顧客との信頼関係を損ねるようなことを避け、さらに良い関係を構築していくことが求められます。また、関係の構築だけではなく、数字としての結果を追い求めていくことも大切です。
そのため、インサイドセールスがフィールドセールスに正確に情報を共有する必要があります。また、密に連携を取り、最新の顧客情報を渡すことが望ましいでしょう。
運用支援コンサルタントとの連携
受注してからしばらくはカスタマーサクセスが担当し、それ以降は別のコンサルタントが担当するという企業も少なくないでしょう。
カスタマーサクセスは受注してから初めてサービスの運用を担当するため、顧客のデータがまだ溜まっていないという問題があります。そのため、顧客から聞いた話やこれまでの自分の経験に頼ってしまい、データやファクトが見えなくなる こともあるでしょう。
このことから、運用開始時期の初動を見極めるカスタマーサクセスと、データに基づき運用の安定を図るコンサルタントの二つの部門を確立をしている企業もあります。
マーケティングからカスタマーサクセスまでの流れ
ここまで、インサイドセールスとフィールドセールスと深く関わりのある部門について述べてきました。具体的にどのような流れで自社と顧客が関わっていくのかを解説します。
ステップ①:マーケティング部門が土台を作る
ステップ②:インサイドセールスがアプローチをかける
ステップ③:フィールドセールスが商談
ステップ④:カスタマーサクセスが運用始動
ステップ⑤:コンサルタントが契約の継続を促進
①マーケティング部門が土台を作る
まずは、マーケティング部門が自社のターゲットを定めます。そして、市場調査などを行い、商材を訴求できる企業をリスト化します。
②インサイドセールスがアプローチをかける
マーケティング部門から顧客リストを受け取ります。そのリストに従い、顧客にアプローチをかけていきます。そして、顧客の悩みや課題をヒアリングしながら、関係を構築し、リードナーチャリングを行います。最終的に商談を提案し、商談のアポイントメントを取ります。
③フィールドセールスが商談
インサイドセールスから顧客の詳細を引き継いで顧客のもとを訪問し、商談を行います。
④カスタマーサクセスが運用始動
フィールドセールスが決めてきた受注の詳細を引き継ぎます。顧客に運用する媒体のアカウントを作成してもらうなど、運営をしていくための初期設定のサポートをする場合もあります。運用しながら、その顧客に適した結果の出し方を見極めていきます。
⑤コンサルタントが契約の継続を促進
企業が定めたある一定の期間を過ぎたら、別のコンサルタントに引き継ぎを行います。分析力や提案力を活かし、追加の受注を心掛けつつ、成果を出し続けます。顧客に自社サービスをより使ってもらえるよう、契約の継続を促進していきます。
営業部門の細分化によるメリット
営業部門の細分化は、各部門のプロフェッショナルの育成に繋がります 。そのため、他部門との連携やチームワークが円滑で円満な営業部門内では、互いに情報を共有することでより営業活動を最適化することがメリットになります。
例えば、インサイドセールスが、マーケティング担当に市場について聞くことで、顧客により的確なアプローチをかけるべく、インサイドセールスがマーケティング担当に情報を取りに行く場面などが一例です。
インサイドセールスとフィールドセールスの分業は難しいがメリットも大きい
直接お客様を訪問せずにオンライン上で営業をするインサイドセールスと、直接訪問するフィールドセールス、どちらも執り行うことで営業で獲得できる顧客の幅が広がります。
分業によってインサイドセールスは顧客のヒアリングやアポイントを行い、フィールドセールスはクロージングを行うような各部門のプロフェッショナルを育成できるメリットもあります。
一方、インサイドセールスとフィールドセールスの分業は、時間や育成の効率化を図れると同時に、特に組織確立の段階でやや手間がかかる可能性 は否めません。