インサイドセールスにおけるKPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。KPIは、最終的な目標を達成するために必要な指標のことです。
インサイドセールスでは、商談に至るまでの行動量をKPIとして設定するケースが多く見られます。例えば、架電数や着電数、メールの送信数などが、インサイドセールスにおける代表的なKPIとして挙げられます。
これらのKPIを設定して行動量を把握・管理することで、成果につなげるために必要な行動量を分析できます。また、成果が出ているかを把握するために、フィールドセールスにバトンタッチした数である商談化数や、受注数などをKPIとすることもあります。
見込み客に効果的にアプローチし、商談セッティング率や受注数を上げるためには、架電数やメール開封率など適切なKPIを設定し、行動を適宜見直すことがポイントです。
KPIとKGIの違いとは
KPIと混同しやすい言葉が、KGIです。KGIは、「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と呼ばれます。KGIは、事業やプロジェクトの最終的な目標を定量化したものです。売上高や成約数といった指標はKGIに分類されます。例えば「売上高〇円」「成約件数◯件」などの目標が該当KGIに該当します。
KPIは、KGIを達成するために必要な進捗・行動量を定量化したものであり、KGIとは異なります。例えば「成約件数◯件を達成するため、1ヶ月の架電数は500件」という指標はKPIのことです。KPIはKGIを設定した後でないと設定できません。
インサイドセールスにおける代表的なKPI
ここでは、インサイドセールスでよく用いられる、以下の代表的なKPIを紹介します。
- 架電数・通話時間
- 着電数
- フォロー率
- メール送信数・開封率
- 商談化数・商談化率
- 受注数・受注額
架電数・通話時間
架電数は、電話をかけた回数のことを指します。新規顧客の開拓でテレアポを活用する場合、架電数をKPIとします。テレアポでは、質はもちろん量も重要であるため、架電数が重要な指標とされます。
また、実際の通話時間をKPIとすることもあります。いくら電話をかけても、相手と内容のあるやりとりができなければ意味がありません。電話対応の質を向上させるために、通話時間を重要な指標とすることも少なくありません。
着電数
着電数は、先方の担当者につながった数のことを指します。テレアポでは、まずは受付が窓口となり、そこから担当者につないでもらう、というパターンが一般的です。
いくら受付と話ができても、実際の担当者につないでもらわなければ、商談には至りません。そのため、架電数だけでなく、着電数にも注目することが重要です。
フォロー率
フォロー率とは、割り当てられたリードに対応した割合のことです。見込み客ごとに適切な対応は異なりますが、リードが増えるとどうしても見落としやミスが発生しやすくなります。
リードに対して適切な対応ができないと、その後の商談化や受注につなげるのは困難です。そのため、インサイドセールスにおいてはフォロー数がKPIとなるケースが多く見られます。
メール送信数・開封率
メールを活用してアプローチする場合は、メールの送信数や開封率が重要です。メールをより多くのターゲットに送信することで、商談化につながる可能性が高まります。そのため、テレアポにおける架電数と同様に、インサイドセールスにおいてはメールの送信数も重要な指標となるのです。
また、メールの開封率も重要です。せっかくメールを送っても、相手に読んでもらわなければ商談には至りません。開封率をKPIとして設定することで、メールマーケティングの効果測定や、開封してもらいやすいコンテンツの作成などに活かせます。
さらに、メールの中に遷移先のリンクを設置している場合は、リンクへ遷移した遷移率も、KPIとして設定するケースが多く見られます。
商談化数・商談化率
案件の受注に至るためには、アポイントを獲得し、実際に商談を行う必要があります。そのため、商談化数・案件化数をKPIとして設定することが一般的です。
商談化数と同様に重要なのが商談化率です。商談化率は、アプローチした数のうち、どのくらいが商談に至ったかを示す数値のことを指します。商談化率をKPIに設定することによって、効率よく営業ができているかを把握し、アプローチ方法を改善するのに役立ちます。
受注数・受注額
インサイドセールスが受注まで担当する場合には、受注数や受注額をKPIに設定することもあります。また、フィールドセールスが受注を担当する場合も、リードや商談の質を評価するために、受注数や受注額をKPIとすることがあります。
インサイドセールスでも受注数や受注額の指標を掲げることによって、目標を可視化し、受注数のアップや利益拡大につながる行動を取りやすくなるのです。
インサイドセールスでKPIを設定する方法
ここでは、インサイドセールスにおいて各KPIを設定する方法について解説します。
- KPI分析環境を準備する
- 目標を明確にし、KGIを設定する
- 目標にあうKPIを設定する
- 社内でKPIの定義を明確にする
KPI分析環境を準備する
KPIは数値で表せる指標であるため、分析のためには数値を計測する必要があります。例えば、メールの開封率やホームページへの遷移数といったデータは、専用のツールを使わないと計測できません。そのため、事前にCRMやSFAなどのツールを導入し、KPI分析環境を準備しましょう。
メールの送信数や架電数のように自身で測定できるKPIについても、ツールを使用することで、効率的に測定できます。
KPIの測定に役立つツールについては、記事の後半で紹介します。
目標を明確にし、KGIを設定する
KPIを設定する前に、KGIを設定しましょう。KPIは、最終的な目標であるKGIを達成するために必要な行動の指標を表すものであるため、まずはKGIから設定する必要があります。
KGIは、具体的な数値を用いて明確化することがポイントです。「フィールドセールスへのトスアップ件数を向上させる」のような曖昧な目標では、それを達成するためにどのようなKPIを達成すれば良いかがわかりづらくなってしまいます。また、目標が曖昧だと、組織のモチベーションを維持することが困難です。
「フィールドセールスへのトスアップ件数を1ヶ月あたり200件にする」のように、具体的にKGIを設定しましょう。そうすることで、ホットリード生成数やアポイント率といったKPIについても、具体的に設定できるようになります。
目標にあうKPIを設定する
KGIを設定したら、それを達成するために必要なKPIを設定しましょう。定量化できる客観的な指標をKPIとして設定することが求められます。まずは、売上の達成と直接関わるKPIから設定することが望ましいです。
例えば、トータルの受注数をKGIとする場合、受注数は案件数×受注率であることから、案件数と受注率をKPIと設定するとよいでしょう。案件数はさらに見込み客数×案件化率で表されます。そのため、KPIとして設定すべき項目は、見込み客数・案件化率・受注率となるのです。
また、リード獲得→アポイント設定→商談化→受注という一連の営業活動では、インサイドセールスとフィールドセールスなど、さまざまなチームが関わることになります。各チームのKPIを紐付けないと、目標への認識に齟齬が生じるリスクがあるため、注意が必要です。
各チームと情報共有を行い、目標にあう適切なKPIを設定しましょう。
社内でKPIの定義を明確にする
KPIを設定したら、その定義を明確化し、社内の共通認識とすることが重要です。人によって解釈が異なると、KPIを正しく設定して進捗を振り返ることができません。
例えば、商談数をKPIと定める場合、見込みのない商談も含めるのか、確度が高い商談のみを含めるのかなど、どの商談を含めるのかについて明確化し、社内で統一する必要があります。
受注確度の定義は業界・企業によって異なるため、確度の判断基準についても社内で統一し、共通認識を持つことが大切です。判断基準として、「BANT条件」を利用するケースが多く見られます。
BANT条件とは、「Budget(予算)」「Authority(決裁者)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」のことです。BANT条件が揃っている顧客は、受注確度が高いと判断できます。
インサイドセールスでKPIを設定するポイント
ここでは、インサイドセールスでKPIを設定する際に意識するべき以下のポイントを解説します。
- 短期的に達成可能な数値を設定する
- 設定するKPIは3〜5つ程度にする
- ほかの部門との整合性を重視する
短期的に達成可能な数値を設定する
KPIを設定してうまく機能させるためには、短期的に達成可能な数値を設定することが大切です。特に、架電数やメール送信数のような、すぐに集計して進捗を振り返られるKPIについては、短期的な達成基準を数値として設定することがポイントになります。
「1年間の架電数〇〇件」という長期的なKPIのみを設定すると、具体的に1日・1ヶ月で何件架電するべきかを判断することが困難です。
また、達成可能性が低いKPIを設定すると、営業担当者のモチベーションが下がってしまうリスクがあります。「数値基準をクリアすること」を意識するあまり、見込みのない客に対してとりあえずアポを取ったり、相手が嫌がるほど強引にテレアポをしたりといった、質の低い営業活動に陥る可能性もあります。
非現実的なKPIではなく、達成可能なレベルのKPIを設定することが重要です。例えば、トータルの受注数をKGI、KPIを見込み客数・案件化率・受注率とする場合、以下のように設定すると良いでしょう。
<KGI>
受注数:1ヶ月あたり40件
<KPI>
見込み客数:1ヶ月あたり500件、1週間あたり125件
案件化率:40%
受注率:20%
設定するKPIは3〜5つ程度にする
KPIを多く設定しすぎると、優先順位がわかりづらくなったり、計測・分析が複雑になります。
目安として、3〜5つのKPIを設定すると良いでしょう。例えば、インサイドセールスがフィールドセールスに引き渡す案件数をKGIとし、メールで企業にアプローチする場合は、メールの送信数・メール開封率・商談化数などをKPIと設定するのが望ましいです。
ほかの部門との整合性を重視する
前述のとおり、一連の営業活動を成功させるためには、営業プロセスに関わるさまざまな部門が協力しあうことが重要です。フィールドセールスやマーケティング部門と密に連携を取り、情報を共有したうえでKPIを設定することが求められます。
CRMやSFAなどのツールを使って、顧客情報を一元管理するのが望ましいです。
KPIを達成する際の注意点
ここでは、KPIを達成するための注意点を3つ紹介します。
- 顧客との接続数を増やす
- 顧客との関係構築を意識する
- 商材に合うターゲットを選定する
KPIの達成に悩んでいる方は、ぜひ確認してください。
顧客との接続数を増やす
接続数は、顧客と電話やメールがつながった数のことを指します。接続数が足りないと、商談化数や受注数といったKPIを達成することは困難です。KPIの達成のためには、顧客との接続数を増やすことを意識する必要があります。
接続数が足りない場合は原因を明らかにし、改善のための施策を打ちましょう。テレアポの効率を上げて架電数を増やすことや、架電するタイミングを工夫することが効果的です。
顧客との関係構築を意識する
インサイドセールスでは、顧客との関係構築が非常に重要です。顧客にアプローチしているにもかかわらず商談につながらない場合は、関係を構築できていない可能性が疑われます。
顧客に商材ついて十分に理解してもらえていない場合は、商材を詳しくまとめた紹介資料や導入事例集などの資料を送付したり、メールで定期的に情報を発信したりする取り組みが必要です。
また、トークスキルが低く商材の魅力をアピールできていない、顧客の課題に合った提案ができていない、という可能性もあります。トークスクリプトを見直したり、顧客のニーズをきちんと把握できているかを確認したりしましょう。
商材に合うターゲットを選定する
アプローチするターゲットと商材がマッチしていなければ、興味を持ってもらえず受注には至りません。そのため、商材に合うターゲットを選定することが重要です。
まずは、アプローチする企業が展開する事業内容を把握し、どのようなニーズがあるかを想定しましょう。そして、自社の商材が活かせそうな企業に絞ってアプローチするとよいです。
例えば、営業管理システムを訴求する場合、従業員が多い企業をターゲットにするとよいでしょう。営業担当者が多く、顧客情報の管理に課題を抱えている可能性があるためです。
インサイドセールスでKPIを見直すタイミング
インサイドセールスでは頻繁にKPIの見直しを行い、適宜設定方法や内容を変更することが求められます。営業方法の問題点を分析し、より効率的に顧客にアプローチするためです。
あらかじめKPIを達成する期間を具体的に定め、定期的に見直しを行うことが望ましいです。例えば、はじめは3ヶ月ごとに進捗を確認し、進捗が安定してきたら1ヶ月、1週間とさらに細分化して目標を立てる、というように進めると効果的です。
見直しの結果、当初設定したKPIを達成できない場合は、改善を行いましょう。顧客に十分にアプローチできているか、商材とターゲットのミスマッチが起こっていないかなどを確認し、改善していきます。
また、四半期や中期の経営計画を発表するタイミングや、KGIが変更されたタイミングでも見直しを行うようにするとよいです。
インサイドセールスのKPI管理に使えるツール
ここでは、インサイドセールスのKPI管理に役立つ便利なツールについて紹介します。
MAツール
MA(Marketing Automation)ツールは、リードの獲得から商談獲得までのマーケティング活動を一括で管理できるシステムのことです。MAツールは、メールマーケティングやWebマーケティングに活用できます。
MAツールを使えば、顧客の属性や興味関心に合わせて自動でメールやDMなどを送付し、アプローチしたい層に適切な方法で訴求可能です。顧客の行動に合った適切なアプローチや、施策の検討が可能になります。また、既存顧客についても定期的にフォローできるため、解約率を下げることにも役立つツールです。
SFAツール
SFA(Sales Force Automation)ツールは、営業支援システムのことです。営業部門における情報や業務プロセスを自動化できるシステムで、営業活動に関するあらゆる情報を蓄積し、分析できます。特に、案件化された顧客の管理に特化しています。
SFAツールをインサイドセールスに活用すると、顧客情報の管理や、各営業担当者の営業内容の管理が可能です。営業スタイルを統一でき、アプローチ数や商談化数・受注率などの向上が期待できます。
CRMツール
CRM(Customer Relationship Management)ツールは、顧客関係管理システムのことです。顧客情報や顧客とのコミュニケーションに関するデータを一元管理できます。顧客に関するあらゆるデータを蓄積できるため、どのような提案が効果的か、どのようなアプローチでクロスセルやアップセルが可能か、といった分析に活かせるのが特徴です。
また、顧客それぞれが関心を持っているサービスを分析することで、需要の傾向をつかむことができ、新規開拓型営業につなげられます。
適切なKPIを設定してインサイドセールスの成果を高める!
KPIとは、KGIを達成するために求められる行動指標のことです。インサイドセールスの成果を高めるためには、適切なKPIを設定する必要があります。インサイドセールスでは、商談化数や架電数など、一連の営業活動に関するさまざまなKPIが設定されます。
実現可能性がある、目標にあったKPIを設定することが大切です。また、KPIは設定して終わりではなく、定期的な見直しと改善も欠かせません。