新規事業の成功率を高めるためには、失敗する原因を理解し、避ける必要があります。しかし、新規事業が失敗する理由に、どのようなものがあるのかわからない人もいるでしょう。
そこで本記事では、新規事業が失敗する原因や、リスクを下げるコツについて解説します。新規事業の立ち上げの失敗事例も紹介するため、新規事業の立ち上げを予定している方はぜひ参考にしてください。
新規事業の成功率を高めるためには、失敗する原因を理解し、避ける必要があります。しかし、新規事業が失敗する理由に、どのようなものがあるのかわからない人もいるでしょう。
そこで本記事では、新規事業が失敗する原因や、リスクを下げるコツについて解説します。新規事業の立ち上げの失敗事例も紹介するため、新規事業の立ち上げを予定している方はぜひ参考にしてください。
2017年版「中小企業白書」によると、新規事業を展開した企業のうち、成功したと回答した企業は約29%でした。さらに、成功したと回答した企業のうち、実際に経常利益率が増加した企業は51.4%であり、全体の約14%です。
つまり、新規事業を展開した約86%の企業が失敗していると言えます。なお、中小企業白書では経常利益率が横ばいの場合、失敗として計算しています。
新規事業を展開しても、必ずしも成功するとは限りません。成功させるために、まずは新規事業が失敗する原因を理解しておきましょう。主な原因は、以下の6つです。
それぞれについて説明していきます。
新規事業の立ち上げには、既存事業とは異なるスキルやノウハウが求められます。具体的には、データ分析や営業、マネジメント、マーケティング、資金繰りに関するノウハウが挙げられます。そのため、既存事業の経験や実績があっても、新規事業に必要なノウハウが不足していると、新規事業に失敗することがあります。
どれだけ機能性の高い商品・サービスを開発しても、需要がなければ受注につながりません。顧客ニーズの分析が不十分であったり、ターゲット設定が曖昧であったりすると、顧客ニーズを満たした商品・サービスを提供できず、新規事業は失敗に終わってしまいます。
現代の市場には競合の商品・サービスが溢れており、顧客は多くの選択肢の中から購入するものを決定します。選ばれるためには、顧客の課題を解決する商品・サービスを提供していなければなりません。
市場調査や分析、商品・サービスの開発などには多くの費用がかかり、想定外の費用が発生することもあります。また、新規事業を立ち上げてから安定して利益を出すまでには、多くの時間がかかります。
そのため、新規事業を立ち上げている最中に資金が底をつく可能性があるのです。資金が不足すると、これから成功する可能性のある事業であっても、撤退を余儀なくされます。
新規事業の成功には、適切なタイミングでの市場参入が不可欠です。市場に参入するタイミングが早すぎると、需要が少なく受注にはつながりません。一方、参入が遅すぎると、既に競合が市場に参入しており、激しい競争の中では勝つことが難しいです。
市場の動向を把握できていなければ、最適な参入タイミングを見極められません。また、最適な参入タイミングがわかっても、合意形成に多くの時間がかかれば、参入は遅れてしまいます。そのため、合意形成をスピーディーに行う準備が必要です。
撤退の意思決定が遅いと、大きな損失が発生して、企業の経営を圧迫してしまいます。新規事業に成功の兆しがない場合も、経営者はこれまでに投じた時間や労力、資金などのコストを惜しんでしまい、適切に判断できなくなる傾向があります。また、事業や商品・サービスへの過度な自信も、撤退の意思決定が遅れる原因のひとつです。
損失を大きくしないためには、冷静に市場の動向を把握し、適切に判断を下す必要があります。適切なタイミングでの戦略の修正や、必要に応じた撤退の判断は、企業存続のために欠かせません。
新規事業の立ち上げには、多様なスキルやノウハウを持ったメンバーが必要です。しかし、メンバーが多すぎると、コミュニケーションの密度が低下してしまいます。情報の共有や意思疎通が難しくなり、意思決定のスピードも遅くなるでしょう。
ここでは、新規事業が失敗するリスクを下げるコツを紹介します。
それぞれについて説明していきます。
新規事業の立ち上げに必要なノウハウを有する人材が社内にいない場合には、外部の専門家やコンサルタントに相談するのも手です。
自社で新規事業の立ち上げに必要なノウハウを有する人材を確保する場合、採用活動やノウハウの習得に多くの時間を要します。しかし、専門家やコンサルタントなど外部の人材を活用する場合には、即戦力を確保できます。相談する費用はかかるものの、必要なタイミングでノウハウを手に入れられる点がメリットです。
顧客の課題やニーズを深く理解するために、情報収集は継続的に行いましょう。
先述した通り、顧客の求めるものとは異なる商品・サービスを提供しても、受注にはつながりません。事業を成功させるためには、継続的に情報を収集して、市場動向を把握しておく必要があります。
新規事業を立ち上げる際の戦略策定には、フレームワークの使用が有効です。フレームワークとは、課題を解決するための考え方です。代表的なものには、VRIO分析や4C分析、RFM分析などが挙げられます。
フレームワークを活用するメリットは、以下の通りです。
フレームワークを活用すると、複雑な情報や考えを構造的に整理できるため、考えを整理しやすくなります。また、既に検討する項目が設定されており、検討内容の抜け漏れを防止することも可能です。
ただし、フレームワークは特定の観点から分析するものが多く、1つのフレームワークのみで分析すると、視点が偏りやすいです。そのため、複数のフレームワークを組み合わせて使用すると効果的です。
代表的なフレームワークを以下にまとめました。
フレームワークの種類 | 概要 |
VRIO分析 | 自社の経営資源の競合優位性を把握するためのフレームワーク。Value(経済的価値)とRareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの視点から分析する |
4C分析 | 顧客視点で自社の商品・サービスの価値を把握するためのフレームワーク。Customer Value(顧客価値)とCost(価値)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの視点から分析する |
RFM分析 | 顧客ごとに最適なアプローチを実施するためのフレームワーク。Recency(最終購入日)とFrequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの視点から分析する |
新規事業の立ち上げに必要な資金を確保するには、融資以外にも、助成金・補助金の活用がおすすめです。融資のような返済は不要で、ノーリスクで初期費用や運転資金に充てる資金を確保できます。
しかし、助成金や補助金を活用するためには、応募条件を満たした上で審査に通過しなければなりません。審査に多くの時間を要するため、入金までに時間がかかる点には注意が必要です。
なお、2023年11月時点で活用できる制度には、以下のようなものがあります。
あらかじめ撤退ラインを決めておくと、損失が大きくなる前に撤退できます。大きな損失が発生すると、既存事業に影響したり、企業全体の経営を圧迫したりするため、撤退判断は企業の存続において重要です。
そのため、「○年以内に売上を達成できなければ撤退する」や「投資額が○○円を上回れば撤退する」というように、具体的な撤退ラインを決めておきましょう。
先述した通り、初期段階で多くの人材をアサインすると、意思決定が遅れるリスクがあります。初期段階では2〜3名程度でのスモールスタートが望ましいです。大規模なプロジェクトで人数が多い場合には、情報をスムーズに共有できるように環境を整えるなど、工夫が必要となります。
ここでは、新規事業の失敗事例を紹介します。いずれも大手企業の事例であり、大手企業でも戦略によっては失敗する可能性が十分にあることがわかるでしょう。
アパレルブランド・ユニクロを運営している株式会社ファーストリテイリングは、2002年に野菜の販売サービス「SKIP」の提供を開始しました。新鮮で高品質な野菜のみを取り扱っており、通信販売で提供するというサービスです。
野菜の生産から販売までに多くの無駄があり、それにより価格が高いと考えました。そのため、生産から販売までを一貫して行い無駄を減らし、低価格で高品質な野菜を提供することを目指しました。
しかし、なかなか売上にはつながらず、わずか1年半で事業を撤退しました。野菜とユニクロのイメージが結びつかなかったことや、逆に野菜に特売のようなイメージがついてしまったことなどが失敗の原因として考えられます。
インターネット検索最大手のGoogle LLCは、「Google Glass」と呼ばれる眼鏡型のデバイスを提供していました。カメラとマイクが搭載されており、拡張現実技術によって目の前に文字や映像が現れます。
Google Glassにはカメラが備わっておりどこでも周囲を撮影できるため、プライバシー侵害が問題となりました。飲食店での使用が禁止されるなど反対の動きは大きく、国内での販売は停止しました。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、過去に「7pay」というバーコード決済サービスを提供していました。バーコード決済や、チャージ機能などの便利な機能が搭載されていました。
しかし、第三者による不正アクセスにより、約800万人もの人が勝手に支払い手続きをされる被害が発生しました。被害総額は3800万円にも及びます。不正アクセスの被害後はシステムの見直しを行いましたが、サービスの提供の継続は困難と判断して、サービスは廃止されました。
不正アクセスを防げなかった原因として、システム上の認証レベルが弱いことや、リスク管理体制が不十分であったことなどが挙げられます。社内にリスク管理のノウハウを有する人がいれば、このような事態を防げた可能性があるでしょう。
Amazon.co.jpは、2014年に3Dに対応したスマートフォン「Fire Phone」の販売を開始しました。気になる商品をカメラで撮影するだけで、Amazonの購入画面が表示される「Firefly」という機能が備わっています。
Fireflyのあらゆるものをすぐに購入できる仕組みによる、買い物体験の向上が期待されていました。しかし、iPhoneなどのサービスが既に提供されていたことから、スマートフォン市場はレッドオーシャンでした。それにより、商品はなかなか売れず、販売開始から1年で販売を終了しています。
斬新で興味を引くような商品・サービスでも、競争の激しい市場では売れない場合があることがわかります。参入タイミングが違っていれば、成功していた可能性もあるでしょう。
株式会社AOKIは、2018年にスーツのサブスクリプションサービス「suitesbox」の提供を開始しました。スタイリストが自分に合うスーツやジャケット、シャツなどをコーディネートして届けてくれるサービスです。若者のスーツ離れを脱却することを目的としていました。
販売開始前のクラウドファンディングではたった3日で目標金額を達成しており、多くの人が注目していたことがわかります。提供を開始してからも申し込みが多く、新規受付を停止するほど人気がありました。
しかし、利用者の多くは40代であり、本来想定していた20〜30代の利用者は多くありませんでした。それにより、社内サービスでカニバリゼーションが起きてしまい、開始半年でサービスの提供は終了しています。
ここでは、新規事業の失敗に関するよくある質問を紹介します。
A.マーケティング戦略の策定には、RFM分析や3C分析、PEST分析などのフレームワークがおすすめです。
前述の通り、複数のフレームワークを使い多角的な視点から戦略を立てるとよいでしょう。
A.事業が失敗すると、融資を受けている場合に返済できなくなることがあります。
返済が難しい場合には、融資元の金融機関に相談しましょう。返済期間に猶予をもらえることがあります。
新規事業を展開して収益化できている企業の割合は、約14%です。失敗をしている企業の割合は約86%であり、成功することは簡単なことではないことがわかるでしょう。新規事業が失敗する主な原因は、以下の通りです。
新規事業の成功には、既存事業とは異なるスキルやノウハウが求められます。そのため、既存事業で活躍した人であっても、新規事業を成功させるためのノウハウを有していないことがあるのです。
本記事では、新規事業が失敗するリスクを下げるコツも説明しました。
継続的な情報収集や撤退ラインの設定など、事前に準備しておけば、失敗のリスクを下げられます。しっかりと事前に準備をして、新規事業の成功を目指しましょう。
なお、新規事業を展開するにあたり、相性のよいビジネスパートナーを見つけることは非常に重要です。人脈やスキル、ノウハウなどを補いあえるため、新規事業を成功させやすくなります。
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