まずは自社の立ち位置を知る!BtoB商談の平均成功率(受注率)は?
具体的なテクニックに入る前に、まずは客観的なデータを知り、自社の現状を正しく把握することから始めましょう。
あなたの会社の商談成功率は、果たして市場の平均と比べて高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。
この立ち位置を知ることが、改善への第一歩となります。
BtoB営業全体の平均成功率は20~30%
様々な調査機関のデータによると、BtoB営業における商談化後の平均的な成功率(受注率)は、おおむね20%~30%の範囲に収まると言われています。
つまり、5件の商談を行えば、そのうち1件から1.5件が受注に至るのが平均的な水準です。
もちろん、これはあくまで全体の平均値であり、後述する業界や商材によって大きく変動します。
しかし、もしあなたの成功率がこの数値を大幅に下回っている場合、商談の進め方に何らかの改善すべき点がある可能性が高いと言えるでしょう。
まずはこの「20%」という数字を一つの基準として、自社の現状を評価してみてください。
業界・商材で大きく異なる成功率の目安
BtoBの商談成功率は、扱う商材の単価や検討期間、そして業界の特性によって大きく異なります。
例えば、月額数千円から導入できるSaaSツールのような比較的低単価な商材であれば、成功率は30%を超えることも珍しくありません。
一方で、数千万円規模の基幹システム導入や、長期的なコンサルティング契約といった高単価で、かつ企業の経営に大きな影響を与える商材の場合、成功率は10%台、あるいはそれ以下になることもあります。
自社の成功率を評価する際は、こうした業界・商材特性を考慮し、類似したビジネスモデルを持つ企業の数値を参考にすることが重要です。
成功率の定義を明確にする重要性
「自社の成功率は約〇%です」と答える前に、その数字の算出根拠となる「定義」が社内で統一されているかを確認する必要があります。
例えば、「商談」の定義はどこからでしょうか。
初回訪問は全て商談とカウントするのか、それとも具体的な提案と見積もりを提示した段階からを指すのか。
また、失注の定義も同様です。
明確な断りがあった場合のみを失注とするのか、一定期間返信がない場合も失注と見なすのか。
この分母と分子の定義が曖昧なままでは、算出される成功率は全く信頼性のないものになってしまいます。
正確な現状分析と改善を行うためにも、まずは社内で成功率の算出ルールを明確に定め、統一することが不可欠です。
なぜあなたの商談は失注するのか?成功率が低い5つの根本原因
「頑張っているのに、なぜか受注できない…」
その原因は、気合や熱意といった精神論ではなく、商談プロセスにおける具体的な「失敗」に隠されています。
ここでは、商談成功率が低い企業や営業担当者に共通する、5つの根本的な原因を解説します。
きっと、あなたにも思い当たる節があるはずです。
原因①:事前準備の圧倒的な不足
商談の成功率が低い最大の原因は、多くの場合、商談に臨む前の「事前準備」が圧倒的に不足していることにあります。
相手企業のウェブサイトを5分眺めただけで、誰にでも当てはまるような一般的な提案資料を持って商談に臨んでいませんか。
今日の商談で何を得たいのか、どのような状態になれば成功なのか、というゴール設定が曖昧なまま、「とりあえず会って話そう」と考えていませんか。
準備不足の商談は、顧客から見れば「こちらのことを何も理解していない、自分本位な営業」と映り、貴重な時間を奪うだけの行為になってしまいます。
商談の成否は、商談が始まる前に8割決まっているのです。
原因②:「ヒアリング」ではなく「商品説明」になっている
多くの営業担当者が陥りがちな失敗が、顧客の課題やニーズを深く聞き出す「ヒアリング」をおろそかにし、自社製品の機能やメリットを一方的に話し続ける「商品説明」に終始してしまうことです。
顧客が知りたいのは、製品のスペックではなく、「その製品が、自社のどのような課題を、どのように解決してくれるのか」という一点に尽きます。
顧客の本当の課題を理解しないままに行うプレゼンテーションは、的外れな内容になりがちで、相手の心には全く響きません。
商談の主役は、営業担当者ではなく、あくまで顧客であるという意識を持つことが重要です。
原因③:決裁者とキーパーソンを特定・攻略できていない
BtoBの購買プロセスには、多くの場合、複数の人物が関与します。
目の前の担当者が非常に好意的であったとしても、その担当者に最終的な決定権(決裁権)がなければ、商談はそこから先に進みません。
成功率が低い商談は、この「誰が真の意思決定者なのか」という決裁者を見極められていなかったり、決裁者に影響力を持つキーパーソン(例えば、情報システム部門の責任者や、実際にそのツールを使う現場のリーダーなど)を巻き込めていなかったりするケースが非常に多いです。
商談の早い段階で、意思決定のプロセスと関係者を把握することが不可欠です。
原因④:顧客の導入プロセス(BANT条件)を把握していない
BANT条件とは、BtoB営業において、その商談が受注に至る可能性を見極めるための基本的なフレームワークです。
具体的には、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つの頭文字を取ったものです。
商談の成功率が低い営業担当者は、これらの重要な情報をヒアリングできていません。
顧客に明確なニーズがあっても、予算が確保されていなければ契約には至りません。
担当者に熱意があっても、決裁権がなければ話は進みません。
これらのBANT条件を確認しないまま提案を進めることは、ゴールのないマラソンを走るようなものなのです。
原因⑤:クロージングと次のアクションが曖昧
商談の最後に、「本日のご提案は以上となります。ぜひ前向きにご検討ください」と言って、商談を終えてしまっていませんか。
このような曖昧なクロージングでは、商談はほとんどの場合、自然消滅してしまいます。
「検討します」という言葉は、多くの場合、丁寧な断り文句です。
成功率の高い営業担当者は、商談の最後に必ず「次の具体的なアクション」をその場で合意します。
例えば、「それでは、本日いただいたご質問への回答を盛り込んだ正式な見積書を、明後日の金曜日までにお送りしますので、来週の火曜日に15分ほどお時間をいただき、内容をご確認いただくのはいかがでしょうか?」といった具合です。
【準備編】商談の成否は8割ここで決まる!成功率を上げる3つの準備
商談を成功に導くためには、その場でのトークスキル以上に、商談前の入念な準備が不可欠です。
トップセールスは、商談に臨む時間の何倍もの時間を準備に費やしています。
ここでは、商談の成否を8割決めるとも言われる、3つの重要な準備について具体的に解説します。
① 徹底した顧客リサーチと3C分析
まず最初に行うべきは、商談相手に関する徹底的なリサーチです。
顧客(Customer)の公式ウェブサイト、中期経営計画や決算資料といったIR情報、最新のプレスリリース、経営者のインタビュー記事などに隅々まで目を通し、相手がどのような事業を行い、どのような課題を抱えているのかを深く理解します。
次に、競合(Competitor)がどのような動きをしているのか、市場環境はどうなっているのかを調査します。
そして最後に、それらの情報と自社(Company)の強みを照らし合わせ、「この顧客のこの課題に対して、自社は競合にはないこのような価値を提供できる」という、独自のポジションを明確にします。
②「仮説構築」で商談のシナリオを描く
徹底したリサーチの次に行うのが、「仮説構築」です。
集めた情報をもとに、「この顧客は今、〇〇という点に最も課題を感じているのではないか?」「その課題の背景には△△という要因があるのではないか?」といった仮説を立てます。
そして、その仮説が正しかった場合に、自社の製品やサービスがどのように役立つのかを提示する、という一連の商談シナリオを事前に描いておくのです。
この仮説の精度が高ければ高いほど、商談の場で顧客から「そうなんだよ、よく分かっているね!」という共感を引き出すことができ、一気に信頼関係を深めることができます。
③ 商談のゴールとネクストステップを事前に定義する
行き当たりばったりの商談を避けるため、「今回の商談におけるゴール」を事前に明確に定義しておくことが極めて重要です。
ゴールは、必ずしも「契約を取ること」である必要はありません。
初回商談であれば、「顧客の課題とBANT条件を完全にヒアリングすること」や、「決裁者に紹介してもらう約束を取り付けること」といった、より現実的なゴールを設定します。
そして、そのゴールが達成できた場合に、商談の最後に相手に依頼する「次のアクション(ネクストステップ)」も具体的に決めておきます。
ゴールが明確であれば、商談中に話が脱線しても本筋に戻すことができ、常に主導権を握って話を進めることが可能になります。
【実践編】トップセールスが実践する商談成功の4ステップ
入念な準備が整ったら、いよいよ商談本番です。
ここでは、多くのトップセールスが実践している、商談を成功に導くための普遍的な4つのステップを、具体的なテクニックと共に解説します。
この流れを意識するだけで、あなたの商談は劇的に安定し、成功率も向上するはずです。
ステップ①:序盤(アイスブレイク~アジェンダ提示)
商談の最初の5分間は、その後の90%を決めるとも言われる非常に重要な時間です。
ここでの目的は、和やかな雰囲気を作り出して相手の緊張をほぐす「信頼関係の構築」と、これから何を話すのかを明確にして安心感を与える「商談の主導権確保」です。
アイスブレイクでは、事前にリサーチした相手企業のウェブサイトの新着情報や、担当者個人のSNSでの発信内容に触れ、「あなたのことをきちんと見てきていますよ」というメッセージを伝えましょう。
その後、「本日は〇〇というテーマについて、約60分お時間をいただき、このような流れでお話しできればと存じます」と、その日のアジェンダ(議題)と時間配分を最初に提示することで、相手は安心して商談に集中できます。
ステップ②:中盤(ヒアリング)
商談の成功を左右する最も重要なパートが、ヒアリングです。
ここでの目的は、単に相手の要望を聞くことではなく、相手自身もまだ明確に言語化できていないような、潜在的な課題やニーズを引き出すことです。
そのために有効なのが、「SPIN話法」というフレームワークです。
まず、Situation(状況質問)で相手の現状を把握し、次にProblem(問題質問)で具体的な課題や不満を引き出します。
さらに、Implication(示唆質問)でその問題がもたらす深刻な影響(コスト増や機会損失など)を認識させ、最後にNeed-payoff(解決質問)で、その問題が解決されたらどのような理想の状態になるかを相手に語らせるのです。
このプロセスを通じて、顧客は自ら課題の重要性に気づき、解決策を求めるようになります。
ステップ③:中盤(プレゼンテーション)
ヒアリングで顧客の課題を深く、広く、正確に理解した後に、初めてプレゼンテーションの出番となります。
ここでの目的は、自社製品の機能を羅列することではなく、ヒアリングで明らかになった顧客の課題に対する最適な「解決策」として、自社の製品やサービスを提示することです。
プレゼンテーションは、必ずヒアリング内容と結びつけて展開しましょう。
例えば、「先ほどお伺いした〇〇という課題は、弊社のこの機能でこのように解決でき、結果として△△というメリットが生まれます」というストーリーで語るのです。
顧客の言葉を引用しながら話すことで、提案は「自分たちのためのオーダーメイドの解決策だ」と認識され、圧倒的な納得感を生み出します。
ステップ④:終盤(クロージング~ネクストステップ設定)
プレゼンテーションが終わり、質疑応答を通じて相手の理解が深まったら、商談の最終段階であるクロージングに入ります。
ここでの目的は、無理に契約を迫ることではなく、顧客が導入に向けて抱いている懸念点や不安を全て解消し、次の具体的なアクションを明確に合意することです。
「ここまでご説明した中で、何かご不明な点や、導入される上での懸念点はございますか?」と率直に問いかけ、相手の本音を引き出しましょう。
そして、全ての懸念が解消されたら、「それでは、次のステップとして、〇月〇日までに見積もりをお送りしますので、来週の△曜日に再度15分ほどお時間をいただき、内容のご説明をさせていただいてもよろしいでしょうか」と、具体的な日時とアクションをその場で確定させます。
商談後が重要!成功率をさらに高める2つのアクション
多くの営業担当者は、商談が終わるとそれで一区切りと考えてしまいがちですが、実は商談後の動き方次第で、成功率はさらに大きく変わります。
ここでは、トップセールスが必ず実践している、商談後の2つの重要なアクションをご紹介します。
①「30分以内」の御礼メールと議事録送付
商談が終わったら、可能な限り早く、理想は30分以内に御礼のメールを送りましょう。
相手の記憶が新しいうちに感謝を伝えることで、丁寧で仕事が早いという印象を与えることができます。
そして、そのメールには、単なるお礼だけでなく、その日の商談で決定した事項、顧客から出た重要な発言、そして合意した次のアクション(誰が、いつまでに、何をするか)を簡潔にまとめた議事録を記載することが極めて重要です。
これにより、双方の認識のズレを防ぎ、次のアクションへとスムーズに繋げることができます。
このスピード感と正確さが、競合他社との差別化に繋がるのです。
② 失注分析で「負け」を次に活かす
どれだけ優秀な営業担当者でも、全ての商談を成功させることはできません。
重要なのは、失注という「負け」から何を学ぶかです。
商談が失注に終わってしまった場合は、「お客様の気が変わったから」「価格が高かったから」といった曖-昧な理由で片付けるのではなく、「なぜ失注したのか」を客観的に分析する習慣をつけましょう。
失注の理由は、価格の問題なのか、機能が足りなかったのか、提案のタイミングが悪かったのか、それとも決裁者を攻略できなかったのか。
これらの失注理由をデータとして蓄積し、チーム全体で共有・分析することで、組織全体の営業戦略や提案内容を改善していくことができます。
一つ一つの「負け」を、未来の「勝ち」に変えるための貴重な学習機会と捉える文化が、組織の成功率を継続的に高めていくのです。
まとめ:BtoB商談の成功率とは「準備の質」と「顧客理解の深さ」の表れ
本記事では、BtoB商談の成功率を上げるための、準備から実践、そして商談後のアクションまでを網羅的に解説してきました。
商談の成功率を高めるためには、行き当たりばったりの感覚的な営業を卒業し、科学的なアプローチに基づいた「準備」「実践」「事後分析」のサイクルを組織的に回し続けることが不可欠です。
そして、様々なトーク術やフレームワーク以上に重要なのが、顧客のビジネスを自分ごととして深く理解し、「どうすればこの顧客の成功に貢献できるか」を真剣に考え抜く姿勢です。
この顧客への深い理解と貢献意識こそが、信頼関係を構築し、最終的に高い成功率となって表れるのです。
まずは次の1件の商談で、この記事の「準備編」で解説した顧客リサーチと仮説構築を徹底的に実践してみてください。
商談相手の反応が、今までとは全く違うことにきっと驚くはずです。