最終更新日: 2025.12.07

役員や経営層とのアポイント獲得は、法人営業において最も難易度が高く、同時に最も重要な課題です。受付でブロックされる、秘書に断られる、そもそも連絡先が分からないなど、数々の壁が存在します。本記事では、実践的なテクニックと成功事例をもとに、役員アポイントを確実に取得する方法を解説します。

なぜ役員アポイントが重要なのか

BtoB営業において、役員や経営層と直接会うことができれば、商談の成約確率は飛躍的に高まります。担当者レベルでの商談では「上司に確認します」という言葉を最後に、そのまま音信不通になるケースが後を絶ちません。決裁権を持つ役員に直接アプローチできれば、こうした無駄なプロセスを大幅に短縮できます。

決裁者に会えば商談スピードが加速する

通常の営業プロセスでは、担当者へのアプローチから始まり、訪問、提案、質疑応答、社内承認という複数のステップを経て、ようやく契約にたどり着きます。特に高額商品や戦略的な提案の場合、最終的には役員の承認が必要になるため、途中段階で却下されるリスクが常につきまといます。

役員に直接会えれば、この長いプロセスを一気に短縮できます。意思決定者本人と対話することで、企業の真のニーズや課題を直接ヒアリングでき、その場で判断を得られる可能性が高まります。時間的コストの削減だけでなく、精度の高い提案が可能になるのです。

役員との信頼関係が継続的なビジネスを生む

一度役員とのアポイントを取得し、良好な関係を築くことができれば、その後の展開も大きく変わります。役員レベルでの人脈は、単発の案件だけでなく、長期的な取引関係の構築につながります。経営層同士のネットワークを通じて、新たなビジネスチャンスが生まれることも珍しくありません。

また、役員が自社のサービスや商品に満足すれば、社内での展開もスムーズになります。トップダウンでの導入決定により、現場レベルでの抵抗も最小限に抑えられ、組織全体への浸透が加速します。

役員アポイントが取れない3つの理由

多くの営業担当者が役員アポイントの取得に苦戦しています。その背景には、構造的な壁が存在します。まずは失敗の原因を理解することから始めましょう。

受付や秘書による徹底的なブロック

大企業や中堅企業では、受付や秘書が営業電話を厳しくフィルタリングしています。代表番号に電話をかけても「社長はおりません」「担当者におつなぎします」と言われ、決して役員本人につないでもらえません。これは企業側の方針として、営業電話から経営層を守る仕組みが確立されているためです。

特に「社長お願いします」「役員の方とお話ししたいのですが」といった直接的なアプローチは、200%の確率で警戒され、すべての可能性を潰してしまいます。受付担当者は毎日のように営業電話を受けており、その手法には完全に慣れているのです。

企業規模のミスマッチ

自社と比較してターゲット企業の規模が大きすぎる場合、現場の営業担当者が役員とのアポイントを直接交渉するのは現実的ではありません。中小企業の営業担当者が、大手企業の役員に直接コンタクトを取ろうとしても、門前払いされるのが通常です。

また、提案する商品やサービスの決裁者が本当に役員なのかを確認する必要もあります。零細企業では社長が全ての決裁を行いますが、中小企業以上になると、サービスの種類によって決裁担当が異なります。IT関連は情報システム部長、人事関連は人事部長というように、役員ではなく部長クラスが決裁権を持つケースも多いのです。

アプローチ方法の根本的な誤り

知り合いを装って電話をかける、重要な連絡があると嘘をつくなど、小手先のテクニックに頼る営業担当者もいますが、これらの方法は普通にバレます。そして厳しくバッシングされ、二度とその企業にアプローチできなくなってしまいます。

役員は多忙であり、価値のない営業に時間を割く余裕はありません。単なる売り込みや、相手企業のメリットが不明確な提案は、最初から相手にされないのです。役員の関心を引くには、明確な価値提案と、相手企業への深い理解が不可欠です。

テレアポで役員アポイントを取る5つのテクニック

電話で役員アポイントを取得するには、受付突破と役員本人への効果的なアプローチという2つの関門をクリアする必要があります。ここでは実践的なテクニックを紹介します。

受付突破の心理戦術

受付を突破する最大のコツは「すでに取引がある感じ」を出すことです。丁寧すぎる挨拶は逆効果で、営業電話であることが即座にバレてしまいます。「いつもお世話になっております。○○会社の△△と申します。社長様いらっしゃいますか?」というように、既存取引先であるかのような態度で電話をかけるのです。

VIP客であるかのような雰囲気、担当者や役員と知り合いであるかのような態度が重要です。受付担当者が「この電話は取り次がなければならない」と判断せざるを得ない状況を作り出します。ただし、明確に嘘をつくのではなく、あくまで雰囲気やトーンでそう感じさせることがポイントです。

事前リサーチの徹底

役員と実際に話す機会を得られたとしても、準備不足では意味がありません。相手企業の事業内容、最近のプレスリリース、業界動向、競合他社の動きなど、可能な限りの情報を収集しておきます。役員のSNS発信や講演内容、インタビュー記事なども重要な情報源です。

このリサーチにより、役員が現在関心を持っているテーマや、企業が抱えている課題を推測できます。「貴社の最近の○○への取り組みを拝見しまして」「△△という課題について、お役に立てる可能性があると考えました」という具体的なアプローチが可能になります。

トークスクリプトの戦略的設計

役員向けのトークスクリプトは、一般的な営業トークとは異なる設計が必要です。商品やサービスの機能説明ではなく、相手企業の経営課題の解決という視点で組み立てます。「御社の○○という課題を解決する方法について、ぜひお時間をいただきたい」という切り口が効果的です。

また、「よろしければ」という弱気な表現ではなく、「ぜひ」という強い意志を示す言葉を使います。ただし、押し付けがましくならないよう、相手への敬意は忘れずに。15分程度の短時間でも構わないという選択肢を提示することで、ハードルを下げることも有効です。

最適なタイミングの選定

役員への架電は、タイミングが極めて重要です。月初や月末、決算期前などの繁忙期は避けるべきです。一般的に、火曜日から木曜日の午前10時から11時、または午後2時から3時が比較的つながりやすい時間帯とされています。

月曜日の朝は週の始まりで忙しく、金曜日の午後は週末モードになっているため、避けた方が無難です。また、業界特有の繁忙期や閑散期も考慮に入れます。小売業なら年末年始、製造業なら決算期など、業界ごとのサイクルを理解しておきましょう。

断られたときの切り返し話法

役員から断られることは当然あります。しかし、適切な切り返しトークを用意しておけば、チャンスを広げられます。「忙しい」と言われたら「承知いたしました。それでは、○月であればいかがでしょうか」と具体的な代替案を提示します。

「興味がない」と言われた場合は、「そうですか。では、○○という課題についてはいかがでしょうか」と別の切り口を試みます。重要なのは、相手の意見を否定せず、まずは肯定から入ることです。「おっしゃる通りですね」「ごもっともです」と受け入れた上で、新しい提案をします。

メールで役員アポイントを獲得する戦略

メールでのアプローチは、電話に比べて相手の負担が少なく、じっくりと内容を検討してもらえる利点があります。ただし、多くのメールに埋もれてしまうリスクもあるため、工夫が必要です。

開封される件名の作り方

役員のメールボックスには、毎日膨大な数のメールが届きます。その中で開封してもらうには、件名が決定的に重要です。「アポイントのお願い」という抽象的な件名は、即座に削除される可能性が高いでしょう。

効果的な件名は、具体的かつ相手のメリットが明確なものです。「○○のコスト削減に関するご提案」「△△業界の最新動向についてご相談」など、受け取る側が「読む価値がある」と判断できる内容にします。ただし、長すぎる件名も読まれないため、25文字以内を目安にします。

冒頭で課題提起と解決策を提示

経営者や役員は、商品やサービスの機能そのものには興味がありません。つらつらと機能説明が書かれたメールは、押し売りのような印象を与え、アポイントにつながりません。メールの冒頭部分、つまり開封してすぐに見える部分に、課題提起と解決策を盛り込むのです。

「貴社では○○という課題を感じていらっしゃいませんか」「その課題を当社のソリューションで解決できる可能性があります」という形で、このメールが相手にとって有益であることを明確に伝えます。相手の課題を的確に指摘できれば、「この営業担当者は理解している」という信頼につながります。

行動を促す明確な誘導

メール営業でよくある失敗が、「どこに返信すればよいか書いていない」というケースです。メールへの返信方法や問い合わせフォームへの誘導が明記されていなければ、役員はアクションをやめてメールを閉じてしまいます。

「ご興味をお持ちいただけましたら、このメールに直接ご返信ください」「こちらのフォームからご都合の良い日時をお知らせください」と、具体的な次のアクションを示します。また、こちらから候補日時を複数提示し、相手が選びやすい形にすることも効果的です。

パーソナライズの徹底

一斉送信のような定型文は、役員の目には留まりません。相手企業名、役員の名前、最近の企業活動への言及など、その企業にしか送れない内容を盛り込むことで、「自分宛てのメッセージ」と認識してもらえます。

調査によれば、企業ごとにパーソナライズした営業文では、クリック率が従来の約3倍に向上するというデータもあります。ChatGPTなどのAIツールを活用すれば、効率的にパーソナライズされた文章を作成できます。ただし、AIが生成した文章はそのまま使わず、必ず人間がチェックして調整しましょう。

自社の上位職者を巻き込む高度な戦術

現場の営業担当者が単独で大手企業の役員にアプローチするのは、現実的に難しい場合があります。そこで有効なのが、自社の上位職者を巻き込む戦術です。

部長や役員の名前を活用する

特に相手企業が大手である場合、自社の部長クラスや取締役クラスの名前を利用してアポイント申し込みを行います。「弊社取締役の○○より、ぜひ貴社の△△様とお話しさせていただきたいとのことで」という形でアプローチすれば、相手企業も同じレベルの役職者で対応しようという心理が働きます。

これは「ミラーリング効果」と呼ばれる心理現象で、人は同じレベルの相手と話したいという傾向があります。平社員からのアプローチには受付が対応しますが、役員からのアプローチには役員が対応するという組織の論理を活用するのです。

トップ同士の面談設定

さらに進んだ戦術として、自社の社長や役員が直接アポイント取得の電話をかける体制を組む方法があります。「○○株式会社代表取締役の△△と申します。御社の□□社長様とお話しさせていただきたく」という形でのアプローチは、受付も無下に断りにくくなります。

この方法を実現するには、社内の協力体制が不可欠です。上司に対して「このターゲット企業は戦略的に重要であり、トップ同士の面談が最適です」というロジックで説得し、協力を取り付けます。上司自身の人脈拡大にもつながるため、Win-Winの関係を作れます。

業界団体や商工会議所の活用

自社の上位職者だけでなく、外部の第三者を巻き込む方法もあります。業界団体、商工会議所、経済団体などには多くの企業の役員が所属しており、定期的な会合や表彰式が開催されています。これらのイベントに参加すれば、役員と直接名刺交換できる機会が得られます。

通常、1万円程度の参加費を支払えば、所属していない企業でも参加可能です。表彰式後の懇親会では、役員と3分程度は話すことができます。ただし、役員は最初の30分程度で帰ってしまうことが多いため、出遅れないよう注意が必要です。

役員が必ず関心を持つ話題の見つけ方

役員と接点を持てても、単なる商品の売り込みでは興味を持ってもらえません。役員が真に関心を示すテーマを見つけ出し、それを軸に関係を構築していきます。

経営課題にフォーカスする

役員が日常的に考えているのは、売上拡大、コスト削減、人材育成、新規事業、競合対策など、経営レベルの課題です。自社の商品やサービスを、これらの経営課題と結びつけて提案することで、役員の興味を引くことができます。

「弊社のソリューションは、御社の○○という経営課題の解決に貢献できます」という切り口であれば、役員も耳を傾けます。そのためには、相手企業の中期経営計画、IR資料、経営者インタビューなどから、現在の経営課題を読み解く力が必要です。

業界動向や競合情報の提供

役員は常に業界全体の動きや競合他社の戦略に注目しています。自社が持つ業界レポート、市場調査データ、競合分析などの情報は、役員にとって価値があります。「○○業界の最新動向について、興味深いデータがありますので、ぜひ共有させてください」というアプローチは効果的です。

ただし、単なる情報提供だけでは一度きりの関係で終わってしまいます。情報提供をきっかけに信頼関係を築き、定期的なディスカッションの機会を設けることで、継続的な関係へと発展させます。

個人的な興味関心の把握

役員も一人の人間であり、ビジネス以外にも興味や関心があります。SNS、講演、著書、インタビュー記事などから、その役員が個人的に関心を持っているテーマを探ります。スポーツ、趣味、社会貢献活動など、共通の話題があれば、関係構築のきっかけになります。

ただし、ビジネスと無関係な雑談だけでは時間の無駄だと判断されます。個人的な興味から入り、自然にビジネスの話題へと移行する流れを作ることが重要です。信頼関係が構築されれば、その後のビジネス展開もスムーズになります。

役員との初回面談を成功させる準備

苦労して役員アポイントを取得しても、初回面談で失敗すれば次はありません。万全の準備をして臨みましょう。

15分で核心を伝える資料設計

役員は時間が限られているため、長々とした説明は嫌われます。15分で核心を伝えられる簡潔な資料を準備します。最初の3分で相手の課題を確認し、次の7分で解決策を提示し、残りの5分で次のアクションを決めるという時間配分が理想的です。

資料は多くても10ページ以内に収め、1ページ1メッセージを徹底します。詳細な機能説明は補足資料として別途用意し、必要に応じて提示できるようにしておきます。役員が知りたいのは「What(何を)」と「Why(なぜ)」であり、「How(どのように)」の詳細は後からでも構いません。

想定質問への回答準備

役員は鋭い質問を投げかけてきます。「この提案で具体的にどれだけのコスト削減が見込めるのか」「導入期間はどのくらいか」「競合他社との違いは何か」「既存のシステムとの互換性は」など、経営判断に必要な情報を端的に求めてきます。

これらの想定質問に対して、データと根拠を持って即答できるよう準備します。曖昧な回答や「後ほど確認します」という返答が続けば、信頼を失います。特に数値的な質問には、具体的な数字で答えられるようにしておきましょう。

次回アクションの明確化

初回面談の最後には、必ず次のアクションを決めます。「本日のお話を踏まえて、詳細な提案書を○日までに提出させていただきます」「次回は現場担当者の方も交えて、具体的な導入プランを協議させてください」など、具体的な次のステップを提案します。

役員は明確なアクションプランを好みます。曖昧な「また連絡します」では、そのまま立ち消えになる可能性が高いのです。その場で次回面談の日程調整まで行えれば理想的です。

営業代行サービスの戦略的活用

役員アポイントの取得は高度なスキルを要するため、自社だけで対応するのが難しい場合もあります。そんなときは、営業代行サービスの活用も選択肢の一つです。

役員アポイント特化型の代行会社

営業代行サービスの中には、決裁者アポイントの取得に特化した会社もあります。これらの会社は独自のネットワークや手法を持ち、通常では到達できない役員層へのアプローチが可能です。特に大手企業の役員や、特定業界のキーパーソンへのアクセスが強みです。

ただし、代行会社に丸投げするのではなく、自社の営業戦略と連携させることが重要です。アポイント取得後の商談は自社で対応する必要があるため、代行会社との綿密な情報共有が成功の鍵となります。

費用対効果の見極め

営業代行サービスは、一般的にアポイント1件あたり数万円から十数万円の費用がかかります。この費用を高いと感じるか安いと感じるかは、自社の商材や受注単価によります。受注単価が数百万円以上の商材であれば、十分に投資対効果が見込めます。

また、自社の営業リソースを商談やクロージングに集中させられるというメリットもあります。アポイント取得という最も難易度が高く時間のかかる部分を外部化し、自社は得意な部分に注力するという戦略的な役割分担です。

まとめ:役員アポイント成功への道筋

役員アポイントの取得は、法人営業において最も難易度が高い業務の一つですが、正しい戦略とテクニックを身につければ、確実に成功率を高められます。受付突破のテクニック、役員の関心を引く提案内容、自社上位職者の巻き込み、事前の徹底的なリサーチなど、複数の要素を組み合わせることが重要です。

テレアポでは「既存取引先のような態度」で自然にアプローチし、メールでは「課題解決」を前面に出した具体的な提案を行います。業界団体やイベントを活用して直接接点を持つ方法も効果的です。一度アポイントを取得できれば、15分で核心を伝える準備と、次回アクションの明確化により、継続的な関係へと発展させます。

自社だけでの対応が難しい場合は、営業代行サービスの活用も視野に入れましょう。重要なのは諦めないことです。役員に会う方法は必ず存在します。戦略的なアプローチを継続することで、必ず道は開けます。

ENICXO
メッセージアイコン オンリーストーリー代表 平野からのメッセージ
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