最終更新日: 2024.07.06

これから新規事業を立ち上げる状況で、「どのように進めればいいの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。新規事業の立ち上げは、プロセスが重要となります。

そこで本記事では、新規事業の立ち上げるプロセスを6ステップにわけわかりやすく解説します。役立つフレームワークや成功させるポイント、注意点も説明するため、新規事業の立ち上げを予定している方は、ぜひ参考にしてください。

新規事業の立ち上げに必要な要素

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新規事業を立ち上げるために最も重要な要素は、経営資源とプロセスの2つです。

経営資源とは、事業の継続に必要なヒト・モノ・カネ・情報です。一方、プロセスとは、どのように立ち上げを進めていくのかといった順序や戦略のことです。そのため、これから新規事業の立ち上げを行う場合には、適切なプロセスを理解しておく必要があります。

新規事業を立ち上げるプロセスとフレームワーク

新規事業を立ち上げる主なプロセスは、以下の通りです。

  1. 専任の担当者の決定
  2. 事業ドメインの決定
  3. ビジョンの明確化
  4. 市場調査・競合調査の実施
  5. 製品・サービス作りの環境整備
  6. 行動計画の立案

プロセスと、各プロセスに役立つフレームワークを紹介します。

1.専任の担当者の決定

新規事業の立ち上げにおける最初のステップは、中心となる担当者の選定です。担当者は、事業の立ち上げと推進を牽引し、方向性を定める重要な役割を果たします。

担当者を選ぶ方法の1つに、コンテスト形式でアイデアを募集し、優れた提案を行った者を担当者に選ぶ方法が挙げられます。多くの斬新なアイデアを集められる点や、熱意を持った発案者を中心人物として選出できる点がメリットです。

経営者が事業開発の初期段階から十分に関与していないと、意思決定が遅くなります。そのため、新規事業の担当部署は経営層の近くに置き、経営者が直接プロジェクトの進捗を確認できるようにしましょう。

2.事業ドメインの決定

事業ドメインは、企業が事業活動を行う領域のことです。「誰に、何を、どのように提供するのか」を明示します。新規事業に踏み出す際には、企業が進出する市場や、今後の開発方針、利用できる技術やリソース、目標とする顧客層などを定義しましょう。

事業ドメインを決めると、やるべきこととやらないことが明確になります。すると「やらないこと」に分類される部分に経営資源を投入してしまっている、または「やるべきこと」に対して経営資源が足りていないなどの問題が浮き彫りになり、限られた資源を最適に分配できます。

ここでは、事業ドメインを決める際に役立つフレームワークを2つ紹介します。

  • CTF分析
  • SWOT分析

CTF分析

CTF分析とは、自社の強みを分析するフレームワークです。Customer(顧客)、技術(Technology)、機能(Function)の3つの軸の頭文字を取って、CTFと呼ばれています。3つの軸から自社の商品・サービスについて分析することにより、これまで気づかなかった自社の強みを発見できます。

3つの軸概要
Customer(顧客)自社の商品・サービスにふさわしい顧客はどのような顧客か明確にする。具体的には、居住地や年齢、性別、家族構成などの属性を分析する
技術(Technology)自社の商品・サービスの技術の中で、競合他社よりも優れている機能を明確にする
機能(Function)自社の商品・サービスが顧客に提供できる機能・価値を明確にする

SWOT分析

SWOT分析は、自社を取り巻く外部環境と内部環境を分析するフレームワークです。内部環境をStrength(強み)とWeakness(弱み)、外部環境をOpportunity(機会)、Threat(脅威)に分類することにより、経営財源をどう活用するかの判断材料とします。

分類概要
Strength(強み)内部環境のプラス要素で、自社の強みを明確にする。具体的には、技術力や企画力、販売力、ブランド力などの要素を分析する
Weakness(弱み)内部環境のマイナス要素で、競合他社に勝つために克服しなければならない弱みを明確にする
Opportunity(機会)外部環境のプラス要素で、マクロ環境とミクロ環境の変化で自社にプラスに影響する要素を明確にする
Threat(脅威)外部環境のマイナス要素で、自社に影響する要素を明確にする

3.ビジョンの明確化

ビジョンは、事業の「なぜ、どうして、何のために」を明らかにしたものです。新規事業の成功には、メンバー全員が共通の認識を持ち、同じ方向を目指す必要があります。ビジョンを設定することにより、メンバー全員で認識を共有できます。

ビジョンを明確にしていない場合、その時々によって異なる判断をしてしまい、一貫性がなくなります。そのため、新規事業を立ち上げる際にはできるだけ早く明確にしましょう。

4.市場調査・競合調査の実施

市場調査・競合調査を実施して、ニーズや潜在的な障害を明らかにする段階です。具体的には、インタビューやアンケート、街頭調査などの手法を活用し、多様なデータを収集します。

ここでは、市場調査・競合調査で役立つフレームワークを2つ紹介します。

  • STP分析
  • 3C分析

STP分析

STP分析は、自社の市場における立ち位置を明確にするフレームワークです。Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの工程から分析します。これらの工程の頭文字を取って、STP分析と呼ばれています。

順番工程概要
1セグメンテーション市場を基準によって市場をいくつかのグループに分ける。具体的には地理(国や地域など)や属性(年齢や性別など)、心理(価値観や嗜好など)、行動(利用頻度、利用タイミングなど)で分類する
2ターゲティンググループ分けした市場の中から自社が狙う市場を決める。それぞれのグループの特徴と自社の商品・サービスの特徴や価値を照らし合わせて決定する
3ポジショニング市場における自社の商品・サービスの立ち位置を決める

3C分析

3C分析は、企業を取り巻く環境を明らかにするためのフレームワークです。Company(企業)、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)の3つの観点から分析するので、頭文字を取って3C分析と呼ばれています。

観点概要
Company(企業)自社の強みや弱み、資本などを分析する
Customer(顧客・市場)顧客のニーズや市場規模、市場の成長性などを分析する
Competitor(競合)競合の強みや弱みなどを分析する

5.製品・サービス作りの環境整備

新規事業の立ち上げには、ヒトやモノ、カネ、情報という経営資源が必要であることを前述しましたが、どれか1つでも欠けると立ち上げは難しいです。そのため、この段階では不足している経営資源を揃える必要があります。例えば、カネが不足していれば資金調達を行い、ヒトや情報、モノが不足している場合には外部人材の活用などで補います。

6.行動計画の立案

事業ドメインやビジョンを明確に決め、市場調査・競合調査を行ったら、具体的な行動計画を立案します。どのタイミングで、何が、どのくらい必要なのかを明らかにしましょう。想定より進行が遅れる可能性があるため、スケジュールに余裕を持たせておく必要があります。

ここでは、行動計画の立案に役立つフレームワークを2つ紹介します。

  • CVCA
  • バリューチェーン分析

CVCA

CVCAは、顧客や仕入れ先などステークホルダーを洗い出し、関係性を明らかにするためのフレームワークです。Customer Value Chain Analysis(顧客価値連鎖分析)の頭文字を取っています。

CVCAを構成する主な要素は、関連企業などの「関与者」、それらの「関係性」、それぞれが感じている「ニーズ」の3つです。関係性を矢印で表し、ニーズを吹き出しで記すことによって、関係性を一目で判断できます。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、企業が価値を創出するための内部の活動を理解するフレームワークです。主要活動とサポート活動の2つの要素で構成されており、それぞれの工程ごとに分析すると経営資源を再分配できたり、他者との差別化を図れたりします。

バリューチェーン分析は以下の流れで実施します。

  1. 自社のバリューチェーンの洗い出し
  2. 工程ごとのコストの把握
  3. 強みと弱みの分析
  4. VRIO分析の実施

新規事業の立ち上げを成功させるポイント

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ここでは、新規事業の立ち上げを成功させる以下のポイントを紹介します。

  • 補助金や助成金を活用する
  • アサインする人材は必要最低限に留める
  • 他社の成功事例の真似をする
  • 外部人材を効果的に活用する

補助金や助成金を活用する

新規事業の立ち上げで資金不足の場合、補助金や助成金の活用がおすすめです。融資のように返済する必要はなく、初期費用や運転資金を確保する助けとなります。

しかし、受給するには審査があり、入金までに時間がかかります。申込条件を満たしていない場合や審査に落ちた場合には、融資を検討するとよいでしょう。

新規事業の立ち上げ時に活用できる補助金や助成金には、以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

アサインする人材は必要最低限に留める

「新規事業の立ち上げの初期段階で多くの人材をアサインする方がいいのでは?」と考える人もいるでしょう。多くのメンバーがいれば多くのタスクを同時に進められる可能性はありますが、人数が増えるほどチーム内でのコミュニケーションが増加し、コミュニケーションの速度や質が低下するリスクが高まります。

特に新規事業の立ち上げの初期段階では、方向性をスピーディーに確立し、戦略を柔軟に変えねばならない場面が多いです。そのため、コミュニケーションが密で迅速な少数精鋭のチーム編成が求められます。一般的には、2〜3人のチームが理想だと言われています。

他社の成功事例の真似をする

新しい事業アイデアを完全にゼロから考えることは、容易ではありません。他社の成功事例から成功の要因を分析し、自社の事業に応用すると効率的にアイデアを導き出せます。

実際、多くの業界で他社の成功事例を参考にして、新規事業の方向性を模索する企業は少なくありません。大手企業でさえ、競合の成功した施策を参考にし、自社の事業戦略に取り入れています。

しかし、そのまま施策を真似するのではなく、自社の強みや独自性を活かすことが重要です。他社の成功事例に自社のオリジナル要素を加えると、成功の確率を一層高められるでしょう。

外部人材を効果的に活用する

新規事業の立ち上げ時に人や情報のリソースが不足している場合、外部人材の活用がおすすめです。

外部のプロフェッショナルな人材には、自社内にはないスキルや経験があります。こうした人材を活用することにより、高度なスキルや知識を事業に取り入れられます。また、新規事業は予測が難しく、安定した収益を見込むのは難しいことがあるでしょう。外部人材であれば必要な期間のみ契約できるため、固定コストを抑えられます。

新規事業を立ち上げる際には撤退ラインを決めておこう

新規事業を立ち上げる際に、あらかじめ撤退ラインを決めておくことは非常に重要です。主な理由には、以下のようなものがあります。

  • 失敗した場合のリスクを軽減できる
  • リソースを有効に活用できる
  • ステークホルダーの信頼を獲得できる
  • 経営陣の判断がバラバラになりにくい

新規事業は成功する可能性とともに、失敗するリスクもあります。撤退ラインを決めておくことにより、最大でどれだけの損失を許容するのかを明確にできるため、失敗した場合のリスクを軽減することが可能です。

また、撤退ラインを超えるようなリスクを伴う投資を避けられるため、そのリソースを他の事業に活用できます。その他にも、自社の経営判断に透明性があると判断したステークホルダーから信頼を得たり、事業の状況が厳しくなった際に撤退の判断を素早くできたり、多くのメリットがあります。

新規事業に関するよくある質問

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ここでは、新規事業に関するよくある質問を紹介します。

Q.新規事業の立ち上げには何年かかる?

A.新規事業を立ち上げて利益が出るまでには、3〜5年程度かかると言われています。投資資金を回収するには、5〜10年ほどかかることが多いです。

Q.新規事業が思いつかない場合にはどうしたら良い?

A.新規事業が思いつかない場合の対処法には、以下のものが挙げられます。

  • 他社の成功事例を参考
  • 既存事業の長所と短所の分析
  • 競合の強みと弱みの分析

新規事業をゼロから考えることは容易ではないため、他社の成功事例を参考にして考えることがおすすめです。また、既存事業の長所と短所を分析し、競合の強みや弱みを分析する過程で、新しいアイデアが思い浮かぶこともあります。

アポイントの獲得が必要なら外部人材の活用も検討しよう

新規事業の立ち上げには、ヒト・モノ・カネ・情報が揃っていることに加えて、プロセスも重要です。立ち上げを成功させるために、プロセスを理解しておきましょう。

  1. 専任の担当者の決定
  2. 事業ドメインの決定
  3. ビジョンの明確化
  4. 市場調査・競合調査の実施
  5. 製品・サービス作りの環境整備
  6. 行動計画の立案

新規事業の立ち上げは数ヶ月程度で終わるものではなく、黒字化するまでに3〜5年程度かかることが多いです。

また、本記事では、新規事業を成功させるポイントとして以下のポイントを紹介しました。

  • 補助金や助成金を活用する
  • アサインする人材は必要最低限に留める
  • 他社の成功事例の真似をする
  • 外部人材を効果的に活用する

補助金や助成金は、申込資格を満たしていない場合や審査に落ちると活用できません。そのような場合には、融資を検討しましょう。

また、アサインする人材は必要最低限に留めることも重要です。人数が増えれば同時にこなせるタスクは増えますが、コミュニケーションの速度が落ちる可能性があり、スピーディーな方向性の確立が求められる初期段階では障害となる可能性があります。

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