最終更新日: 2023.09.22

顧客との商談を成約させるためには、決裁者とのアポイントを獲得することが近道です。企業で新たな商品やサービスを取り入れるには、決裁者による判断が必要だからです。営業先の担当者に決裁権がない場合、なかなか成約に結びつかないこともあります。

決裁者とのアポイントが獲得できない、あるいは商談相手の誰に決裁権があるのかわからない、という悩みを抱えている営業担当者は多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、決裁者とのアポイントを獲得する方法や商談中の決裁者の見極め方など、商談を成約に導くために重要なポイントを解説します。

決裁者とは

決裁者とは、商品やサービスの購入などの意思決定を行う担当者を指します。決裁者が商品またはサービスを導入するプロセスの決裁権を持ち、決裁に対する責任を負います。それぞれの企業で決裁者は異なり、一般的には課長・部長以上の役職に就いている人が決裁者であることが多いです。

また、申請や稟議の内容、重要性によっても決裁者が異なってきます。たとえば、経営方針に関する立案は取締役会、採用稟議の場合は人事部長など、決裁する内容に合わせてさまざまな役職の担当者が決裁者になります。

決裁と稟議・承認との違い

決裁と似たプロセスに、稟議と承認があります。この項目では、稟議と承認のそれぞれの意味と決裁との違いを紹介します。

稟議

稟議とは、決裁や承認を得るための手段のことで、意思決定の一連の手続きを指します。自身の権限だけでは決定できない事案において、作成した文書を関係者に回し承認や決裁を進めます。

決裁は1人で判断するのに対し、稟議は複数の役職者が回覧した後に判断するため、稟議を必要とする決裁は通常の決裁よりも時間がかかることがあります。

承認

承認とは、意思決定の最終工程である決裁の前段階にあたり、提案に同意することを指します。申請・稟議を承認し決裁に至るのが通常の流れです。具体的には、営業先の担当者が提案を受け入れ、直属の上司に相談し承認を得たあと、最後に決裁者が提案を判断します。

提案した内容が決裁されるまで複数人による承認が必要なこともあります。企業によっては承認と決裁を区別せず扱っている場合もあり、決裁までのプロセスはそれぞれ異なります。

決裁者との商談が成約に結びつきやすい理由

営業において決裁者が重要な理由は以下の2点です。

  • 魅力を直接伝えられる
  • 成約までワンストップで進められる

それぞれの理由について解説します。

魅力を直接伝えられる

決裁者と商談することにより、決定権のある人に自社サービスの魅力を直接伝えられます。決裁者との商談ではない場合、具体的に説明した提案内容は、担当者を介して決裁者に伝わります。

そのため、せっかく説明した内容がうまく伝わらず、成約に結びつかないことも少なくありません。決裁者と直接商談し、商品やサービスの詳細や導入するメリットを伝えることで、成約率の向上が見込めます。

成約までワンストップで進められる

決裁者に商談の場で決裁されれば、成約までスピーディーに進められます。ほかの担当者を介さないため、契約までの工程が短くスムーズです。担当者にアプローチする回数も少なく済むため、プレゼンや資料作成の工数も削減できます。

決裁権のない担当者に提案をした場合、事業部決裁や役員決裁、社長決裁などに至るまでの社内稟議を通過しなければなりません。

その点を考慮すると、決裁者との商談は成約に直結する有効な手段だといえます。

決裁者とのアポイントを獲得する方法

顧客獲得のためには、通常、自社の営業担当者によるテレアポやメール営業などを実施します。しかし、通常の方法では決裁者に直接アポを取ることが難しく、成功率も低い傾向があります。

決裁者とのアポイント獲得を狙う場合、次の3つの方法がおすすめです。

  • 問合せフォーム営業の実施
  • 営業代行の活用
  • 決裁者マッチングサービスの活用

それぞれについて解説します。

問合せフォーム営業の実施

問合せフォーム営業とは、企業のホームページに設置されている問合せフォームから商品やサービスを提案するメッセージを送る営業手法です。メール営業と異なり、営業先のメールアドレスを知らなくても営業をかけることができます。

問合せフォームから届いたメッセージは決裁者に届く可能性が高いので、決裁者とのアポイントの獲得に有効とされています。特に中小企業では、問合せフォームに届くメッセージを決裁者が確認していることも多いため、決裁者とのアポイント獲得に効果的な手段です。

営業代行を活用する

営業代行とは、企業の営業活動を代わりに行うサービスです。訪問販売やテレアポ、DM作成、マーケティング調査、コンサルティングなど多岐にわたるサービスを提供します。依頼する企業のニーズに合わせ、部分的な業務の依頼も、アポイント獲得から成約まで一括しての依頼も可能です。

営業代行会社を利用することによって、即戦力となる人材をすぐに確保できることに加え、自社の営業スタッフを教育するための時間や手間を削減できます。

また、営業代行会社の中には、決裁者とのアポ獲得を得意としているところがあります。高いスキルと独自のルートを持つ営業代行会社を選べば、自社の営業担当者では難しい決裁者とのアポイントを、高い確度で獲得できるようになるでしょう。

決裁者マッチングサービスを活用する

決裁者マッチングサービスとは、企業と決裁者をつなぐサービスです。決裁者マッチングサービスに登録すると、自社商材の成約が見込めそうな決裁者に直接アプローチできます。アプローチが承認されると決裁者と面談・商談できます。

通常、法人営業をする企業が成約に至るまでのプロセスは、問合せや担当者との面談・商談、プレゼンなど多岐に渡ります。それらのプロセスを飛ばし、決裁者との商談までつなげてくれます。

決裁者マッチングサービスの利用によって決裁者を探す手間が省け、自社サービスの商談や契約をスムーズに進められるため、業務の効率化にもつながります。

決裁者がわからない場合に確認するポイント

この項目では、営業先の決裁者がわからない場合に確認するポイントを解説します。ポイントは以下の2点です。

  • 企業の規模
  • 商談中の会話

企業の規模

企業の規模や従業員数から、決裁者の数や役職を把握できます。従業員数が多い企業の場合、各部署ごとに複数の決裁者がいると考えられます。一方、従業員数が少ない企業には決裁者が1人、または数名であることも少なくありません。

たとえば、従業員数が200名を超える企業の場合、部長や役員を決裁者とすることが多いです。担当者に決裁権はないため、決裁者に提案内容を伝えてもらうか、決裁者との商談をセッティングしてもらう必要があります。

従業員数が200名以下の企業の場合は、社長が決裁者であることも考えられます。規模が大きくない企業なら社長とのアポイントを獲得できる可能性は比較的高いため、まずは問合せフォーム営業などを行い、決裁者とのアポイント獲得を目指すと良いでしょう。

商談中の会話

商談の会話の中から、誰が決裁者なのかを探れます。ただし、決裁権が誰にあるのか直接尋ねるのは失礼にあたるため、注意が必要です。営業先の担当者に決裁権がない場合、不快に思われ、決裁者につなげてもらえなくなる可能性もあります。

商談中の会話で決裁者を自然と探るためには、ある程度商談が進んだ段階で、業務のプロセスを聞いたり、商品の決済方法を確認したりします。具体的な尋ね方については、次の項目で解説します。

商談中に決裁者を探る会話の例

前述した通り、決裁権が誰にあるのかを確認する際の尋ね方には注意が必要です。この項目では、商談中に決裁者を探る会話の例をケース別に紹介します。

初めての商談の場合

営業先の担当者と初めての商談の際には、次のような会話から決裁者が誰かを引き出します。

「このあと、どのような流れで進めていかれますか?」
「サービスを導入する場合の最終的な決定は、どのような流れになりますか?」
「今後はどのようなプロセスで進めていかれますか?」

これらの質問に対して相手から次のような回答があった場合、自然と担当者が誰かを把握できます。

「私の判断になります」
「部長の方に提案して決裁を仰ぎます」
「一度、上の者に相談してからトップに上げることになります」

話の流れで聞きにくい場合は「弊社では、こうした案件の決裁は一度上に通す必要があるのですが…」というように、自社の例を用いて尋ねると強引な印象にはなりません

既存の取引先の場合

これまで、取引したことがある営業先の担当者の場合、次のように尋ねます。

「今回も前回と同じように(担当者名)様が決裁されますか?」
「確か、以前は〇〇部長に決裁していただきましたので、今回も同様でしょうか?」

このように、今後の流れを確認するという意味合いで質問をすることにより、自然と決裁者が誰かという話題になるはずです。もし前回と決裁者が異なれば、担当者からその情報が伝えられるでしょう。

提案を決裁者に通してもらうためのポイント

商談を成約させるには、決裁者に自社の提案を確実に届けることが重要です。この項目では、提案を決裁者に通してもらうためのポイントを紹介します。

  • 担当者にメリットが伝わる提案をする
  • 営業資料を準備する

担当者にメリットが伝わる提案をする

営業活動では決裁者と商談することが理想ですが、決裁者に直接アプローチできないこともあります。

提案を確実に決裁者に通してもらうためには、先方の担当者に自社の商品やサービスのメリットを感じてもらえる提案をすることが重要です。メリットが伝わらなければ、時間や労力をかけて上司や決裁者へ提案を行ってもらえません。

自社の商品やサービスは先方にとってどのようなメリットがあるのか、事前に整理しておきましょう。また、営業先の企業と同業種の過去の実績などを用いたり、業務負担が軽減されるようなサービスを提案したりするなど、わかりやすくメリットを伝える工夫も必要です。

営業資料を準備する

提案した内容を担当者から決裁者へと確実に伝えてもらうには、わかりやすい資料が必要です。担当者が魅力的に感じた提案でも、具体的に内容を示す資料がなければ担当者から決裁者に説明することが難しいでしょう。そのため、自社を紹介する会社案内や自社の商品やサービスを紹介するパンフレット、顧客に商品やサービスを魅力的に伝える提案資料などを、営業資料として用意します。

提案資料は、商品やサービスの導入後をイメージできるよう、顧客のニーズを捉えたメリットを伝えると共に、リスクやデメリットについても記載します。

資料の読みやすさも重要な要素です。忙しい決裁者が短時間で資料内容を把握できるよう、ストーリー設計を考え、1スライド1メッセージにするなどの工夫をします。ビジュアルをメインにして数字で実績を入れ、フォントや文字の大きさにも注意しましょう。

決裁者を見極め効率的に提案をしよう

営業活動は、決裁者に直接アプローチできると成約までのプロセスが短くなります。また、商談の確度も高くなるでしょう。しかし、営業先の担当者が決裁者とは限らないため、企業の規模や組織の構成、商談中の会話などから誰が決裁者かを見極めることが重要です。

提案を決裁者まで届けてもらうためには、担当者に自社の商品やサービスの魅力をしっかり理解してもらう必要があります。相手にとってのメリットを明確に説明できるように、事前に営業資料を準備しましょう。

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