BtoB企業のPR戦略は、単なる認知拡大だけでなく、信頼構築・採用強化・営業支援など多面的な価値を生み出します。本記事では、効果的なPR戦略の設計から具体的施策、成功事例まで、実践に役立つノウハウを体系的に解説します。

BtoB企業におけるPR戦略の重要性
BtoB企業のPR戦略は、企業の持続的成長に不可欠な経営機能です。従来「特定市場に理解されればよい」と考えられてきたBtoB広報ですが、実際には営業効率の向上、優秀な人材の獲得、社員のモチベーション向上など、事業成長に直結する重要な役割を担っています。
BtoCとは異なるBtoBのPR特性
BtoB企業のPR戦略には、BtoC企業とは明確に異なる特性があります。
まず、ターゲットが限定された業種・職種に絞られる点です。マーケティング担当者、エンジニア、経営者など、情報を届けたい相手が明確に定義されています。
また、商材の単価が高額で、受注までに複数の意思決定者が関与します。このため、製品の機能や価格といった直接的価値だけでなく、企業の信頼性やビジョンといった間接的価値が購買判断に大きく影響します。
さらに、検討期間が長期化する傾向があり、即座の問い合わせ増加ではなく、中長期的な関係構築が求められます。営業プロセス全体を通じて、PR活動が商談のスムーズな進行や受注率向上に貢献する仕組みが重要です。
PR活動がもたらす5つの効果
BtoB企業がPR戦略に取り組むことで、以下の5つの効果が期待できます。
第一に、営業活動の効率化です。メディア露出により企業や製品の認知が高まることで、商談時のゼロからの説明が不要になり、信頼感を持った状態で商談をスタートできます。
業界紙やビジネスメディアでの記事掲載は、営業資料以上の説得力を持ち、提案書と併せて活用することで受注率が大幅に向上します。
第二に、採用力の強化です。企業文化や経営者の理念が発信されることで、価値観に共感する優秀な人材が集まりやすくなります。特に、働き方や社会課題への取り組みを発信することで、採用ブランディングに大きく貢献します。
第三に、ブランド価値の向上です。専門メディアでの継続的な露出により、業界内での存在感が高まり、「○○といえば△△社」という認知を獲得できます。
第四に、社内エンゲージメントの向上です。自社のメディア掲載は従業員の誇りとなり、モチベーション向上につながります。
第五に、競合との差別化です。類似サービスが多い市場において、企業の理念やストーリーを発信することで、機能比較だけでは表現できない独自性を訴求できます。
効果的なBtoB PR戦略の設計方法
成果を生み出すPR戦略には、明確な設計プロセスが必要です。目的を見失わず、社内の協力を得ながら進めることが成功の鍵となります。
ターゲットとメッセージの明確化
PR戦略の第一歩は、「誰に」「何を」伝えるかを明確にすることです。
BtoB企業のターゲットは細分化されています。マーケティング担当者、セールス担当者、エンジニア、人事担当者、経営者など、それぞれが求める情報は異なります。
媒体の読者をしっかり把握し、その奥にいる最終的な情報受取者に刺さる内容を設計する必要があります。
PRメッセージの作成では、「誰に何をしてもらいたいか」という目的を明確にすることが重要です。ブランディング、サービス利用企業の増加、企業認知度の向上、信用力の向上、人材獲得など、目的によってメッセージの内容は変わります。
特にBtoB企業では、自社の強みを一言で表現することが難しいケースが多いため、「経営者の思いや理念」を軸にメッセージを構築することが効果的です。
経営者個人の理念は伝えやすく、企業全体を理解してもらう入口として機能します。
カスタマージャーニーに基づく戦略立案
BtoB企業のPR戦略は、営業リードの創出だけを目的にすると失敗します。
なぜなら、PR活動は時間がかかる割に、直接的なリード増加は限定的だからです。重要なのは、カスタマージャーニー全体を見渡し、各フェーズの課題をPRで解決することです。
例えば、認知フェーズでは業界紙やビジネスメディアでの露出により存在を知ってもらい、検討フェーズでは導入事例や専門家インタビューで信頼を獲得します。
商談フェーズでは、メディア掲載記事が営業資料を補完し、説得力を高めます。決裁フェーズでは、経営者インタビューや企業紹介記事が最終判断の後押しとなります。
このように、PR活動を営業プロセス全体に組み込むことで、商談のスムーズな進行、競争率・受注率の向上、長期継続契約の実現につながります。
カスタマージャーニーマップを作成し、各タッチポイントでどのようなPR施策が効果的かを設計することが重要です。
社内連携体制の構築
PR戦略を成功させるには、社内の協力体制が不可欠です。
広報担当者は、経営層、営業、マーケティング、開発、カスタマーサポートなど、すべての組織と連携できる特殊なポジションです。
部門横断の合言葉を作ることが効果的です。「会社のここを売りにしたい」という共通認識を、営業部門、マーケティング、広報、宣伝で共有します。
例えば、「市場創造」「働き方改革」など、目的と意図を明確に伝えることで、部署を横断した理解が得やすくなります。
PR戦略を広報が単独で決めるのではなく、カスタマージャーニーマップを基に社内で一丸となった戦略を進めることで、成果が見えにくい広報活動においても社内の信用を獲得できます。
特に営業戦略との深い連携が重要です。BtoCの製品サービス広報が販売促進と一体となって進むのに対し、BtoB広報は営業戦略と連携することで、事業成長を後押しする重要なマーケティング活動となります。
BtoB企業が実践すべき具体的なPR施策
効果的なPR戦略を実現するには、具体的な施策の実行が不可欠です。メディアリレーション、人物PR、イベント活用など、BtoB企業に適した手法を組み合わせることが重要です。
メディアリレーションの構築
BtoB企業のメディアリレーションでは、専門性と継続性が鍵となります。
まず、ターゲットに合った媒体選定が重要です。業界専門誌、ビジネスメディア、テクノロジーメディアなど、読者層を明確に把握し、自社のメッセージが届く媒体を選びます。
プレスリリースは、読者起点で準備することが大切です。記者や編集者だけでなく、その先にいる最終読者に価値がある情報かを常に意識します。
媒体の特集企画を予測することも効果的です。「速報」「詳報」「深堀り」の3つのパターンで記事化のタイミングを見極め、適切な情報提供を行います。
企画提案には4つの要素が必要です。ニュース性(今なぜこの情報が必要か)、社会性(読者にどんな価値があるか)、独自性(他社との違いは何か)、信頼性(裏付けるデータや実績はあるか)です。
最初のゴールは「記者にファンになってもらう」という視点も有効です。継続的な関係構築を通じて、記者が自社を想起してくれる状態を目指します。
人物を立てたPR展開
BtoB企業のPR戦略において、「人物を立てたPR」は非常に効果的な手法です。
経営者や社員を広告塔として活用することで、企業全体を理解してもらうハードルを下げられます。
経営者インタビューでは、理念やビジョン、社会課題への考え方を発信します。「働き方改革」「子育て支援」など、社会的時流と絡めることで、ビジネスメディア以外への露出も獲得できます。
社員インタビューでは、多様な働き方や専門性をアピールできます。副業している女性社員をフックにビューティー系媒体への掲載を獲得するなど、意外な媒体へのアプローチも可能になります。
人物プロフィールの整備は、BtoB企業こそ取り組むべきPR素材です。経営者や各部門のキーパーソンのプロフィールを準備しておくことで、メディアからの取材依頼に迅速に対応できます。
専門家としてのポジショニングも重要です。業界の第一人者としてコメントを求められる存在になることで、継続的なメディア露出が実現します。
イベント・セミナーの活用
イベントやセミナーは、BtoB企業のPR戦略において多面的な効果を生み出します。
大規模カンファレンスの開催は、企業のプレゼンス向上に直結します。「Cybozu Days」や「Sansan Innovation Project」のような定期イベントは、顧客との接点創出だけでなく、メディア露出の機会としても機能します。
イベント内のセッションをメディアに取材してもらい記事化することで、一度のイベントから複数の露出を獲得できます。
ウェビナーやオンラインセミナーは、コストを抑えながら広範囲にリーチできる手法です。録画コンテンツとしてオウンドメディアで公開することで、継続的な価値提供が可能になります。
業界団体との共催イベントは、信頼性を高める効果があります。協会や学会と連携することで、専門性や権威性を訴求できます。
展示会出展も重要な接点です。ブース展示だけでなく、講演枠を獲得することで専門家としての認知を高められます。
展示会での発表内容をプレスリリース化し、メディアへの情報提供につなげることも効果的です。
オウンドメディアとSNS運用
オウンドメディアとSNSは、BtoB企業が独自の情報発信を行う重要なチャネルです。
オウンドメディアでは、専門性の高いコンテンツを継続的に発信します。「サイボウズ式」のように、企業文化や働き方に関する考え方を発信することで、採用ブランディングにも貢献します。
導入事例の発信は、見込み客の関心度が高く、マーケティング部門との連携で効果を最大化できます。メディア露出と連動させることで、リード獲得につなげることも可能です。
技術ブログは、エンジニア採用や業界内での認知向上に効果的です。自社の技術的な取り組みや開発プロセスを公開することで、専門家集団としてのブランドを構築できます。
SNS運用では、ターゲットに合わせたプラットフォーム選定が重要です。LinkedInはBtoB企業に適したプラットフォームで、経営者や社員の発信が企業の専門性を示します。
Twitterでは、業界トレンドへのコメントや自社の取り組みをタイムリーに発信することで、存在感を高められます。
YouTubeでは、製品デモや顧客インタビュー、ウェビナーのアーカイブなど、視覚的なコンテンツで理解を促進できます。
ネタ不足に陥らないためには、日常の業務から発信ネタを見つける視点が重要です。新機能リリース、顧客の成功事例、社内制度の導入、業界イベントへの参加など、あらゆる活動がPRのネタになり得ます。
BtoB PR戦略の成功事例
実際の成功事例から、効果的なPR戦略のエッセンスを学ぶことができます。BtoB企業ならではのアプローチと成果を見ていきましょう。
業界特性に応じた戦略事例
サイボウズは、オウンドメディア「サイボウズ式」を軸に、働き方改革という社会的テーマと自社サービスを結びつけたPR戦略を展開しています。
社長インタビューを通じて働き方への考え方を発信し、ビジネスメディア以外への露出も獲得しました。副業している女性社員をフックにビューティー系媒体への掲載を実現するなど、多様な切り口でアプローチしています。
Sansanも同様に、「働き方改革」の社会的背景に合わせて育休ママの職場復帰支援制度をPRし、人物インタビューで企業姿勢を発信しています。
大規模イベント「Sansan Innovation Project」を開催し、先進的企業としてのイメージを創出しました。
村田製作所は、プロモーション強化により日経イメージ調査で1200社中800位以下から200位以内へと大幅に躍進しました。
BtoB企業だからこそ広報PRが必要という認識のもと、戦略的にリソースを投入した結果です。
スタディストは、顧客の導入事例を活用したメディア露出を重視し、メディア露出経由のリード獲得数をKPIに設定しています。
導入事例という見込み客の関心度が高いコンテンツを広報活動に活かし、マーケティング部門との連携で成果を上げています。
協和発酵キリンは、抗体医薬について楽しく学べるオンラインスクール「サンダーバード・コーポレーション」によるコーポレートPRを実施しました。
PR活動によりテレビ露出も獲得し、業態認知に貢献しています。人気漫画家とコラボしたブランド・コンテンツ制作も実施し、「抗体医薬品の研究・開発に強みをもつ製薬会社」という認知獲得を実現しました。
これらの成功事例に共通するのは、「人物を立てたPR」と「場を活用したPR」への注力、そして社会的テーマとの接続です。
BtoB企業であっても、社会課題や時代のトレンドと自社の取り組みを結びつけることで、広範な露出と深い共感を獲得できることを示しています。
BtoB広報担当者が陥りがちな課題と解決策
BtoB企業の広報担当者は、特有の課題に直面します。これらの課題を理解し、適切な解決策を実践することが成功への近道です。
ネタ不足への対処法
「プレスリリース作成・配信できるレベルのコンテンツがない」「SNS投稿のネタがマンネリ化する」という悩みは、多くのBtoB広報担当者が抱える課題です。
しかし、実際にはネタは日常業務の中に数多く存在しています。重要なのは、それを見つける視点と切り口です。
製品・サービスの更新情報は基本的なネタですが、それだけではありません。顧客の導入事例、社内制度の導入、社員の活動、業界トレンドへの見解、自社調査データの発表など、多様なアプローチが可能です。
特に効果的なのは、社会課題と自社の取り組みを結びつける視点です。「働き方改革」「DX推進」「カーボンニュートラル」など、時代のテーマと自社の活動を関連付けることで、メディアの関心を引きやすくなります。
また、「説得」「納得」「理解」というプロセスにPRを組み込む発想も重要です。顧客が意思決定する際に必要とする情報を先回りして提供することで、営業活動を後押しするコンテンツが生まれます。
複雑なサービスを分かりやすく効果的に知らせることもPRの役割です。インフォグラフィックや動画、漫画など、視覚的に訴求する手法を活用することで、専門的な内容も理解しやすくなります。
さらに、他部署との連携でネタを発掘することも効果的です。営業部門からは顧客の成功事例、開発部門からは技術的な取り組み、人事部門からは採用活動や社内文化に関する情報が得られます。
KPI設定と効果測定
BtoB広報のKPI設定は難しいという声をよく聞きます。BtoC企業のように販売数や問い合わせ数で効果を測りにくいためです。
重要なのは、PR活動の目的に応じて適切なKPIを設定することです。営業リードの創出だけを目的にすると失敗するため、カスタマージャーニー全体における貢献を測定します。
認知フェーズでは、メディア露出数、リーチ数、検索ボリュームの変化などが指標になります。専門メディアでの露出回数や、業界内での認知度調査も有効です。
信頼構築フェーズでは、Webサイトへの流入数、滞在時間、資料ダウンロード数などを測定します。メディア掲載記事からの流入が、どの程度コンテンツを閲覧しているかを分析します。
商談支援フェーズでは、営業部門との連携が重要です。商談時にメディア掲載記事がどの程度活用されているか、受注率にどう影響しているかをヒアリングします。
採用フェーズでは、応募数の変化、応募者の質、入社理由のアンケートなどが指標になります。広報活動が採用ブランディングにどう貢献しているかを測定します。
また、定性的な効果も見逃せません。経営層や営業部門からの評価、取引先からの反応、業界内でのポジション変化なども重要な成果です。
効果測定においては、短期と長期を分けて考えることも大切です。主要ビジネスメディアやテレビに掲載された直後の1週間は問い合わせが増えるかもしれませんが、その後は元に戻ります。
しかし、中長期的には企業や製品の認知度向上、ブランド価値の蓄積、営業活動の効率化など、持続的な効果が現れます。
定期的に効果を測定し、戦略を見直すPDCAサイクルを回すことで、PR活動の質を継続的に向上させることができます。
まとめ
BtoB企業のPR戦略は、認知拡大だけでなく、信頼構築・営業支援・採用強化・社内エンゲージメント向上など、多面的な価値を生み出す重要な経営機能です。成功のポイントは、明確な目的設定、カスタマージャーニーに基づく戦略設計、社内連携体制の構築にあります。メディアリレーション、人物PR、イベント活用、オウンドメディア運用など、具体的施策を組み合わせることで効果を最大化できます。ネタ不足やKPI設定といった課題には、日常業務からの発掘や目的に応じた指標設定で対処可能です。BtoB企業ならではの特性を理解し、戦略的にPR活動を展開することで、持続的な事業成長を実現できるでしょう。
BtoB営業における「集客の課題」と真剣に向き合ってきました。
経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
想いを届ける手書きの手紙など、独自の形で支援を続けています。
そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。
私たちが大切にしているのは、単なるマッチングツールの提供ではなく、
一社一社の課題に寄り添い、"本当に意味のある出会い"をつくることです。
もしBtoB集客でお悩みの決裁者の方がいらっしゃいましたら、
まずはお気軽に、代表の私とお話してみませんか?
▼この下から、直接日程をご予約いただけます。
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