監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
交換した名刺が引き出しにたまっていき、必要なときに相手の連絡先が見つからないという状態に困っていないでしょうか。
この記事では、名刺管理アプリの仕組みとできること、個人向けと法人向けの違い、タイプごとの特徴、選ぶときの比較ポイント、導入でつまずきやすい点までを解説します。
名刺管理アプリとは
名刺管理アプリとは、撮影した名刺を文字データに変換し、検索できる状態で保存する仕組みです。
紙の束を探す作業がなくなり、名前の一部や会社名から相手をすぐ呼び出せるようになります。
まずは、従来の管理方法との違いから整理していきます。
紙やファイルで管理する方法との違い
紙の名刺を名刺入れやファイルで管理する方法は、導入に費用がかかりません。
一方で、探す時間がかかり、持ち歩けず、担当者が不在だと誰も確認できないという弱点があります。
表計算ソフトへ手入力する方法もありますが、入力の手間と表記のゆれが課題になります。
アプリは、この探す手間と入力の手間を同時に減らす選択肢です。
名刺を読み取る仕組み
多くのアプリは、カメラで撮影した画像から文字を認識してデータに変換します。
読み取りの精度を上げるため、機械による認識と人による確認を組み合わせるサービスもあります。
認識後は、会社名、氏名、部署、役職、電話番号、住所などの欄に自動で振り分けられます。
肩書きが特殊な場合や手書きの追記がある場合は、後から手で直す前提で考えておきましょう。
個人向けと法人向けの違い
個人向けは、自分が交換した名刺を自分だけで使う前提で作られています。
法人向けは、組織の資産として名刺情報をためて、部署をまたいで共有することを前提にしています。
同じ会社に別の担当者が接触していたことが分かるのは、法人向けの大きな価値です。
どちらが必要かは、名刺を個人の連絡先として使うのか、組織の顧客情報として使うのかで決まります。
名刺管理アプリでできること
基本の機能はどのサービスも似ていますが、重点の置き方が違います。
ここでは、主な機能を4つに分けて解説します。
名刺の読み取りとデータ化
スマートフォンで撮影するだけで、文字情報が各項目に分かれて保存されます。
複数枚をまとめて読み取れる機能があると、展示会の後の作業が一気に片づきます。
専用のスキャナーに対応したサービスもあり、大量の過去分を処理する場合に向いています。
取り込んだ後に、自分で確認して直す時間を見込んでおくと安心です。
検索と絞り込み
会社名や氏名の一部から、該当する名刺をすぐに呼び出せます。
業種、役職、交換した日付、交換した人といった条件で絞り込めると活用の幅が広がります。
役職で絞り込めれば、決裁に近い相手だけを一覧にできます。
検索の条件がどこまで細かく指定できるかは、試用時に必ず確認しましょう。
社内での共有
法人向けでは、登録された名刺を組織内で共有できます。
誰がいつその企業と接点を持ったのかが見えるため、重複した連絡を防げます。
部署や役職によって見える範囲を変える設定を備えたサービスもあります。
共有の範囲を決めずに導入すると、現場が登録をためらう原因になります。
他のツールとの連携
顧客管理や営業支援のツールへ、名刺情報を渡せる仕組みがあります。
名刺の情報がそのまま商談の記録とつながると、二重入力がなくなります。
メールの配信ツールと連携させ、案内を送る用途で使う企業もあります。
既に使っているツールとつながるかどうかは、選定時の重要な条件です。
名刺管理アプリの3つのタイプ
名刺管理アプリは、想定している使い方で大きく3つに分かれます。
自社がどのタイプを必要としているかを見極めると、候補が絞れます。
個人で使う無料アプリ型
無料で始められ、自分の名刺を手元で整理する用途に向いています。
まず試してみたい、個人で営業している、という段階に適した選択です。
一方で、組織としての共有や権限の管理には向きません。
将来的に法人で使う予定があるなら、移行のしやすさも確認しておきましょう。
法人向けクラウド型
組織全体で名刺情報を資産として管理する前提のサービスです。
部署をまたいだ接点の可視化や、権限設定、利用状況の管理まで含まれます。
導入時に既存の名刺をまとめて取り込む支援を受けられる場合もあります。
費用は利用人数や機能によって変わるため、見積もりを取って比較します。
営業支援ツール一体型
顧客管理や商談管理の機能の一部として、名刺管理を備えているタイプです。
名刺の登録から商談の記録、受注までを同じ画面で追える点が強みになります。
名刺管理だけを目的に選ぶと、機能が過剰になることがあります。
営業の管理そのものを見直す段階にある企業に向いた選択肢です。
代表的なサービスの位置づけ
法人向けの代表例としては、Sansanのように組織での名刺活用を前提としたサービスが知られています。
個人向けではEightが広く使われており、法人で使うための仕組みも用意されています。
無料で使える個人向けアプリとしては、LINEが提供するmyBridgeなどが挙げられます。
ほかにCAMCARD、Wantedly People、SKYPCEといったサービスがあり、料金や機能は改定されるため各社の公式サイトで確認してください。
選ぶときの6つの比較ポイント
機能の一覧を比べるだけでは、自社に合うかどうかは判断できません。
ここでは、導入後に効いてくる6つの観点を紹介します。
読み取りの精度と確認の方式
読み取りの精度は、入力をやり直す手間に直結します。
機械による認識だけか、人の目による確認が入るかで、精度と反映までの時間が変わります。
無料試用の期間に、自社が実際に受け取る名刺で試すのが確実です。
横書きと縦書き、英語表記の名刺も混ぜて試しておきましょう。
共有範囲を細かく設定できるか
名刺情報は個人情報にあたるため、誰がどこまで見られるかの設計が重要です。
全社で共有する情報と、担当者だけが見る情報を分けられるかを確認します。
役員の名刺や採用候補者の名刺など、扱いを分けたい場面は必ず出てきます。
設定が粗いサービスを選ぶと、運用でルールを守りきれなくなります。
既存のツールと連携できるか
顧客管理ツールや営業支援ツールを既に使っているなら、連携は必須条件です。
同じ情報を二つの場所に入力する状態は、必ず片方が更新されなくなります。
連携の方式が標準機能か、追加の開発が必要かも確認しておきます。
追加の開発が必要な場合は、その費用も総額に含めて判断します。
現場の運用の手間
どれだけ高機能でも、登録に手間がかかると名刺は登録されません。
1枚の登録にかかる時間を実際に測り、現場の負担として許容できるかを確かめましょう。
外出先からスマートフォンだけで完結するかどうかも大きな差になります。
登録を促す仕組みがあるサービスは、定着しやすい傾向があります。
料金の考え方
料金は、利用人数あたりの課金か、一律の課金かで総額が大きく変わります。
閲覧だけの人も人数に含まれるのかを確認しておくと、見積もりの読み違いを防げます。
初期費用や過去分の取り込み費用が別に必要な場合もあります。
導入から3年使った場合の総額で比べると、判断がぶれません。
退職や解約時のデータの扱い
担当者が退職したとき、その人が登録した名刺がどうなるかを確認します。
解約した場合にデータを書き出せるかは、見落とされやすい重要な条件です。
書き出せる形式と、含まれる項目の範囲まで聞いておきましょう。
名刺を組織の資産として扱うなら、ここを曖昧にしたまま契約すべきではありません。
導入でつまずきやすい点
名刺管理は、仕組みを入れるだけでは機能しません。
現場でよく起きる3つのつまずき方を紹介します。
登録されない名刺が残る
最も多いのは、交換した名刺が登録されないまま手元にたまる状態です。
いつ登録するのかという行動の時点を決めておくことが対策になります。
商談が終わった直後、移動する前に撮影する運用にすると定着しやすくなります。
過去分は一度にまとめて処理し、以降は発生時に処理する形が現実的です。
個人アプリと法人ツールが混在する
各自が好きなアプリを使っていると、組織としての情報はたまりません。
法人で使うツールを一つに決め、個人アプリとの併用をやめる判断が必要です。
過去に個人アプリへ登録した分を移せるかどうかも、移行時に確認します。
併用が続く状態は、情報が分散する最大の原因になります。
情報の扱いのルールがない
名刺情報は個人情報であり、取り扱いには配慮が必要です。
誰が閲覧できるのか、どこまで共有してよいのか、退職時にどう扱うのかを文書で定めます。
取得した名刺を案内の配信に使う場合は、同意の考え方を確認しておきましょう。
ルールを整えてから広く展開するほうが、後の手戻りが少なくなります。
名刺の枚数が商談につながらないときの考え方
名刺が増えても商談が増えないという相談は少なくありません。
原因は管理の方法ではなく、集まっている名刺の中身にあることが多いです。
交換後の初回連絡の速さ
名刺を交換した後、連絡までに時間が空くと相手の記憶は薄れます。
当日か翌営業日までに一度連絡を入れるだけで、その後の反応は変わります。
アプリに登録した時点で連絡の予定を作る運用にすると、抜けが減ります。
文面は短くても、会話の内容に触れると思い出してもらいやすくなります。
決裁権を持つ相手の名刺かどうか
交換した相手が決裁に関わらない立場であれば、提案は社内で止まりやすくなります。
役職で絞り込んだとき、決裁に近い相手がどれだけいるかを一度数えてみましょう。
枚数は多いのに決裁者が少ない場合、接点をつくる場所そのものを変える必要があります。
管理のやり方を磨くより、出会う相手を変えるほうが効果が大きい場面です。
過去に交換した名刺を役職で並べ替えると、自社がどの層と接点を持てていないのかが見えてきます。
接点のない層が決裁者だと分かった時点で、打ち手は管理ではなく出会い方の設計に変わります。
決裁者の名刺が集まらないなら決裁者マッチングがおすすめ
名刺管理を整えても、決裁権を持つ相手との接点が増えないことがあります。
その場合は、決裁者と直接つながる手段を検討する価値があります。
決裁者マッチングとは
決裁者マッチングとは、経営者や役員など、意思決定の権限を持つ人同士をつなぐサービスです。
交換の機会を待つのではなく、条件に合う決裁者と会う場が用意される点が特徴です。
自社の業種や商材、会いたい相手の条件をもとに紹介を受けられます。
名刺を集める活動とは、接点の作り方そのものが異なります。
オンリーストーリーの決裁者マッチング
オンリーストーリーは、決裁者同士が出会える審査制の決裁者マッチングプラットフォームを運営しています。
登録には審査があるため、決裁権を持つ経営者や役員と出会いやすい環境が整っています。
担当者が自社の事業や課題を丁寧にヒアリングし、相性の良い決裁者を紹介するため、質の高い商談を始められます。
一方で、既存の名刺を整理して掘り起こしたい目的であれば、名刺管理アプリの導入のほうが先に効きます。
まとめ
名刺管理アプリは、撮影した名刺を検索できるデータに変え、探す手間と入力の手間を減らす仕組みです。
個人で使う無料アプリ型、法人向けクラウド型、営業支援ツール一体型の3つに分かれ、目的によって選ぶべき型が変わります。
比較するときは、読み取りの方式、共有範囲の設定、既存ツールとの連携、運用の手間、料金の考え方、退職や解約時のデータの扱いという6点を確認しましょう。
導入後は、登録されない名刺が残る、個人アプリと混在する、扱いのルールがないという3つのつまずきに注意が必要です。
枚数が増えても商談が増えない場合は、集まっている名刺が決裁に関わる相手のものかどうかを見直してください。
決裁権を持つ相手との接点を増やしたいなら、決裁者マッチングという選択肢もあわせて検討してみてください。
よくある質問
Q. 無料アプリと法人向けサービスはどう違いますか
A. 無料アプリは、自分が交換した名刺を自分だけで使う前提で作られています。
法人向けは、名刺情報を組織の資産としてため、部署をまたいで共有することを前提にしています。
同じ会社に別の担当者が接触していたと分かるのは、法人向けならではの価値です。
Q. 選ぶときに何を確認すればよいですか
A. 読み取りの方式、共有範囲、既存ツールとの連携、運用の手間、料金、解約時のデータの扱いの6点です。
読み取りは、機械による認識だけか人の目による確認が入るかで、精度と反映までの時間が変わります。
退職や解約のときにデータを書き出せるかどうかは、見落とされやすい重要な条件です。
Q. 導入しても名刺が登録されないのはなぜですか
A. いつ登録するのかという行動の時点が決まっていないことが主な原因です。
商談を終えてその場を離れる前に撮影する、というところまで決めると定着します。
各自が好きなアプリを使っている状態も、組織に情報がたまらない原因になります。
Q. 名刺が増えても商談が増えないのはなぜですか
A. 交換した相手が決裁に関わらない立場だと、提案は社内で止まりやすくなります。
役職で絞り込んだとき、決裁に近い相手がどれだけいるかを一度数えてみましょう。
枚数が多いのに決裁者が少ない場合は、接点をつくる場所そのものを見直す必要があります。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

