共同提案が必要な理由を確認する
二社で提案する意義は、顧客の課題に対して役割が補い合っているかで判断します。
提供できる価値と、顧客に増える調整負担を両方確認してから進めましょう。
一社では残る課題を説明できるか
共同提案の企画では、両社の商品を売ることから始めず、顧客が実現したい状態を整理します。
システムを導入しても運用担当が不足する、研修をしても日常の記録が残らないなど、一社の提供範囲だけでは解決しきれない点を確認します。
その不足を相手企業のサービスが補える場合に、共同提案の意味が明確になります。
単独でも十分に解決できる課題へ無理に二社で提案すると、調整や説明の負担が増える可能性があります。
顧客の購入や運用が複雑にならないか
共同提案により窓口や導入手順が整理されるなら、顧客にとって価値があります。
一方で、同じ情報を二社へ別々に説明する必要がある、質問のたびに担当が変わる、費用の範囲が分からないといった状態は避けたいところです。
提案前に、顧客から見た打ち合わせ回数、提出物、問い合わせ先を確認します。
二社の内部事情をそのまま顧客の作業に置き換えず、どこを一本化できるか考えましょう。
手順1 対象顧客と提案の目的をそろえる
共同提案の最初の打ち合わせでは、今回解決する課題と提案範囲を合わせます。
対象が変わった場合に共同で進めるべきかも判断できるよう、適する条件を整理します。
顧客名だけでなく課題を共有する
同じ企業を対象にしていても、両社が見ている部署や課題が異なることがあります。
一方は営業部門の効率化、もう一方は全社の情報管理を想定していると、提案の範囲が広がりすぎます。
今回の提案対象はどの部門のどの業務か、どこまでを扱うかを一文で合わせます。
顧客から直接確認した事実と、両社が立てた仮説も分けておきましょう。
共同提案を止める条件も決める
顧客の要望が一社の範囲で完結する、実施時期が合わない、必要な担当者を確保できない場合など、単独提案や見送りへ切り替える条件を整理します。
協業に合意しているからという理由だけで、すべての案件を共同で進める必要はありません。
個別案件の適合性を確認することで、パートナー関係に無理をかけずに活動できます。
手順2 顧客窓口と社内の判断者を決める
顧客との連絡をまとめる役割と、各社の条件を決める役割を明確にします。
連絡経路と承認先が分かれば、質問や条件変更を受けた際の確認先に迷いにくくなります。
顧客への連絡を取りまとめる担当を一人置く
日程調整、宿題の回収、資料送付など、顧客との連絡を取りまとめる担当を決めます。
すべての質問をその担当者が回答する必要はありません。
質問を受け付け、回答する会社と期限を決め、顧客へまとめて返す役割です。
窓口を一人にしても、その人が不在のときに止まらないよう、代替担当と共有先を決めておきます。
条件を変更できる人を両社で明確にする
商談担当者が説明できる内容と、値引きや納期変更を判断できる範囲は同じとは限りません。
費用、提供範囲、実施時期について、各社の確認先を整理します。
顧客の前で相手企業の対応を勝手に約束せず、必要な確認を経て回答できる体制にしましょう。
すぐ回答できない条件は、いつまでに確認するかをその場で伝えます。
手順3 役割分担を成果物単位で整理する
営業はA社、導入はB社という大きな区分だけでは、境目の作業が漏れることがあります。
初期設定に必要な情報を誰が集めるか、操作説明の資料を誰が作るかなど、顧客へ提供する成果物まで分解します。
次の表は、架空の業務システム会社と運用支援会社による分担例です。
| 作業・成果物 | 主担当 | 確認担当 | 顧客への説明 |
|---|
| 対象業務の整理 | 運用支援会社 | システム会社 | 現行業務と導入対象をまとめる |
| 機能の対応可否 | システム会社 | 運用支援会社 | 標準機能と制約を明示する |
| 運用手順案 | 運用支援会社 | システム会社 | 導入後の担当と作業を示す |
| 全体提案書 | 取りまとめ担当 | 両社の責任者 | 範囲と費用を統一して説明する |
| 未回答事項一覧 | 取りまとめ担当 | 各項目の担当会社 | 回答予定をまとめて伝える |
共同作業という欄を増やしすぎると、完了を確認する人が分からなくなります。
二社が関わる作業でも、最終的に取りまとめる担当を決めることが大切です。
顧客側に依頼する作業も別に記載し、両社のどちらかが実施するものと混同しないようにします。
手順4 情報共有と連絡ルールを決める
共同作業では、必要な情報を共有しつつ、顧客への説明と資料の状態を揃える必要があります。
共有する相手と内容、正式に使う資料の管理方法を先に決めましょう。
顧客情報を無条件に共有しない
顧客から受け取った資料を、そのまま相手企業へ転送できるとは限りません。
共有できる内容と相手、必要な確認を整理したうえで、提案に必要な範囲の情報を扱います。
顧客の認識を確認せず、二社がすでにすべての情報を共有している前提で話すことも避けます。
必要に応じて、どの会社が何を確認するために参加するのかを、顧客へ説明しましょう。
最新の資料と変更履歴をそろえる
提案書、見積もり、質問一覧が別々の版で進むと、顧客への説明に食い違いが生まれます。
正式に使う資料の保存先と更新担当を決め、変更した項目と確認状況を残します。
顧客へ送付した版は、後から同じ内容を確認できるように保管します。
相手企業の記載を修正した場合は、意味や提供範囲が変わっていないか、送付前に確認を依頼します。
手順5 提案書を顧客の課題から構成する
提案書は、顧客が導入の必要性と依頼する範囲を判断できる順番に組み立てます。
両社の説明を一つの課題に結び付け、単独で依頼する場合との違いも示します。
両社の会社紹介を先頭に並べすぎない
それぞれの会社紹介を続けるだけでは、顧客が自社との関係を理解しにくくなります。
最初に顧客の課題、目指す状態、今回提案する範囲を示し、その後に両社が担当する内容を説明します。
実績や強みは、担当する役割に関連するものを必要な範囲で紹介します。
確認できない実績や、別の条件で得られた効果を、今回も実現するように表現しないことが重要です。
顧客が比較できる形にする
単独で依頼する場合と共同で依頼する場合で、何が変わるのかを説明します。
担当範囲、顧客側で必要な作業、費用の内訳、開始までの条件などが比較の対象になります。
共同提案の方が必ず安い、必ず早いとは限りません。
追加される支援と費用の関係が分かれば、顧客は自社に必要な範囲を判断できます。
提案書に含めたい項目
- 顧客の課題と、今回確認できた事実
- 目指す状態と対象業務
- 両社が担当する範囲と成果物
- 対象外の作業と、顧客に依頼する作業
- 実施手順と開始に必要な条件
- 費用の内訳と前提
- 問い合わせ先と受注後の対応体制
- 未確定事項と、決定するまでの流れ
提案書の枚数を増やすより、顧客が社内で説明するときに迷う点を減らすことを意識しましょう。
手順6 見積もりの範囲と前提を合わせる
共同提案の見積もりでは、各社の金額だけでなく、その金額で何を実施するかを確認します。
重複や抜け、前提条件の違いを整理してから、顧客へ提示する形を決めます。
二社の金額を足す前に重複を確認する
両社が同じ初期説明や設定支援を見積もっていると、費用が重複する可能性があります。
一方で、どちらも相手が対応すると考え、必要作業が見積もりから抜けることもあります。
作業一覧と見積もり項目を照合し、誰が実施する費用なのか確認します。
一式とする場合も、顧客が対象範囲を理解できる説明を付けましょう。
費用条件の前提をそろえる
利用人数、実施回数、対象拠点、導入期間など、金額の前提が両社で一致しているかを確認します。
A社が一拠点、B社が全拠点を想定していれば、合計金額を示しても正しい比較になりません。
追加対応が発生する条件や、見積もりの有効期間も整理します。
顧客への提示方法、請求の流れ、正式な条件の確認は、各社で必要な手続きを踏んで確定します。
値引きの相談を片方だけで受けない
顧客から総額の調整を求められた場合、相手企業の費用を含めてその場で変更しないようにします。
削減できる作業、段階的に実施できる範囲、各社で調整可能な条件を持ち帰って確認します。
価格だけを下げて必要作業が残る状態では、受注後に無理が生じます。
調整後も、提供範囲と金額の対応が分かるように更新します。
手順7 提案当日の進行を事前に合わせる
提案当日は、顧客が二社の役割を理解しながら質問できる進行を目指します。
説明の担当と、想定外の質問が出たときの対応を、事前の打ち合わせで合わせておきましょう。
話す順番と回答担当を決めておく
冒頭の課題確認、全体説明、各社の担当範囲、質疑、次の行動の確認まで、進行を一本化します。
顧客の質問に二社が同時に答えたり、互いに譲り合って回答が止まったりしないよう、主な質問の担当を決めます。
両社にまたがる質問は取りまとめ担当が受け、必要な確認を分けて返す方法が使えます。
顧客の前での認識違いを整理する
説明中に提供範囲の違いが判明した場合、その場で曖昧に取り繕わないようにします。
該当部分は確認が必要であると伝え、回答する担当と期日を決めます。
相手企業を責めたり、どちらかの説明を確認なしに採用したりせず、顧客が判断を保留すべき部分を明確にします。
商談後は、食い違いが生じた理由を確認し、資料と分担表を更新しましょう。
手順8 商談後の回答と引き渡しをつなぐ
提案後に決まった条件は、両社の実施担当まで確実に伝える必要があります。
質問への回答から受注後の引き継ぎまで、同じ記録を基に確認できるように整理します。
宿題を二社別々に送らない
質問への回答は、取りまとめ担当が一覧を更新し、回答済み、確認中、顧客への確認待ちに分けます。
顧客へ送る際には、相互に矛盾する回答がないか確認します。
回答をまとめるために時間がかかる場合は、すべて揃うまで無言で待たせず、確定部分と残りの回答予定を共有します。
営業時の約束を実施担当へ渡す
受注後に担当者が変わる場合は、提案書だけでなく、口頭で確認した条件や未確定事項を引き継ぎます。
特別な運用、顧客が準備するデータ、開始前に決める項目などを整理します。
引き継ぎの場では、営業担当が説明した範囲を実施担当が対応できるか確認します。
共同提案では二社それぞれで担当変更が起こる可能性があるため、どちらか一社だけの引き継ぎで完了としないことが大切です。
提案が停滞したときの整理方法
業務システム会社と運用支援会社が、ある企業へ共同提案する場面を考えます。
以下は説明用の仮例です。
顧客はシステムの機能には納得していますが、社内の運用担当を決められず、検討が止まっています。
このとき、システムの機能説明を増やしても、停滞の原因には答えられません。
まず、顧客側で残る作業を一覧にし、運用支援会社が対応できる範囲と、顧客が担当する範囲を整理します。
次に、その範囲を前提とした費用と開始条件を示し、顧客が社内で担当を決められるか確認します。
対応できない作業が残る場合は、それを含めた運用が成立するかを判断します。
二社で提案する意味は、説明人数を増やすことではなく、一社では残る論点を整理できることにあります。
共同提案の振り返りで確認すること
提案件数や受注件数に加え、回答までにかかった時間、認識違いによる修正、引き継ぎ後に発生した追加確認を振り返ります。
ただし、顧客の事情による変更と、両社の準備不足による変更は分けて記録します。
変更が多いという数字だけでは、提案の質に問題があったか判断できません。
見積もりの前提が揃っていなかった、窓口が決まっていなかったなど、次回修正できる原因を見つけることが重要です。
また、受注した案件だけを振り返ると、共同提案が適さなかった条件を学びにくくなります。
単独提案へ変更した理由や、途中で見送った理由も記録し、対象案件の選び方に反映しましょう。
受注しなかった案件も両社で終了を確認する
顧客が今回は見送ると決めた場合、片方の会社だけが終了を把握している状態を避けます。
終了の理由、顧客へ伝えた内容、今後の連絡についての希望を、共有できる範囲で整理します。
別の提案を続ける会社があるなら、共同提案の終了と、その会社の単独活動を分けて確認します。
顧客にとっては同じ提案が続いているように見える場合があるため、窓口や対象範囲が変わることを説明しましょう。
また、作成途中の見積もりや提案書を、確定した条件として再利用しないようにします。
再開する場合は、担当者、提供範囲、費用、実施時期が現在も有効かを確認し、必要な部分を更新します。
案件を閉じるところまで役割を決めておくと、パートナーとの次の活動も始めやすくなります。
相手探しと共同提案の実行をつなげる
共同提案を継続するには、補完関係のあるパートナーを見つけることと、個別案件を動かす役割分担の両方が必要です。
協業の方針を相談できる経営者や責任者との接点づくりには、決裁者マッチングを検討する方法もあります。
相手が見つかった後は、顧客の課題、担当範囲、窓口、費用、引き渡しを具体化することが欠かせません。
新しい接点づくりを検討している場合は、onlystoryのサービス案内を確認し、どのような相手と何を実現したいかを整理してみてください。
まずは共同提案を予定している一件について、顧客へ渡す成果物と、その取りまとめ担当を書き出すところから始めましょう。