失注顧客への再アプローチは「再検討できる条件」の確認から始める
失注した企業は、すべて同じ状態にあるわけではありません。
課題は残っているものの予算が合わなかった企業もあれば、必要な機能がなく、別のサービスを選んだ企業もあります。
単に提案を読む時間が取れなかった企業と、自社では対応できない要件を持つ企業でも、その後の対応は変わります。
最初に整理するのは、前回の見送り理由が解消される可能性です。
例えば、予算が理由なら対象範囲を絞ることで実施できるのか、時期が理由なら相手が示した検討時期に近づいているのかを確認します。
機能不足が理由の場合は、その機能が実際に提供可能になったかを確かめなければなりません。
ここで注意したいのが、相手の発言と営業側の推測を混同しないことです。
「今期は新規予算を確保できない」と聞いた記録と、「価格が高かったのだろう」という担当者の解釈は分けて残します。
推測を前提に値引きの案内を送ると、相手が重視していた別の条件を見落とすおそれがあります。
再アプローチ前には、「前回の確認事項」「現在までに変わったこと」「今回確認したいこと」をそれぞれ一文で書いてみてください。
この三つを具体的に説明できれば、メールの目的も明確になります。
変化が何もない場合は、送信より先に提供できる情報を見直しましょう。
連絡のタイミングは、相手との約束と変化を優先する
再アプローチに適した時期は、一律に何か月後と決められるものではありません。
前回「次年度の計画を立てる時期に連絡してほしい」と言われているなら、その約束を基準にします。
約束があるにもかかわらず、営業側の月末目標に合わせて前倒しすることは避けたいところです。
相手が時期を示していない場合は、再検討に関係する変化があるかを確認します。
自社サービスの対応範囲が広がった、導入負担を抑えた進め方を用意できた、相手が公開した事業計画に関連する情報を提供できる、といった変化が候補です。
ただし、企業の発表から購買意欲まで推測して断定してはいけません。
例えば、新拠点の開設が発表されても、設備や取引先の選定はすでに終わっているかもしれません。
「新拠点の開設でお困りだと思い」と書くより、「拠点間の運用統一が今後の検討事項に含まれる場合は」と条件を付ける方が、事実と仮説を区別できます。
また、メールを送る時期と、商談を実施する時期は別です。
検討開始より前に、判断に必要な資料だけを届ける対応もあります。
相手が今どの段階にいるかに合わせ、情報提供、状況確認、面談の提案を使い分けましょう。
再アプローチメールに入れる五つの要素
メールには、誰からの連絡か、前回どのような話をしたか、なぜ今連絡したか、相手にどのような意味があるか、何を返してほしいかを入れます。
これらを短い段落に分けると、相手が過去のやり取りを探さなくても内容を理解しやすくなります。
冒頭では、会社名と氏名に加え、前回の商談テーマを示します。
「以前お世話になった者です」ではなく、「営業担当者向けの研修についてご相談した」と書く方が、相手の記憶を補えます。
長い経緯説明は不要ですが、何の話か分かる具体性は必要です。
次に、見送り理由を責める表現にならないよう整理します。
「ご予算がなく導入できなかったため」より、「前回は今期のご予算との兼ね合いで、検討を見送られると伺いました」と書けば、確認できた事情として伝えられます。
今回の変化は、相手に関係するものを一つに絞ります。
機能追加、価格変更、事例公開をすべて並べると、最も伝えたいことが埋もれます。
最後の依頼も、資料を希望するか、検討時期に変化があるか、短い面談を行うかのいずれかを中心にしてください。
面談の依頼だけが正解ではありません。
再検討する状況か分からない段階なら、「比較資料をお送りしてもよろしいでしょうか」と確認する方が、相手の現在地に合う場合もあります。
予算が理由で失注した場合のメール例文
予算が理由の場合でも、すぐに値引きする必要はありません。
対象人数、導入部門、支援期間、実施する業務の範囲を変えることで、必要な取り組みから始められる可能性があります。
メールでは、単なる安さより、前回の制約に対して何を変更できるのかを示します。
件名:営業研修の段階導入について/〇〇株式会社・田中
株式会社△△
佐藤様
お世話になっております。
〇〇株式会社の田中です。
先日は、営業担当者向け研修についてお話を伺い、ありがとうございました。
前回は、全拠点での実施に必要なご予算の確保が難しいと伺いました。
今回、対象を一部門に絞り、実施後の状況を確認してから展開範囲を検討する進め方をご案内できるようになりました。
全社導入と比べた実施範囲、費用、対象外となる支援を一枚にまとめております。
研修の必要性に変わりがなければ、資料をお送りしてもよろしいでしょうか。
現時点では検討対象でない場合、その旨だけお知らせいただけましたら、今回のご案内はここまでといたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
この文面を使うには、段階導入が実際に可能であることが前提です。
価格を下げた分、支援範囲や成果物が減る場合は、その違いも明示します。
同じ内容を安く提供できるように見せて、後から条件を追加することは避けましょう。
また、「予算が理由」という記録だけで送信対象を決めず、予算以外の懸念がなかったかも確認します。
運用負担への不安が残っているなら、費用を調整しただけでは再検討の理由にならないことがあります。
検討時期が合わず失注した場合のメール例文
時期を理由に見送られた場合は、前回の約束を思い出せる書き出しにします。
「お忙しいところ何度も恐縮です」と過度に遠慮するより、約束に沿った連絡であることを簡潔に伝えましょう。
ただし、当時の予定が現在も続いていると決め付けないことが大切です。
件名:次年度の営業体制に関するご検討時期の確認
株式会社△△
佐藤様
お世話になっております。
〇〇株式会社の田中です。
前回のご面談では、次年度の計画策定に合わせて、営業支援の活用を改めて検討されると伺いました。
ご指定いただいた時期が近づきましたので、ご連絡いたしました。
現在も、営業体制の見直しは検討事項に含まれておりますでしょうか。
ご予定に変わりがなければ、前回伺った対象顧客と社内体制を基に、確認したい論点を整理してお送りいたします。
時期が変更になっている場合は、差し支えない範囲でお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
相手から「まだ先です」と返信があった場合は、具体的な月を無理に聞き出す必要はありません。
「次の計画が決まるまでは連絡不要」という意向なら、それを記録します。
相手が希望する場合に限り、再連絡の時期や方法を決めてください。
検討時期が近いからといって、すぐに以前と同じ提案書を送るのも早計です。
事業方針や担当者が変わっている可能性があるため、前提条件を確かめてから資料を更新します。
競合サービスを選んだ企業へのメール例文
競合サービスの導入が理由なら、相手の判断を尊重することが出発点です。
「他社では対応できないはずです」「使いにくくありませんか」といった誘導的な表現は控えます。
自社が役立てる場面があるとしても、現在の運用を否定する必要はありません。
連絡の理由として考えられるのは、前回対象外だった業務への対応、既存サービスと併用できる支援、相手が希望した見直し時期の到来などです。
ただし、併用の可否や契約上の制約は、確認済みの範囲だけを説明してください。
件名:前回の検討対象外だった新人教育支援について
株式会社△△
佐藤様
お世話になっております。
〇〇株式会社の田中です。
前回は、営業研修の選定についてお話を伺い、ありがとうございました。
その際、新人教育については別途検討される可能性があると伺っておりました。
現在、既存の研修内容を確認したうえで、新人向けの実践演習部分を支援する進め方をご案内しております。
新人教育が引き続き検討事項でしたら、対象となる業務と支援範囲をまとめた資料をお送りできます。
すでに対応方針が決まっている場合は、ご放念ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
この例文では、過去に相手が話した別の検討事項に限定しています。
実際には聞いていない課題を、以前から共有していたように書いてはいけません。
契約更新時期に連絡する場合も、その時期を相手から確認できていることが前提です。
業界で一般的とされる契約期間から、個別企業の更新月を推測して断定しないようにしましょう。
理由が分からない失注には、仮説を押し付けない
提案後に返信がなくなり、理由を確認できないまま失注扱いになっているケースもあります。
この場合、「価格が合わなかったと思いますので」と決め付けると、相手の状況とずれた連絡になります。
まずは、提案への返答を要求する形ではなく、現在も検討テーマが残っているかを確認します。
相手が答えやすいよう、継続、保留、終了といった大きな状態を尋ねる方法もあります。
ただし、選択肢への回答を義務のように求めない配慮が必要です。
件名:営業支援のご検討状況について/〇〇株式会社
佐藤様
お世話になっております。
〇〇株式会社の田中です。
先日ご案内した営業支援について、その後のご状況を確認したくご連絡しました。
現在も検討中でしたら、判断に不足している情報に合わせて資料を整理いたします。
検討を保留・終了されている場合は、追加のご案内を控えますので、差し支えなければお知らせください。
行き違いがございましたら失礼いたしました。
どうぞよろしくお願いいたします。
返信がないことを、関心がないという事実と同一視しない一方で、関心があるとも判断しないことが大切です。
状態が不明なものは不明として管理し、何度も同じ連絡を送る根拠にはしないでください。
件名と本文で避けたい表現
件名は、メールを開く前に用件が分かるものにします。
「重要」「至急」「ご確認ください」だけでは、何を確認すべきかが伝わりません。
実際には期限がないのに、急ぐ必要があるように見せる表現も避けます。
「先日の件」という件名は、直近でやり取りしている場合には通じても、数か月空いた相手には分かりにくくなります。
商談テーマや連絡理由を入れ、「営業研修の段階導入について」「ご指定の検討時期に関する確認」と具体化するとよいでしょう。
本文では、相手の事情を断定する表現に注意します。
「人手不足でお困りのことと思います」より、「採用活動について公開されている情報を拝見しました。
教育体制の整備も検討される場合は」と書けば、確認できた情報と提案の条件を分けられます。
また、「今回だけ特別」「必ず成果が出る」といった表現は、事実と根拠が必要です。
相手に返答を促したい場合でも、実在しない期限や提供できない条件を使わないことが基本です。
メールの強さより、再検討する意味が伝わるかを優先しましょう。
返信が来た後は、前回の提案をそのまま再開しない
前向きな返信が届いても、前回の条件がすべて維持されているとは限りません。
担当者、予算、優先課題、導入希望時期を確認し、何が変わったのかを整理してから次の提案に進みます。
例えば、「資料を見たい」という返信は、面談への同意とは異なります。
まず依頼された資料を送り、その資料で確認できることと、まだ判断できないことを短く添えます。
資料送付をきっかけに、合意なく会議招待を送ることは控えましょう。
面談が決まった場合は、「前回の見送り理由に変化があるか」「今回どこまで検討したいか」を議題に入れます。
最初から会社紹介をすべて繰り返す必要はありませんが、参加者が変わった場合には、必要な背景を補います。
返信内容は営業担当者だけで抱えず、過去の商談記録とつなげて残します。
連絡してほしくない時期や、希望する連絡手段も引き継いでおくと、別の担当者が同じ説明を繰り返すことを防ぎやすくなります。
追加連絡を控える条件を決めておく
再アプローチは、送る判断と同時に、送らない判断も必要です。
明確な辞退や連絡停止の希望がある場合は、その意向を優先します。
営業担当者を変えて連絡する、別の窓口から同じ提案を届けるといった対応で回避しないでください。
返信がない場合も、追送回数だけを機械的に決めるのではなく、前回の約束、今回の情報価値、相手との関係を確認します。
単なる催促しか書けない場合は、一度連絡を止める判断が考えられます。
再連絡する場合は、前のメールを読んだことを前提にしません。
「ご確認いただけましたでしょうか」だけではなく、用件を短く再掲します。
それでも返信がない場合にどうするかは、社内で方針をそろえておくと、担当者ごとの過剰な追送を減らせます。
追送を止めた企業を永久に同じ状態にする必要はありません。
ただし、再開には相手の希望する時期や、実質的な条件変更などの理由が必要です。
「月が替わったから」という営業側の都合だけで、連絡を繰り返さない運用にしましょう。
再アプローチの成果は、返信の数だけで判断しない
返信には、再検討の相談、資料の希望、時期変更の連絡、辞退などが含まれます。
すべてを一括して成功とすると、商談につながる情報が見えにくくなります。
目的に応じて、返信の内容を分けて確認してください。
例えば、再商談を目的とする場合は、メールが届いた企業数、再検討の意思が確認できた企業数、実際に商談を実施した企業数を分けます。
一社に複数通送ったとき、メール通数と企業数を混在させないことも大切です。
比較する際は、連絡してからの観察期間をそろえます。
送信翌日の企業と、一か月経過した企業を同列に比べると、返信や商談の発生状況を正しく解釈しにくくなります。
件数が少ない場合は、率の変化だけで文面の良し悪しを断定しないようにしましょう。
辞退の返信も、相手の現在地が分かったという意味では運用上の価値があります。
ただし、商談獲得と同じ成果には数えません。
何を把握できたかと、営業成果が生まれたかを分けて記録すると、次の改善点を見つけやすくなります。
過去の接点を見直しながら、新しい商談機会も整える
失注顧客への再アプローチメールは、前回の事情と今回の変化を結び付けてこそ意味を持ちます。
送信前に見送り理由を確認し、相手が判断できる情報を一つ示し、無理のない次の行動を提案してください。
営業責任者は、担当者にメールの送信件数だけを求めるのではなく、再検討できる条件が確認できているかも確認するとよいでしょう。
過去の案件を丁寧に見直すことで、提案内容、対象顧客、連絡時期の改善点も整理できます。
一方で、過去の失注企業だけでは接点が限られる場合は、新たな企業との出会い方も検討が必要です。
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