「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者保証に関する契約時及び履行時等の自主的ルールで、全国銀行協会と日本商工会議所が2014年に策定しました。経営者への金銭的負担の軽減法として、名前を聞いたことがある方もいるでしょう。
この記事では「経営者保証に関するガイドライン」の概要と適用要件、メリットと利用時の注意点を解説します。
「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者保証に関する契約時及び履行時等の自主的ルールで、全国銀行協会と日本商工会議所が2014年に策定しました。経営者への金銭的負担の軽減法として、名前を聞いたことがある方もいるでしょう。
この記事では「経営者保証に関するガイドライン」の概要と適用要件、メリットと利用時の注意点を解説します。
経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人がその融資の連帯保証人となり、企業の返済責任を担保する制度です。企業が経営の失敗や外部環境の変化などで倒産し、融資の返済ができなくなった場合、経営者個人がその債務を履行する義務を負います。
経営者保証の主なメリットは、金融機関にとってのリスク軽減です。金融機関は、経営者が個人的に保証を提供することで、融資先企業が債務不履行となった場合でも回収が可能であると判断し、融資を行いやすくなります。
一方で、経営者にとっては、このような個人的な保証によって、融資の条件が緩和され、資金調達のハードルが下がることが期待されます。
しかしながら、経営者保証には欠点も存在します。経営者が連帯保証人となることは、経営上のリスクを直接経営者個人に背負わせることとなるため、大胆な事業展開や新しい取り組みが難しくなります。加えて、経営が困難になった際、経営者自身が大きな債務を背負うことで、早期の経営改善や事業承継の選択肢が狭まり、企業の再生や成長が妨げられる恐れがあります。
経営者保証の課題の解決策として全国銀行協会と日本商工会議所により制定されたものが「経営者保証ガイドライン」です。
経営者保証ガイドラインは、中小企業の金融面での取引に関連する経営者保証についての基準を示すものです。中小企業に融資を行う金融機関と、融資を受ける企業の経営者との関係を明確化し、経営者保証に関する問題に適切に対処することを目的としています。法的拘束力はありませんが、中小企業や金融機関が自主的に守るべきルールとして考えられています。
具体的な内容として、以下の点が挙げられます。
保証契約の債務者は中小企業、保証人は中小企業の経営者であることが求められます。ただし、特例として、実質的に経営権を有する者や営業許可の名義人、経営者の配偶者も保証人として認められます。
経営者保証ガイドラインには債務者及び保証人に対し、以下の3つの履行条件があり、全てまたは一部を満たせば、事業者は経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。
それぞれについて解説します。
まず、債務者は法人の業務や資産所有に関して、法人と経営者との関係を明確に区分・分離することが求められます。具体的な例を挙げると、経営者が本社や工場、営業車などの資産を所有している場合、それらは個人の所有物としてではなく、法人の所有物として扱われるべきです。
特に、法人と経営者との間で行われる資金のやり取り、例えば役員報酬や賞与、配当、オーナーへの貸付などは、社会通念上受け入れられる範囲を超えない形で行うことが重要です。
経営者保証に頼らずとも、事業に必要な資金の調達が円滑に行われるように、債務者は自らの信用力の強化に努めることが求められます。財務状況や経営成績の改善を通じて、返済能力を向上させ、経営者保証の必要性を低減できます。
例えば、業績がやや不安定であるものの、内部留保が潤沢であるケースが考えられます。この場合、現在の財務状態が十分に健全であることから、短期的な業績の変動にも対応可能であり、借入金の返済も問題なく行うことができます。
信用力を継続的に維持するためには、事業の透明性が必要不可欠です。透明性の確保には、債権者からの資産負債の状況や業績見通しの開示要請に対し、情報を迅速かつ正確に開示・説明することが求められます。
経営の透明性を確保するための具体例として、決算書や貸借対照表、損益計算書の提出が考えられます。外部専門家による情報の検証を経ることで、一層向上します。さらに、事業計画や業績の変動がある場合にそれを自ら報告し、外部専門家による情報を検証してもらうことで、より一層透明性を上げられます。
経営者保証ガイドラインにより、経営者は保証債務の免除を受けることができます。経営者の自己破産を避けられるため、事業承継や起業に有効です。経営者保証ガイドラインと破産、民事再生の違いは以下の通りです。
■経営者保証ガイドライン・破産・民事再生の比較
経営者保証 ガイドライン | 破産 | 民事再生 | |
手続の種類 | 私的整理 | 法的整理 | 法的整理 |
手続の期間 | 半年程度 | 半年から1年程度 | 半年程度 |
残せる資産上限 | 回収見込額の増加額 | 99万円 | 上限のルールなし |
信用情報 | 登録されない | 登録される | 登録される |
個人が破産した場合は99万円を上限に現預金を残すことができますが、経営者保証ガイドラインを利用した場合、それ以外にも一定の生計費に相当する現預金を残すことができます。
経営者保証ガイドラインの主なメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
最大のメリットは信用情報機関への登録がないことです。自己破産の場合、信用情報機関への登録が行われることが多く、その結果、経営者は再起が困難となることがあります。しかし、ガイドラインを利用することで、信用情報機関への登録を回避できます。
保証人が事業再生や事業清算を進める中で、生計を支えるための最低限の財産を確保できる点もメリットです。
自己破産の場合、上限99万円の確保にとどまりますが、経営者保証ガイドラインに従えば、さらに一定期間の生計費の保持が認められます。雇用保険の給付期間や民事執行法施行令での標準的な世帯の必要生計費を参考にして、どの程度の財産が残存資産として認められるかが決定されます。
経営者保証ガイドラインにより後継者に対する経営者保証の負担を避けることができます。
まず、前経営者と後継者の双方への二重保証契約を防ぎ、不必要な経済的負担を防げます。前経営者に対して引き続き保証契約を求める場合には、前経営者の株式保有状況、実質的な経営権・支配権の有無等を勘案して、保証の必要性を慎重に検討することが必要となります。
経営者保証を求めることにより事業承継が頓挫する可能性がある場合など、後継者に個人保証を引き継がせるのではなく、異なる対応ができないか金融機関に考慮してもらえます。例えば、代替的な融資手法を用意する、事業承継の期間は保証人を徴求しないなどの対応が当てはまります。
さらに、債務者の事業再生の際、保証人が所有する事業継続に必要な資産を、自らの法人へ譲渡すれば、その資産を保証債務の返済原資から除外することも可能です。これにより、経営者が事業再生を円滑に進められます。
経営者保証ガイドラインは、経営者の権益を保護し、金融機関との取引を円滑に進めるためのものです。しかし、その利用にあたってはいくつかの注意点があります。
まず、経営者保証ガイドラインの対象となるのは、会社の保証債務のみです。そのため、経営者自身が保証債務以外の私的な借入れを多数抱えている場合、ガイドラインの適用外となります。その場合の債務については、別途の債務整理手続きを検討する必要があります。
また、経営者保証ガイドラインの利用には債権者からの同意が必要となりますが、その同意が得られない場合もあります。同意が得られない場合、破産などの他の債務整理手続きへと進むことが求められます。
最後に経営者保証ガイドラインに関して以下のよくある質問に答えます。
A.中小企業庁による中小企業・小規模事業者は以下の定義が定められています。
中小企業
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
・小規模事業者
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
製造業その他 | 従業員20人以下 |
商業・サービス業 | 従業員 5人以下 |
ただし、経営者ガイドラインの対象は、必ずしも中小企業基本法に定める中小企業者・小規模事業者に該当する法人に限定しておらず、その範囲を超える企業等も対象になりえます。対象になるかどうかは身近な法律事務所に相談するとよいでしょう。
A.経営者だけでなく、個人事業主も経営者保証ガイドラインの対象になりえます。
A.ガイドラインの適用ケースは以下の3つです。
ケース | 注意点 |
借りる時 | 事業実績が乏しい新規事業者などは、多くの金融機関から経営者保証を条件とされることが多い。保証を求められた際に、保証なしの融資条件や保証解除の具体的な条件を確認することが推奨される。 |
引き継ぐ時 | 事業の成長や世代交代などの理由で事業承継が行われる場面もある。この際、新たな事業主や後継者に経営者保証が求められることがある。保証の引き継ぎが事業承継の障害となる場合に対応策が考えられる。 |
返す時 | 事業が廃業に至った場合、経営者保証の履行が求められることがある。このような状況下で、経営者は経営者保証ガイドラインに基づき、保証債務の整理を進めることとなる。 |
ここまで経営者保証ガイドラインについて紹介してきました。自己破産のリスク低減につながる素晴らしい制度ですが、まず事業を安定させることが大事です。多くの企業にとって事業の安定には営業の成功、継続的な案件受注が欠かせません。
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この記事では経営者保証ガイドラインについて解説しました。
経営者ガイドラインにより、経営者や法人が連帯保証人になることによるさまざまなリスクを回避できます。自己破産を防ぐほか、事業をスムーズに承継できるなど、資産がより扱いやすくなります。経営においてさまざまなリスクが気になる方は覚えておきましょう。