新規事業の立ち上げで企画書を作成する目的は、事業のアイデアや戦略を明確に伝え、内外のステークホルダーの理解を得ることです。事業を理解してもらうことで、資金や人材など必要なリソースを獲得できます。
しかし、魅力的な企画書の作り方がわからない方もいるのではないでしょうか。今回は、新規事業の企画書に含めるべき項目と、執筆のポイントを紹介します。
新規事業の立ち上げで企画書を作成する目的は、事業のアイデアや戦略を明確に伝え、内外のステークホルダーの理解を得ることです。事業を理解してもらうことで、資金や人材など必要なリソースを獲得できます。
しかし、魅力的な企画書の作り方がわからない方もいるのではないでしょうか。今回は、新規事業の企画書に含めるべき項目と、執筆のポイントを紹介します。
新規事業の企画書とは、新しく始める事業の全体像や価値を詳細にまとめた文書です。事業のアイデア、コンセプト、市場分析、財務計画、実施スケジュールなど、事業推進に必要な要素を網羅し、企業内の意思決定者や外部のステークホルダーに対して、事業の有望性とリスクを示し、資源の配分や投資の決定を促すために作成します。
新規事業企画書と似た書類に、事業計画書があります。新規事業企画書は新しい事業を立ち上げる計画を述べた文書であり、事業計画書は事業全体に対する中長期的な計画を示す文書であるという点が大きく異なります。
新規事業は実績がないため客観性のあるデータが少なく、仮説や推測に基づいた内容が中心です。そのため、マーケットリサーチやリスク分析を行い、その結果を基に事業の有望性やリスクを評価することが重要です。
新規事業の企画書に必要な項目をここでは9つ挙げます。
事業概要とは、新規事業の基本的な内容やコンセプトを明確にしたものです。
まず、事業のコンセプトやサービスの内容を具体的に述べます。目的やターゲット層、提供方法、市場のポテンシャルについて簡潔に触れてください。
事業概要は企画書のサマリーであり、具体性と簡潔性の両立が求められます。無駄な言葉を削除し、要点を明確に伝える言葉を選びます。事業概要で記した内容の詳細は後の項目で詳しく説明します。
新規事業立ち上げの背後にある背景や目的を伝えるため、この事業に取り組む必要がある理由を明記します。
新規事業立ち上げの内的要因として、自社が持つ技術との親和性や競合への優位性などが挙げられます。テクノロジーの発展や特定の市場の拡大など、外的要因と内的要因を組み合わせれば、事業の必要性やタイミングの良さを強調できるでしょう。
目的に関しては、事業を通じて得られる結果を具体的に述べます。 市場の内容、市場の規模、そして事業の成功による企業へのメリットを明示することが重要です。
伝え方の具体例をデイケアサービス提供事業を対象に挙げると、このように述べられます。「タイの高齢者ケア市場に参入し、地域社会に高品質なケアサービスを提供することで、高齢者の生活の質を向上させます。タイはアジア諸国では高齢化率が高い国である一方、日本の高齢者企業向けの事業を提供している企業はなく、市場のリーダーになることが見込めます。」
ターゲットとは、新規事業が狙う具体的な顧客層や市場セグメントのことです。ターゲットを明確に特定すると、事業の方向性や市場戦略がより具体的になります。
ターゲットを伝える際は以下のポイントを意識するとよいでしょう。
デモグラフィック情報 | 年齢、性別、居住地、収入層を具体的に特定する |
サイコグラフィック情報 | 価値観、趣味、興味を分析する |
具体的なニーズ | 顧客が何を求めているのか、または解決したい課題は何かを明確にする |
現在の消費行動 | 目標とする顧客が現在どのような製品やサービスを利用しているかを理解する |
自社の認知度 | 目標とする市場や顧客層において、自社ブランドや製品がどれほど認知されているかを評価する |
市場の大きさや構造 | ターゲット市場がどれほどの規模であり、どのような競合状況にあるのかを分析する |
ターゲットが抱える課題を具体的に記します。
課題の特定には、市場リサーチや顧客インタビューなどの手法を用いるとよいでしょう。顧客が現在感じている不満や欲求、ニーズなどを明らかにできます。課題の深掘りには、潜在ニーズを意識して、顧客の声と実際の行動に乖離がないか調べるとよいでしょう。競合との比較を通じても、顧客が抱える課題が浮かび上がる場合があります。
特定した課題に優先順位をつけることも重要です。すべての課題に対応するのは難しいため、事業の目的や資源、戦略との整合性を考慮して、最も重要な課題から取り組みましょう。
特定した課題の具体的な解決策を記しましょう。
解決策を策定する際は、従来の手法や競合他社の取り組みとの差別化を意識します。独自の技術やアプローチ、サービス内容など、新規事業が持つ独自の価値を強調します。
提案する解決策が実際に効果的であることを証明するデータや事例、試作品のテスト結果などの情報も盛り込みます。ステークホルダーや投資家、顧客などからの信頼の獲得が期待できます。
新規事業の成功見込みは、ステークホルダーの興味を掻き立てるのに重要です。
まず、競合調査の内容をもとに、新規事業に成功する見込みがあるか検討します。過去に似た事例があると説得力が上がります。このとき、ターゲット市場が拡大傾向にあるか、既に飽和状態なのかは、長期的な成功に大きな影響を与えるので、重点的に記しましょう。
さらに、財務計画も検討する必要があります。初期投資額、運転資本、販売見込みといった具体的な数字を元に、損益分岐点や投資回収期間を算出します。これにより、利益を生む施策であることを伝えられます。
事業の計画を記すために、スケジュールを伝えましょう。進捗を振り返るまでの期間を明確にし、その中での主要なマイルストーンやタスクをリスト化します。各タスクの開始日と終了日、担当者、必要なリソースなどの詳細情報を含めることが望ましいです。また、重要なイベントやリリースの日程、関連する外部イベントなども考慮します。
具体的なスケジュールを示すことで、関係者全員が事業の進行状況を共有し、必要な調整をスムーズに行えます。
何をもって事業の成功とするのかを測定する指標も伝えましょう。
事業の成功を測定するための指標は、KGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)に大別されます。KGIは事業の最終的な目標達成を示す指標で、「年間売上目標の達成」や「新規顧客獲得数の増加」などが該当します。
KPIは、KGIを達成するための途中過程や活動を示す指標です。例として「月間ウェブサイトの訪問者数」や「製品の生産効率」などが挙げられます。
KGIとKPIを明確に設定すると事業の目標とその達成のための手段がはっきりとし、日々の業務の方向性や優先順位を正しく設定できます。
新規事業には多くのリスクが伴います。これらのリスクを早期に特定し、その影響や発生確率を伝えましょう。
まず、事業を取り巻く内外の環境を考慮し、市場の変動やサイバー攻撃、KPIの未達など潜在的なリスク要因をリスト化します。
次に、各リスクに対する対策や回避策を策定します。各リスクの影響の大きさと発生確率を評価し、対処優先度の高いものから順に記載しましょう。対策に必要な時間と費用を明記することが重要です。
新規事業の企画書を執筆する際のポイントを3つ解説します。
新規事業の企画書の執筆において、論理的に執筆すること、定量的な内容を記すことは極めて重要です。決定者やステークホルダーは投資や資源の配分を決める際、明確で合理的な根拠を求めるためです。
企画書を論理的に示すためには以下のポイントに着目するとよいでしょう。
5W1Hの利用 | 5W1Hとは、「Who(誰が)」、「What(何を)」、「Where(どこで)」、「When(いつ)」、「Why(なぜ)」、「How(どのように)」を指す。さまざまな角度からの考察が可能となり、重要なポイントや詳細を見落とすリスクを低減できる |
接続詞の見直し | 接続詞を正しく使うことで、文章のつながりがはっきりと見え、主張に一貫性があるように見える |
事実と仮説の分離 | 何が事実かを明示することで根拠の説得力が上がる。仮説は仮説であることを言い切った上で論拠を明示することが重要だ |
一方、定量的であることは、事業の効果や価値を数値データや具体的な事実で示すことです。例えば、市場のサイズ、競合の状況、顧客の需要など、さまざまなデータを用いて事業の機会や収益性を明確に示します。
簡便なものであっても、損益計算書などの収支計画書を添付するのが望ましいです。論理的・定量的な企画書を提供することで、提案の信頼性や説得力を高められます。
新規事業を開始する際、重要なのが「なぜ自社でこの事業を始めるのか」を理解してもらうことです。
新規事業においては、社内・社外の双方における様々な要因が成功を左右します。具体的には以下のような項目に着目するとよいでしょう。
社内環境 | ・自社の強みや独自性とのマッチング・既存の事業とのシナジー・長期的なビジョンや戦略への貢献 |
社外環境 | ・競合企業の動向・市場の動向・技術動向 |
新規事業の企画書は、短期的な利益や成果だけではなく、その事業の中長期的な視点での成長と価値を明示することが重要です。
中長期的な視点を持つことで、事業の持続性や成長の可能性、変動する市場環境や技術の進化への対応策など、多くの要因を総合的に考慮できます。
新規事業が会社の長期的な戦略やビジョンとどのように連携しているのかを明確に説明することで、その提案の意義や価値を強調できます。中長期的な目線は、企業の戦略やビジョン、社会的責任との連携を強化し、事業の深い意味や価値を強調するのに役立つでしょう。
例えば、環境問題や社会的な課題を解決するための新規事業の場合、その事業の社会的インパクトや長期的な持続性を強調することで、提案の意義や価値を高められます。
新規事業の企画書に関するQ&A
最後に新規事業の企画書に対するよくある質問を3つまとめました。
A.新規事業企画書が通ればプレゼンの機会が与えられますが、以下の3つは特に重点をおいて話すべきです。
事業概要 | 冒頭のつかみの部分で、聞く人を期待させるような言葉を入れる |
新規事業の背景と目的 | 新規事業が必要な理由・新規事業が企業にどう貢献するかを強調する |
事業の成功見込み | 事業が本当に利益になるのかを納得させる |
プレゼンにおいて重要なのは聞き手をプラスの気持ちにさせることです。説明を重ねるよりは端的にベネフィットを伝えることを意識しましょう。また、話の途中に間を入れる、聞き手の目を見て話すなどの非言語コミュニケーションも重要です。
A.新規事業企画書はwordやPDFを用いるのが一般的ですが、紙やパワーポイント、専用のテンプレートなど、企業によって異なる場合があるので、事前に確認するとよいでしょう。
A.新規事業でも類似企業の運営者から話を聞くことで、人件費や広告宣伝費などの固定費、商品の仕入原価などの変動費、粗利率などが算出できます。
また、未知の要素が多く具体的な収支がわからないものは、以下を参考に推測できるでしょう。
過去のデータ | 類似する事業や企業の過去の収支データ |
市場調査 | 顧客が実際にどれくらいの価格・頻度で購入するのか、ユーザーから直接ヒアリングするとよい |
出店候補場所 | 実店舗ビジネスの場合、立地によって地代や来客数がどれだけ変動するか、出店候補場の周辺の事業者に話を聞くことで明らかにできる |
繁忙期と閑散期 | 季節によって商品やサービスの売上数がどれだけ変わるか、類似事業のデータから推測できる |
日本政策金融公庫は中小企業の業種別のKPIを公開しています。粗利や売上高に対する人件費の割合、従業員1人当たりの売上高など、参考になる数字が多く含まれています。
※日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」
ここまで、新規事業の企画書の作り方を説明してきました。企画書は制作するだけでなく、行動に移すことが重要です。中でも顧客を獲得できないというリスクを減らすには、アポイントの獲得が鍵を握ることも少なくありません。
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新規事業の企画書は事業の成功見込みや考察、事業計画など必要な要素をわかりやすく伝えることが重要です。加えて企画が読み手をプラスの気持ちにさせる、「やってみたい」と思わせるような事業に魅せることが、事業の承認や支援につながります。まずは企画書を書いてみて、周囲に相談してブラッシュアップしていきましょう。
執筆のポイントは以下の通りです。
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