監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
誰か紹介してくださいという頼み方だけでは、相手も動きようがありません。
紹介する側が負う手間と信用にも配慮した書き方が求められます。
紹介依頼メールと新規開拓メールの違い
新規開拓メールは、商談したい相手に直接送ります。
紹介依頼メールは、その相手とつながっている人に、接点を作る協力をお願いするものです。
紹介元に自社サービスを長く売り込んでも、紹介先の顔が浮かばなければ話は進みません。
「どんな会社でも構いません」ではなく、「複数拠点の勤怠集計に課題がある企業の人事・労務担当者」のように、業務と課題をセットにすると判断しやすくなります。
条件を詰め込みすぎず、最初は必須の条件を絞りましょう。
直接の営業メールを作る場合は、新規開拓の営業メール例文も参考にしてください。
送信前に確認したい3つのこと

紹介依頼メールは、文面を整える前に、依頼してよい状況かを確かめることが大切です。
ここでは、相手が自社の仕事を理解しているか、紹介先の同意を確認できる流れになっているか、依頼を断る余地があるかという3つの確認点を紹介します。
相手が自社の仕事を理解しているか
会ったばかりで事業内容も伝わっていない相手には、まず情報交換や実際の支援内容の説明を優先します。
顧客に未解決の問題があるなら、紹介のお願いよりも問題への対応を先に進めるべきです。
HubSpotも、紹介を依頼する際には顧客の満足や関係性を確かめ、相手が動きやすい形にすることを解説しています。
紹介先の同意を得る流れがあるか
連絡先一覧を送ってもらう形よりも、紹介元から候補者へ連絡し、話を聞く意思を確認してもらう流れを提案します。
紹介元の名前を出してよい範囲、メールに双方を含めてよいかも確認してください。
依頼を断る余地があるか
紹介は義務ではありません。
「思い当たる方がいなければ、ご対応は不要です」と明記します。
紹介できない理由を求めたり、取引の継続と結び付けたりしないようにしましょう。
紹介依頼メールの書き方と例文
送信前の確認ができたら、メールに入れる要素を整理して文面を作ります。
ここでは、紹介依頼メールに入れる5つの要素と、既存顧客や知人・協業先へ紹介をお願いする例文、紹介元が転送できる短い説明文を紹介します。
紹介依頼メールに入れる5つの要素
| 要素 | 書く内容 | 避けたい表現 |
|---|---|---|
| 関係の確認 | 直近の接点やお礼を一文で | 長い近況説明 |
| 相談の目的 | どの課題を持つ企業と話したいか | 誰でもよいので紹介してほしい |
| 提供できる価値 | 対応できる業務や相談内容 | 必ず成果が出るという断定 |
| 依頼する行動 | 候補者に関心を確認してもらう | 連絡先をまとめて送ってほしい |
| 辞退のしやすさ | 難しければ対応不要と伝える | 期限までの紹介を強く要求する |
以下の例文は本記事用に作成した架空の文面です。
【】内を自社の事実に置き換え、実績や関係性を作り話で補わないでください。
例文1 既存顧客へ紹介をお願いする
件名:【対象業務】でお困りの企業様のご紹介について
【会社名・氏名】様
いつもお世話になっております。【自社名・氏名】です。
先日は【実際にあった打ち合わせ・確認事項】について、お時間をいただきありがとうございました。現在、【対象業務】に課題をお持ちの企業様へ、【提供できる支援】をご案内しています。
もしお知り合いに【対象となる企業・役割】の方がいらっしゃいましたら、情報交換にご関心があるかご確認いただくことは可能でしょうか。ご関心がある場合に限り、ご紹介の方法をご相談できれば幸いです。転送用の短い説明文もお送りします。
思い当たる方がいらっしゃらない場合や、ご紹介が難しい場合は、ご対応不要です。【署名】
顧客が実際に評価していない効果を、依頼の根拠として書かないことが重要です。
「御社でも大きな成果が出たので」と書く場合は、その成果を相手と確認できている必要があります。
例文2 知人・協業先へ紹介をお願いする
件名:【対象課題】に関する情報交換先のご相談
【氏名】様
先日は【実際の接点】でありがとうございました。【自社名・氏名】です。
お話しした【支援内容】について、現在は【対象企業の条件】に絞ってご相談を受けています。【具体的な課題】を持つ方にお心当たりがあれば、まず情報交換に関心があるかお尋ねいただけないでしょうか。
初回は【面談で確認する内容】を伺い、当社でお役に立てる範囲をお伝えする想定です。ご紹介先のご意向を優先しますので、難しければどうぞお気になさらないでください。
【署名】
知人の人脈をすべて把握しているような書き方は避けます。
特定企業への紹介をお願いする場合も、実際につながりがあるか、依頼してよい関係かを先に確認しましょう。
例文3 紹介元が転送できる説明文
【会社名】の【氏名】さんから、【対象業務】について情報交換のご相談がありました。
同社は【確認済みの支援内容】を行っており、特に【対象課題】を持つ企業とお話ししたいとのことです。ご関心があれば、おつなぎしてもよろしいでしょうか。今は該当しない場合や、お忙しい場合は遠慮なくお知らせください。
これは紹介元が必要に応じて直すための文案です。
紹介元の名前で勝手に送信したり、実際にはない推薦コメントを加えたりしてはいけません。
相手が使いやすいよう短くまとめ、補足資料は求められたときに渡します。
紹介先への初回連絡とフォロー
紹介元を通じて相手の了承を得られたら、自社から紹介先へ連絡します。
ここでは、紹介後に相手へ初めて連絡するときの例文と、返事がないときや紹介が成立した後の対応を紹介します。
例文4 紹介先へ初めて連絡する
件名:【紹介者名】様よりご紹介いただきました【自社名・氏名】です
【紹介先氏名】様
はじめまして。【自社名・氏名】と申します。
【紹介者名】様より、ご連絡へのご了承をいただいたと伺い、ご連絡しました。当社は【支援内容】を行っています。【相手が共有に同意した課題】について、まず現在の状況を伺えればと考えております。
【面談で扱う内容】をテーマに、【所要時間の提案】ほどお話しすることは可能でしょうか。ご都合のよい時期をお知らせいただければ、候補日時をご案内いたします。今は検討の予定がない場合も、その旨だけお知らせいただければ幸いです。
【署名】
相手の課題がまだ分からない場合は、課題部分を推測で埋めず、「当社の支援領域が貴社の関心に合うか確認したい」とします。
紹介された事実だけで、購買意思があると判断しないようにしてください。
返事がないときと紹介成立後の対応
返事がない理由は、忙しい、候補者がいない、確認中などさまざまです。
紹介元に繰り返し催促するのではなく、確認の必要がある場合に限って連絡し、難しければ依頼を閉じることを伝えましょう。
紹介が成立したら、紹介元へ感謝を伝えます。
商談の進捗を共有する際は、紹介先が共有を望んでいない相談内容や検討情報まで伝えないよう配慮してください。
紹介元にも、以後の連絡へ同席・CCが必要かを確認します。
紹介経由の成果を記録するなら、依頼件数・紹介に同意した件数・実施商談数・受注数を分けます。
依頼を送っただけの件数を紹介獲得と数えると、どこで止まっているか分からなくなります。
依頼文を具体化するための書き換え例
メールの書き方に迷ったときは、丁寧語を増やすより、紹介元が考えなければならない部分を減らします。
次の例は、依頼内容を絞るための架空の書き換えです。
対象は課題が分かる形で示す
「お知り合いの企業をご紹介いただけませんか」では、紹介元が候補を選ぶ基準がありません。
「複数拠点の採用情報を集約する業務にお困りの、人事責任者の方」とすれば、どんな話をするのか想像しやすくなります。
条件は細かいほどよいわけではありません。
業種、従業員数、売上、利用ツール、役職、導入時期を一度に指定すると、紹介元が調査しなければ答えられなくなります。
最初は、相手が普段の会話から分かる条件を中心に伝えましょう。
面談で扱う内容を伝える
「ぜひ一度お話ししたいです」だけでは、営業提案なのか情報交換なのか判断できません。
「現在の集計業務で手間がかかっている部分を伺い、当社が対応できる範囲を説明したい」とすれば、面談の目的が分かります。
売り込みの意図があるのに、営業目的はないと偽る必要もありません。
「支援内容のご案内を含みます」と率直に伝えたうえで、相手に検討する自由を残します。
紹介元にも、実際と違う面談目的を説明させないようにしてください。
効果の断定より支援範囲を示す
相手の状況を聞く前に、改善率や売上増加を約束するのは避けます。
「作業の棚卸しと、重複入力を減らす運用案の整理に対応しています」のように、実際に提供できる行為を説明しましょう。
自社が対応できない領域も分かっていれば、紹介元に補足できます。
たとえば、開発を伴う支援には対応しないなら、その条件を先に伝えることで、紹介後に話がずれるのを防げます。
関係性に合わせて依頼の重さを調整する
紹介元との関係が違えば、同じ例文がそのまま使えるとは限りません。
依頼する前に、相手が自社をどれくらい理解しているかを確認します。
継続的に支援している顧客
直近のやり取りで支援内容への評価を確認できているなら、その事実を起点に相談できます。
ただし、契約更新や問題対応の最中に、紹介を交換条件のように求めないようにします。
依頼とは別に、現在の顧客への支援を継続する姿勢が必要です。
交流会で一度会った知人
名刺交換だけで、取引先を紹介してもらえるとは限りません。
まず、会話したテーマを短く振り返り、自社の支援領域を伝えます。
紹介を前提にするのではなく、「今後この領域で相談をいただいた際に、候補として思い出していただけるよう概要をお送りします」といった関係づくりも選べます。
互いに紹介を検討できる協業先
相互紹介では、相手から受け取る紹介だけでなく、自社がどの条件なら相手を紹介できるかも整理します。
対象顧客、対応範囲、最初の連絡方法が分かれば、双方が無理なく相談できます。
紹介件数を必ず同数にする約束や、適合しない顧客を数合わせで紹介する運用は避けましょう。
依頼後の段取りと運用の振り返り
紹介依頼は、送信した後の対応まで決めておくと、紹介元に再調整の手間をかけずに済みます。
ここでは、紹介を受けた後の段取り、紹介へのお礼や依頼を閉じるときの例文、紹介の運用を振り返るときの確認項目を紹介します。
紹介を受けた後の段取りを決めておく
依頼がうまくいっても、その後の連絡が曖昧だと紹介元に再調整の手間が生じます。
送信前に、次の流れを社内で決めておくと対応しやすくなります。
まず、紹介先へ連絡する担当者を一人決めます。
紹介者から複数の社員へ情報が共有された場合でも、同じ企業に別々の担当者が連絡しないようにします。
すでに商談中の企業だった場合は、既存の窓口に確認してから連絡方法を調整します。
次に、相手から了承された目的を確認します。
情報交換への了承と、具体的な見積もり提案への了承は同じではありません。
初回の連絡では、紹介元から共有された面談目的を踏まえて案内します。
最後に、紹介元の役割を終えるタイミングを決めます。
初回のメールで双方がつながれば、その後は当事者同士で日程調整するなど、仲介を続ける負担を減らします。
紹介元が同席を希望する場合は、紹介先にも確認したうえで調整しましょう。
例文5 紹介のお礼と今後の連絡方法
件名:【紹介先名】様をご紹介いただいたお礼
【紹介者名】様
このたびは【紹介先名】様へおつなぎいただき、ありがとうございました。
ご本人からご返信をいただき、現在は【共有してよい範囲の状況】について調整しています。以後の日程調整は当方で進めますので、追加のご対応は不要です。
ご報告できる段階になりましたら、先方に共有範囲を確認のうえ、あらためてお知らせいたします。お力添えいただき、ありがとうございました。
【署名】
紹介へのお礼は、受注が決まったときだけに限定しないほうがよいでしょう。
結果に関係なく、接点を作るために時間を使ってくれたことへの感謝を伝えます。
一方で、見積額や相手の社内事情などを、お礼のメールに詳しく書く必要はありません。
例文6 今回は依頼を閉じると伝える
件名:【相談内容】のご紹介について
【氏名】様
先日はご紹介についてご相談させていただき、ありがとうございました。
今回の件は、いったん当方で別の方法も含めて検討を進めますので、追加のご対応は不要です。今後、自然な機会がありましたら、その際にお声がけいただけますと幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。【署名】
この文面は、返事を迫るための駆け引きではありません。
紹介元に依頼を抱え続けさせないための連絡です。
依頼を閉じた直後に別の社員から同じ紹介を頼むことがないよう、社内の記録にも残します。
紹介の運用を振り返るときの確認項目
紹介が少ないとき、件名や送信時間だけを変えても改善しない場合があります。
依頼した相手が自社の支援を理解していたか、紹介先の条件が広すぎなかったか、面談の目的が分かりにくくなかったかを確認しましょう。
紹介はあっても面談に至らないなら、連絡方法や説明のずれを見直します。
初回面談はできても、その後に進まないなら、自社の対象顧客と紹介先の課題が合っていたかを調べます。
どの段階の問題かを分ければ、紹介元に「もっと紹介してほしい」と要求するだけの運用を避けられます。
依頼記録には、誰にどんな条件で相談したか、紹介先の同意をどう確認したか、次の連絡を誰が行うかを残します。
担当者が変わっても経緯が分かるようにし、同じ相手への重複依頼を防ぎましょう。
紹介だけでは接点が広がらない場合
紹介依頼の文面を整えても、既存の人脈だけでは接点を持てる企業が限られることがあります。
その場合は、紹介以外の接点づくりも含めて考えます。
オンリーストーリーでは、決裁者マッチングや紹介支援などを案内しています。
自社で紹介依頼を続ける方法と、外部のネットワークを活用する方法を比較したい方は、サービス内容をご確認ください。
利用目的に応じた条件があるため、無料の相談先・発注先探しと、有料の営業支援は分けて確認しましょう。
まとめ
紹介依頼メールは、紹介元に営業を代行してもらう長い説明文ではなく、「この相手なら話してもよさそう」と判断してもらうための短い案内です。
対象と価値を絞り、紹介先の同意を確かめ、断りやすさを残すことが、無理のない紹介につながります。
よくある質問
Q. 会ったばかりの相手に紹介を頼んでもよいですか
A. 事業内容が伝わっていない段階では避けます。
まず情報交換や支援内容の説明を優先し、相手が自社の仕事を理解してから相談します。
何度かやり取りを重ね、相手が自社の支援内容を説明できる状態になってから依頼すると、紹介先にも正しく伝わります。
Q. 紹介先の連絡先を一覧でもらってもよいですか
A. 一覧を受け取る形より、紹介元から候補者へ連絡し、話を聞く意思を確認してもらう流れが安全です。
名前を出してよい範囲も確認します。
候補者の同意を得てから連絡する流れにしておくと、紹介元の信頼を損なわずに済みます。
Q. 返事がないときはどうしますか
A. 忙しい、候補者がいない、確認中などさまざまな理由があります。
催促を重ねず、必要な場合に限り連絡し、難しければ依頼を閉じる旨を伝えます。
紹介してもらえなかった場合も、これまでの対応へのお礼を伝えておくと関係を保ちやすくなります。
Q. 相互紹介はどう進めますか
A. 受け取る紹介だけでなく、自社がどの条件なら相手を紹介できるかも整理します。
対象顧客と対応範囲、最初の連絡方法を共有します。
紹介の条件を事前に共有しておくと、互いに無理な紹介をせずに済み、長く続く関係になります。
紹介をもらったあとの初回メールと、商談後・受注後のやり取りもあわせて確認しておきます。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

