自社の製品やサービスの新規顧客の獲得やアップセルには、営業活動の効率化がキーファクターとなります。しかし、人材不足や過当競争が続き、思うように成果が出ないという悩みを抱えている企業は多く、営業活動の課題を解決することは急務です。
営業活動の効率化という観点で近年注目されているのが、SFAやMA、CRMと呼ばれる営業支援ツールです。企業のニーズに合わせたツールを導入することで、既存の仕組みやシステムでは達成できなかった大きな成果を上げる助けとなるでしょう。
そこで本記事では、SFAの概要や、MA、CRMとの違い、それぞれの特徴や活用方法をわかりやすく解説していきます。営業支援ツールの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
SFA、MA、CRMの導入目的や特徴
SFA、MA、CRMは、それぞれ営業やマーケティングに欠かせないツールです。ここでは、それぞれのツールの導入目的や特徴、主な機能、解決できる経営課題などについて解説します。
SFA、MA、CRMの導入目的
SFA、MA、CRMは、いずれも営業やマーケティング活動を支援するツールですが、機能には重複する部分もあります。それぞれのツールが強みを発揮する領域はそれぞれ異なるため、パフォーマンスを最大限に発揮できるようにするためには、ツールの違いを知ることが大切です。ここでは、SFA、MA、CRMのそれぞれの導入目的を解説します。
SFA、MA、CRMの違いは、営業プロセスで切り分けると理解しやすくなります。以下の表は、営業プロセスと各ツールがカバーする範囲のイメージです。
■営業プロセスと各ツールがカバーする範囲
営業プロセス | リード獲得 | リード育成 | 商談 | 受注 | リピート化 |
ツール | MA | MA | SFA | SFA | CRM |
特徴 | ・見込み客へのアプローチ ・見込み客の分類 ・見込み客の選別 | ・ホットリードへの促進 ・顧客の興味関心の深い分野の掘り起こし | ・アポイント獲得 ・営業ステータスの可視化 ・組織マネジメント | ・顧客の課題の把握 ・提案資料の作成と共有 ・スケジュール管理 | ・顧客対応 ・アップセル |
マーケティング活動では、見込み顧客の獲得からニーズを顕在化させ、営業担当にバトンタッチしたあと、さまざまな営業活動により受注を獲得し、リピートやアップセルにつなげることが大切です。
ツールを使わない従来のやり方では、顧客のニーズに対応したきめ細やかな対応は難しく、チャンスを逃す恐れがありました。このように、場面に応じてそれぞれのツールを使い分けることで、営業活動がより効果的になります。
ツールで解決できる経営課題と効果的な使い方
それぞれのツールは役割や目的が違うため、解決できる課題が異なります。そこで、営業やマーケティング活動の各場面にMA、SFA、CRMを導入し、効率よく適切な顧客フォローを行うことが効果的です。ここでは、それぞれのツールで解決できる経営課題と、効果的な使い方を解説します。
見込み顧客を効率よく獲得するためには「MA」
見込み客を効率よく獲得し、案件の獲得や受注を増やすためには、MAが活躍します。顧客のニーズや属性はそれぞれ異なるため、MAツールを導入することで、よりきめ細やかなアプローチを目指し、見込み顧客の獲得を行うのが目的です。
ツールを使用しない従来のリード獲得では、顧客の情報を十分に取得できず、アプローチの進捗状況を共有することが困難でした。そのため、商談機会の損失や見込みのない顧客への過度なアプローチ、フロント業務担当者とのコミュニケーション不足が生じて不十分な提案をしてしまうなど、多くの課題がありました。
MAツールには、LP作成やリード管理、メール送信など、さまざまな機能があるため、担当者の思い込みや従来のやり方にとらわれない、幅広いアプローチが可能です。また、各種データの分析を行うことで、継続的かつ効果的に見込み顧客の育成につなげられるなど、より精度の高い営業活動が可能となります。
このように、リードナーチャリング(見込み顧客育成)と、リードクオリフィケーション(見込み顧客選別)の段階でMAを使用し、見込み顧客の反応に応じて自動的に最適なアクションを起こすことが、見込み客獲得に効果的です。
営業活動をより効率的に行うためには「SFA」
SFAは、顧客情報や営業の進捗など、各案件に沿った細かい情報管理をもとに、より効率的な営業活動を可能にする役割があります。MAによって獲得した見込み顧客を、実際に顧客として獲得するために役立つのがSFAです。
SFAは情報共有にも役立つため、営業担当の変更の引き継ぎなどもスムーズに行うことが可能です。また、情報を分析することで、成果を出している営業活動のノウハウをチーム内に共有できる点も大きなメリットです。各担当の営業スキルの差に関係なく、より成果を出せる営業活動を行うために、SFAは非常に有用なツールです。
SFAの効果を最大限に発揮するためには、あらゆる情報をツールに登録する必要があります。そのため、クラウドサービスとモバイル端末を活用して、こまめに情報を入力するのがおすすめです。日々の行動記録や顧客データをSFAに集約させることで、より精度の高い営業活動と効率化が可能となります。
従来の営業活動は、特定の顧客と営業担当者との間で強い信頼関係が結ばれ、業務が属人的になるという問題を抱えていました。また、提案内容や営業ステータスの進捗が共有されず、誰が何をして顧客が何を求めているのかをマネージャーが把握しづらいという問題もあり、営業活動の非属人化と情報共有が大きな課題でした。
SFAを導入することで、営業プロセスや提案内容、顧客が抱えている課題など、あらゆる情報を共有することができるため、誰が担当しても同じ精度の営業活動を展開することが可能です。
顧客情報の管理と分析に役立つ「CRM」
CRMは、すでに獲得した顧客を管理し、継続的な営業活動をサポートするツールです。SFAは案件ごとにデータを管理し、受注を獲得するまでのサポートを行いますが、CRMは顧客ごとにデータを管理するのが特徴です。CRMは、案件の獲得履歴や問い合わせ内容など、これまで自社の営業担当が、顧客とどのようなコミュニケーションをとってきたかを管理することができるため、顧客情報の管理と分析に役立ちます。
これまでの購入履歴や、類似の顧客との比較や分析を行うことで、継続的な案件の獲得につなげるサポートを行うなど、既存顧客の満足度を高めるアプローチが可能です。
これまで、契約が決まってサービスを提供したあとは、カスタマーサポートに引き継ぐケースが一般的でした。しかし、顧客は契約後も継続して何らかの課題を抱えており、それを解決してほしいと望んでいることが多いのが実情です。CRMは営業活動という側面で顧客に寄り添い、顧客サポートを通して、アップセルの機会損失を防ぐことができます。
CRMを効果的に使うためには、顧客ごとの目標となる指標(KPI)を明確に設定することが大切です。KPIを設定することで、CRMによって得たデータを活用し、より最適なアクションを提供することが可能となります。
ツールの連携で実現できること
SFA、MA、CRMは、単体でも営業活動に役立ちますが、それぞれのツールを連携することでより効果を発揮します。ここでは、ツールの連携により実現できることを解説します。
SFAとMAの連携
SFAとMAを連携させると、マーケティング部門と営業部門で密な情報共有が可能となります。MAとSFAで得たそれぞれの情報を活用することで、それぞれのツールを単体で使用するよりもより確度の高いアクションを選択できる点がポイントです。
また、結果的に受注獲得に失敗しても、各部署でツールを使ってフィードバックを行うことで、効果検証に役立ちます。
SFAとCRMの連携
SFAとCRMを連携させると、より顧客情報に基づいた営業活動を展開できます。SFAは案件ベースで機能するツールですが、CRMは顧客情報をベースに管理するツールのため、営業活動においてSFAだけでは得られない情報を参考にしながら、効率よく営業できます。
また、CRM単体では細かい案件情報の管理は難しいため、SFAと連携させ、過去の案件と紐づけることで、リピート営業に役立てることが可能です。
MAとCRMの連携
MAとCRMの連携は、営業部門とマーケティング部門の情報共有に役立ちます。CRMに登録されている顧客情報を活用すれば、MAで優良な見込み顧客を発掘したり、既存顧客に新たな商材や案件の提案が可能です。
ツールの連携により部署の垣根を超えたマーケティングが可能となるため、営業活動の精度が高まる点もポイントです。
SFA、MA、CRMの主な機能
SFA、MA、CRMの3つはマーケティングや営業活動に欠かせないツールですが、具体的な機能の違いが把握できないという人も多くいます。
この項目ではSFA、MA、CRMの概要や、それぞれのツールの機能について解説します。
SFAの機能
SFAとは「Sales Force Automation」の略称です。日本語では「営業支援ツール」「営業支援システム」を表し、営業の生産性の向上や業務改善をサポートし、営業効率をアップさせることが目的のツールです。
SFAでできる主な内容は以下の通りです。
SFAツールには、営業活動に欠かせないさまざまな機能が備わっており、営業情報の可視化と共有を実現することができます。
MAの機能
MAとは「Marketing Automation」の略称で、マーケティング活動を可視化して自動化するツールのことです。
MAは、見込み顧客に対してアプローチし、顧客に育てるためのリードナーチャリング(見込み客の育成)を行うのが目的のツールです。MAを使うことで、見込み顧客の適切なタイミングに合わせたアクションを発信し、相手の興味をひくアプローチを行うことができます。
自社の商材や見込み顧客の属性に合わせた細かい調整を行うことで、より適切なマーケティング活動ができるようになるため、効率アップに最適なツールです。
MAでできる主な内容は以下の通りです。
- ランディングページ作成
- リード管理
- スコアリング
- セグメントメール送信
- シナリオ作成
- データ分析
MAツールの各機能を活用することによって、より精度の高いマーケティング活動に役立ちます。
CRMの機能
CRMとは、「Customer Relationship Management」の略称で、既存顧客と継続的に良好な関係を築くための支援ツールです。
MAとの大きな違いは、MAが見込み顧客にアプローチするのに対し、CRMはすでに取引がある既存顧客にアプローチする点にあります。
顧客の行動履歴や要望などの情報を管理し、それぞれの顧客に合わせたアクションを提供する機能を持ち、顧客満足度を高めます。
CRMでできる主な内容
- 顧客管理
- メール配信
- 外部サービスとの連携
- 会員サービスの管理
- 顧客分析
- 問い合わせ管理
CRMの基本的な機能はMAツールと似ていますが、CRMは既存顧客をターゲットにしているため、それぞれの顧客に対してより精密なアプローチが可能となります。
各ツールを効果的に活用する方法
MA・SFA・CRMは、それぞれのツールの機能を活用し、リード獲得や営業効率をアップするのが目的です。ここでは、各ツールを効果的に活用する方法を解説します。
MAの導入で適切なタイミングのアクションが起こせる
MAはさまざまな方法で見込み顧客にアプローチする機能があり、効率のよいリード獲得が可能です。
MAで一括管理した見込み顧客にメール配信を行う機能を使えば、情報の一斉配信だけでなく、特定の条件にマッチする見込み顧客のみにメール配信を行うこともできます。MAは見込み顧客の属性や行動履歴も分析できるため、適切なタイミングでのアクションができるため効率的です。
また、MAを使えばそれぞれの見込み顧客をスコアリングし、有望な見込み顧客を選別することも可能です。そのため、無駄を省いてスムーズに商談につなげることができます。
SFAで営業ステータスを一元化し成約率を高める
SFAは、営業活動におけるさまざまな情報を一元化して活用できるツールです。しかし、やみくもに情報を登録すると、かえって必要な情報を探しづらくなったり、入力の手間が増えたりします。そのため、SFAを効率よく活用するには、入力する情報を絞り込み、本当に必要な項目のみ登録することがおすすめです。
また、情報入力の手間を省くために外出先からでもこまめに登録することで、時間を効率よく使うことができ、空いた時間を分析やスキルアップに使うことができます。
CRMで顧客との円滑なコミュニケーションでアップセルに役立てる
CRMは、各顧客ごとの情報を管理・分析できるため、顧客との円滑なコミュニケーションに役立ちます。
例えば、店舗とECの顧客情報を一元管理することで、それぞれの顧客に合わせたアプローチが可能です。CRMで顧客の行動パターンを予測して、適切なタイミングでのアプローチを行うことでアップセルにつながります。
また、CRMのデータを活用したソーシャルメディア展開や、モバイルツールと連携して情報をどこでも閲覧できるようにすることで、マーケティングの精度向上に役立てることも可能です。
ツールの仕組みを知って営業効率をアップしよう
情報化社会が進み、BtoBセールスにおいても多様な戦略が求められている中、従来通りの属人的な営業活動では対応できない時代となっています。顧客とのコミュニケーションを円滑に行い、営業効率を高めるためには、ツールの導入が有効です。
営業支援ツールにはSFA、MA、CRMがありますが、それぞれのツールを適切なシーンで活用することが大切です。しかし、ツールの導入は大きなメリットがありますが、それぞれのツールの仕組みや使い方を把握していないと成果は得られません。
そのため、営業支援ツールを導入する際は、自社の営業目的やユーザー層にマッチし、使いやすいツールを選ぶことがもっとも重要なポイントです。