監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
商談が盛り上がっても、最後のひと押しができずに持ち帰りで終わってしまうことは珍しくありません。
クロージングトークは感覚任せにせず、型として準備しておける部分が思いのほか多く残されています。

クロージングトークの5つの型を例文つきで解説します。沈黙・あえて引く・選択肢提示などの使い分けから、テストクロージングの入れ方、アポイント取得や契約締結で使えるトークスクリプト例、成約率を上げるコツまで紹介します。
監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
商談が盛り上がっても、最後のひと押しができずに持ち帰りで終わってしまうことは珍しくありません。
クロージングトークは感覚任せにせず、型として準備しておける部分が思いのほか多く残されています。

営業活動において重要なのが、クロージングというフェーズです。
クロージングには「終結」「締めくくり」などの意味があり、営業で用いられるクロージングは、顧客と契約を締結したり、商談を終わらせたりするための手続き全般のことを指します。
営業の目的は、商品やサービスを提案することではなく、実際に商品やサービスを購入してもらい、顧客の課題を解決することです。
そのためには、商談の最終段階で必ずクロージングをかける必要があります。
クロージングには高いスキルやコツが必要であり、営業担当者の営業力によって成約率が左右されます。
クロージングには、以下のように複数の種類があります。
トークスクリプトを作成する前に、まずはそれぞれどのような役割や効果があるかを理解しましょう。
以下、それぞれのクロージングと例文を紹介します。
沈黙して考えさせるクロージングとは、あえてこちらから多くを語らず、相手に検討する時間・余裕を与えることです。
契約を取ろうと意気込むあまり、営業担当者が一方的に話してしまうパターンは少なくありません。
商談中の沈黙は怖いため、沈黙を避けようと思わず会話を切り出してしまいがちです。
しかし、ここでしっかりと間を置き、相手に十分な検討時間を与えることが重要です。
例)
| 営業担当者「何か質問や不安な点はございますか?」 顧客「特にありません。」 営業担当者「ありがとうございます。では、契約についてはいかがでしょうか?」 (沈黙) 顧客「費用が予算をオーバーしているのがネックです。」 営業担当者「そうですよね。現在ご紹介しているプランは、オプションAとBがついております。オプションBを外すと予算内に収まるかと思いますが、いかがでしょうか?」 (沈黙) |
あえて引くクロージングとは、こちらから積極的に購入・契約を勧めるのではなく、顧客の方から「購入したい」と思ってもらう手法です。
普通なら営業担当者が強く推してくるであろう高額な商品を扱う際や、普段から営業担当者に強引に勧められることに慣れている顧客に対して、特に高い効果を発揮します。
「あえて引く」余裕のあるクロージングを実践することによって、顧客の購入意欲を高められる可能性が期待できるでしょう。
例)
| 営業担当者「何か質問や不安な点はございますか?」 顧客「費用が高いのが気になります。」 営業担当者「お気持ちはよくわかります。しかし、相場に比べると少し安い金額であり、質の高いサービスを提供するためにはこれ以上下げるのが難しいです。もちろん、無理に購入していただく必要はございません。納得して購入していただきたいため、今回はご縁がなかったということでも構いません。」 顧客「もう一度よく検討させてください。」 |
具体的に想像させるクロージングとは、購入後の様子を想像させることで、購買意欲を高めるテクニックです。
成約率の高い営業担当者に共通しているのが、購入後のメリットを具体的に想像させている、という点です。
購買意欲を高めるためには、「この商品を買ったらどうなるか」「このサービスを使ったらどのような課題が解決するか」など、顧客が購入後のメリットを明確にイメージできるよう、具体的なストーリーを語りましょう。
例)
| 営業担当者「〇〇をご利用いただくと、これまで応募者管理や面談の日程調整にかかっていた時間を、別の業務に使えるようになります。御社の採用業務はどのように変化するでしょうか。」 顧客「採用担当にかかっている負担を軽減できますね。」 営業担当者「そうですよね。さらに、浮いたリソースで内定者フォローや採用戦略の策定など、コア業務に注力できるようになります。」 |
選択肢を提示するクロージングとは、商品やサービスの選択肢を複数与えることで、自然に購入する方向に導くテクニックです。
「買うか買わないか」という思考から「どちらを選ぶか」という思考に切り替わるため、購入前提で検討してもらいやすくなります。
例)
| 営業担当者「御社のように採用活動を強化している勢いのある会社様には、ハイグレードプランがおすすめです。しかし、スタンダードプランなら、機能は少々制限されてしまうものの、月額5,000円で利用できます。」 顧客「なるほど。なるべく費用を抑えたいので、スタンダードプランが適しているかもしれませんね。」 |
商談の中でも特に重要なのが、テストクロージングです。
テストクロージングとは、最終的なクロージングの前に、商談の途中で顧客の興味関心や成約の見込み度合いを確認する質問を投げかけることです。
クロージングの進め方やタイミングを間違えると、見込み顧客との信頼関係が壊れてしまうリスクがあります。
購入の判断を急かしすぎて顧客から距離を取られてしまい、次に連絡した時には別のサービスを契約していた、ということ態も考えられるでしょう。
テストクロージングを行ってこまめに意思確認することによって、成約の可能性を判断しながら、確度の高い営業活動を実施できます。
顧客との関係を良好に保つための緩衝材の役割も果たすため、意識的に実践しましょう。
例)
| 営業担当者「プランの説明の前に、何かご不明点はございますか?」顧客「実際どんな会社がこのサービスを利用しているのですか?」 営業担当者「こちらのプランですと、価格は月々10,000円です。価格についてはいかがお考えでしょうか?」 顧客「そうですね。機能自体は魅力的なので、7,000円程度なら利用したいかもしれません。」 |
クロージングは、営業活動において非常に重要性が高いプロセスです。
適切なタイミングで実施できなければ、購買意欲の低下や競合他社への流出など、ビジネスチャンスを逃すことにつながってしまいます。
重要かつ難易度が高いクロージングの成功確率を高めるためには、事前にトークスクリプトを作成することが効果的です。
トークスクリプトの作成には、以下のように多くのメリットがあります。
トークスクリプトを作成することで、難易度の高いクロージングの攻略法を営業組織全体に共有でき、営業のクオリティを一定に保てます。
また、商品やサービスに関する情報を統一することによって、「前の営業担当者と言っていることが違う」というトラブル防止にもつながるのがポイントです。
さらに、営業トークをブラッシュアップするのにも活用できます。
あらゆるケースを想定してクロージングトークを準備することによって、自信を持って対応できるようになるのも大きなメリットです。

ここでは、以下の3つのクロージングについて、トークスクリプト例を紹介します。
トークスクリプトを作成する際に、ぜひ参考にしてください。
<こちらから日時を指定する場合>
| ぜひ、実際の画面をご紹介しながら、直接お話しできればと存じます。つきましては、来週の○日・○日・○日、いずれも10:00〜18:00の中で、ご都合のよろしい時間はございますか? |
<先方に日時を決めてもらう場合>
| ぜひ、直接お会いして具体的にお話しできたらと存じます。つきましては、〇〇様のご都合のよろしい日程と、今後ご連絡を差し上げる際のメールアドレスを教えていただけますか? |
<金額提示前>
| ここまで、〇〇の機能やプランなどについて、何かご不安な点はありますか? |
<金額提示後>
| 〇〇のAプランは、月額5,000円でご利用いただけます。費用についてはいかがでしょうか? |
<費用がネックと言われた場合>
| お気持ちはよくわかります。しかし、類似サービスの相場は月額10,000円であり、相場に比べるとかなりお得な価格となっております。さらに、御社が使用されている〇〇とも連携して使用できるため、費用対効果はかなり高いと存じます。 |
<契約締結の確度が非常に高い場合>
| ご希望のプランは◯月◯日までの適用となっております。本日ご契約いただくと、本日から早速ご利用可能です。いかがでしょうか。 |
<迷っている場合>
| 〇〇には4つのプランがあります。特に人数が多い企業様は、プランBを選ばれる傾向にあります。御社は、〜というニーズをお持ちですので、プランAかプランBのどちらかを選ばれるのがおすすめです。 |
| もしよろしければ、懸念点やご不安な点などお聞かせ願えますか?〜〜〜かしこまりました。もちろん、無理に購入していただく必要はございません。私としても、〇〇様には納得したうえで購入していただきたいため、今回はご縁がなかったということでも構いません。 |
成約率を上げるためのクロージングのコツは、以下の通りです。
ここでは、それぞれのコツについて解説します。
クロージングに成功するためには、実施するタイミングを見極めましょう。
購買意欲は、その時の状況や気分によって異なります。
購買意欲が低下しているときにクロージングを実施しても意味がなく、むしろ敬遠されてしまう可能性もあります。
クロージングを含めた営業活動の流れは、以下の通りです。
クロージングは、顧客が商品やサービスに強い興味を持っており、あと少しで購入・契約してくれそう、というタイミングで実施する必要があります。
例えば、契約後のサポートについて質問があった場合は、顧客が契約を前向きに考えていることが読み取れるでしょう。
テストクロージングについては、商品を紹介する前や金額提示の前に実施すると、条件次第では購入・契約の可能性があるかを判断できます。
クロージングでは、顧客の購買意欲を高められるよう、商品やサービスの価値を十分にアピールすることが大切です。
「このサービスを使えばコストを30%削減できます!」と言われても、なぜコストを削減できるのかがわからなければ、購買意欲は高まらないでしょう。
高いお金を払う以上、なぜ効果が出るのか、実際に効果を得られた事例はあるのかなどを知りたいと思うのは当然です。
顧客に納得してもらえるよう、具体的に価値をアピールする必要があります。
そのためには、営業担当者が自社の商品やサービス、導入事例、競合動向について詳しく理解し、説得力のある説明ができるようになることがポイントです。
意思決定において特にネックになりやすいのが、金額面です。
「思ったより高かった」と、費用を伝えることで購買意欲が下がってしまうケースも多く見られます。
テストクロージングの際は、相場感も伝えることで、相場に近い金額もしくは相場より低い金額であることを理解してもらえるでしょう。
クロージングを行う際は、顧客に過度な不安や不快感を与えないことが重要です。
例えば、沈黙して考えさせるクロージングで、沈黙を恐れてついしゃべってしまうと、顧客に検討するタイミングを与えられなくなります。
また、突然沈黙してしまうと、顧客を混乱させ不安にさせてしまうでしょう。
さらに、テストクロージングで購買意欲を確認する際は、聞き方を間違えると顧客に不快感を与えてしまうリスクがあります。
特に、金額面について話す際は相手の金銭事情に踏み込んで話さなければならないため、配慮が欠かせません。
顧客に不快感を与えない尋ね方を徹底する必要があります。
ただし、不安や不快感を与えるのを恐れるあまり、表現が曖昧になってしまっては意味がありません。
曖昧な表現では購買意欲を正しく確認できなかったり、顧客に刺さるトークができなくなったりします。
クロージングに成功するためには、2回に分けて実施することが効果的です。
1回目に高い要求を提示し、2回目はハードルを下げて提案すると、お得感が生まれて購買意欲が高まります。
例えば、1回目はフルオプションの高額なプランを提示して一度顧客に否定させ、今度はオプションを厳選し、予算内のプランを提示しましょう。
価格が下がることによるお得感や、「自社のためにニーズを満たしたプランを提案してくれた」と感じてもらうことで、購入や契約に至りやすくなるのです。
イエスバット法とは、顧客の意見を否定する際に、一度共感したうえで自分の意見を伝える話法です。
例えば、顧客が「価格が高すぎる」という反応を示した際に、「しかし〜」「ですが〜」といきなり否定してしまうと、顧客は「意見が否定された」とネガティブな感情を抱いてしまうものです。
まずは、「お気持ちはよくわかります」「おっしゃる通りです」など、一度相手の意見を受け止めるクッション言葉を述べましょう。
その後に「しかし〜」と続けることで、顧客の意見を否定せずに自分の意見を伝えられます。
「しかし〜」の部分で、デメリットを上回るメリットがあることをアピールできれば、顧客の懸念を払拭できるでしょう。
クロージングを成功させるためには、タイミングを見極め、相手に合わせて効果的なクロージング方法を選択する必要があります。
どのような状況や反応が来てもスムーズに切り返せるよう、事前にトークスクリプトを用意して準備しておきましょう。
クロージングには多くのコツがあるため、今回の記事を参考にしながらトークスクリプトを作成し、社内のクロージングスキル向上に取り組んでいただければ幸いです。
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A. 本記事では、沈黙して考えさせる、あえて引く、具体的に想像させる、選択肢を提示する、商談の途中で意思を確認するテストクロージングの5種類を紹介しています。
それぞれ効果を発揮する場面が異なるため、顧客の反応や商材の価格帯に合わせて使い分けることが大切です。
各種類の例文も掲載しているので、トークスクリプト作成の参考にしてください。
A. 最終的なクロージングの前に、商談の途中で顧客の興味関心や成約の見込み度合いを確認する質問を投げかけることです。
こまめに意思確認をすることで、成約の可能性を判断しながら確度の高い営業活動を進められます。
顧客との関係を良好に保つ緩衝材の役割も果たすため、商品紹介の前や金額提示の前に意識的に実施しましょう。
A. 顧客が商品やサービスに強い興味を持ち、あと少しで購入・契約してくれそうだと感じられるタイミングです。
たとえば契約後のサポートについて質問が出た場合は、前向きに検討しているサインと読み取れます。
購買意欲が低下しているときに実施しても敬遠されるおそれがあるため、テストクロージングで反応を確かめながら見極めましょう。
A. タイミングを見極めること、商品やサービスの価値を具体的にアピールすること、顧客に過度な不安や不快感を与えないことが基本です。
加えて、1回目に高い要求を提示して2回目にハードルを下げる2段階のクロージングや、一度共感してから自分の意見を伝えるイエスバット法も有効です。
事前にトークスクリプトを用意しておくと実践しやすくなります。
この記事の監修者
平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。