日進工業株式会社
竹元盛也
POSTED | 2018.07.27 Fri |
---|
TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:製造業 創立:15年以上 決裁者の年齢:60代 商材:BtoB |
---|
話題の医療系ドラマにも登場した新プラスチック鉗子
幅広く、柔軟な発想で今までにない自社製品の開発をTopics
日進工業株式会社 社長 竹 元盛也氏のONLY STORY
プラスチックを用いた自動車の部品作りから、医療器具の開発へ
日進工業株式会社が医療用器具を作ろうと思ったきっかけは、医療器具を扱っている商社から樹脂製の鉗子の開発を持ちかけられたことでした。合計2年間、大田区から助成金をいただけるようになったことで、開発に至りました。
もともと日進工業株式会社としても医療業界に参入したいという想いはあったのですが、伝手や知識もない状態では難しく、取っかかりが掴めずにいたんです。そこに向こう側からニーズがきたので非常に有り難かったですね。もともと自動車の部品がメインなのですが、今後は医療の方に注力していきたいと考えています。
なぜこうしたシフトを行っていくのかというと、自動車の部品として、樹脂製のものは一般的なんですね。一般的なものは、既に日本から海外へ生産がどんどんシフトしていっています。そして国内では際限のない価格競争が起こり、このままでは会社としては疲弊していく未来しかありません。
昔から、大阪のあたりには中小企業でも自社製品をたくさん持って、展示会などに積極的に出展している同業の成形メーカーさんがたくさんありました。そういった企業を見ていると自社製品を持ちたいという想いはもちろん感じました。
しかし、何を作ってどこに売るのかという問いに答えが出ず、なかなか真剣に向き合ってこなかったんですね。当時はまだ時代としても、自動車の部品を作って満足な売上が取れていた時代だったこともひとつの理由です。
しかし、いよいよ自動車の部品だけでは将来的に厳しい、どんなものでもいいから強みとしての自社製品を開発したいと思っていたところに医療用の鉗子という千載一遇のチャンスが訪れたんです。
考えてみれば、今まで取り組んできた技術はどれもこの自社製品に繋がるものばかりでした。
例えばメタリック樹脂成形などは非常に難しい技術で、日進工業株式会社が量産しはじめたときには不良率は40%だったんです。そのままでは赤字が続く一方だということで最終的に2%まで下げ、利益に繋がるようになりました。
しかし、成形の難易度が高いためなかなか受注が続かず、リーマンショックが起きたこともあっていろいろなことを試しはじめたんですね。今まで線が入る不良が起きていたシルバーの成形を改善したり、そういったことに取り組んでいくうちに色のバリエーションも増え、形状のバリエーションも増えていきました。それが今の、この鉗子に技術として活かされています。
用途は使う人に委ねる。無限のカラーバリエーションを持つ鉗子
この鉗子はわざと材質や色の違うものを作っているのですが、色のバリエーションを無限に増やすことも可能なんですね。もともと鉗子はステンレス製のものが多いので銀一色というイメージがあると思うのですが、プラスチックであれば最初から色を変えることができる。そうすることで、複数種類の鉗子を一目見ただけで使い分けられるというメリットが生まれます。
当社が開発した鉗子の特徴はまだあって、一つは金属類を全く使用していない、オール樹脂製であること、もう一つは塗装などの加飾をしていないため、剥がれるということが全くない、ということです。
そもそも、これを医療用の鉗子として使う必要性もないんです。カラフルなインテリアとしてぶら下げておいてもいいし、犯罪に使わない限りは、その使い道はすべて買った人に委ねられると思います。
医療でしか使われないとなると、買う人に制限が生まれてしまいますが、売る側が用途を絞り込む必要がないと気付いてからは間口が広がりました。当初は見た目もステンレスに似せたものを作ることに集中していたのですが、ある商社の社長からアイディアをいただき、いろいろと評価をしてもらう中で材料を変えたり、カラーバリエーションを増やすことで、さまざまな発見がありました。そして、当社がこの鉗子の開発を終え、世の中に対してPRを開始した数か月後、偶然にも『ブラックペアン』というドラマが始まりました。
『ブラックペアン』に出てくる鉗子は、オールカーボンといってカーボンの入った樹脂を使っているんです。この時点では、カーボン製の鉗子は世の中に実在していない前提でしたが、実は当社が既に発表していたのです。
実を言うと、プラスチック鉗子を開発するにあたって把持力の調整には少し苦労しました。ただ、把持力が強ければいいのかというと一概にそうも言えません。医療の現場では挟むものっていろいろな種類があるんです。チューブを挟むこともあれば、血管や人の肉を挟むこともある。従来のステンレスの鉗子は、最初から把持力が桁違いに強いので、逆に調整ができないんですね。
私たちはそれを逆手にとって、あえて材質を変えることによって把持力の強弱を作ることができたというわけです。
ちなみに、当社が開発した鉗子の中でカーボン製の鉗子の把持力は、ステンレス製のそれとほぼ同等です。にもかかわらず、重量はステンレス製の1/4であり、操作性も非常に軽いという特徴を持っています。
幅広く柔軟な発想で、世の中の役に立つ自社製品を作る
今後の展開としては、医療業界だけでなく一般消費者に対しても幅広い販売実績を作りたいという想いがあります。そのためにはまず、「知ってもらうこと」。知名度、これがないと売れるものも売れません。そのハードルは少し高いかもしれませんが、努力を重ねていくつもりです。
また、販売市場も日本国内に限らず海外進出を考えています。海外の医療関係の展示会にはこれまで3回出展していますが、そのうち2回はこの鉗子を出しており、大変高い評価をいただいております。
新しい市場を獲得しながら、従来通り設計図をもらってその通り質の高い製品を納品するというやり方から、どんどん自社で新たな製品を生み出していって、そこに顧客のアイディアをいただいて、さらに発展させていくという方向へシフトしていくことを目指していきます。幅広く柔軟な発想で、世の中の役に立つものをどんどん生み出していきたいと考えています。