株式会社小原工業
秋山 重幸
POSTED | 2018.09.30 Sun |
---|
TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:製造業 創立:15年以上 決裁者の年齢:70代 商材:BtoB |
---|
職人の強い想いがこもった高精度な義肢装具を届けたい
外進出も視野に入れ、高い技術を世界へ広めていくTopics
今回は、義肢材料の製造・販売を主事業とする株式会社小原工業の代表取締役社長・秋山氏にお話を伺いました。まずは、主事業である、義肢材料の製造について詳しくお聞きしましょう。
株式会社小原工業 社長 秋山 重幸氏のONLY STORY
職人のこだわりによって、精度の高い義足装具を製作
株式会社小原工業は義肢などの装具に使われる材料を中心に製造しています。義肢のユーザーとなる患者に向けて作っているのではなく、あくまで材料やパーツを手がけ、義肢装具士に向けて提供をしています。
実はその需要は昔に比べると確実に減ってきていますね。昔は交通事故や工事現場の事故によって足を切断することが多かったのですが、医療の進化によって、なるべく切断をしないような形に変わってきているためです。
一方で、糖尿病などの内科的な原因によって切断することもあるため、その方面の需要は昔に比べると増えている印象があります。
義肢や装具のパーツを製作している会社は国内に2社しかなく、そのうちのひとつが株式会社小原工業です。総合的に様々なパーツを取り扱い、ストックしているのは2社のみなんです。
私たちの強みは、精度の良さにあります。職人がひとつひとつ手作業で調整をしており、その丁寧な仕事が精度の高さに繋がっています。少しでもガタがあると、使用時に音がしてしまったり、最悪の場合破損してしまうこともあるので、中途半端な仕上がりのものはひとつもありません。
働いている社員もみんな職人魂を持っているため、手を抜くということが一切できないんです。その想いの強さが売りのひとつですね。
当社を立ち上げたのは私の祖父なのですが、工場で働いている社員も、私同様に二代目や三代目が多いんです。今工場長を担っている人も、前工場長の息子で、昔からの職人魂が絶えることなく継承されています。
精密さに関して具体的にお話すると、人間は0.04mのズレがあると気になると言われています。そのため、株式会社小原工業の製品はズレはすべて0.03m以内に徹底しています。
素材について言えば、昔からのこだわりを大切にしていますし、製造の過程においてはさまざまな改良を経て、鍛造という方法を取っています。要するに、刀を作るように鉄やアルミを叩いて伸ばすんです。そうすることによって、義肢装具士が二次加工する際に折れにくくなっています。
こうした精度の高さが、義肢装具士の養成時にも役立ち、養成所でも多く使用していただいています。
また、株式会社小原工業では現在一般の消費者に向けた商品にも着手し始めており、義肢装具士が考えたノウハウを利用して、靴の中敷きやコルセットを製造し販売しています。
父を亡くした悲しみを乗り越え、祖父の意志を継ぐ決心を固めた
株式会社小原工業は祖父が立ち上げ、父が二代目を継ぎ、私で三代目になります。もともとは義肢装具を作る会社ではなく、おもちゃやライターなどを作る工場でした。
ただ、近くに材料衛生省という、今の厚生労働省にあたるところがあり、そこから依頼を受けて義肢装具の製造に携わるようになりました。
私は当社に入社して15年ほどになります。私が入社した3年後に父が突然亡くなり、祖父も引退間際だったので、祖父や父が育ててきた社員に支えられながら経営を続けてきました。
正直なところ、父という柱を急に失ったことで会社の存続については非常に悩みました。しかし、祖父の想いを引き継ぐ決心を固め、工場長、営業部長の支えによって、私は専務として経営のハンドルを握り始めたんです。
祖父が工場を立ち上げ、父が輸入を進めてきたこの会社で、私が新たに始めたことは、海外輸出です。
海外の展示会に参加して、既存の製品と当社の製品がどのように異なるかを説明しました。そこで、鍛造という製法に興味を持っていただき、韓国と中国、そしてロシアに輸出するようになっていきました。
一度悲しい思いをした人たちに、二度悲しい思いをさせないために
今後は、一般消費者向けの製品も伸ばしていきながら、海外への進出先も広げていきたいと考えています。今はアジア諸国が中心ですが、他の国にもアピールしていきたいですね。
ちょうど来年、義肢分野における国際展示会の会場が日本に回ってくるんです。国内と言うことで、いつもよりも出展の規模も大きく取ることが可能になります。これをチャンスと捉え、今まで以上に当社の製品を知っていただけるよう尽力したいと思います。
一般向けの製品に関しては、代理店に委託して販売する形を取っています。先日ショップチャンネルやQVCには出演させていただいたり、インソールの「ココフム」という製品は、専用サイトでインターネット販売なども行っています。
「ココフム」は年間10万足の売上を目指しています。単純に靴を履くときの痛みを軽減するのではなく、義肢装具士が患者に接する中で得た知識やニーズをもとに作っています。これを使用することによって、将来変形性膝関節症になるリスクを抑えることができます。
現在、株式会社小原工業では、一緒に働く仲間を募集しています。アットホームな雰囲気を大切に、みんなで物作りをしているのだという結束力を感じてもらえるような職場環境作りを行っています。
私の祖父は、義肢を作るにあたって常に在庫がある状態を保つことを重要視してきました。エンドユーザーの方は、一度足を失って悲しい思いをしている。そういった方を補うための商品が足りない状況は絶対にあってはならないという考えがあったからです。
その意志を今も受け継ぎ、私たちは製品を作り続けています。この会社に興味を持った人は是非、株式会社小原工業を訪ねてきてください。