アートグリーン株式会社
根本 和典
POSTED | 2021.03.31 Wed |
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TAGS | 従業員数:51〜100人 業種:卸売業・小売業 創立:15年以上 決裁者の年齢:50代 商材:BtoB |
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日本一を誇る胡蝶蘭の年間出荷量5万鉢
全国ネットワークで遠隔地へも迅速配達Topics
今回のインタビューはアートグリーン株式会社専務取締役の根本和典氏に、胡蝶蘭だけでも年間5万鉢を出荷できる仕組みや戦略、同社創業の経緯などをお聞きしました。
アートグリーン株式会社 専務取締役 根本 和典氏のONLY STORY
【経歴】
1988年4月 STT株式会社(現PGMホールディングス株式会社)入社
1992年4月 当社入社専務取締役(現任)
2015年4月 当社事業本部長(現任)
午前中の注文で夕方5時にお届けも
––アートグリーン株式会社の事業内容からお伺いします。
根本氏:弊社は生産から販売までを行うフラワービジネスを展開しており、中でも胡蝶蘭を中心とした企業向けの贈答洋蘭鉢物市場で強みを発揮しています。胡蝶蘭は山梨、神奈川、千葉、愛知にある弊社の契約農家から供給され、弊社は代理店経由で届いた注文の手配をするので、生産から配達、川上から下流までの一手引き受けになりますね。
契約農家は生産責任を負う代わり、こちら側は販売責任を持つ形になっているので、1月2月といった胡蝶蘭をさばき切れない時期には、弊社が市場への出荷指示を出すなどのハンドリングをしています。
また岡山には生産した胡蝶蘭すべてを市場に出荷するクロージングの自社農園を持っているので、合わせると年間に5万鉢を出荷していることになり、これは日本一の実績を誇っています。
––企業はどういう用途で胡蝶蘭を贈るんでしょうか。
根本氏:やはり目立つのは新規出店やオフィス移転のタイミングです。でも、一番多いのは春の人事異動の時期で、受け切れないほど膨大な量の注文が殺到します。そうなると、もう翌日回しでお願いするしかありません。特に4月や6月の株式総会の時期はてんてこ舞いになりますね。
それに日本はお金を使う月や日が決まっているようで、月初めの1日、週初の月曜日に贈ることが多く、縁起をかつぐせいか大安の日も目立ちます。異動も起業も1日付がほとんどで、特に4月1日は年間で一番集中する日ですね。
––御社を利用するメリットを教えてください。
根本氏:弊社をご利用いただくメリットとしては、何と言ってもサービスレベルの高さではないでしょうか。東京、名古屋、大阪、福岡の4拠点の市内であれば、午前中の注文で夕方5時までにはお届けが可能です。また全国配送にも迅速に対応できる点が一番の特長で、こういうサービスを全国で展開しているのは弊社だけですね。
もう一つはネットワークを生かしたビジネス展開で、たとえば東京から北海道へ開店祝いのスタンド花を贈る際、納品先の最寄りの花屋さんに注文を転送することで、その日のうちに届けることができるようになっています。
製品の花自体はそう差があるものではないので、このようなサービスレベルの違いは大きいと思いますね。
––顧客企業の反応はどういうものがありますか。
根本氏:弊社を利用した場合、ふつうは3万円かかるところが2万円程度で済むので、この経費削減効果が一番評価されています。大企業であればそれだけ取引先も多く、胡蝶蘭の需要もかなりの量になりますからね。
また、弊社は上場企業のグループ会社を通して、グループ全体の胡蝶蘭の発注を一手に引き受けるビジネスモデルを持っており、その大量発注のお礼というわけではないですが、役目を終えた花の撤去サービスが経費削減に負けないくらい喜ばれていますね。胡蝶蘭の鉢は陶器、支柱は針金という具合なので、みなさん処分に手間がかかって困っているんです
起業の決め手は経営者の趣味と洋蘭の利益率
––根本さんが御社経営に参画した経緯をお聞かせください。
根本氏:私はもう35年も前のバブルのころ、ゴルフ場開発の会社へ入社し、ゴルフ会員権販売に従事していました。弊社代表の田中豊はその時の同期で、田中から独立を誘われ、軽い気持ちで一緒にこの会社を創業したんです。
当時、ゴルフの会員権は何千万もする高額商品だったので、購入のお礼にいつも胡蝶蘭を差し上げていたんですが、この費用だけでも商売になるくらいの額に上っていました。田中はこれに着目していろいろ調べたところ、洋蘭の利益率が非常に高いことがわかり、上場会社役員の趣味も園芸がゴルフ、読書に次ぐ3位だったことから、胡蝶蘭で独立することになりました。
––起業後、印象に残っているエピソードはありますか。
根本氏:弊社は24年目に上場会社になりましたが、最初はまるでダメだったので、フラワー教室やチラシ配布、引き売りなど、何でもやりましたね。たとえば、年に1000万円売ったという八百屋がいるマンモス団地へ軽トラを乗り付けて観葉植物を並べるんですが、その日の売り上げがたったの2500円なんてこともありました。
そんなことを懐かしく思い出されますが、それも何か今につながっているような気もしています。それに起業はバブルがはじけた後で、景気もこれ以上は下がりようのない時期だったのが良かったんです。
「先義後利」の精神を大切に事業運営を
––この先の短期的、長期的な事業展望をお伺いします。
根本氏:今の売り上げ20億を50億にまで引き上げるのが向こう5年間の計画です。その先の10年を見据えた展開としては、このグリーンビジネス中心を維持しつつ、時代の流れに沿ってWebへの転換もしなくてはならないと考えています。それにはかなりの投資が必要なので、そのためにも今は少しでも多くの収益をと頑張っているところです。
現在、この業界はシュリンク傾向にある一方で、コロナ禍にもかかわらず売り上げが過去最高の90億を超す会社もあります。どんな状況にあっても、アイデアとかやり方次第で利益は出せるんだと感じますね。
––最後に、読者である経営者のみなさんへお伝えしたいことがありますか。
根本氏:弊社は「先義後利」という言葉をポリシーとしています。これは元々が中国の儒学にある言葉で「人としての道義を優先し、利益は後回しにしていれば自ずと栄える」という意味で、今後もこの精神を大切に事業運営したいと考えています。
弊社事業も多くの下請け会社があってこそ利益が出せるのだと思っているので、下請けというよりは事業のパートナーとしてお付き合いしているつもりです。また代理店さんも弊社事業をよく理解してくださり、良好な関係を築けていることで今日の弊社があると思っています。
執筆=増田
校正=笠原