ペイフォワード株式会社
渡邉 健太郎
POSTED | 2018.07.06 Fri |
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TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:飲食店・実店舗 創立:7〜8年 決裁者の年齢:40代 商材:BtoC |
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ママさんセラピストに活躍の機会を!
従業員第一主義を貫く「オフィリラ」の魅力とは?Topics
「育児や介護で離職された方のなかには、業務に対応出来るかどうかわからない不安感から復職に二の足を踏む方も少なくありません。わたしたちはそういった方々に新しい働き方、多様性のある生き方を提案したいと思っています。」
そう語るのは、訪問型オフィスマッサージサービス『オフィリラ』を提供するペイフォワード株式会社の代表取締役、渡邉健太郎氏だ。
同氏が提案したいと願っている「新しい働き方」とはどのようなものか。その話に入る前に、まずは渡邉氏のキャリアを振り返ってみたい。同氏が人生の節目で得た確信が起業の動機や事業理念と密接に関わっているからだ。
ペイフォワード株式会社 社長 渡邉 健太郎氏のONLY STORY
専門性を持つプロフェッショナルの支援がしたいという想い
渡邉氏は、4つの会社を経て起業した。
「広告代理店でコピーライターやプランナーを務めたあと、ウェブコンサルタント会社に移り、コンサルタントとしてウェブ戦略の立案や新規事業の立ち上げを経験しました。
その後、看護・介護職の紹介事業を中心とした事業会社を経て、マッサージやリラクゼーションサービスなどを手掛ける会社の取締役として新規事業開発に携わったこともあります。」
渡邉氏が3社目の人材紹介会社にいたときのことだった。看護師への職業紹介サービスに携わるうち、育児や介護で離職したまま復帰できないでいる人たちの多さに驚かされたという。
「資格は持っているが、何らかの事情で働かれていない看護師を『潜在看護師』といいます。その数約70万人とも言われ、離職して数年経つと手技や病棟で扱う医療機器も変わってしまうため、復職に二の足を踏んでしまう方が多くいるのが現状でした。」
4社目でECの運営やリラクゼーションサロンの運営やコンサルティングなどを手掛ける会社の取締役となり、リラクゼーションサロンのセラピスト人材紹介事業に携わるうち、この世界にも潜在看護師と同じような課題があることを知る。
「家族の世話などで働ける時間が限られているため、復職したくてもできない人が少なくありませんでした。その頃から、専門性を持つ人たちの支援がしたいという想いが明確になりました。」
渡邉氏が入社して数年後、経営戦略の見直しからセラピストの人材紹介事業から撤退することが決まった。そのタイミングで渡邉氏は意思を固める。
「前職の会社から事業譲渡を受けることにしたのです。それが、このペイフォワードという会社の基礎となりました。」
社名は2000年にアメリカで公開された映画「ペイ・フォワード」にちなみ名づけたという。映画と同じように、人から受けた厚意をその相手に対して恩返しする「ペイ・バック」ではなく、受けた厚意や財産をほかの必要なだれかに贈り、善意の輪を広げる「ペイ・フォワード」するという考え方に、会社としての価値観を感じたからだ。
従業員第一主義が、結果的に顧客第一主義につながる
会社経営ははじめてだったが当初から勝算はあった、と渡邉氏はいう。
「サロンの経営コンサルなどを通じて、勤怠ルールを簡素化したり報酬を高く設定したりすれば、ホスピタリティが高い優秀なセラピストが集められることはわかっていました。つまり、従業員第一主義が結果的に顧客第一主義につながることを知っていたので、不安はありませんでしたね。」
そこで、働ける時間が日中に限られているママさんを集め、訪問型オフィスマッサージサービス『オフィリラ』を立ち上げた。訪問先がオフィスなら、日中しか働けないことはデメリットにならない。しかし、それ以上に『オフィリラ』がユニークなのは、オフィスで働く人々にサービスを提供するだけに留まらない点だ。
「休職中はどうしても社会から切り離されていると感じたり、復職への不安に苛まれたりする方が少なくありません。会社がそうした事情を承知していても、オフィスに来られない以上、積極的に社員をケアすることが難しい。
そこで、ママさんセラピストが産休や育休中の社員のご自宅に伺うリラクゼーションサービスを、もともと個人向けにサービス提供していた【みまもりリフレ】さんと協力してはじめました。」
産後うつは10人に1~2人の割合で発症するといわれています。そこで出産、育児を経験したママさんセラピストが、身体のケアだけではなくサービスを受ける側の新米ママさんのお話しを施術しながら聞くことでストレスケアにもなるサービスを開始しました。そしてこれは同時に、ママさんセラピストたちの社会的価値の向上にもつながるのだと渡邉氏は話す。
「世間では、いまだママさんの価値は低く見積もられがちです。休職中の社員のケアに育児経験を活かすことで貢献できれば、彼女たちの社会的価値や地位の向上にも貢献できると考えました。
さらに言えば、これまで彼女たちがおかれていた環境は、画一的に決められた時間労働が原則となる正社員中心の働き方とも無関係ではありません。そこで、弊社ではスタッフのキャリアの継続、向上を目的とするため、業務委託という形でなるべく働き方の自由度を広げてセラピストを募り、持続可能な活躍の機会を提供しています。」
一般的に業務委託というと、経営者が知識のない人を騙すようなイメージが一部にはあるかもしれない。だが、本来は技術を持ったプロが時間にとらわれず働き稼ぐのに適した仕組みだ。
「長く働いてくれるに越したことはありませんが、ここでの経験を生かして将来独立や店舗に戻ってもらっていいと思っています。こうした新しい働き方が広がることで、彼女たちが自分の仕事に誇りを持って継続的に働くことができるなら、それは社会にとってもいいことに違いありませんから。
ですから、わたしたちは確定申告や保険の加入など、業務委託に不可欠な知識や手続きを手厚くサポートすることで、業務委託の悪いイメージの払拭に努めています。」
マッサージサービスにとらわれることなく、この価値観を全国に広めたい
最後に、『オフィリラ』の事業の展望を伺うと少し意外な答えが返ってきた。
「実はマッサージやリラクゼーションにはこだわっていません。お客様の気持ちや体が楽になったり、喜んでいただけたりするのであれば、ネイルでも占いでもいいと思っています。
大事なのは、働く人がいかに毎日イキイキと働けるか。そうした前向きな気持ちがお客様の喜びにつながるからです。これからもこの信念を大事にしながら、さまざまサービスを提供していくつもりです。」
渡邉氏が重視するのは、あくまでも従業員第一主義を起点とした顧客第一主義なのだ。
「できれば『オフィリラ』で培った経験や仕組みを、全国に広められたらと思っています。地方の中小企業や工場で働く皆さんも、わたしたちのサービスを通じて自分たちの会社がより好きになっていただけるようなお手伝いができたら本望ですね。」
もちろん全国展開の意義は、顧客のみならず働く側にとっても大きい。
「うちの訪問システムは、スタッフが自宅からオフィスや訪問先に行って帰るのが基本。サービスも11時から16時の間を推奨しているので保育園や病院への送迎も可能です。
お客様の多くはわたしたちの取り組みに共感し、協力してくださっているので、時間的な制約があって働けない方、そもそも働き口が少ない地方の方にもこうした新しい働き方があることを知ってほしいと思っています。」
ペイフォワードが目指しているのは、規模を追う経営ではなく価値観の共有を目指す経営だ。
「売上を上げるのも大事ですが、それと同じくらいわれわれの価値に共感してくれる仲間を増やすことを大切にしたいと思っています。ですから多くの方々に働き方には多様性があるということを伝えたい。それが未来の働き方を育む原動力になると確信しています。」
構成=武田敏則(グレタケ)