株式会社中村コミュニケーションズ
中村 有更
POSTED | 2018.09.21 Fri |
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TAGS | 従業員数:31〜50人 業種:製造業 創立:15年以上 決裁者の年齢:50代 商材:BtoB |
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印刷物のインフラとして名刺に特化したサービス展開
さまざまな経営戦略で顧客の信頼を勝ち取るTopics
今回は、商業印刷を主事業とし、現在は名刺のクラウド発注サービスに力を入れる、株式会社中村コミュニケーションズの代表取締役社長・中村氏にお話を伺います。会社を継いだ経緯から順にお聞きしましょう。
株式会社中村コミュニケーションズ 社長 中村 有更氏のONLY STORY
別の印刷会社で働いた後、実家の会社を継ぐ
私の父親は印刷会社を立ち上げていて、トヨタのディーラーのチラシや価格表を作る印刷に特化していました。商業印刷といって、ポスターやパンフレットなど広告で使うものを取り扱っており、営業もデザイナーも増やして、ずっと右肩上がりの経営が続いていたんです。
その間に、私は静岡の印刷会社に入社したのですが、その会社は大きな設備投資をした分の仕事を埋めきれず、赤字経営になってしまい、私は半年くらいで一度実家に戻ることになります。
それから、実家の会社と付き合いのあったトヨタのディーラーで営業などに携わり、3年ほど働いて実家の会社に入社。そのときは統括部長という役職で、具体的には営業、デザイン、工場、総務の四部署のトップという立場に就きました。
印刷物できちんと利益を取るための「福袋経営」
私は仕事をする際「福袋経営」というテーマを掲げています。
印刷会社は決して安い価格で仕事をしているわけではないため、相見積もりを取られると企業側としては非常に厳しくなるんです。他社の基準に合わせて価格を落としていくとデザイナーを雇用したり、教育する費用がなくなってしまいます。
そこで私が考えたスタイルは、広告代理店の見積もりです。そこには、イベント企画費、打ち合わせ取材費、お客様へのプレゼント一式、警備員の配置や当日の弁当代など、さまざまな見積もりが入ってきます。
私たちの印刷物は紙代、デザイン代、印刷代、配送代という明細を出しているのですが、お客様に届くときには印刷告知物一式になってしまいます。
それであれば、広告代理店がやるようなイベントサポート業務を一緒に行えばいいのだと思いついたんですね。
広告代理店が1000万円で仕事を受けますと言ったときに、500~600万円で仕事を任せたいと考えているディーラーに「株式会社中村コミュニケーションズがお手伝いします」と言える。そうすることで、見積もりに新たな項目を追加できるんです。
50万円の福袋の中に真珠のネックレスが入っていて、その他にもカシミヤのセーターやマフラーや手袋が入っているとします。ネックレス以外がすべて赤字だとしても、ネックレスで利益が取れてしまえば良いというのが「福袋経営」の考え方です。
つまり、100万円の印刷物を相見積もりされて「他社は90万円で受けてくれるから10万円値下げしてほしい」と言われるよりも、イベント一式として100万円の見積もりを出して印刷の値段が確保できる方が企業としてメリットがある。そういった方法で、売上を5億4千万円まで伸ばしました。
その後、リーマンショックや2011年の大震災を受けて、広告のように時勢に左右されず、コンスタントに売上を取ることができるインフラに密着した印刷物を作るということに着目しました。
今、会社として力を入れているのは名刺のクラウド発注サービスです。名刺は景気が良くても悪くても配るもので、どんなに大きなIT企業の社長であっても名刺は紙で渡すんですね。
これから日本社会のIT化がますます進んだとしても、名刺はそう簡単にはなくならないでしょうし、業界を問わない商品であると言えます。そこでシステム会社の人と協力して、専用の名刺クラウドサービスを提供しています。
そうすることで、営業もデザイナーも工場も稼働せず、私とパートタイムで働いてくれている人だけで売上が立つんです。今は上場企業や大企業向けの名刺クラウドとして、生命保険会社や建設会社に向けてサービスを展開しています。
他の商業印刷についてはトヨタのディーラーのみに特化したサービスを行っているのですが、印刷物を見た他のディーラーからもオファーがくるようになりました。
株式会社中村コミュニケーションズはディーラーが満足する販促ツールの作り方を熟知しているため、それで評判が広まり、さらに売上を伸ばすことに繋がりました。
社員と顧客のために、次の経営者を育てる
社長が急に前線で働けなくなったときに会社がどうなるかということは、常に考えなければなりません。もちろんいつまでも元気で働くのが一番良いんですが、人間いつかは死ぬものです。しかも、そのいつかはいつくるか誰にもわかりません。
そのため、まずグループ会社を5社作ろうと考えています。印刷広告という部分だけを伸ばすのではなく、その他の分野にも進出していきたいし、M&Aも行っていくつもりです。
なぜ5社かというと、私の右腕、左腕を担う社員たちをみんな社長という立場に置いて見守り、その中から、私に万が一のことがあったら会社を任せられる人材を選んでおくことができるからです。
グループ会社の社長同士で競争原理を働かせたり、悩みを共有することで、経営者として成長することができる。
私がこれから社員とお客様のためにしなければならないことは、経営者を育てて安心感を作ることだと思います。10年かけて作ってきたこの会社を、次の世代に渡すための10年を歩んでいくこと。それが、今後の私に課せられたミッションです。