株式会社クリテック工業
若林 勇二
POSTED | 2017.05.09 Tue |
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TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:製造業 創立:15年以上 決裁者の年齢:50代 商材:BtoB |
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幅広い年代でインフラ業界の発展に寄与する!
日本中の橋を支える伸縮装置でインフラ業を牽引する。Topics
株式会社クリテック工業 社長 若林 勇二氏のONLY STORY
人生の指針が判事から経営者へ
私の人生には数回の転機があります。その中でも今につながる特に大きなきっかけは31歳のときのことです。小さい頃から父に「社会貢献をしろ」という言葉をかけられながら育てられたので、困った人を助ける仕事として判事を目指していました。大学時代から10年にわたり司法試験に挑戦し続けましたが、結果は出ませんでした。試験に落ちるたび、まだ社会貢献ができていない自分に悔しさを覚えました。そこで社会に出るということを改めて考えたとき、法曹の仕事は事件が起こってから動き出す一方、経済人なら自分が行動すれば必ず社会の役に立てるということに気づきました。
それでは経済人として何を目指すかを考えたときに、司法試験を受けている期間で友人たちと食事をしたときのことを思い出しました。社会人生活が10年近くになる友人たちはある程度の職位についている人が多かったのですが、そこで出てくるのは愚痴ばかり。友人たちを見ていて、私は『働いていて愚痴ばかり言う人をなくすべき、そしてそれは経営者にしかできない』と思いました。それからまずは、「経営者になるためはお金のことが分かればいいんだ」と思い込み経理を目指したんです。
しかし、かつて営業職だった父が「営業はモノやサービスを売り込むことではなくて、自分をわかってもらうこと」と言いました。大学を2浪して、司法試験も10年受けている人なんて世の中にそういない。こんな自分を語れるのは私だけだと思ったんですね。そこで営業は私の天職だと思い、結果として営業職に就職しました。人の役に立てる社会人になれたことが本当に嬉しかったので、実現したいことを目指して仕事をしました。当時の社長が私の想いを理解してくれたので有り難かったのですが、一部の先輩に目をつけられたときから会社として私の想いを実現する環境が用意できなくなってしまいました。
そんなとき、友人たちから度々、父の経営する橋梁(きょうりょう)用伸縮装置の会社に入ったらいいと言われました。法学部出身で橋梁には縁がなかったので、ニーズも市場規模も知らなかったものですから、まず、市場調査を行いました。すると全国で競合の会社は20社ほどに対して橋の数が70万橋もあり数字的に大きいこと、橋梁用伸縮装置の寿命は20年から30年(当時)なので、一生無くならない仕事であることがわかったんです。
父の会社に入るということは、ゆくゆくは後を継ぐことになる。もし自分が入ったとしても、営業には自信があったこともあり、会社をつぶすことはないと思いました。ここからクリテック工業での仕事が始まりました。
橋を守る製品づくり。開発から施工まで
現在扱っている製品は、橋梁用伸縮装置という土木資材がメインです。一般的にはあまりなじみがない製品ですが、車で橋を渡っていると“カタンカタン”と少し衝撃を感じたことがあると思います。ここに使われているのが橋梁用伸縮装置です。橋は、温度変化によって伸びたり縮んだりします。その伸縮を吸収するために設置するもので、騒音や衝撃を発生させないようにすることが大きなポイントになります。
クリテック工業には、3つの特徴があります。1つ目は、メーカーなのに自社工場を持たないという点です(ファブレス)。ファブレスであることにより、資金や人材を研究開発に集中させることができ、市場の急速な変化にも対応できます。2つ目は、施工まで行なう点です。工事の発注者は役所であることが多いため、製品に関する意見を直接いただくことが困難です。だからこそ、現場で実際に施工をしながら問題を見つけ出し、自分たちでより良い製品を作り出すヒントをつかむ必要があります。私たちはそれを“宝探し”と呼んでいます。3つ目は、間接販売だけに頼らず直接販売もしている点です。商社を挟まず直接ユーザーに販売することで、自社で価格設定をできることがビジネスモデル上重要になっています。
既存の人を守り、新しい人も入ってこられる会社になる
社員に対しての教育は会社の理念・ビジョン・方針などは文字化して、経営計画書という一冊の本にし、全社員で共有しています。『明るく、楽しく、末永く働きやすい職場を築く』というのをモットーにしているのですが、当社の最高齢が80歳超なんです。本当に終身雇用にしていきたいと思っています。
人生の中で働く時間が一番長く、働く時間が楽しくないというのは人生損していることになると思います。苦しいことや悲しいことがあったとしても仕事が楽しいものであってほしい。モットーの「明るく」には、物事に陰の部分があったとしても、陽の部分を見られるようになってほしいという意味も込められています。
社内では社員が自主性をもって働けるように、様々な取り組みをしています。例えば、社員がお互いの変化に気づき讃え合うようにするための“イイネカード”があります。このイイネカードを最も多く書いた人、もらった人は表彰されるという制度もあります。他にも外部研修が受け放題、改善提案会議、毎週の朝礼など、クリテック工業にはたくさんの教育制度や情報共有制度、表彰制度があります。
一方、社会に対してという点では、この業界を存続させていきたいと考えています。インフラ事業に関わる人は労働人口の半数と言われており、とても大切な業界です。しかし、最近のインフラ工事の現場は高齢者ばかりであり、経営者も高齢化し後継者がいないのが実情です。そこで、年配の方を守ることはもちろん、後継者を育成していく必要があると考えています。そのためには若い人が、この業界に入ってくる環境づくりに努めています。
今の段階では会社を拡大しようという考えよりも、自分が関わっている人たちが少しでも幸せになるようにしたいと思っています。そうして、インフラ事業を発展するために寄与していきます。