株式会社mK5

代表・光原 朋秀

NHK『ガッテン!』も、『日本人のおなまえっ!』も。

〜全国1,000万人に愛される番組をつくる、6人の制作者集団〜
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社員6人と小規模ながら、数々の人気番組を生み出すテレビ番組制作会社、mK5(エムケイファイブ)。今回はディレクター兼プロデューサーの光原朋秀代表に番組制作の裏側や醍醐味、「AD制度を設けない」という同社の育成方針などをうかがいました。

「一人で簡単に動画をアップできる時代だからこそ、制作チームの知恵を結集させたコンテンツを発信したい。幅広い世代の視聴者を意識した“テレビ的”な制作態度は見失わずに。」

株式会社mK5 代表 光原 朋秀氏のONLYSTORY


テレビディレクター、プロデューサー。1977年大阪市生まれ。関西学院大学卒業後、東京の制作会社でドキュメンタリー番組の制作にたずさわる。2007年からNHK総合『ためしてガッテン(現 ガッテン!)』担当。食と健康をテーマに10年以上演出を手がける。2011年、番組制作会社mK5設立。現在、『ガッテン!』演出のほかNHK総合『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』演出・プロデュース。その他、近作に『BS1スペシャル 勝敗を越えた夏 ~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~』Eテレ『575でカガク!』プロデュースなど。

「現役の作り手」だけが知る“NHKゴールデン番組”の裏側とは?

 
ーまず、mK5で手がけている番組について教えてもらえますか。

光原:現在、長寿番組の『ガッテン!』や古舘伊知郎さん司会の『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』など、NHKのゴールデン番組の演出を主に担当しています。

他にも最近では、俳人・夏井いつきさんと科学者がコラボしたEテレ特番『575でカガク!』、近年ブームの“高校ダンス”全国選手権への道のりに長期密着した100分のドキュメンタリー番組、宇宙の謎に迫る巨大実験施設「スーパーカミオカンデ」の改修工事の過程を4Kカメラで撮影したドキュメンタリー番組などの制作も行いましたね。

ーNHKのバラエティーからドキュメンタリーまでジャンルがさまざまですね。NHKではどんな番組が求められますか。

光原:すべて“全国放送”なので、何らかの新しい視点を提示することはつねに意識しています。また、NHKは“公共放送”という性格もあるので、番組を社会にどうリンクさせていくかという意識もあります。「放送したら終わり」ではいけないといいますか。さらに“ゴールデン番組”だとエンタメ要素も加わるので、作る難易度は…高いと思います(笑)でも一方で、それは作り手のこだわりを追求しやすい制作環境でもあります。

例えば『日本人のおなまえっ!』の場合、個人所蔵のマニアックな文献やローカル郷土史の生き字引のような専門家を見つけて、ネットではたどり着けない情報を掘り下げていきます。すると、「なぜ昔の日本人がこんな名前をつけたのか」という事実の先に、当時の人や社会の“なり”が浮かび上がってくることに気づきます。だれも知らないエピソードに初めて触れる瞬間は刺激的ですね。


ー深く調査をしているからこそ、視点が変わるような番組ができるんですね。

光原:でも、調べて終わりではありません。続いて、さまざまな情報を「どう伝えればみんなに届くか?」という視点でみながら番組の構造を考えていきます。

例えば、社内に備え付けたストーリーボード(通称:ペタボード)を囲んで何度も話し合い、通りすがりの人の思いつきなんかも落とし込んで、構成を練り上げていきます。その後ロケや編集を経て収録にたどり着いても、『ガッテン!』では“ここからが始まり”です。司会の立川志の輔さんの斬新な視点をリハーサル後に取り入れるからです。収録直前まで議論を尽くすので、このタイミングで台本が変わるのはもちろん、VTRの再編集をしたり、収録中に模型を作り直していたりするんです(笑)

初参加のスタッフは驚きますが、「本当に伝わるものになっているか?」「予定調和になっていないか?」と最後まで考え抜いた番組というのはやはり面白くなるんですよ。


ー番組の裏側にそのようなみなさんの姿があったとは…。

光原:“その時点でのベスト”を求めていると、ブラッシュアップできる余白が必ずポロッと出てくるのが面白いですね。制作者はそこに大きなやりがいを感じるんですが、普段番組をご覧いただいている業界外の方や学生の方には想像しづらいかもしれないですね。

穏やかな番組に見えるかもしれませんが、水面下では多くのスタッフが必死に足を動かしています(笑『ガッテン!』でいえば、全国1,000万人の視聴者がご覧になりますから、面白いものがお届けできれば反響をいただけますし、ときに思わぬリアクションに出会える喜びもあります。

ーどんなリアクションがありましたか?

光原:『ガッテン!』をご覧になった東北地方にお住まいのおじいさんからお手紙を頂いたことがあります。

その方はご自分の病気の実態がはっきりせず、あちこちの病院を受診されていたんですが、番組を見て「これって自分のことじゃないか?」と気づいて、受診すべき専門科が分かったそうです。

無事にご病気も改善されて「大変なお仕事かと思いますので、これでノドでも潤してください」と、お手紙にしわくちゃのビール券を同封してくださっていて…。


ー全国放送の番組ならではの体験ですね!

光原:そのビール券は今でも大切に保管しています。

番組づくりの醍醐味は、ひとりでは味わえない。

 
ー一方でテレビ業界のつらい部分はありますか?「激務」「眠れない」といった印象も根強いですが…。

光原:番組を作る上での繁忙期はありますが、それよりも新人の方が直面するのは「目の前の仕事が何につながっているのかが見えなくなる」という悩みかもしれません。

「こんな番組を作ってみたい」という思いを抱いて業界に入るんですが、さまざまな理由から、取り組んでいる仕事と本来の思いがじょじょに乖離していく状況に直面してしまうケースが多いんです。

ー光原さんのAD時代はどうでしたか。

光原:「早くディレクターになって自分で番組を作りたい」とばかり考えていましたね。だから、先輩ディレクターの下働きに心底熱中できないといいますか…。ADとして参加している番組をどこか“他人ごと”のように捉えていたかもしれません。そのくせ「自分でも面白い番組は作れる」と思い込んでいて。ミスも多くて叱られてばかりなのに、認められたい気持ちだけが先行していました。


そういえば、先輩ディレクターがいない時、その方の作ったVTRを見ながら自分バージョンを作って見せたらプロデューサーに叱られたことがありましたね(笑)若気の至り、と言いますか…。

ー新人時代は、みずから表現できる機会を探していたんですね。

光原:転機になったのは、転職した制作会社への出社初日。急きょ辞めたディレクターの代打で街レポの演出を担当することになったんです。

ようやくディレクターの仕事ができると思って、嬉々としてロケをすませました。でも、プラン通りに編集したものの、なぜか面白くないんです。きっちり台本も書いて、計画通りに撮ってきたのに、退屈な映像になっていました。

翌日の締め切りが迫る中、編集室で青ざめていると、同じ番組の先輩ディレクターがたまたま覗いてくれて、具体的な提案を次々にしてくださったんです。今ある映像素材からできることを探して。深夜まで編集に付き合っていただき、なんとかVTRは完成しました。

ー完成したVTRは、いかがでしたか?

光原:当初思い描いていたものとは全然トーンが異なっていて、自分ひとりでは決して思いつかないようなVTRに仕上がったんです。

それから約2年間、さまざまな先輩ディレクターに見守られながら毎週番組を作り続ける中で、周囲の人のアイデアにどんどん乗って、自分の枠を越えていくことのスリリングを味わい続けることができました。このころが番組制作の醍醐味を実感できるようになれた時期ですね。

ー現在の“チーム的な番組づくり”の原点のようにも感じますね。

光原:そうかもしれません。

AD時代は、先輩ディレクターのこだわりのもとに仕事を進めることが多いので、「自分がやりたいこと」と一致しないジレンマもあります。取材相手との慣れないコミュニケーションや、煩雑な段取りにストレスを感じることもあるかもしれません。特に今は、動画を個人制作しやすい時代ですから、ネット配信を楽しむ道を選びたくなる気持ちもわかるんです。

ただ、他人との関わりの中で自分のオリジナリティに気づかされることが番組制作では頻繁にあるんですね。「自分がやりたいこと」をチームの知恵と手間を借りて吟味していくと、本人の予想を裏切るものが出てくるというか。「あ、自分がやりたいのはこっちだった!」みたいな(笑)そうして生まれたコンテンツって自己完結しないので、自ずとテレビでしか表現できないものになるんです。mK5では、そんな番組制作の醍醐味を会社の仕組みを通して若い人に伝えていけたらと思っています。
  



AD制度なし!演出への熱意を育む「新たな働き方」とは?


ーどんな仕組みを通して番組制作の醍醐味を伝えていますか。

光原:例えばですが、mK5ではいわゆる「専属のAD」というポジションを設けていません。短い尺のVTRやスタジオコーナーのディレクターを新人のうちから担当してもらうようにしています。

たとえ番組の一部であっても“自分が指揮を執る”ということを早くから意識して仕事に取り組むと、目の前のちいさな作業が番組全体とどうリンクしているかが理解しやすくなるんです。

もちろん専属ADとして先輩ディレクターのもと「滞りなく作業を進める」ことに集中して得られるものもあると思います。でも、ディレクターとしての重圧をすこしでも感じながら「番組づくりを面白がる」という姿勢を培っておくのはもっと大切ですよね。

ー業界内での働き方に対する問題意識を、会社の仕組みとして落とし込んでいるんですね。

光原:現在、入社1年半の社員が、すでにEテレの45分尺の健康情報番組のディレクターを担当しています。先輩のサポートを受けながらですが、病気に見舞われた患者さんや専門医への取材などもひとりで行っています。

また、入社2か月の新入社員にも、次回制作する『日本人のおなまえっ!』でコーナーディレクターを担当してもらいます。


ー当事者意識をもって実践経験を積むことが制作者としての成長につながるんですね。

光原:mK5は小規模な会社ですから、私や先輩ディレクターが若い社員の様子を気にかけやすいというメリットもありますね。

例えば、ロケは土日に組むことが多いんですが、若い社員の休日出勤は月ごとに管理して、代休の調整を行っています。1本番組を作り終えた時点で一週間程度の代休がたまっていることが多いので、長期旅行などのまとまった休暇を得る頻度は意外に一般企業よりも多いかもしれません(笑)気軽にリフレッシュできるように半日からの取得も推奨しています。

特に今年は大型GWも控えていますから「全員が10連休取得」を合言葉に今がんばっています(笑)スタッフ全員がモチベーションを保って番組制作に取り組むには充電が不可欠ですからね。

あと、報酬の将来的な見通しについても入社時に説明するようにしています。昇給のステップアップ感、具体的にディレクターとして一人立ちすればこれぐらい…などはどうしても気になりますからね。

ー最後に、mK5として今後いっしょに働いてみたい方の人物像について。

光原:言葉に対して誠実な方といっしょに働いていきたいですね。というのも、テレビ=映像というイメージがあるかもしれませんが、番組制作においては、それ以上に言葉との付き合いの方が大切なんです。

気になったことを調べる。だれかの話に耳を傾ける。自分の考えを整理する。発表する。あらゆる場面で言葉を扱うからです。今は拙かったり自信がなかったりしても、自分の考えを一生懸命伝えようとしている人と番組づくりをしたいです。

10個のうち1個でも先輩が「それ面白いね」と感じるアイデアが出れば十分じゃないですか。実際にそれで番組はよくなりますから。経験を重ねたディレクターにとっての成長にもつながりますよね。わたしも若手の影響を受ける方なのでそう感じるんです。

ー業界への憧れ、想いを持っている方にとっては、自分の手を動かしながら成長できるのはいいですね。

光原:ダムタイプの古橋悌二さんが生前に自身のパフォーマンスについて「新しい人間関係の海へ、勇気をもってダイブする」と表現されていて。このことは、番組制作にも通じるような気がします。


これからはテレビ放送用の番組とネット配信用のコンテンツのどちらも当たり前のように作っていくことになると思うんです。新しい制作の場を常に求めているわたしたちにとって、それはよりやりがいある環境に近づいていくともいえます。若い方たちと勇気をもってチャレンジしていきたいです。

最後になりますが、mK5では社員同士の適度な距離感を保つため「会社の飲み会は昼にやる」というルールがあります。“お昼の歓迎会”を用意してお待ちしていますので、少しでも興味を感じた方は気軽にお問い合わせください




執筆:佐久間一之
編集・校正=山崎貴大・高越温子
撮影=吉田達史

株式会社mK5の住所や電話番号、採用・求人等が載っているホームページはこちらから↓

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