有限会社時遊区

鷲見 拓哉

これからの企業経営に「心理士」が求められる理由

生産性向上、離職率低減のカギはメンタルサポートにあり
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有限会社時遊区  代表 鷲見 拓哉氏のONLYSTORY


いま、ビジネス界で注目を集めている「健康経営」という考え方をご存知でしょうか。
社員の心身の健康が、企業の生産性を高めるという考え方で、大手企業を中心に広がりを見せています。

その背景には、年々増加する精神疾患の患者数や、うつ病など社員の精神疾患が企業の業績を低下させているという事実への問題意識があると言います。


出典:厚生労働省ホームページ「精神疾患のデータ」

しかし、社員のメンタルマネジメントは対策が難しい領域とされ、効果的なソリューションを各社模索しているのが現状です。

そんな中、心理士によるメンタルサポートを通じて、企業の生産性向上を図る、ユニークな会社が「メンタル・イデア・ラボ」を運営する、有限会社時遊区です。

経営者はいかにして、社員のメンタルマネジメントに取り組めば良いのか、また個人として、いかに日々のストレスや悩みに向き合っていけば良いのでしょうか。

メンタルサポートについての深い知見を持つ、同社代表の鷲見さんにお話を伺いました。

変化の激しい時代に求められる「個力」


––鷲見さんは、ストレスフルで変化の激しいこれからの時代には、組織にも個人にも「強さ」よりも「しなやかさが重要だ」とおっしゃられています。なぜ今、しなやかさが必要なのでしょうか?

鷲見:これまでは、どんな環境にも負けない、「強い組織」が良いとされてきました。上からのトップダウンに従って一斉に動くみたいな。しかし、時代の変化が激しい今日において、そういう組織って、硬直しているから環境の変化に対応しきれなくなっちゃうんですよ。

だからこそ、これからはいろんな圧力や時代の変化に柔軟に対応できる、「しなやかな組織」が求められてくると思います。そして、そのためには、それぞれ働いてる人の個の力がしなやかでないと、柔軟な組織はできないんですよね。つまり、社員一人ひとりの力が大切になってきているんです。

平成までは「組織の中の個人」という、組織重視でしたが、変化の激しい令和の時代からは、個の力が際立った「個人の集まりとしての組織」という風になっていくだろうと考えています。
そして、そこで必要になる力のことを私たちは「個力(こぢから)」と呼んでいます。

––個人の個に力、ですか?

鷲見:はい。そして、その個力がある人に共通しているのが、いわゆるリーダーシップとかオーナーシップなどと同じような言葉で、「メンタルシップ」というものです。

メンタルシップとは例えば、日常のストレスを上手に受け入れながら消化していくという、ストレスマネジメントスキルのこと。メンタルシップがあれば、精神疾患を防ぐだけでなく、社内コミュニケーションも改善されて、仕事における個人の生産性も高まってきます。

それだけでなく、人間関係によるストレスで会社を辞めてしまう人も多いですから、企業側から見れば、社員がメンタルシップを身につけることは人材流失を防ぐことにもつながります。

「考え方の癖」が人間関係の悪化を招く?


––たしかに、より個の力が求められる時代の中で、メンタルシップは非常に大切なスキルになっていきそうですね。それは社員教育など、自社や個人レベルでも養うことができる力なのでしょうか?

鷲見:メンタルマネジメントの力は、自分一人で身につけるのは難しいと感じています。かといって、他者がレクチャーすることで身につくものとも言えないでしょう。

なぜなら、人には必ず「考え方の癖」というものがあり、それが障害となるからです。考え方の癖というのは、言い換えると認知の歪みとも言えます。例えば、なんでも物事を悲観的に捉えてしまうといったようなこと。その癖によって、本来はフラットな出来事に「悲しい」「ひどい」などの感情が乗ってしまいます。感情が乗ってしまうと事実が歪んで受け止められてしまうため、言葉を発した本人が意図した内容と異なって受け取られてしまう可能性が高くなるんです。

社長が業務改善を目的に部下を叱った時、部下が「否定された」と感じて落ち込み、それが原因で離職してしまうといったケースもありますよね。

––たしかに、特に若い世代でこういった事例が多いとも聞きます。

鷲見:はい。ただ、ここで誤解していただきたくないのは、決して部下に考え方の癖があったことが問題である、という訳でもないということです。

もしかすると、部下の誤りを指摘するとき、社長側にも、つい感情的になってしまうという癖があった可能性もあります。

このように、叱責された部下にも社長にも、異なる考え方の癖があり、両者の癖によって、関係性が悪化してしまうことが多いといえるでしょう。

もちろん、癖は無意識ですので仕方のないことです。大切なのは、しっかりとその癖を本人が自覚すること。それが第一ステップになります。

オーダーメイドにこだわる訳


––考え方の癖というのは、社長も社員も誰もが無意識に持つものだとすると、自分たちでそれに気づき、改善していくことは容易ではなさそうですね。

鷲見:そうですね。やはり前提となる知識や、メンタルサポートへの豊富な経験が必要になってきます。
その点、弊社に所属する心理士は大学院博士課程を修了後、国立研究機関で臨床心理士として勤務し、数千人のクライエントの臨床経験を持つ専門家です。私たちは、そういった知見を生かしたセッションを行うことで、社員のメンタルシップ=個力を高めて、しなやかな組織へと変える支援を行なっています。

––高い専門性があるからこそできるサポートですね。では具体的にはどんな風にメンタルサポートのサービスを提供しているのでしょうか?

鷲見:クライエントの精神的な問題を対話によって和らげるフリーセッションや、アンガーコントロール、ストレスマネジメントなど様々なソリューションがありますが、まず最初に行うのは、心理査定と呼ばれるものです。

これはクライエントの持って生まれた性格などの個性を数値化し、その数値に基づいてどのような傾向があるのかを分析できるもの。簡単に言えば健康診断のようなもので、その人がメンタル面でどんな問題を抱えやすい傾向にあるのか、どのような場面で感情的になってしまう傾向にあるかなどがわかるものです。ここでその人が持つ考え方の癖も明らかになってきますので、まずはそういったご自身のタイプを自覚していただくことが大切です。

そこから、その人が持つ課題やニーズに沿ったメンタルサポートを実施していきますが、ここで私たちが重要視しているのは、サービスは基本的にオーダーメイドで行う、ということです。本来、私たちが抱えているストレスや、持っている性格は十人十色ですから、複数人へのメンタルヘルス研修のように一般論としての対策法を伝えても、上手くできない人は必ず出てきてしまうんですね。

むしろ、「研修で言われた通りにできない自分は普通ではないのか」と、より落ち込んでしまい、結果として心を病んでしまうケースも多いです。そうならないように私たちは、一人一人に合ったオーダーメイドで提供するようにしているんです。

––一人ひとりにオーダーメイドのメンタルサポートというと、かなり手厚いサービスになりますね。

鷲見:はい。そういう背景もあり、私たちは社員数が多い大手企業さんではなく、20人〜50人くらいの中小企業さんを中心にじっくりサポートしていきたいと考えています。また、期間としては最低でも3ヶ月など中長期的にクライエントに伴走しながら、メンタルサポートをさせていただくことで効果も出てきます。人のメンタルって何十年もかけて作られてるので、そのくらい長い時間をかけないと、なかなか改善はしていけないんです。

––なるほど。そこまで一人ひとりに向き合ったサポートをされていると、正直なところ、御社側のコストはかなり重いように思えます。そこまでクライエントに向き合ったサービスを提供されたいと思うのは、なぜなのでしょうか?

鷲見:そうですね。それは私たちの原体験に理由があるかもしれません。実は今のようなサービスを始める前、弊社所属の心理士は、東北の災害支援でPTSD(心的外傷後ストレス障害)ケアなどの、メンタルサポートも行ってきました。ですから、支援の対象となる人たちは、既に心を病んでしまった方がメインだったのですが、あるクライエントさんの一人が自殺してしまったことがありました。その時は、さすがに辞めることも考えました。

でも、「自分1人が辞めることで、ギリギリのところで心を保つ人と向き合う人が1人いなくなるんだ…」と思うと、辞められなかったと言います。

そうしたきっかけもあり、「心を病んで、命を絶つような選択をしてしまう前になんとかしてあげたい」という思いを持つようになりました。私たちは、精神的に苦しむ人たちの、最後の砦でありたいんです。

だからこそ、メンタル・イデア・ラボではオーダーメイドで個別にメンタルサポートを提供しますし、表面的な対処療法ではなく、長い時間をかけながら、じっくり改善に取り組ませていただきたいと考えています。

そうすることで、気持ちの良いコミュニケーションができる雰囲気の良い職場を作っていけると考えています。そしてその先には、企業の生産性も、企業イメージも高めていき、結果的に企業の業績まであげるところまでサポートできたらと考えています。

ぜひまずは「会社の雰囲気が悪いがどうしたらいいか」など、ざっくばらんな相談からでも構いません。私たちが全力でサポートさせていただきます。

最後に


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

インタビューを通じて今回感じたのは、企業の生産性向上や離職者を減らすためにも、メンタルサポートは欠かせないものになっていく、という確信でした。

「メンタル面で問題を抱えている社員がいる」、「なぜか人がすぐに辞めてしまう」など、組織において課題を感じる経営者の方は、まずは気軽に心理士に相談してみてはいかがでしょうか。思いもしない原因や改善策が見つかるかもしれません。



執筆:高下真美
校正・編集=北埜航太、山崎貴大

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