株式会社ディーアール

谷脇宗

顧客満足を最大化する「繁盛店の秘訣」とは

10業態34店舗。“業態開発の雄”が飲食の次代を作る
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東京都品川区鮫洲にある1軒のラーメン屋は、30年の時を経て、国内外に10業態34店舗を展開するグローバル外食企業に成長した。「立地ありきの出店戦略」で成長を続け、今や海外や大手デベロッパーからの出店依頼をも呼び込むまでに。

今回は、国内外に拡大を続ける今なお自らを「飯屋」と称し、「飲食はお客様の満足がすべて」と言い切る株式会社ディーアール代表取締役・谷脇宗氏にお話を伺う。これまでの歩みを伺うと、成長を果たした今からは想像もつかない挑戦と覚悟の時代の姿も明らかに。

商売とは、長く続けるもの。先を見据えた業種拡大の一手


–– 国内外で幅広く店舗展開されている株式会社ディーアールですが、全体像や成り立ちについて教えて頂けますか?

谷脇氏:現在、10業態34店舗を展開しています。ブランドは「ラーメン道楽」「新鮮ホルモン まるみち」「イタリアンバル バル道」「肉ビストロ マルミチェ」「ミチ フィッシュ&オイスター」「そば道」などです。「そば道」と「まるみち」は海外進出もしています。ライセンス展開は3業態で、「肉力屋」「もつぎん」「そば吟」です。


原点は、僕の父が三十年前に出店した「ラーメン道楽」鮫洲本店です。その3店舗目の洗足池店を出す際、僕が店長を任されることになり、父の会社に入社。飲食業の面白さに触れ、家業の域を超えて企業として大きくしたい想いで独立しました。まずは食材の製造加工卸という業種でディーアールを創業し、セントラルキッチンとして店舗に食材を卸すことを起点に、店舗展開をスタートしました。

–– 食材の製造加工卸から始められたのは、理由があったのでしょうか。

谷脇氏:飲食業で成長するためには食材を安定供給する必要がある、と考えていたんです。ある程度までセントラルキッチンで加工してから店舗に卸し、店舗で最後のひと手間を加えることで、「手作り」にこだわった味を全店舗で安定提供できるようにしました。

その後の事業拡大に際しては、時代に合わせてリスクヘッジとして他業態に着手していきました。BSE問題で牛肉が問題視され、鳥インフルエンザで鶏肉が窮地に立たされたのを見て、豚骨ラーメンだけでは危ないと思ったので。万が一、豚肉に問題が発生した時のために、幅広く勝負しておくべきだと。商売は、長く続かないと意味がないですからね。

挑戦が歴史を変えた。立地戦略で「業態開発の雄」誕生


–– 食品製造加工卸としての独立、業態の多様化など、若くして多くの先手を打ってこられた谷脇様ですが、具体的にはどのようにマルチブランド化を進められたのでしょうか?

谷脇氏:きっかけは、「ラーメン道楽」の新店舗となる物件を探していたときでした。亀有の駅前に物件を見つけたものの、ラーメン屋にはちょっと狭くて。その時、じゃあ立地を変えようと諦めるのではなく、ここで流行る商売をしようと思ったのが転機でした。


当時は立呑ブームで、気軽に飲めるお店が流行っていたこともあり、近隣と差をつけるために女性が入りやすい立呑屋に挑戦しました。味で勝負して、少し単価を上げて雰囲気も良くしたところ、これが流行ったんです。

それ以来、「立地ありきの業態開発」は、当社の基本方針です。立地を押さえたら、何にチャレンジできるか、どんな競合がいて何で差がつくか、消費者のニーズは何か、考え併せて業態を作ります。

–– 立地ありきの戦略から、マルチブランド化の足掛かりとなる「立呑酒場 道楽(現:もつぎん)」が誕生したのですね。

谷脇氏:初めて牛肉に挑戦したときも、きっかけは五反田に焼肉の居抜きの物件が出たことでした。ただ、焼肉だとちょっと敷居が高いと思って、間口を広げる意味でホルモンという打ち出しで始めました。「新鮮ホルモン まるみち」の誕生です。

当時まだ29歳で、牛肉については分からないことだらけ。仕入れに苦労したり、工場で自らお肉を洗ったこともあります。処理をきちっと覚えて店に出せるまですごく苦労しましたが、結果は成功しました。

–– 新業態が成功する裏には、立地ありきの戦略に加えて、谷脇様ご自身の挑戦心ややり抜く精神があったのですね。

谷脇氏:そうですね、チャレンジ精神は大切にしています。世間でまだ流行っていなかった新業態に挑戦した例もあります。「五反田ワイン酒場 マルミチェ(現:肉ビストロ マルミチェ)」です。

8年ほど前、五反田駅の西口に物件が出たとき、東口には焼肉屋があって、女性も多いエリアだったので、僕らはワインと一緒にモツを提供する店に挑戦しました。ワインとモツの掛け合わせは、当時イタリア料理から着想を得たんですが、僕はこの店が「肉バル」のはしりだと思っています。


–– まさにパイオニアですね!近年は、複数ブランドで海外進出もされていますね。

谷脇氏:海外へ目を向けたきっかけは、2012年頃に初めて訪れた上海でした。街を一目見て、僕はここで商売をやると決めたんです。人口が多くて活気があって、ここに出さない手はないという直感でした。

そこから2年程の間、2ヶ月おきに上海に行って物件を見て回ったり、向こうの知り合いに相談したりして。結果的に、上海で一緒に店を出してくれる経営者が現れました。彼とは、お金を儲けることだけではなく、理念を大切に、長く商売をやっていこうという価値観が一致していたのが決め手でした。

–– 手探り状態から、中国、しかも上海に1店舗目を出店。中国市場は参入が難しいと伺いますが…。

谷脇氏:そうですね。だからこそ、僕は「そこで上手くいったら他に行っても大丈夫かな」と思いました(笑)。でも、実際には向こうで成功している人はたくさん居ますよ。成功するまでやる、それだけです。あとは、良いパートナーに巡り会うこと。何をやるかと同じくらい、誰とやるかは大切です。

–– 成功するまでやる。そのようななかでも、上手くいかなくて苦労したブランドはありますか?

谷脇氏:2012年12月にオープンした「そば道」ですね。もともとワインと蕎麦という打ち出しで出店したところ、見事に滑りまして(笑)。新規出店をストップして、1年ほど見直しの時間をとりました。


白ワインも駄目だったので、日本酒に変えて。ユニフォームも変えて、食材やコンセプトも変えて。だしの寝かせ時間や、そばを1日に打つ回数なども、すべて改善しました。こまめに温度管理までして、あらゆる手を尽くしたら、売上が倍くらいになりましたね。

–– 途中で諦めずに改善を重ねたことで、業態開発がまたひとつ成功したわけですね。

谷脇氏:これまでいろんな節目や転機があって、ひとつずつ取り組んだ結果として今があると思っています。

顧客満足を導く繁盛店の方程式「味×サービス×空間」


–– 幅広い業態開発で培ったノウハウをお持ちの谷脇様ですが、飲食店経営において最も重要なことは何だと思われますか?

谷脇氏:一言で言うと、感動頂ける味とサービスと空間を創り続けること。これは当社の経営理念の一部ですが、飲食における感動や満足は味とサービスと空間の「掛け算」で決まるんです。掛け算なので、1つでもゼロ点だと駄目。飲食店はお客様の満足がすべてです。1つでも欠けるお店は勝ち残れないと僕は思います。

安かろう不味かろうという店は無くなっていきますし、美味しくても不愛想な接客のお店には行きたくないですよね。人を連れていくときも、雰囲気が悪いところには行けないじゃないですか。コンセプトを決めて、味とサービスと空間の掛け算をきっちりすることが大切です。お客様がお金を払うときの満足度は、この掛け算で出てくる。


–– 足し算ではなく、掛け算。どれかが欠けてしまうと台無しになってしまう…。

谷脇氏:さらに言うと、味については、名物メニューがあって、驚いて、おいしくて、コスパがいいこと。これもある種の掛け算ですね。僕はメニューをすべて試食するんですが、例えばスタッフから、このメイン料理は原価このくらいなので1,500円で売ります、と出してもらったとします。僕は食べてみて、1,000円で売ったらどうかと言うわけです。理由は、1,000円だったら感動するから。原価をどうするかは、こちら側の仕事です。仮に自分達が食べに行って1,000円で出てきたら、絶対また頼むよね、そのラインを攻めていこうと(笑)。

–– 徹底的に顧客目線で満足度を定義されているのですね。「掛け算」というのは、飲食の枠を超えてビジネス全体に共通するかもしれません。

実績とノウハウを携え、ライセンス展開へ


–– 株式会社ディーアールの業態開発の幅広さと谷脇様の経営方針は、飲食業界の中で一線を画している
ように思います。

谷脇氏:そうですね、近年では、それを見ていただいた森ビルさんから声をかけていただいて、六本木ヒルズにも出店しました。その際には、既存の「まるみち」や「道楽」で入るのではなく、何か新しい業態をつくって欲しいというお話でした。夜に利用できてお酒が飲めるお店ということで、3つほど業態を提案した結果、「巻き串&ワイン 六道」ができました。

–– 既存ブランドだけではなく、新業態の開発力が認められたということですね。立地が六本木ヒルズともなると、大きな挑戦だったのではないでしょうか。

谷脇氏:これまでに鍛えてきた挑戦心がなかったら難しかったとも思います。六本木ヒルズほどの施設で初期投資をして新業態をつくるのは大変ですから。しかし、これまで沢山つくってきた自負がありましたし、業態開発ができる会社だと評価して頂いていたことは大きかったですね。


–– これだけ多くの業態で成功事例があれば、ライセンシーさんから見ても心強いと思いますし、業態を選べるというのも良いですね。

谷脇氏:現在ライセンス展開をしているのは「肉力屋」「もつぎん」「そば吟」ですが、どれも繁盛ブランドですし、長年のノウハウがある分小まめにフォローもできていると思います。

食材や調味料の安定供給、店舗運営、調理のサポートはもちろん、当社の強みである物件開発や開業支援で、より効率的な飲食店経営を実現できます。

–– 他に、長年の業態開発のノウハウが活きていると感じられる分野はありますか?

谷脇氏:直営店とライセンス以外に、実はもう1つ、最近ご依頼が多いのが「プロデュース業」です。当社のつくる業態・ブランドでなくても、求められればアドバイザリーをしますよ、という事業ですね。ライセンシーとしてではなく、ご自身の発想を元にお店を持ちたいけれど、ノウハウがなくて出来ないという人を対象に、幅広くご相談に乗っています。

飲食で働く人の希望を叶える「イケてるDR」を目指して


–– 最後に、株式会社ディーアールが今後目指す姿について教えてください。

谷脇氏:まず、お客様に関しては、やはり安心して食べに行ける存在、外食ならこの会社で間違いないと思ってもらえる会社でありたいと思っています。安心して食べられて、「掛け算」の満足が叶うこと。お客様に対しては、この価値を提供し続けます。

一方で、食の安全と満足を期待して来られるお客様に対して、自信を持って仕事ができるような人の採用や育成も力を入れて進めていきたいと考えています。例えば海外で仕事がしたいとか、自分のお店を持ちたいとか、こういうチームでこんな仕事がしたいとか、そういった希望を持って入ってくる人にとって希望が叶うような立場を与えてあげられる会社にしたいですね。

–– これまでの谷脇様のように、挑戦心を持った方が活躍できる会社を目指しておられるのですね。

谷脇氏:日々、社員が挑戦心を持って働けるよう、最近注力している社内プロジェクトがあります。その名も、「イケてるDRプロジェクト」(笑)。アワードという社員・アルバイトの表彰制度を導入したり、ユニークな福利厚生を募集したり、海外の視察・研修旅行に行けるチャンスを用意したり、独立したくても資金がない方の為に独立支援制度を整えたり。イケてる会社にするために、様々な工夫を凝らしています。

経営者としては、こうした機会を通じて会社の理念や社風を伝えていくことも大切だと思っています。


–– 理念や社風を社内に浸透させていくにあたっては、その目指す姿をどのような言葉で表現していらっしゃるのですか?

谷脇氏:非常にシンプルですが、ワクワク感をもって成長していこうと話しています。土台として失敗に関しては寛容で、挑戦する姿を応援する社風がありますからね。逆に、これだけやってたら良いよ、という仕事の振られ方をすることはほぼ無いので、様々なことに挑戦していくのが好きな人ほど活躍していける環境だと思いますね。

–– 谷脇様のように力強く、活気に溢れるみなさんの姿が目に浮かびますね!最後に、飲食業を志す人や飲食業界全体に向けて、今後の展望やメッセージをお願いします。

谷脇氏:飲食業というのは、僕は基本的に「飯屋」だと思っていて、人の口に入るものを扱って商売しているわけです。ですから、社会に対してプライドを持って打ち出して、働く人の価値を高めること、業界の価値を高めることは大切だと思っています。

そのような気持ちを忘れずに、世界に向けては日本の食文化を伝えていきたいですね。おもてなしの心がある日本の接客は、海外とは全然違うところもあって、それを世界に伝えることは日本のためにもなるのかなと思っています。幅広い視野で飲食と向き合う僕らが、この業界を盛り上げていけたら良いなと思います。

僕らと一緒に挑戦をしてみたいと思ってくださる方がいれば、ぜひとも当社まで!


取材・執筆=大塚 沙央里(Nutcracker)
編集・校正=山崎

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