株式会社レセルカーダ
松井隆雄
POSTED | 2019.06.28 Fri |
---|
TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:飲食・サービス 創立:9〜10年 決裁者の年齢:50代 商材:その他 |
---|
図書館カフェでコミュニティをつなぐ、世界を広げる
個性と誠実さと思いやり、技術と知識こそが必要であるTopics
今回のインタビューは、経営コンサルタントとして活躍されながら、東京都武蔵野市・武蔵境駅から歩いて1分の図書館「武蔵野プレイス」でカフェを運営する株式会社レセルカーダの松井氏にお話を伺います。
「図書館は静かに過ごす場所!飲食厳禁!」と考えられていた時代から、図書館内のカフェブームを牽引してきたレセルカーダ。同社の代表取締役を務める松井氏に事業にかける想いや今後の展望などを語っていただきました。
株式会社レセルカーダ 社長 松井 隆雄氏のONLY STORY
居心地のいい街の図書館カフェ
–まずは、株式会社レセルカーダの事業内容を教えてください。
松井氏:弊社は公共施設向けの飲食店の運営と経営コンサルティングの大きく分けて2つの事業を展開しています。その2つの中でも現在注力しているのが、飲食店運営になります。
–力を入れているとおっしゃっていた飲食店運営について詳しくお話いただけますか。
松井氏:はい。飲食店運営では、東京都武蔵野市にある図書館を中心にした複合施設「武蔵野プレイス」内の1階にあるカフェ「Café Fermata(カフェ・フェルマータ)」を運営しています。
ここは、図書館の本の持ち込みができるカフェで、17時以降はアルコールの提供もしており、2011年オープン以降多くのお客様にご利用いただいています。
また、カフェではさまざまなイベントの企画・運営もしており、本や映画好きが集まって紹介し合う「武蔵野トーキング・アバウト」や、いろいろな話題を英語で語り合う「English Night」、また最近では大阪弁をしゃべりたい人が集まるイベントなどを開催しています。
ただの飲食店ではなく、図書館の飲食店としていろいろなことを発信し、コミュニティを作り、面白い社会を作っていく。そういった活動をしています。
–コミュニティを作るような活動をしているとのことですが、松井様が事業を展開する上で大切にしていることは何ですか。
松井氏:事業とは少々離れますが、弊社ロゴマークに込めた理念である、個性と誠実さと思いやり、この3つは大切にしていますね。
まず個性についていうと、私自身が幼少期に海外で育ったこともあり、個性こそが社会の中で”面白いもの”を作っていると考えているんですね。
ただ世の中には個性はあるけれど近寄りがたい人もいる。仮に絶対に嘘をつかないという誠実さを持っている人がいたとします。しかしこれを持っている人はどうしても他人にも厳しい目を向けてしまう。そこで重要になってくるのが他人に対しての深い思いやりです。
私は、これら2つがあれば個性は支えることができると考えています。そしてもう1つの要素として個性を支えるのが技術や知識です。日本の教育は個性をなるべく排除していくイメージがありますが、個性を尊重するために技術や知識は必要不可欠なんです。
これからの時代は、独立した個人がお互いを認めていく社会になります。例えば、今よりも外国人労働者が増え、セクシャルマイノリティの方も生活しやすい環境ができてくる。すると、そういった人たちとの関わりが増え、価値観も多様化していきます。
そうなった時、人を認めるために、まず自分でしっかりと立てること、個性を支える柱を持ち合わせていることが重要だと考えています。
飲食をやろう、という想いから起業
–松井様が起業されるまでの経緯について教えてください。
松井氏:20代はメーカーに勤め、その後はコンサルティング会社を経て、30代半ばにコンサルタント会社の仲間と飲食業をやろうという話になり、独立しました。
そんな時に、たまたま、地元である武蔵境の図書館内でカフェ業者を募集していたのを知り、そのコンペで企画やプレゼンをしたところ、施設側の賛同を得ることができ、カフェをオープンしました。今はそこからさらに独立をして会社として経営しています。
–もともと起業を考えていたのでしょうか。
松井氏:学生の頃から自分の人生を自分で決めることが大事だという価値観があり、そのためには起業するしかないと感じていました。そういった想いが頭のどこかにあったからなのか、必要な時に必要な仲間が現れて、お金や場所が与えられたのだと感じていますね。
–実際に利用されているお客様からはどのようなお声をいただきますか。
松井氏:大変好評いただいています。メニューとしてはカフェでパンケーキを提供しているのですが、これがとても人気ですね。
図書館の中で本を読みながらパンケーキをはじめとする食べ物が食べられることや、来てくれたお客さんがイベントを通じて図書館の中でつながりを持てることなど「ここに地域の憩いの場があってよかった」と言ってもらえるのがとても嬉しいですね。
Life is ワーク 人生を仕事として捉える
–今後の目標を教えてください。
松井氏:これまで生まれてきたつながりを軸にして店舗数を増やすことを目標にしています。
たとえば、これまで図書館内にあるカフェとして、メディアにもよく取り上げられ、市とのつながりから大学の講義などもやらせていただきました。そのほかにも、イベントを通じたさまざまなつながりが生まれています。それらを生かした活動をしていきたいですね。
–そのようにたくさんのつながりを創出したあとは、どのような世の中・国にしていきたいと考えていますか。
松井氏:大きく言えばダイバーシティのある国ですね。今の日本は、自分と違うものに対して、一般的な日本人の意識はまだまだ低いと感じています。
これまで日本の社会ではピラミッド型の組織が当たり前でした。上と下とでの情報格差や財力の差が大きく、決裁権も社長しか持っていませんでした。しかし現在、様々な研究が進められている中で、上司も部下もいない組織というものが研究されているんです。
たとえば、情報格差が大きいのであれば、社長の給料、会社の財務などすべてオープンにする。そして誰もが同じ情報を持つことで、少なくとも情報で負けることは無くなります。
そもそも社長は現場に出ることが少ないため、ほかの社員と比べたら、むしろ現場を知らないことも少なくはありません。そのため、いつも正しい判断ができるわけではないんです。
そうやって、今後は情報格差をなくし、正しい判断ができる組織、多様な価値観が生まれる組織が増えていくと考えています。
さらにAIの時代を迎え社会が変化していくと、個人個人が本当にやりたいことができるようになるはずです。その時に何をするのか。個人が自分の足で立って考えられること、一人一人の人生が輝いていること、それこそがダイバーシティだと思うんです。
そのために、飲食店のオーナーとして今できることを一つずつやっているところです。
–最後に、読者にメッセージをお願いします。
松井氏:よくワークライフバランスと言われますが、私は人生は仕事だと思っています。
子育ても、自分のやりたいことのための勉強もすべて仕事、自分の志のためにやっていること。つまり「志(し)の事=しごと」。
お金をもらうために仕事をするという考えは間違いではありませんが、そのうちに限界がきてしまう。それであれば、人生を仕事として捉えてくださいということを私は伝えたいですね。
執筆=山田
校正=笠原