最終更新日: 2023.09.27

手紙営業は企業の決裁権を持つ人や経営層へダイレクトにアプローチができるため、BtoBで新規開拓を行う際に有用な手段の1つです。しかし、メールや電話での営業に比べて手間がかかる方法でもあるため、メリット・デメリットやコツを把握した上で行わなければ、徒労に終わってしまうこともあるでしょう。

本記事では、手紙営業の基本的な説明からメリット・デメリット、手紙営業のコツやテクニックまで、実際の文例と合わせて解説していきます。

手紙営業とは

手紙営業とは、企業の経営層や決裁権を持つ人に向けて行う営業手法です。自社のサービスの魅力や導入の案内文を記載した手紙を送り、商談のアポイント獲得につなげます。

BtoB向けのサービスを提供している場合、テレアポやメール、ポスティング広告などは、決済者や経営層まで案内が届かずに終わることが多いですが、手紙営業では先方の決裁者や経営層を名指しして手紙を送るため、内容を見てもらえる可能性が高まります。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、アポ獲得から商談まで全てオンラインで完結させる企業が増えています。その中で、あえて手書きの手紙を送ることは、相手に丁寧な印象を与えられます。他社と差別化したい場合にも有効な手段です。

手紙営業のメリット

手紙営業には以下の3つのメリットがあります。

  • メールやDMよりも開封率が高い
  • 決裁者へ直接アプローチできる
  • 相手の印象に残りやすく他社と差別化できる

それぞれ紹介していきます。

メールやDMよりも開封率が高い

手紙による案内は、メールやDMに比べて開封してもらえる可能性が高いです。企業には日々大量の営業メールやDMが届きますが、メールは件名を見ただけで削除されてしまったり、DMは開封されないまま捨てられてしまったりと、案内を見てもらえないことも多いです。

手紙営業であれば、物理的に相手の手元に残りやすく、特別感も演出できるため、興味を持ってもらえる可能性が高まるでしょう。

決裁者へ直接アプローチできる

手紙営業は経営層や決裁者に向けて名指しで手紙を送るため、総務や各部署の担当者を超えて決裁者へ直接案内を届けることができます。新規開拓営業では、アプローチする企業と関係性がない状態で営業を行うため、担当者に門前払いされてしまい決裁者までたどり着かないケースも多いでしょう。

その点、手紙営業は経営者や決裁権を持つ人の宛名が入った封筒で届くため、受付や担当者に放置されたり捨てられたりする可能性が低く、中身の案内文まで見てもらえるチャンスが広がります。

相手の印象に残りやすく他社と差別化できる

デジタルツールの進歩やテレワークの普及により、メールやSNSといったデジタルなアプローチによる営業は一般的な手法となっています。ところが、企業には日々大量のメールが届いているため、自社の営業メールを読んでもらえる可能性は低いです。

メッセージを確実に届けるためには、相手の目に留まるアプローチをする必要があります。その点、デジタルなアプローチと差別化しやすい手紙営業は効果的な手法です。

一見、非効率な手法に見える手紙営業ですが、受け取る側にとっては「このご時世に手紙?どのような内容なんだろう」と興味を持ってもらえる可能性が高まります。また、便利なデジタルツールではなく、手間暇をかけて書いている手紙だからこそ、文字や挨拶文から人柄が感じられ、気持ちが伝わりやすくなります。

新規営業、商談のお礼、フォローアップなど、相手と連絡をする場面は無数にあります。もちろん毎回手紙を作成するのは時間がかかりますし、相手にとっても情報量が少なく不便ではあります。とはいえ、新規営業の最初のアプローチなど重要な局面の連絡を手紙に置き換えれば、インパクトのあるアプローチとなるでしょう。

手紙営業のデメリット

手紙営業では相手にメッセージを覚えてもらいやすく、インパクトも与えられるのがメリットです。一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  • 手紙を作成する手間とコストがかかる
  • 送ってから届くまでに時間がかかる
  • 相手の反応や効果が見えづらい

それぞれのデメリットについて見ていきましょう。

手紙を作成する手間とコストがかかる

手紙営業のデメリットは、手間とコストがかかることです。手書きの場合、紙と封筒、ペンなど必要な用具を揃え、1通ずつ書く手間がかかります。毎日多くの顧客にアプローチをする必要がある営業担当者にとって、1つの営業先に多くの労力をかけることは難しいかもしれません。

しかし、だからこそ他社との差別化ができるのも事実です。手間隙かけて書いていることが明確に伝わるからこそ、相手に誠意が伝わるでしょう。企業リストを精査し、優先してアプローチすべき営業先に絞って手紙を送ることが、手紙営業においては重要なポイントになります。

送ってから届くまでに時間がかかる

手紙は送付してから相手先の企業に届くまでに、タイムラグが発生します。メールやテレアポのようにすぐにやり取りすることができないため、今すぐ企業にアプローチしたい場合やすぐに販売したい商材を扱う場合には不向きです。

アポ獲得や契約までの期間に対して目標などがある場合は、作成から投函、到着までの日数を逆算して計画を立てるようにしましょう。

相手の反応や効果が見えづらい

手紙営業は、メールのように細かく開封率を計測したり、テレアポのように接続率を計測したりできません。相手からの反応がない場合、そもそも開封すらしてもらえていないのか、開封はしたが興味を持ってもらえなかったのかなどを判断することが難しいです。そのため、送付後は必ずフォローの電話を入れましょう。

フォローの電話で会話ができれば、たとえ商談や成約につながらなかったとしても、次回の手紙営業に向けた改善点や問題点を発見するきっかけになるでしょう。

新規開拓営業で手紙が有効なシーン

手紙営業は、以下のようなシチュエーションで特に有効な手法です。

  • テレワーク中心の企業にアプローチする場合
  • 大手企業にアプローチする場合

それぞれ理由とともに解説していきます。

テレワーク中心の企業にアプローチする場合

テレワーク中心の企業が増え、訪問営業はもちろん、テレアポを行っても電話を受ける人員が社内におらず、以前に比べ商談のきっかけをつくるのが難しくなってきています。またメール営業で他社との差別化は難しいため、従来の営業手法ではアプローチする手段が狭まっていると言えます。

手紙の場合、到着時に宛先の人物が出社していなくてもオフィスに現物として残るため、出社時に案内を見てもらえる可能性が高まります。宛名は役員クラスを指定することが多く、そのような高役職者は一般従業員に比べ定期的に出社する企業は多いです。テレワーク中心の企業相手にも有効な営業手法と言えるでしょう。

大手企業にアプローチする場合

決裁者や経営層に直接アプローチする手紙営業は、大手企業相手に新規開拓を行う際に効果的な手法です。企業の規模が大きくなればなるほど、成約までに複数の承認プロセスを挟む必要があるため、担当者からアプローチしていては非常に時間がかかります。また、担当者のさじ加減で決裁者まで話が通らない可能性もあります。

商品が高額だったり、サービスの規模が大きかったりするほど、企業は購入するか否かの検討を経営層を交えて行う必要があります。そのため、重役をはじめとした決裁者へ最初から直接アプローチできる手紙営業は効果を発揮します。

手紙営業を行う際のポイント

より効果的な手紙営業を行うために押さえておきたいポイントを解説します。手紙の書体、内容、見た目に気を配るだけでも開封率が高まり、メッセージが相手に届く可能性が高まります。

手紙営業は手書きが基本

最も大事なポイントとして、手書きで書くことを忘れてはいけません。手書きでなければDMやメールとの差別化が難しく、開封されてもチラシのようにすぐに捨てられる可能性があるため、せっかくかけた時間と労力が徒労に終わってしまいます。

あえて手紙営業という手段を採用するのは、他社とは違った印象深い方法で興味を持ってもらい、相手にしっかりと誠意を伝えることが一番の目的だからということを忘れないようにしましょう。

商材を売り込みすぎない

新規開拓における手紙営業の目的は、企業から商材に興味をもってもらい、その後のアポ獲得や商談につなげることです。そのためいきなり商材を売り込むのではなく、まずは自分が何者であるかを丁寧に紹介し、なぜこのような案内を送っているか理由をきちんと伝えるようにしましょう。

最初からあからさまな商材の売り込みをしてしまうと、受け手は警戒してしまいます。それよりも、相手のメリットを考え、自社のサービスを通じて課題解決や事業拡大に貢献できることをアピールしましょう。

紙や封筒の質にこだわる

手紙営業に使用する封筒は、自社の社用封筒は使用しない方がいいでしょう。社用封筒はいかにも「営業の手紙」という印象を与えてしまうので、和紙封筒のような高級感のある封筒の方が無難です。送付する相手は一定以上の役職についていることが多く、安っぽい封筒では開封されることなく廃棄されてしまう可能性も高いです。

また、手紙も色やイラストなどがついたものは避け、白地の高級感のある紙に黒文字という基本フォーマットで書くようにしましょう。開封率を高めるためにも、相手にとって特別感を感じさせるものとなるよう、見た目の部分でも工夫を凝らす必要があります。

手紙営業の効果を高めるテクニック

手紙営業と同時に行うと効果的なテクニックを紹介します。手紙そのものへの工夫や、送付前後の行動によっても、その後の営業の成功率を大きく変えることができます。

手紙送付後に電話をかける

手紙の到着に合わせてフォローの電話をかけることで、開封して中身に目を通してもらえる確率が高くなります。電話をかけるタイミングは、送付してから3日以内がベストです。また、手紙の中で後日電話をすることを事前に伝えておくことにより、後々のフォローコールへの導入となり、相手にとっても丁寧な依頼となります。

会話のきっかけとして活用する

手紙自体は開封してもらえなかったとしても、その後のテレアポやメール営業の際に「◯日前に手紙をお送りした□□と申しますが〜」と挨拶の冒頭として活用することもできます。

またお客様と対話する機会があった際も「◯◯様にはお手紙をお送りしたこともありまして〜」と、会話のきっかけにできます。手紙営業で相手先の記憶に残ることができれば、その後の商談で実際に会う時にも、コミュニケーションを円滑に進めるきっかけになるでしょう。

筆ペンを使う

手紙を書く際に、筆ペンを使えると差別化ポイントになります。上品で特別感を演出するのに筆ペンは最も効果的と言えるでしょう。筆ペンを上手に使う自信がない場合は、ボールペンではなく万年筆が好ましいです。相手にとって品のある文章と感じてもらうことができるよう、見た目に気を遣うことも有効なポイントとなります。

手紙営業時の注意点

手紙営業を行う際にいくつか注意しなくてはならないことがあります。間違えてしまうと開封してもらえなかったり、場合によっては相手先の怒りを買ってしまう可能性もあります。

ハガキではなく封筒で送る

手紙営業の際は、手紙を封筒に入れて送るようにしましょう。もちろんハガキだとNGというわけではありませんが、封筒型の手紙は他の書類に紛れる可能性が低く、宛名の人物に向けた重要な手紙という印象も与えるため、見てほしい決裁者の目に触れる可能性も高くなります。決裁者に「自分宛ての特別な手紙」と認識してもらえれば、より高い開封率が期待できます。

会社名・役職名を間違えない

基本的なことではありますが、相手先の会社名や役職名は間違えないようにしましょう。どれだけ手紙の内容や見た目が良くても、会社名や役職名が間違っていれば、与える印象は非常に悪くなります。

これはメール営業やテレアポでも同様に気をつけなければならない事柄です。手紙の場合は相手先のオフィスに現物として残るため、宛名を間違ったまま顧客の目に触れる可能性も高まります。手紙を送る前に、会社名や役職名に誤字脱字がないか確認しましょう。

決裁権を持つ人に送る

手紙の作成には時間と労力がつきもので、手書きであれば尚更です。短期間で大量に作成して送れないことを考えると、決済権を持つ重役や経営層の人物に直接送り営業効果を高められると理想的です。

手紙作成の時点で、リストの精査や社外連絡先のリード整理を徹底的に行い、誰に向けて送るべきかを明確にしたうえで手紙の無駄打ちとなることのないように気をつけましょう。

新規開拓時の手紙営業の文例

最後に、これまで紹介したポイントを踏まえて、新規開拓における手紙営業の文例を紹介します。

面識のない企業へ送る最初の手紙の文例

新規ビジネス開拓のために、これまで連絡を取ったことのない企業に手紙を送る場合は、自分が何者であるかを正確に伝えるようにしましょう。自分が何者なのかがわからないと、相手の信頼を得ることが難しく、今後の展開につながりません。

また、ファーストコンタクトでいきなり売り込みをするのもよくありません。最初の手紙は、関係を構築するきっかけとして書きましょう。

以下、新規取引先への手紙の例です。

株式会社△△△ 〇〇様
貴社ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。
面識がないにもかかわらず、突然のお手紙となり申し訳ございません。

私は、□□株式会社の△△と申します。
この度、貴社のホームページやIR情報を拝見し、今後の新規事業展開に弊社がお力添えできるのではないかと思い、ご連絡させていただきました。

弊社では〇〇というサービスを展開しており、▢▢が可能なため、貴社の求める○○についてお役に立てると考えております。

そこで、ぜひ一度直接お話をお伺いできる機会をいただければと存じます。
改めて、弊社から◯月◯日◯時頃にご連絡差し上げます。
その際に、弊社との商談の可否をご回答いただければ幸いです。

大変お忙しい中恐縮ではありますが、何卒ご検討のほど宜しくお願い申し上げます。
株式会社△△△△ 営業部〇〇

提案後の手紙の文例

訪問やWeb商談で提案の機会をもらった後は、感謝の気持ちを込めてお礼の手紙を出しましょう。相手に丁寧な印象を与え、次の交渉につなげたり、提案内容をより具体的に検討するきっかけになったりすることが期待されます。 

以下、提案後に送る手紙の例です。

株式会社△△△ 〇〇様
先日はお忙しい中、貴重なお時間を割いていただき誠にありがとうございました。

商談の際に提示させていただいた弊社サービスは、貴社の思い描く新規事業展開にお力添えできると考えております。
つきましては、近日中にお見積もりを手配させていただきますので、ぜひ導入をご検討いただけますと幸いです。

お見積もりの準備が整い次第、再度ご連絡させていただきます。
また、先日のご案内の中でご不明点やご質問がありましたら、いつでもお問合せくださいませ。

貴社の今後の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
株式会社△△△△ 営業部〇〇

契約後の手紙の文例

契約後のサンクスレターも重要です。感謝の気持ちを伝え、クライアントとのつながりを作ることで、継続的な利用や他のクライアントの紹介につなげることができます。 

契約後のお礼状では、感謝の気持ちと同時に、今後のフォローアップについても言及しましょう。契約後にフォローアップを行う旨とその担当者を記載しておくと、クライアントは安心して取引を行えます。 

以下、契約後の手紙の文例です。

株式会社△△△ 〇〇様
貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、この度は弊社との契約を締結いただき、厚くお礼申し上げます。
今回ご契約いただいた〇〇というサービスは、〇〇という点において、貴社の事業拡大に貢献できるサービスです。

今後も、貴社のご期待にお応えすべく弊社一丸となって全力でサポートさせていただきますので、サービスについてご不明やご要望がありましたら、何なりとお申し付けくださいませ。

何卒、末永いお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
末筆ではございますが、お手紙にてお礼のご挨拶とさせていただきます。
株式会社△△△△ 営業部〇〇

新規開拓時には手紙営業も積極的に活用しよう

BtoBの新規開拓営業において、決裁者や経営層に直接アプローチできる手紙営業はとても有用な武器になります。一方で、手書きで1枚1枚書くことや投函する手間などを考えると、メールやテレアポなどに比べてコストがかかる方法になります。事前準備や押さえるべきポイントを確認し、アプローチ先をしっかりと選定して効果的に手紙営業で新規開拓を行っていきましょう。

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