最終更新日: 2025.12.07

既存顧客との関係を深め、長期的な利益を最大化するLTV(顧客生涯価値)向上が、持続可能なビジネス成長の鍵となっています。本記事では、LTVの基本概念から具体的な計算方法、効果的な向上施策までを詳しく解説します。

LTV(顧客生涯価値)とは

LTVは顧客が企業との取引を通じて生涯にわたりもたらす利益の総額を表す指標です。新規顧客の獲得コストが高騰する現代において、既存顧客との関係性を強化し、一人あたりの顧客価値を最大化することが企業の収益安定に直結します。

LTVの定義と基本概念

LTV(Life Time Value)は、顧客が取引開始から終了までの期間に企業へもたらす利益を数値化した指標です。一度きりの購入で終わる顧客よりも、継続的に商品を購入したり、高額なサービスを利用したりする顧客のほうがLTVは高くなります。

例えば、月額1万円のサブスクリプションサービスを5年間継続利用する顧客は、年間12万円、5年間で60万円の売上を生み出します。これに利益率やコストを加味した金額がLTVとなるのです。

この指標を活用することで、どの顧客セグメントに注力すべきか、マーケティング投資の適正額はいくらかといった経営判断の精度が飛躍的に向上します。顧客視点でビジネスを捉え直す重要な概念といえるでしょう。

なぜLTVが注目されているのか

LTVが注目される背景には、市場環境の大きな変化があります。少子高齢化による人口減少で市場が縮小し、新規顧客獲得の難易度が年々上昇しています。広告費用も高騰を続け、新規顧客を獲得するコストは既存顧客維持の5倍に達するという「1:5の法則」が示すとおり、効率性の観点からも既存顧客重視へのシフトが求められています。

サブスクリプション型ビジネスの普及も大きな要因です。従来の売り切り型モデルから、継続課金型モデルへの転換が進む中、いかに顧客に長く利用してもらうかが収益の根幹を左右します。初期の顧客獲得コストを長期的な利用で回収するビジネスモデルでは、LTVの最大化が最重要課題となります。

さらに、3rd Party Cookieの規制強化により、デジタル広告による新規顧客獲得が困難になりつつあります。こうした状況下で、既存顧客との関係を深め、長期的な価値を創出するLTV重視の経営が、企業の持続的成長を支える戦略として不可欠になっているのです。

ビジネスモデルによるLTVの違い

ビジネスモデルによってLTVの捉え方は大きく異なります。売り切り型ビジネスでは、リピート購入の頻度と単価がLTVを左右します。同じ商品を定期的に購入する顧客は、単発購入の顧客と比較してLTVが何倍にもなることがあります。

サブスクリプション型ビジネスでは、継続期間と解約率(チャーンレート)が最も重要な要素です。月額料金が同じでも、3ヶ月で解約する顧客と3年継続する顧客では、LTVに12倍の差が生まれます。プラン変更やオプション追加も含めた総合的な価値の把握が必要です。

BtoBビジネスにおいては、取引単価が高く契約期間も長期にわたるため、一社あたりのLTVは非常に大きくなります。アップセルやクロスセルによる拡大余地も大きく、カスタマーサクセスによる継続率向上が直接的に収益に影響を与えます。自社のビジネスモデルに応じたLTV管理が求められます。

LTVの計算方法

LTVを正確に算出することで、マーケティング投資の適正額や顧客セグメントごとの優先度が明確になります。基本的な計算式から業種別の応用まで、実務で活用できる計算方法を理解することが重要です。

基本的な計算式

最もシンプルなLTVの計算式は「購買単価×購買頻度×継続期間」です。例えば、平均購買単価3万円の商品を年4回購入し、それを3年間継続する顧客のLTVは、3万円×4回×3年=36万円となります。この基本式で顧客価値の概算を把握できます。

より精緻に計算する場合は、粗利率を加味します。「購買単価×粗利率×購買頻度×継続期間」という式を使えば、実際の利益ベースでのLTVを算出可能です。粗利率30%であれば、先の例では36万円×0.3=10.8万円が実質的なLTVとなります。

さらに正確性を高めるなら、顧客獲得コストと維持コストを差し引く必要があります。「(購買単価×粗利率×購買頻度×継続期間)−(新規獲得コスト+維持コスト)」という計算式により、真の顧客価値を把握できます。獲得に3万円、維持に年1万円かかる場合、10.8万円−(3万円+3万円)=4.8万円が純粋なLTVです。

サブスクリプション型の計算方法

サブスクリプション型ビジネスでは、月額料金と解約率を基準とした計算式が一般的です。「月額料金×粗利率÷月次解約率」という式で、平均的な顧客のLTVを算出できます。月額1万円、粗利率60%、月次解約率2%の場合、1万円×0.6÷0.02=30万円がLTVとなります。

年間契約の場合は、「年額料金×粗利率×平均継続年数」で計算します。平均継続年数は過去データから算出するか、年次解約率の逆数を用います。年次解約率20%であれば、平均継続年数は5年となり、これを計算式に代入します。

アップグレードやクロスセルが頻繁に発生するビジネスでは、「初期MRR(月次経常収益)×拡大率×平均継続月数」という式も有効です。拡大率は、アップセルやクロスセルによる収益増加を反映させた係数で、顧客が時間とともに支払額を増やしていく傾向を数値化できます。この方法により、成長性を加味したより現実的なLTV予測が可能になります。

EC・小売業の計算方法

EC・小売業では、購買頻度のばらつきが大きいため、顧客セグメント別のLTV算出が重要です。「年間購買金額×粗利率×平均顧客寿命」を基本とし、新規顧客、リピーター、ロイヤル顧客といったセグメントごとに計算することで、各層への投資配分を最適化できます。

購買行動が不規則な場合は、RFM分析(Recency:最終購買日、Frequency:購買頻度、Monetary:購買金額)と組み合わせた計算が効果的です。過去の購買履歴から各顧客の将来的な購買確率を予測し、期待値としてのLTVを算出します。

季節性の高い商品を扱う場合は、年間を通じた購買パターンを考慮する必要があります。特定シーズンに集中する購買を平準化して計算したり、年間購買額の変動係数を加味したりすることで、より精度の高いLTV予測が実現します。

BtoBビジネスの計算方法

BtoBビジネスでは取引規模が大きく契約期間も長いため、個社別のLTV管理が基本となります。「年間契約額×粗利率×平均契約年数+拡張売上」という式で、初期契約だけでなくアップセルやクロスセルによる追加収益も含めて計算します。

企業規模や業種によってLTVは大きく異なるため、セグメント別の平均値を算出することが重要です。大企業向けと中小企業向けでは、契約金額も継続期間も大きく異なります。それぞれのセグメントで過去データを分析し、セグメント固有のLTV算出式を確立することで、営業リソースの配分や顧客獲得コストの上限設定が可能になります。

契約更新率が高いビジネスでは、「初期契約額÷(1−更新率)」というシンプルな式も使えます。更新率90%であれば、初期契約額100万円のLTVは100万円÷0.1=1,000万円となります。この方法は計算が簡便で、迅速な意思決定に役立ちます。

LTVと関連する重要指標

LTVを効果的に活用するには、関連指標との組み合わせが不可欠です。CAC(顧客獲得コスト)は、新規顧客を一人獲得するためにかかる費用を示し、LTVとの比率で投資対効果を判断します。一般的にLTV:CACが3:1以上であれば健全とされ、1:1を下回ると事業継続が困難になります。

チャーンレート(解約率)は、LTVに直接影響する最重要指標です。月次解約率が5%から3%に改善されるだけで、平均継続期間は20ヶ月から33ヶ月へと大幅に延びます。チャーンレートを1%改善することが、LTVを何十万円も向上させる効果を生むのです。

ARPUやARPA(平均顧客単価)の推移も重要です。時系列でARPUが上昇していれば、アップセルやクロスセルが機能している証拠です。逆に低下傾向にあれば、価格競争に巻き込まれている可能性があります。これらの指標を総合的に分析することで、LTV向上の打ち手が明確になります。

LTV向上がもたらす5つのメリット

LTVの向上に取り組むことで、単なる売上増加だけでなく、経営全体の質的改善が実現します。長期的な視点での顧客価値最大化は、企業の持続的成長を支える強固な基盤となります。

安定した収益基盤の構築

LTVが向上すると、単発の売上に依存しない安定的な収益構造を築けます。リピート購入や継続契約が増えることで、売上予測の精度が高まり、中長期的な経営計画の策定が容易になります。月次での売上変動が小さくなり、キャッシュフローの安定性も向上します。

新規顧客獲得に失敗しても、既存顧客からの継続収益があれば事業が破綻するリスクは低減されます。特にサブスクリプション型ビジネスでは、積み上がった既存顧客基盤が強固な収益の土台となり、市場変動への耐性が高まります。

この安定性は金融機関からの評価向上にもつながります。予測可能な収益構造を持つ企業は、融資や投資の審査でも有利になります。LTV重視の経営は、財務の健全性と成長性を同時に実現する効果的なアプローチなのです。

マーケティングコストの最適化

LTVが明確になることで、顧客獲得に投資できる上限額が算出できます。LTVが50万円の顧客セグメントなら、CAC15万円程度までは許容できると判断できます。この基準により、広告出稿やキャンペーンの費用対効果を定量的に評価し、無駄な支出を削減できます。

既存顧客からの収益が増えれば、新規獲得への過度な依存から脱却できます。獲得コストの高騰に悩まされることなく、既存顧客へのサービス向上に投資を振り向けられます。顧客満足度が上がれば口コミや紹介が増え、獲得コストがさらに下がるという好循環が生まれます。

セグメント別のLTVを把握していれば、高LTV顧客の獲得に集中投資する戦略も取れます。全ての顧客に均等にコストをかけるのではなく、将来的な価値が高い層に選択的にリソースを配分することで、マーケティングROIを最大化できます。

優良顧客の可視化と注力

LTVを分析することで、企業に最も利益をもたらす優良顧客層の特徴が明らかになります。購買金額、頻度、継続期間といった行動データから、どの属性の顧客がLTVが高いのかを特定できます。年齢層、職業、購買チャネル、利用パターンなど、様々な切り口で優良顧客像を描き出せます。

この知見を活用すれば、類似する見込み客を効率的にターゲティングできます。優良顧客と同じ属性を持つ層に広告を配信したり、同様の行動パターンを示す顧客に優先的にアプローチしたりすることで、獲得効率が飛躍的に向上します。

また、既存の優良顧客に対しては、特別な待遇やサービスを提供することで、さらなるLTV向上を図れます。VIP プログラムや専任サポートの提供により、ロイヤルティを一層高め、長期的な関係を強固にできます。限られたリソースを最大効果で活用する戦略的な顧客管理が実現します。

顧客満足度の向上

LTV向上の施策は、必然的に顧客体験の改善につながります。継続利用を促すためには、顧客が満足し続けられるサービスを提供する必要があるためです。製品品質の向上、カスタマーサポートの充実、使い勝手の改善など、あらゆる接点での顧客体験が洗練されていきます。

顧客の声に耳を傾け、フィードバックを製品改善に反映させる姿勢も強化されます。解約理由を分析し、不満点を解消する取り組みが活発化します。こうした顧客中心の経営姿勢は、満足度向上だけでなく、ブランドイメージの向上にも貢献します。

満足度の高い顧客は、SNSでの好意的な発信や友人への推薦といった、企業にとって価値の高い行動を取ってくれます。UGC(ユーザー生成コンテンツ)による自然な口コミは、広告費をかけずに新規顧客を獲得する強力な手段となります。LTV向上と顧客満足度向上は、相乗効果を生む好循環の関係にあるのです。

企業価値の向上

安定した収益基盤と予測可能なビジネスモデルは、企業価値評価において重要な要素です。LTVベースで事業を管理している企業は、投資家からも高く評価されます。将来キャッシュフローの予測精度が高く、持続的成長の可能性が明確だからです。

特にSaaS企業やサブスクリプション型ビジネスでは、LTVとその成長率が企業バリュエーションに直結します。顧客基盤の質の高さは、売上高以上に重視される指標となっています。LTV向上の実績は、資金調達やM&Aの場面で大きなアドバンテージとなります。

従業員のモチベーション向上にも寄与します。短期的な売上ノルマではなく、顧客の成功を支援することで長期的な価値を生み出すという目標は、より意義のある働き方を提供します。顧客との良好な関係構築が評価される文化は、人材の定着率向上にもつながります。

LTVを向上させる4つの戦略

LTVを構成する要素に着目し、それぞれを改善することで総合的な価値向上を実現できます。購買単価、頻度、継続期間、コストという4つの軸から具体的な施策を展開することが効果的です。

購買単価の向上施策

アップセルは、現在利用している商品やサービスよりも上位のプランへ移行してもらう手法です。基本プランからプレミアムプランへのアップグレードを促すことで、同じ顧客からより多くの収益を得られます。機能制限の解除、容量の増加、優先サポートの提供など、明確な価値を示すことが成功の鍵です。

クロスセルは、関連する別の商品やサービスを追加購入してもらう戦略です。主力商品を購入した顧客に、補完的な商品やオプションを提案します。例えば、ソフトウェアを利用している顧客に研修サービスやコンサルティングを提案するといった形です。顧客のニーズを深く理解し、適切なタイミングで提案することが重要です。

セット販売やバンドル提供も効果的です。複数の商品をまとめて購入することで割引が受けられる仕組みは、顧客にとってもメリットがあり、単価向上と販売効率の改善を同時に実現できます。ただし、単なる値上げではなく、価値の追加とセットで行うことが大切です。顧客が納得できる価格設定が継続的な関係を支えます。

購買頻度の向上施策

定期購入やサブスクリプションモデルへの誘導は、購買頻度を安定化させる有力な手段です。都度購入よりも定期購入のほうが割安になる価格設定や、限定特典の提供により、継続的な購買習慣を形成できます。化粧品や健康食品など、リピート性の高い商品では特に効果的です。

リマインド施策も重要です。前回購入から一定期間が経過した顧客に、メールやプッシュ通知でタイミングを知らせることで、購買機会の損失を防げます。消耗品であれば使い切るタイミング、サービスであれば利用が途切れがちな時期に、適切なコミュニケーションを取ることで再購買を促進します。

限定キャンペーンやイベントの定期開催も頻度向上に貢献します。毎月異なるテーマでセールを実施したり、季節ごとの新商品を投入したりすることで、顧客が定期的にサイトを訪れる動機を作り出せます。ポイント倍増デーや会員限定セールなど、来訪・購買の習慣化を促す仕掛けが効果を発揮します。

継続期間の延長施策

解約防止(チャーン対策)は、LTV向上において最も重要な施策です。解約予兆を早期に検知し、先回りして対処することで離脱を防げます。ログイン頻度の低下、利用機能の減少、サポート問い合わせの増加など、解約につながる行動パターンを分析し、該当顧客に積極的なフォローを行います。

オンボーディングの強化も効果的です。サービス開始直後の数週間は解約率が最も高い期間です。この時期に製品の使い方を丁寧に説明し、価値を実感してもらうことで、継続利用の基盤を築けます。チュートリアル、ウェビナー、専任サポートなど、顧客が成功体験を得るまでの伴走が重要です。

ロイヤルティプログラムの導入により、長期利用へのインセンティブを設計できます。利用期間に応じた特典、累積購入額に基づくステータス制度、継続年数による割引率アップなど、長く使うほど得する仕組みは継続のモチベーションになります。解約によって失うものが大きければ、顧客は簡単に離れません。

コスト削減による効率化

顧客獲得コストの削減は、LTVの純利益を直接的に増やします。紹介プログラムの活用により、既存顧客からの口コミで新規顧客を獲得できれば、広告費を大幅に削減できます。紹介者と被紹介者の双方に特典を提供することで、自然な拡散を促進できます。

マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入により、見込み客の育成を効率化できます。手動で行っていたメール配信やセグメント管理を自動化することで、人的コストを削減しながら、より細やかなコミュニケーションが可能になります。適切なタイミングでの接触により、成約率も向上します。

カスタマーサポートの効率化も重要です。FAQの充実、チャットボットの導入、セルフサービスポータルの整備により、顧客が自己解決できる環境を作れば、サポートコストを削減できます。ただし、複雑な問題には人的サポートが必要です。適切なバランスを保ちながら、コストと顧客満足度の両立を目指します。

顧客ロイヤルティとLTVの関係

顧客ロイヤルティの向上は、LTV最大化の最も本質的なアプローチです。信頼や愛着に基づく強固な関係性は、持続的な収益を生み出す源泉となります。

顧客ロイヤルティが高まる仕組み

顧客ロイヤルティとは、企業や製品に対する信頼と愛着を意味します。単なる満足度とは異なり、競合製品があっても自社を選び続けてくれる、積極的に推奨してくれる状態を指します。ロイヤルティの高い顧客は、価格変動に左右されにくく、長期的な関係を維持してくれます。

ロイヤルティが高まる要因は多岐にわたります。一貫して高品質な製品やサービスを提供し続けること、顧客の期待を超える体験を届けること、誠実なコミュニケーションを重ねることなど、日々の積み重ねが信頼を醸成します。問題が発生した際の迅速で誠実な対応も、ロイヤルティ形成の重要な機会です。

ブランドストーリーや企業理念への共感も、ロイヤルティを深める要素です。社会的な価値を提供している、環境に配慮している、特定のコミュニティを支援しているといった企業姿勢に共鳴する顧客は、単なる取引相手を超えたファンになります。こうした情緒的なつながりが、最も強固なロイヤルティを生み出します。

ロイヤルティ向上のための施策

パーソナライゼーションは、顧客一人ひとりに最適化された体験を提供する手法です。購買履歴や閲覧履歴に基づいたレコメンド、属性に応じたコンテンツ配信、誕生日や記念日に合わせた特別なメッセージなど、個別対応により顧客は特別扱いされていると感じます。

コミュニティの形成も効果的です。同じ製品を使うユーザー同士が交流できる場を提供することで、帰属意識が生まれます。ユーザーフォーラム、ファンイベント、オンラインコミュニティなどを通じて、顧客同士のつながりを促進できます。活発なコミュニティは、サポート機能も果たし、企業への愛着も深めます。

顧客の声を真摯に聞き、製品改善に反映させる姿勢も重要です。フィードバックを求め、実際に改善を行い、その結果を共有することで、顧客は自分の意見が尊重されていると感じます。ベータ版への招待、新機能の優先利用、開発ロードマップの共有など、顧客を製品開発のパートナーとして扱うことで、強いロイヤルティが育ちます。

LTV向上に役立つツールと活用法

テクノロジーの活用により、LTV向上の取り組みを効率化し、成果を最大化できます。適切なツールの選定と運用が、データドリブンな顧客管理を実現します。

MAツールによる見込み客育成

マーケティングオートメーション(MA)ツールは、見込み客の獲得から育成までを自動化し、効率的にリード管理を行うためのシステムです。Webサイトでの行動履歴、メール開封率、資料ダウンロードなどの情報を統合し、各見込み客の興味関心度をスコアリングできます。

スコアが一定値に達した見込み客には、自動的にフォローメールを送信したり、営業担当に通知したりする設定が可能です。手動では困難な大量のリード管理を効率化し、最適なタイミングでのアプローチを実現します。見込み客の温度感に応じた段階的な育成により、成約率を高められます。

セグメント別のシナリオ設計により、業種や役職、関心テーマに応じた情報提供が自動化できます。BtoB企業であれば、製造業向け、IT業向けなど、業種別に異なるコンテンツを配信することで、より高い反応率を得られます。MAツールの活用は、少ないリソースで多くの見込み客を効果的に育成し、将来的なLTV向上の基盤を作ります。

CRMツールによる顧客関係管理

CRM(Customer Relationship Management)ツールは、既存顧客との関係を一元管理するシステムです。顧客の基本情報、購買履歴、問い合わせ履歴、担当者とのやり取りなど、あらゆる情報を集約し、チーム全体で共有できます。これにより、顧客との接点がシームレスになり、一貫した体験を提供できます。

購買パターンの分析により、クロスセルやアップセルの機会を特定できます。過去の購買データから、特定の商品を買った顧客が次に購入しやすい商品を予測し、最適なタイミングで提案することが可能です。自動的にレコメンドを表示する機能により、営業効率が飛躍的に向上します。

顧客満足度調査の実施とフィードバック管理も、CRMツールで効率化できます。定期的なNPS(Net Promoter Score)調査を自動配信し、結果を顧客データと紐づけて管理することで、ロイヤルティの変化を追跡できます。不満を持つ顧客を早期に発見し、適切なフォローを行うことで、解約を防止しLTVを守れます。

データ分析ツールの活用

BI(ビジネスインテリジェンス)ツールや顧客分析プラットフォームにより、LTVを多角的に分析できます。顧客セグメント別のLTV比較、時系列でのLTV推移、チャネル別の獲得顧客のLTV差異など、様々な切り口でデータを可視化できます。ダッシュボードで重要指標を一覧できれば、迅速な意思決定が可能になります。

コホート分析により、獲得時期別の顧客グループを比較できます。今月獲得した顧客と3ヶ月前に獲得した顧客で、継続率や購買頻度がどう異なるかを追跡することで、施策の効果を検証できます。オンボーディングを改善した後に獲得した顧客のほうが継続率が高いといった気づきが得られれば、成功施策の横展開につながります。

予測分析により、将来的なLTVを事前に推定することも可能です。機械学習を活用し、顧客の初期行動パターンから将来の購買可能性を予測するモデルを構築できます。早期に高LTV顧客を識別できれば、重点的なフォローにより価値を最大化できます。データ分析ツールの高度な活用が、LTV向上の精度を高めます。

ビジネスモデル別LTV向上事例

業種やビジネスモデルによって、効果的なLTV向上施策は異なります。自社のモデルに適したアプローチを選択することが成功の鍵となります。

サブスクリプション型ビジネスの施策

サブスクリプション型では、オンボーディングの質が継続率を左右します。初回利用時のチュートリアルを充実させ、早期に製品の価値を実感してもらうことで、初月解約を防げます。ウェルカムメールシリーズで段階的に機能を紹介したり、使い方動画を提供したりする施策が効果的です。

プラン設計も重要です。基本プラン、スタンダード、プレミアムといった複数の選択肢を用意し、成長に応じてアップグレードできる階段を設計します。機能制限を適切に設定し、上位プランの魅力を明確にすることで、自然なアップセルが発生します。年間契約での割引提供により、長期コミットメントを促すことも有効です。

使用状況のモニタリングにより、解約リスクを早期発見できます。ログイン頻度が低下した、主要機能の利用が減少したといったシグナルを検知したら、カスタマーサクセスチームが積極的にアプローチします。利用方法の提案、困りごとのヒアリング、追加研修の提供など、能動的なサポートで解約を防止します。

EC・小売ビジネスの施策

EC・小売では、メールマーケティングが強力なツールです。購買履歴に基づいたパーソナライズされたレコメンドメールを配信することで、再購買を促進できます。前回購入した商品の関連商品、閲覧したが購入しなかった商品の再提案、セール情報の先行案内など、顧客の興味に合わせた情報提供が効果的です。

リピーター特典やVIPプログラムの導入により、継続購入のインセンティブを設計できます。購入回数や累計金額に応じてステータスが上がり、割引率が高くなる、限定商品にアクセスできる、送料無料になるといった特典は、顧客の再訪を促します。ゲーミフィケーション要素を取り入れることで、楽しみながら購買を継続してもらえます。

カゴ落ち対策も見逃せません。商品をカートに入れたまま購入を完了しなかった顧客に、リマインドメールを送信することで、5〜10%の回復率が期待できます。クーポン提供、送料無料の案内、在庫残りわずかの通知など、購入を後押しする要素を組み合わせることで、機会損失を最小化できます。

BtoBビジネスの施策

BtoBでは、カスタマーサクセスが極めて重要です。導入後の定期的なミーティングで利用状況を確認し、課題解決を支援することで、顧客の成功を伴走します。製品を使いこなせていない部分を発見したら、活用方法を提案し、ROIを高めるサポートを行います。顧客の成功が継続契約につながります。

業界別の成功事例やベストプラクティスの共有も効果的です。同業他社での活用方法を紹介することで、新たな使い道を発見してもらえます。ウェビナーの開催、事例集の提供、ユーザー会の実施など、知見を共有する場を設けることで、顧客は製品の可能性を広げられます。

契約更新の数ヶ月前から、価値の再確認を行うプロセスも重要です。導入前後での変化、達成した成果、コスト削減効果などを可視化し、投資対効果を明確に示します。QBR(Quarterly Business Review)として定期的に価値を振り返る機会を設けることで、契約更新時に迷いなく継続を決断してもらえます。追加ニーズがあれば、拡張提案のチャンスにもなります。

まとめ

LTV向上は、既存顧客との関係を深め、長期的な収益を最大化する戦略です。購買単価、頻度、継続期間の向上とコスト削減の4つの軸から施策を展開し、顧客ロイヤルティを高めることが本質です。MA・CRMツールを活用したデータドリブンな管理により、持続的な成長を実現できます。

ENICXO
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オンリーストーリーでは、これまで10年以上にわたり、
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そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。

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