「受付の方に『担当部署から折り返します』と言われ、二度とかかってこない…」
「やっと決裁者に繋がっても、『今、忙しいので』の一言で電話を切られてしまう…」
決裁者へのアポイント獲得を目指す電話(アポ電)で、このような悔しい経験をしたことはないでしょうか。
この記事を最後まで読めば、受付や担当者といった手強いゲートキーパーを突破するための具体的な会話術、決裁者の心をわずか30秒で掴む魔法のトーク、そしてそのまま使える完全トークスクリプトが手に入ります。
数々のトップセールスが失敗と改善を繰り返す中で磨き上げた「生きた電話術」だけを厳選しました。
明日から自信を持って受話器を握れるようになることをお約束します。
電話術の前に!決裁者アポの成功率を8割決める「準備」の質
多くの営業担当者が電話の「話し方」ばかりを気にしますが、実は決裁者アポの成功率の8割は、電話をかける前の「準備」で決まっています。
準備なき電話は、武器を持たずに戦場へ向かうようなものです。
ここでは、あなたの電話を「ただの迷惑電話」から「聞く価値のある電話」に変える、3つの必須準備を解説します。
準備①:「誰が」決裁者かを特定するリサーチ術
決裁者アポの第一歩は、ターゲット企業の「誰が」決裁者なのかを正確に特定することです。
闇雲に代表電話にかけ、「社長をお願いします」と言うのは最も非効率な方法です。
まずは企業の公式ウェブサイトを開き、「会社概要」や「役員一覧」「組織図」を確認しましょう。
特に上場企業であれば、投資家向けのIR情報や中期経営計画資料に、事業ごとの責任者名が記載されていることがよくあります。
また、LinkedInなどのビジネスSNSで企業名を検索し、アプローチしたい事業部の「部長」「本部長」といった役職者を特定するのも極めて有効です。
このリサーチによって、「〇〇事業部長の△△様」と名指しで電話をかけることが可能になります。
準備②:「何を」話すかを決める仮説構築
決裁者を特定したら、次に「何を」話すかを考えます。
ここで重要なのは、「自分が売りたいもの」を話すのではなく、「相手が聞きたいであろうこと」を準備する視点です。
そのためには、相手の状況を深く理解し、「今、こんな課題を抱えているのではないか?」という仮説を立てる必要があります。
例えば、相手企業の中期経営計画に「海外展開の加速」と書かれていれば、「海外展開におけるリスク管理」というテーマで話す準備をする。
決裁者個人のインタビュー記事で「人材育成」について語っていれば、「トップセールスを育成する新たな手法」について話す準備をする。
このように、徹底したリサーチに基づいた仮説があるからこそ、決裁者の心を動かすことができるのです。
準備③:「いつ」かけるかを見極めるタイミング
決裁者は極めて多忙であり、電話をかけるタイミングは非常に重要です。
一般的に、会議が多い午前10時〜12時や、一日のまとめ作業に入る夕方以降は避けるべきとされています。
比較的繋がりやすいと言われるのは、始業直後の午前9時〜10時の間や、昼休み明けの午後1時〜2時の間です。
また、業界の特性を考慮することも重要です。
例えば、不動産業界は火曜日や水曜日が定休日のことが多く、飲食業界はランチタイムやディナータイムは避けるべきです。
さらに、ターゲット企業のプレスリリースなどをチェックし、大きなイベントや決算発表の直後は避けるといった配慮も、成功率を高めるための細やかな準備の一つと言えるでしょう。
【完全トークスクリプト】決裁者アポ獲得を実現する4ステップ電話術
入念な準備が整ったら、いよいよ実践です。
ここでは、電話をかけてからアポイントを獲得するまでの一連の流れを4つのステップに分解し、それぞれの場面で「何を」「どのように」話せばよいのか、完全トークスクリプト形式で具体的に解説します。
この型をマスターすれば、あなたの電話は見違えるほどスムーズになります。
ステップ①:受付・担当者(ゲートキーパー)突破の会話術
最初の関門は、受付や担当部署などの「ゲートキーパー」です。
ここでの目標は、彼らと戦うことではなく、スムーズに味方につけて決裁者へ繋いでもらうことです。
ポイントは、「営業電話です」という雰囲気を一切出さず、「名指しで繋いでもらうのが当然の、重要な用件である」という姿勢を、丁寧な言葉遣いと自信のある声で示すことです。
【王道パターントーク例】
「お世話になっております。私、株式会社△△の〇〇と申します。恐れ入ります、営業本部長の佐藤様にお繋ぎいただけますでしょうか。」
(ポイント:「佐藤様はいらっしゃいますか?」ではなく「お繋ぎいただけますか」と、繋いでもらう前提で話す)
【権威性パターントーク例】
「お世話になっております。株式会社△△の〇〇です。貴社のDX推進に関する最新のセキュリティ事例について情報提供したく、情報システム部門の責任者の方をお願いできますでしょうか。」
(ポイント:専門家として、相手にメリットのある情報提供が目的であることを明確に伝える)
ステップ②:決裁者の心を掴む「冒頭30秒」の技術
幸運にも決裁者本人に繋がったら、最初の30秒が勝負です。
ここで「聞く価値がある」と思わせなければ、すぐに電話を切られてしまいます。
この冒頭部分の構成は、①簡潔な自己紹介、②相手への貢献(Give)の提示、③時間の約束、の3点セットが鉄則です。
相手の時間を尊重する姿勢を見せつつ、自分と話すことで相手にメリットがあることを明確に伝えるのです。
【トーク例】
「佐藤様、お忙しいところ恐れ入ります。私、株式会社△△で〇〇業界の営業効率化を担当しております、〇〇と申します。
佐藤様が管轄されている営業部門の受注率向上に繋がる、競合のA社様での成功事例がございまして、ぜひ情報提供させて頂きたくご連絡いたしました。
今、3分だけお時間を頂戴できますでしょうか?」
(ポイント:「営業です」ではなく、専門分野を名乗り、「情報提供」というスタンスで話す。「3分だけ」と時間を区切ることで、相手の心理的ハードルを下げる)
ステップ③:興味を引き出す「本題」の展開方法
相手から「いいですよ」という許可を得られたら、いよいよ本題です。
ここでやってはいけないのが、自社の商品やサービスについて一方的に話し続けることです。
目的は、準備してきた「仮説」をぶつけ、質問を通じて相手に課題を認識させ、話させることです。
「売り込み」の場ではなく、「ディスカッション」の場を作る意識を持ちましょう。
【トーク例】
「ありがとうございます。実は最近、多くの営業部長様が『商談数は増えているが、若手の受注率が上がらない』という共通のお悩みをお持ちです。
IR資料を拝見し、貴社も営業組織を拡大されていると存じますが、例えば教育面などで同様の課題を感じられることはございますでしょうか?」
(ポイント:業界の共通課題を提示し、「あなただけではない」という共感を示した上で、相手が「Yes/No」ではなく具体的に答えたくなるようなオープンな質問を投げかける)
ステップ④:自然な流れでアポイントに繋げるクロージング術
会話の中で相手の課題を引き出し、興味が高まってきたと感じたら、自然な流れでアポイント獲得のクロージングに入ります。
ここでのポイントは、「お会いしていただけますでしょうか?」と相手に許可を求める(お願いする)のではなく、「より詳しいお話をするための次のステップ」として、こちらから2つの選択肢を提示して相手に選んでもらうことです。
人は選択肢を与えられると、どちらかを選びやすくなるという心理効果(選択肢話法)を活用します。
【トーク例】
「その課題、実はA社様も全く同じ点でお悩みでした。もし、A社様がどのようにして受注率を1.5倍に改善されたか、その具体的な手法にご興味がおありでしたら、来週の火曜の午後か、水曜の午前あたりで、Webで15分ほどお時間を頂戴し、詳しくご説明させていただけないでしょうか?」
(ポイント:「もしご興味があれば」と相手の意思を尊重する前置きをしつつ、「火曜or水曜」という選択肢を提示。15分という短い時間設定で、アポイントのハードルを下げる)
【状況別】決裁者アポ電で使える「切り返し」フレーズ集
決裁者への電話では、様々な断り文句や保留の言葉を投げかけられます。
しかし、ここで引き下がっていては成果は出ません。
トップセールスは、こうした状況を想定し、切り返すためのフレーズを事前に準備しています。
ここでは、よくある3つの状況別に、NGな対応とOKな切り返し例をご紹介します。
「今は忙しいので、またにしてください」と言われたら
これは最も多い断り文句の一つです。
ここで「では、いつ頃お電話すればよろしいでしょうか?」と聞くのはNGです。
相手に考える手間を与えてしまい、「こちらからかける」と言われて終わる可能性が高いからです。
【OKな切り返し例】
「ご多忙の折、大変失礼いたしました。承知いたしました。
それでは、本日の要点と、お役立ていただける資料のダウンロード先だけでも、備忘録としてメールでお送りさせて頂きたいと存じます。
ほんの10秒だけですので、Eメールアドレスをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
(ポイント:相手の状況を受け入れつつ、すぐに電話を切らせない。「メールアドレスを聞く」という小さなYESを取りにいき、次の接点に繋げる)
「資料だけ送っておいてください」と言われたら
これも非常によくある、相手が電話を切りたい時の常套句です。
ここで「はい、わかりました」と素直に引き下がってしまうのは三流の対応です。
資料を送ったところで、読まれる可能性は極めて低いでしょう。
【OKな切り返し例】
「かしこまりました。ただ、お送りする資料が5種類ございまして、佐藤様が今最もご関心のある課題に的を射た、最適な資料をお送りしたいと存じます。
つきましては、的確な資料を選ぶために、1分だけ現状についてお伺いしてもよろしいでしょうか?例えば、今一番の課題は『新規顧客の開拓』と『既存顧客の単価アップ』のどちらになりますでしょうか?」
(ポイント:相手の要求を受け入れつつ、質問で会話の主導権を握る。相手に考えさせ、会話を継続させることで、課題を引き出すチャンスが生まれる)
「結構です」「間に合っています」と言われたら
これは最も強い拒絶の言葉であり、多くの営業担当者が心を折られてしまう場面です。
ここで「そうですか…失礼します」と諦めてしまうのは簡単ですが、トップセールスはここでもう一押しを加えます。
【OKな切り返し例】
「さようでございますか、はっきりとお教えいただきありがとうございます。皆様、最初はそうおっしゃるのですが、実は今回の件は、従来の〇〇とは全く異なるアプローチでして、多くの企業様にコストを30%削減した実績でお喜びいただいております。
本日はご挨拶だけでもと思いご連絡いたしました。貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。失礼いたします。」
(ポイント:潔く引き下がりつつも、相手の記憶に爪痕を残す。実績や具体的な数値を伝えることで、「もしかしたら有益な話だったかも?」と思わせ、次の機会に繋げる布石を打つ)
これだけは避けたい!決裁者に嫌われるNG電話術ワースト3
これまで成功するためのテクニックを解説してきましたが、一方で「これをやってしまったら絶対に嫌われる」というNG行動も存在します。
どんなに素晴らしい商品やサービスを持っていても、電話での印象が悪ければ二度とチャンスはもらえません。
ここでは、特に避けるべき3つのNG電話術をご紹介します。
NG①:準備不足が透けて見える「自分本位」な電話
決裁者が最も嫌うのは、自分の時間を無駄にされることです。
相手の会社の事業内容も、誰が責任者かも調べずにかけてくる「自分本位」な電話は、その典型です。
「御社がどのような事業をされているか教えていただけますか?」といった質問は、準備不足を露呈する最悪の質問です。
このような電話は、相手に対する敬意が欠けていると判断され、即座に切られてしまうでしょう。
事前準備の質が、そのまま相手への敬意の表れとなることを肝に銘じるべきです。
NG②:相手の話を遮る「一方的なマシンガントーク」
電話に繋がった嬉しさのあまり、用意してきたスクリプトを一方的に、早口で話し続けてしまう「マシンガントーク」も絶対に避けなければなりません。
営業電話の目的は、自社が話すことではなく、相手に話させて課題を引き出すことです。
相手が何かを話そうとしているのに、それを遮ってまで自分の話を続ける行為は、コミュニケーションを拒絶しているのと同じです。
会話のキャッチボールを意識し、相手が話す時間と自分が話す時間の割合が「7:3」になるくらいを目指すのが理想的です。
NG③:一度断られているのに何度もかける「しつこい電話」
一度はっきりと「必要ない」と断られているにもかかわらず、担当者を変えたり、時間を空けたりして何度も同じ用件で電話をかけるのは、営業活動ではなく迷惑行為です。
このような「しつこい電話」は、個人の印象を悪くするだけでなく、会社のブランドイメージそのものを大きく傷つけるリスクがあります。
断られた場合は、その理由を真摯に受け止め、潔く引き下がることが重要です。
そして、なぜ断られたのかを分析し、アプローチ手法やトーク内容を改善して、全く別の機会を待つべきです。
まとめ:最高の電話術とは「貢献意識」を声に乗せること
本記事では、決裁者へのアポイントを獲得するための、準備から実践的なテクニック、そしてNG行動までを網羅的に解説しました。
決裁者アポの成功は、8割が電話をかける前の「準備」で決まり、残りの2割が「テクニック」と「マインド」で構成されていることがお分かりいただけたと思います。
そして、様々な小手先のテクニック以上に重要なのが、徹底した事前準備に裏打ちされた「御社のビジネスの役に立ちたい」という真摯な貢献意識です。
この想いこそが、あなたの声に自信と熱意を与え、最終的に多忙な決裁者の心を動かす最強の電話術となるのです。
まずはこの記事のトークスクリプトを何度も声に出して読み、自分の言葉として馴染ませることから始めてみてください。
自信を持ってかけた一本の電話が、あなたのキャリアを大きく変えるかもしれません。