最終更新日: 2025.12.07

BtoB マーケティングにおいて、複雑な購買プロセスを可視化し、効果的な施策を展開するためにカスタマージャーニーマップは不可欠です。本記事では、BtoB 特有の特徴を踏まえた作成方法から、実務で活用できる具体的なポイントまで詳しく解説します。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの一連のプロセスを、旅に例えて可視化したマーケティングツールです。各段階における顧客の行動、思考、感情を整理することで、最適なタイミングで適切なアプローチを行うための設計図となります。

定義と基本概念

カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買プロセスを時系列で図式化し、各フェーズにおける行動や感情、タッチポイントを可視化したものです。

横軸には「認知」「情報収集」「比較検討」「購入」「利用継続」といった購買プロセスの各ステージを配置します。縦軸には「顧客の行動」「顧客接点(タッチポイント)」「思考・感情」「課題」「対策」などの項目を設定し、各段階での顧客の状態を詳細に記述します。

このマップを作成することで、顧客が「いつ」「どこで」「何を考え」「どう行動するか」を組織全体で共有できるようになります。マーケティング、営業、カスタマーサクセスなど、複数の部門が顧客と接点を持つ BtoB 企業にとって、統一された顧客理解の基盤となります。

また、カスタマージャーニーマップは、売り手視点ではなく買い手視点でのマーケティング戦略を構築するための重要なツールです。従来の企業主導の施策ではなく、顧客のニーズや課題に寄り添った施策を設計することで、より高い成果を得られます。

インターネットやソーシャルメディアの普及により、顧客は営業担当者と接触する前に、自ら大量の情報を収集できるようになりました。この複雑化した購買プロセスに対応するため、カスタマージャーニーマップの重要性が増しています。

BtoC と BtoB の違い

BtoC と BtoB では、購買プロセスや意思決定の構造が根本的に異なるため、カスタマージャーニーマップの設計アプローチも変わります。

BtoC では、購入を決定するのは基本的に個人であり、感情や好みが大きく影響します。購買までの期間も比較的短く、衝動買いや感覚的な判断も含まれます。そのため、個人の価値観やライフスタイル、感情の変化に焦点を当てたマップを作成します。

一方、BtoB では、購買の意思決定が組織内の複数人によって行われます。情報収集担当者、実務担当者、部門長、経営層など、様々な立場の人が関与し、それぞれが異なる視点で製品を評価します。そのため、組織と個人の両方のペルソナを設定する必要があります。

BtoB の購買プロセスは長期化する傾向があります。商材の単価が高く、導入による影響が組織全体に及ぶため、慎重な検討が行われます。1ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。この長期化したプロセスの各段階で、適切な情報提供とアプローチが求められます。

また、BtoB では合理的・論理的な判断が重視されます。個人の好みよりも、企業の課題解決、費用対効果、導入後のサポート体制などが重要な判断基準となります。そのため、感情面だけでなく、組織としての課題や目標、予算、稟議プロセスなども考慮したマップを作成する必要があります。

さらに、BtoB ではタッチポイントが多様化します。Web サイト、展示会、セミナー、営業訪問、デモンストレーション、トライアル、提案資料、契約交渉など、様々な接点が存在します。これらすべてのタッチポイントで一貫した顧客体験を提供するために、包括的なマップが必要です。

BtoB でカスタマージャーニーマップが必要な理由

BtoB 企業がカスタマージャーニーマップを作成することで、マーケティングと営業活動の質が大きく向上します。複雑な購買プロセスを持つ BtoB だからこそ、マップの価値が際立ちます。

複雑な購買プロセスの可視化

BtoB の購買プロセスは、複数の関係者が関与し、長期間にわたるため、全体像を把握することが困難です。

カスタマージャーニーマップを作成することで、認知から導入に至るまでの各段階を明確に可視化できます。「どの段階で」「誰が」「何を求めているか」を整理することで、購買プロセスの全体像が明らかになります。

各ステージにおける顧客の行動や心理状況を詳細に分析することで、現状不足している施策が発見できます。「この段階では情報提供が不足している」「ここで顧客が離脱しやすい」といった課題が明確になり、改善策を立案しやすくなります。

また、顧客がどのチャネルで情報収集しているか、どのコンテンツに興味を持っているかを把握することで、効果的なタッチポイントを設計できます。限られたリソースを、最も効果的な施策に集中投下できるようになります。

さらに、購買プロセスのボトルネックを特定できます。リードは獲得できているが商談化しない、商談は多いが受注しないといった課題の原因を、マップ上で分析することで解決策が見えてきます。

マップを定期的に見直すことで、市場環境の変化や顧客行動の変化にも対応できます。顧客の購買行動は常に進化しているため、継続的な改善が重要です。

部門間の認識統一と連携強化

BtoB 企業では、マーケティング、営業、カスタマーサクセスなど、複数の部門が顧客と接点を持ちます。

各部門が独自の顧客像を持っていると、施策に一貫性がなくなり、顧客に混乱を与えてしまいます。カスタマージャーニーマップを共有することで、組織全体で統一された顧客理解が醸成されます。

マーケティング部門は認知から興味喚起、リード獲得までを担当し、営業部門は商談から受注までを担当し、カスタマーサクセスは導入後の活用支援を担当します。これらの部門が分断されていると、顧客体験が損なわれます。

カスタマージャーニーマップを用いて各部門の役割と責任範囲を明確にすることで、シームレスな顧客体験を提供できます。どの段階で誰が何をすべきかが明確になり、部門間の連携がスムーズになります。

また、社外のビジネスパートナーや代理店との連携にも活用できます。共通のマップを基に戦略を共有することで、一貫したマーケティング活動が実施できます。

認識の齟齬による無駄な議論や手戻りが減少し、意思決定のスピードが向上します。「このペルソナならこの施策」という共通理解があるため、施策の是非を判断する際の基準が明確になります。

顧客体験向上と施策最適化

カスタマージャーニーマップは、顧客体験の向上と施策の最適化に直結します。

各段階における顧客の課題や求めている情報を把握することで、適切なタイミングで適切なコンテンツを提供できます。認知段階では業界トレンド情報、検討段階では詳細な機能説明や導入事例、決定段階では ROI データや契約条件といった形で、段階に応じた情報提供が可能になります。

顧客の感情の変化にも注目することで、不安や懸念を解消する施策を設計できます。「導入の手間が心配」という感情に対しては、導入支援サービスの充実をアピールし、「費用対効果が不明」という懸念には、具体的な成功事例を提示します。

また、カスタマージャーニーマップを基にコンテンツギャップを特定できます。必要なコンテンツが不足している段階を明らかにし、優先的にコンテンツを制作することで、効率的にコンテンツライブラリを充実させられます。

タッチポイントごとの施策の効果を測定し、PDCA サイクルを回すことで、継続的に施策を改善できます。どのタッチポイントが最も効果的か、どの段階で離脱が多いかを分析し、改善につなげます。

さらに、顧客のロイヤリティ向上にも寄与します。購入後の体験も含めてマップ化することで、継続利用や追加購入、アップセルにつながる施策を設計できます。

BtoB カスタマージャーニーマップの構成要素

効果的なカスタマージャーニーマップを作成するには、横軸と縦軸に配置すべき要素を理解する必要があります。BtoB 特有の項目を押さえることで、実務で活用できるマップが完成します。

横軸:購買プロセスの各ステージ

横軸には、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを時系列で配置します。

BtoB における典型的な購買プロセスは、「課題認識」「情報収集」「認知」「興味・関心」「比較検討」「購買検討」「購買決定」「導入・利用」「評価・継続」といったステージに分けられます。

課題認識段階では、顧客が自社の課題に気づき、解決の必要性を感じます。「業務効率が悪い」「コストがかかりすぎている」といった問題意識が生まれる段階です。

情報収集段階では、課題解決のための方法や手段を探します。業界情報、解決策の種類、利用可能なソリューションなどを幅広く調査します。

認知段階では、自社の製品やサービスを知ります。Web 検索、展示会、セミナー、広告、紹介など、様々なチャネルを通じて接触します。

興味・関心段階では、自社製品への関心が高まり、詳細を知りたいと考えます。資料請求、ウェビナー参加、問い合わせなどのアクションを起こします。

比較検討段階では、複数の競合製品と比較し、自社に最適なものを選定します。機能、価格、サポート体制、導入実績などを評価します。

購買検討段階では、社内での稟議や承認プロセスが進みます。担当者が上司や決裁者を説得し、予算を確保します。

購買決定段階では、最終的な契約が締結されます。契約条件の交渉、法務チェック、発注手続きなどが行われます。

導入・利用段階では、実際に製品を導入し、運用を開始します。初期設定、トレーニング、定着支援などが重要になります。

評価・継続段階では、導入後の効果を評価し、継続利用や追加購入を検討します。満足度が高ければアップセルやクロスセルの機会となります。

縦軸:顧客の行動・感情・タッチポイント

縦軸には、各ステージにおける顧客の状態を表す項目を配置します。

顧客の行動では、各段階で顧客が実際に取る具体的な行動を記述します。「Web で検索する」「資料をダウンロードする」「デモを依頼する」「見積もりを取る」といった具体的なアクションを列挙します。

顧客の思考・感情では、各段階での心理状態や考えていることを記述します。「本当に効果があるのか不安」「導入が複雑そうで心配」「他社と比べてどうか知りたい」といった内面を描きます。

タッチポイント(顧客接点)では、顧客が自社と接触するチャネルやメディアを記述します。Web サイト、ブログ記事、ホワイトペーパー、メール、展示会、セミナー、営業訪問、デモンストレーション、トライアルなど、すべての接点を洗い出します。

顧客の課題・ニーズでは、各段階で顧客が抱えている課題や求めている情報を記述します。「自社に合う製品か判断したい」「導入事例を知りたい」「ROI を確認したい」といったニーズを明確にします。

自社の課題では、各段階で自社側に不足している要素や改善すべき点を記述します。「認知が不足している」「競合との差別化が不明確」「導入支援体制が弱い」といった課題を洗い出します。

対策・施策では、顧客の課題やニーズに応えるために実施すべき施策を記述します。「SEO コンテンツを強化」「比較資料を作成」「導入サポートを充実」といった具体的なアクションプランを設定します。

提供すべきコンテンツでは、各段階で顧客に提供するべき情報やコンテンツを記述します。ブログ記事、ホワイトペーパー、導入事例、比較表、デモ動画、FAQ など、必要なコンテンツを明確にします。

BtoB 特有の設定項目

BtoB のカスタマージャーニーマップには、BtoC にはない独自の設定項目があります。

関与者・意思決定者の項目では、各段階で誰が関与しているかを記述します。情報収集段階では実務担当者、比較検討段階では部門長、最終決定段階では経営層というように、段階ごとに関わる人物が変わります。

組織の課題・目標では、個人の課題だけでなく、組織としての課題や目標を記述します。「全社的なデジタル化推進」「コスト削減目標の達成」といった組織レベルの目的を考慮します。

稟議プロセスでは、社内での承認の流れを記述します。担当者から上司、部門長、経営層へと段階的に承認を得るプロセスを可視化することで、各段階で必要な情報や説得材料が明確になります。

予算・決裁権では、各段階での予算の有無や決裁権の所在を記述します。「この段階では担当者レベルで決定できる」「ここからは部門長の承認が必要」といった情報が、アプローチ方法を決める上で重要です。

競合との比較ポイントでは、顧客が比較検討する際の具体的な評価項目を記述します。機能、価格、導入実績、サポート体制、拡張性など、顧客が重視するポイントを明確にします。

カスタマージャーニーマップの作成手順

実際にカスタマージャーニーマップを作成する際の具体的な手順を解説します。段階を踏んで進めることで、実務で活用できる質の高いマップが完成します。

目的とゴールの明確化

カスタマージャーニーマップ作成の第一歩は、何のために作るのかを明確にすることです。

目的が曖昧なままマップを作り始めると、途中で手が止まってしまったり、抽象的なものしか作れなかったりします。「売上拡大」「新規顧客開拓」「継続率向上」「プロダクト改善」など、具体的な目的を設定しましょう。

例えば、新規顧客獲得を目的とする場合は、認知から購入までのプロセスに重点を置きます。継続率向上が目的なら、購入後の利用・評価段階を詳細に設計します。

目的によって、マップに盛り込むべき要素や重視すべきステージが変わります。最初に目的を明確にしておくことで、作成の方向性がぶれません。

また、ゴール(達成したい状態)も具体的に設定します。「リード獲得数を3倍にする」「商談化率を20%向上させる」「解約率を10%削減する」といった定量的な目標を持つことで、マップを活用した施策の効果測定が可能になります。

誰のためのマップかも明確にします。マーケティング部門向けか、営業部門向けか、全社向けか。対象によって、記述する内容の詳細度や表現方法が変わります。

ペルソナの設定

目的が明確になったら、次にペルソナを設定します。

ペルソナとは、自社の商品やサービスを購入する典型的な顧客像のことです。BtoB では、企業ペルソナと個人ペルソナの両方を設定する必要があります。

企業ペルソナでは、業種、企業規模、売上高、従業員数、事業エリア、成長フェーズ、企業文化、IT リテラシーなどを設定します。「製造業、従業員500名、売上100億円、国内市場中心、デジタル化推進中」といった具体的な情報を記述します。

個人ペルソナでは、氏名、年齢、役職、部門、担当業務、在籍年数、決裁権の有無、課題、情報収集方法などを設定します。実在する人物のように詳細に描くことで、チーム全体で共通の顧客イメージを持てます。

BtoB では意思決定に複数の人が関与するため、主要なペルソナを2〜3人設定することが推奨されます。情報収集担当者、部門長(決裁者)、経営層(最終承認者)など、それぞれの立場でペルソナを作成します。

ペルソナ設定には、既存顧客のデータ分析、顧客インタビュー、営業担当者へのヒアリングなど、実際のデータを活用します。思い込みではなく、事実に基づいたペルソナを作成することが重要です。

ペルソナには顔写真やイラストを添えると、より具体的なイメージを持ちやすくなります。チームメンバー全員が同じ人物像を思い浮かべられるようにすることが大切です。

購買プロセスの定義

ペルソナが設定できたら、そのペルソナが商品やサービスを購入するまでのプロセスを具体的に洗い出します。

自社のサービスをペルソナがどのようなきっかけで認知し、その後どのような行動を取るかを、時系列で書き出します。既存顧客の購買プロセスを分析したり、営業担当者にヒアリングしたりして、リアルなプロセスを描きます。

BtoB の場合、課題認識から購買決定まで数ヶ月から1年以上かかることもあります。長期化するプロセスを適切な粒度で分割し、ステージを設定します。

各ステージの区切りは、顧客の行動や心理状態の変化に基づいて設定します。「情報収集から比較検討に移る」「比較検討から購買検討に進む」といった変化のポイントを明確にします。

営業担当者とマーケティング担当者の両方の意見を踏まえて、バランスの取れたプロセスを設計することが重要です。マーケターの視点だけでなく、実際の商談の流れを知る営業の視点も反映させます。

また、自社独自の購買プロセスの特徴も考慮します。トライアル期間がある、デモンストレーションが必須、POC(概念実証)を実施するなど、業界や商材特有のプロセスを組み込みます。

各項目の記入と完成

購買プロセスが定義できたら、各ステージの縦軸項目を記入していきます。

各段階での顧客の具体的な行動を記述します。「○○で検索する」「資料請求フォームから問い合わせる」「展示会のブースを訪問する」など、観察可能な行動を列挙します。

顧客の思考・感情では、その段階で顧客が何を考え、どう感じているかを記述します。「本当に効果があるのか不安」「他社製品と比べてどうか気になる」「導入後のサポートが心配」といった心理状態を描きます。

タッチポイントでは、その段階で顧客が接触する可能性のあるチャネルやメディアをすべて洗い出します。Web サイト、SEO コンテンツ、広告、メール、展示会、セミナー、営業訪問など、あらゆる接点を記述します。

顧客の課題・ニーズでは、その段階で顧客が求めている情報や解決したい課題を記述します。これにより、提供すべきコンテンツや施策が明確になります。

自社の課題では、現状不足している要素や改善が必要な点を正直に記述します。「この段階でのコンテンツが不足」「競合との差別化が不明確」といった課題を洗い出すことで、改善の優先順位がつけられます。

対策・施策では、顧客の課題に応えるために実施すべき具体的なアクションを記述します。コンテンツ制作、イベント開催、営業プロセスの改善など、実行可能な施策を設定します。

マップはパワーポイント、エクセル、Google スプレッドシートなどで作成します。視覚的に分かりやすく、チーム全体で共有しやすい形式を選びましょう。

BtoB カスタマージャーニーマップ作成のポイント

効果的なカスタマージャーニーマップを作成し、実務で活用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

複数の意思決定者を考慮する

BtoB では、購買決定に複数の関係者が関与するため、それぞれの視点を考慮する必要があります。

情報収集担当者、実務担当者、部門長、経営層など、立場によって重視するポイントが異なります。担当者は使いやすさや導入の手間を気にし、部門長は費用対効果を重視し、経営層は戦略的価値や競合優位性を見ます。

各関与者の役割と権限を明確にし、それぞれが購買プロセスのどの段階で関わるかを可視化します。担当者レベルでの検討段階、部門長の承認段階、経営層の最終決定段階というように、段階ごとの関与者を明記します。

また、各関与者が持つ懸念や疑問も記述します。「上司をどう説得するか」「予算をどう確保するか」「導入失敗のリスクはないか」といった、それぞれの立場での課題を理解することで、適切な情報提供が可能になります。

複数のペルソナを設定する場合は、それぞれの関係性も考慮します。「担当者が情報収集し、部門長に提案する」「部門長が承認し、経営会議で最終決定される」といった意思決定フローを明確にします。

各関与者に向けた個別の施策も設計します。担当者向けには詳細な機能説明、部門長向けには ROI データ、経営層向けには戦略的価値を訴求する資料を用意するなど、ターゲットに応じたコンテンツを準備します。

データに基づいた作成

主観や思い込みでカスタマージャーニーマップを作成すると、実際の顧客の行動と乖離してしまいます。

既存顧客のデータを分析し、実際の購買プロセスを把握します。CRM や MA ツールのデータから、リードがどのような経路で商談化し、受注に至ったかを追跡します。

顧客インタビューやアンケートを実施し、定性的な情報を収集します。「どのような課題があったか」「どこで自社を知ったか」「何が決め手になったか」「どのような不安があったか」といった生の声を聞きます。

営業部門やカスタマーサクセス部門からのヒアリングも重要です。日々顧客と接している現場の担当者は、データだけでは見えない顧客の心理や行動パターンを知っています。

Web サイトのアクセス解析データも活用します。どのページがよく見られているか、どのコンテンツからコンバージョンしているか、どこで離脱しているかを分析することで、顧客の関心事や行動が見えてきます。

収集したデータを基に、根拠を持った記述を心がけます。「このステージではこのような行動を取る顧客が80%」といった形で、データに裏付けられたマップを作成します。

ただし、完璧なデータが揃うまで待つ必要はありません。ある程度のデータがあれば仮説ベースで作成し、運用しながら検証・修正していくアプローチも有効です。

他部門を巻き込む

カスタマージャーニーマップは、マーケティング部門だけで作成するものではありません。

営業、カスタマーサクセス、製品開発、カスタマーサポートなど、顧客と接点を持つすべての部門を巻き込むことで、より実態に即したマップが完成します。

営業部門は、商談段階以降のプロセスに関する豊富な知識を持っています。「どのような質問をされることが多いか」「どこで躊躇されるか」「何が決め手になるか」といった情報を提供してもらいます。

カスタマーサクセスは、導入後の顧客の行動や課題を知っています。「導入後にどのような壁にぶつかるか」「どのような支援が効果的か」といった情報は、導入・利用段階のマップ作成に不可欠です。

製品開発部門は、顧客のニーズや要望を製品に反映させる役割を担っています。カスタマージャーニーマップから見えた顧客の課題を製品改善につなげることで、より顧客志向の製品が生まれます。

ワークショップ形式で各部門のメンバーを集め、共同でマップを作成することも効果的です。各部門の視点を持ち寄ることで、多角的で実用的なマップが完成します。

完成したマップは全社で共有し、常に参照できる状態にします。社内 Wiki に掲載したり、会議室に掲示したりすることで、日常的にマップを意識する文化を作ります。

カスタマージャーニーマップの活用方法

作成したカスタマージャーニーマップを、実際のマーケティングと営業活動にどう活用するかが重要です。作って終わりではなく、日々の業務に組み込むことで真価を発揮します。

マーケティング施策の設計

カスタマージャーニーマップを基に、各段階で最適なマーケティング施策を設計します。

認知段階では、ターゲット企業にリーチするための施策を展開します。SEO コンテンツの強化、リスティング広告、SNS での情報発信、業界メディアへの寄稿、展示会への出展などを計画します。

情報収集段階では、顧客の課題解決に役立つ情報を提供します。ブログ記事、ホワイトペーパー、調査レポート、ウェビナーなど、価値ある情報コンテンツを制作します。

比較検討段階では、競合との差別化を明確にする施策を実施します。比較表、導入事例、機能詳細資料、デモ動画などを用意し、自社の優位性を訴求します。

購買検討段階では、社内での稟議を支援する資料を提供します。ROI 算出シート、導入提案書テンプレート、FAQ 集など、担当者が上司を説得するための材料を揃えます。

各施策の KPI も、カスタマージャーニーマップに基づいて設定します。認知段階ではリーチ数、情報収集段階ではコンテンツダウンロード数、比較検討段階では商談化率といった形で、段階ごとの目標を明確にします。

施策の効果を測定し、マップにフィードバックすることで、継続的に改善します。想定した顧客行動と実際のデータに乖離があれば、マップを修正します。

コンテンツ戦略の立案

カスタマージャーニーマップは、コンテンツマーケティングの設計図となります。

各段階で顧客が求めている情報を洗い出し、それに応えるコンテンツを計画的に制作します。コンテンツギャップ(不足しているコンテンツ)を特定し、優先順位をつけて制作していきます。

認知段階では、業界トレンド、課題解決の方向性、ベストプラクティスなど、幅広いテーマのコンテンツを用意します。SEO を意識したブログ記事やコラムを継続的に発信します。

情報収集段階では、より詳細で専門的なコンテンツを提供します。ホワイトペーパー、e-book、調査レポート、ガイドブックなど、ダウンロード資料として価値あるコンテンツを制作します。

比較検討段階では、具体的な判断材料となるコンテンツを用意します。導入事例、顧客の声、ROI データ、競合比較表、機能詳細資料などを充実させます。

購買検討段階では、意思決定を後押しするコンテンツを提供します。無料トライアル、デモンストレーション、導入支援サービスの紹介、契約条件の説明などを分かりやすく伝えます。

導入・利用段階では、定着を支援するコンテンツを用意します。オンボーディングガイド、活用 Tips、ベストプラクティス集、動画チュートリアルなどを提供します。

コンテンツの形式も多様化します。テキスト記事、インフォグラフィックス、動画、ポッドキャスト、ウェビナーなど、顧客の好みやタッチポイントに応じて最適な形式を選択します。

営業戦略への活用

営業活動においても、カスタマージャーニーマップは強力なツールとなります。

商談の準備段階で、見込み客が購買プロセスのどの段階にいるかを見極めます。マーケティング活動での行動履歴や、初回商談での会話内容から、現在の段階を判断します。

段階に応じた提案内容を設計します。初期段階の見込み客には課題の深掘りと情報提供を中心に、後期段階の見込み客には具体的な提案と ROI の提示を行います。

複数の意思決定者がいる場合、それぞれに向けた資料を用意します。担当者向けの詳細資料、部門長向けの要約資料、経営層向けのエグゼクティブサマリーを準備し、各層に適切にアプローチします。

営業プロセスの標準化にも活用します。カスタマージャーニーマップに基づいた営業フローを設計し、どの段階でどのような情報を提供し、どのようなアクションを促すかを明確にします。

新人営業の育成にも役立ちます。カスタマージャーニーマップを教材として、顧客の購買プロセスと各段階での対応方法を学ばせることで、早期に戦力化できます。

また、営業部門からのフィードバックをマップに反映させます。実際の商談で得られた顧客の声や反応を、マップの精度向上に活かします。

まとめ

BtoB におけるカスタマージャーニーマップは、複雑な購買プロセスを可視化し、効果的なマーケティングと営業活動を実現するための不可欠なツールです。複数の意思決定者が関与し、長期化する BtoB の購買プロセスだからこそ、各段階での顧客の行動、思考、感情を詳細に把握する必要があります。

効果的なマップ作成には、明確な目的設定、データに基づいたペルソナ設定、購買プロセスの正確な定義、他部門を巻き込んだ作成が重要です。企業ペルソナと個人ペルソナの両方を設定し、組織と個人の両面から顧客を理解することで、実務で活用できるマップが完成します。

作成したマップは、マーケティング施策の設計、コンテンツ戦略の立案、営業戦略への活用など、様々な場面で威力を発揮します。部門間の認識を統一し、一貫した顧客体験を提供することで、リード獲得率、商談化率、受注率の向上が期待できます。カスタマージャーニーマップを中心に据えた顧客視点のマーケティング活動により、BtoB ビジネスの成長を加速させましょう。

ENICXO
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オンリーストーリーでは、これまで10年以上にわたり、
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経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
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そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。

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