監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
社員それぞれが自分の名刺を持っているのに、会社としてどの企業と接点があるのか誰も答えられない、という状態になっていないでしょうか。
この記事では、名刺管理の目的、管理方法の種類、ツールでできること、法人で定着させる手順、よくある失敗、名刺情報を売上につなげる使い方までを解説します。
名刺管理とは
名刺管理とは、交換した名刺の情報を、必要なときに取り出せる形で保ち続けることです。
目的は整理そのものではなく、会社としてどの企業の誰と接点があるのかを、誰でも確認できる状態をつくることにあります。
まずは、なぜ組織として管理する必要があるのかを整理します。
名刺管理が必要になる場面
担当者が異動したときに、引き継ぎができるかどうかが最初の分かれ目になります。
退職とともに取引先との接点が消えてしまう状態は、会社にとって損失です。
複数の部署が同じ企業に別々に接触してしまう事故も、接点が見えていないことが原因です。
過去に提案して断られた相手に、数年後また同じ提案をしてしまうことも起こります。
個人の整理と組織の管理は別物
手元の名刺をきれいに並べることは、個人の作業効率を上げる行為です。
一方で、組織の管理とは、自分以外の人が使える形にしておくことを意味します。
この二つを混同すると、各自が整理しているのに会社としては何も分からない状態になります。
どちらを目指すのかを最初に決めておくことが、方法選びの前提になります。
管理する情報の範囲を決める
名刺に書かれている項目をすべて保つ必要はありません。
会社名、氏名、部署、役職、連絡先に加えて、いつ誰がどこで会ったかまであれば実務に足ります。
会話の内容や次の予定は、名刺情報ではなく商談の記録として別に残します。
範囲を決めずに始めると、入力の負担だけが増えていきます。
名刺管理の4つの方法
名刺管理には複数のやり方があり、組織の規模と目的によって向き不向きがあります。
ここでは、代表的な4つの方法を比較します。
名刺入れやファイルで保管する
費用がかからず、すぐに始められる方法です。
探すのに時間がかかり、持ち出せず、本人がいないと誰も確認できないという制約があります。
名刺の枚数が数百枚を超えると、分類の維持が難しくなります。
個人が短期間で使う場合に限って、現実的な方法といえます。
表計算ソフトに入力する
共有の場所に置けば、複数人で見られるようになります。
入力に時間がかかり、表記のゆれや重複が蓄積していく点が弱点です。
誰かが上書きして情報が消える事故も起きやすくなります。
件数が増えないうちは機能しますが、長く使うには設計の手間がかかります。
名刺管理ツールを使う
撮影した名刺を文字データに変換し、検索や共有ができる形で保管します。
入力の手間と探す手間の両方を減らせるため、法人での運用に向いています。
権限の設定や接点の可視化といった、組織向けの機能を備えたサービスもあります。
費用が発生するため、何を解決したいのかを決めてから選定します。
営業支援ツールに取り込む
顧客管理や商談管理のツールへ名刺情報を取り込む方法です。
名刺の情報が商談の記録や受注の実績とつながるため、営業の分析まで一本化できます。
すでに営業支援ツールを使っている企業には、最も無駄のない形になります。
ただし、名刺のデータ化だけを目的に導入すると機能が過剰になります。
名刺管理ツールでできること
ツールを検討する前に、何が自動化されるのかを知っておくと判断しやすくなります。
ここでは、法人で価値が出やすい機能を3つ紹介します。
データ化と項目の自動振り分け
撮影した画像から文字を読み取り、会社名や役職などの欄へ自動で振り分けます。
読み取りの精度は完全ではないため、確認して直す時間を見込む必要があります。
英語表記の名刺や縦書きの名刺は、精度が落ちることがあります。
導入前の試用期間に、自社が実際に受け取る名刺で確かめておきましょう。
組織内での接点の可視化
登録された名刺を横断して見ることで、会社としての接点が一覧になります。
別の部署が既にその企業と取引していたと分かるだけで、提案の進め方が変わります。
紹介を依頼できる社内の相手が見つかることも少なくありません。
この効果は、登録が一定数たまってから現れます。
異動や退職の情報の更新
サービスによっては、相手の異動や会社の変更を知らせる仕組みがあります。
連絡先が古くなった名刺を使い続けることを防げる点が実務的な価値です。
相手が転職した先で、再び接点を持てる場合もあります。
更新情報の範囲と頻度は、サービスごとに違うため確認が必要です。
名刺管理ツールを選ぶときの確認項目
ツールを比べる段階では、機能の多さよりも運用に耐えるかどうかを見ます。
ここでは、見落とされやすい確認項目を挙げます。
誰が何人使うのかを先に決める
料金は利用人数で変わるため、対象者の範囲を先に決めます。
登録する人だけでなく、閲覧だけの管理職も人数に含まれるのかを確認しましょう。
全社に広げるのか、営業部門だけに限るのかで総額が大きく変わります。
段階的に広げる前提なら、人数の変更がしやすい契約かどうかも聞いておきます。
解約したときにデータを持ち出せるか
契約を終える場面を想定して、書き出しの条件を確認します。
書き出せる形式と、含まれる項目の範囲まで具体的に聞いておきましょう。
画像データも取り出せるかどうかは、サービスによって違います。
ここが曖昧なまま契約すると、後から乗り換えられなくなります。
導入時の支援があるか
過去分の取り込みや初期設定を支援してもらえるかは、立ち上がりの速さに影響します。
運用ルールの設計まで相談できる窓口があるかを確認しておくと安心です。
社内に推進する担当者を置けない場合は、支援の手厚さを優先します。
導入から3か月は質問が集中するため、その期間の対応内容が特に重要になります。
法人で名刺管理を定着させる5つの手順
ツールを契約しただけでは、名刺は登録されません。
ここでは、現場に根づかせるための手順を順番に解説します。
手順1 目的を一つに絞る
最初に、名刺管理で何を解決したいのかを一つに決めます。
引き継ぎを楽にするのか、重複接触を防ぐのか、休眠顧客を掘り起こすのかで設計が変わります。
目的が複数あると、必要な項目が増えて入力が止まります。
一つ目の目的が達成できてから、次の目的を足していく進め方が確実です。
手順2 登録のタイミングを決める
いつ登録するのかを決めていないと、名刺は机にたまります。
商談が終わった直後、その場所を離れる前に撮影するという形まで具体化しましょう。
展示会のように大量に交換する場面は、当日の終わりにまとめて処理する運用にします。
行動の時点を決めることが、定着の最大の条件になります。
手順3 過去分と今後分を分けて進める
過去にたまった名刺をすべて登録してから始めようとすると、着手が遅れます。
今後交換する分から先に運用を始め、過去分は後から計画的に処理するのが現実的です。
過去分は、直近2年に絞るなど範囲を決めると負担が読めます。
まとめて取り込む支援を受けられるサービスもあるため、見積もり時に確認しましょう。
手順4 権限と公開範囲を設計する
名刺情報は個人情報にあたるため、誰がどこまで見られるかを先に決めます。
全社で共有する情報と、担当者だけが見る情報を分ける設計にしておきましょう。
取得した情報を案内の配信に使う場合は、扱いの考え方を社内で確認します。
ルールを文書にしてから展開するほうが、後の手戻りが少なくなります。
手順5 定着したかを数字で見る
運用が始まったら、登録率を定期的に確認します。
交換した枚数に対してどれだけ登録されているかを見れば、現場の負担が分かります。
数字が落ちている部署には、理由を聞いて運用を調整します。
登録を評価の対象にするより、登録して得られた成果を共有するほうが続きます。
名刺管理でよくある失敗
導入しても使われない状態は、どの会社でも起こり得ます。
代表的な3つの失敗を知っておくと、事前に避けられます。
目的が共有されず入力が止まる
現場に目的が伝わっていないと、入力は負担としか感じられません。
登録すると自分にどう返ってくるのかを具体的に説明することが欠かせません。
過去の接点が見つかって商談につながった事例を共有すると、納得が得られます。
管理のための入力だと受け取られた時点で、運用は止まります。
二重管理が残る
従来の表計算ソフトとツールを並行して使い続けると、どちらも更新されなくなります。
移行の期限を決め、片方を止める判断が必要です。
止める前に、残すべき情報を書き出して移しておきます。
並行期間が長引くほど、どちらが正しいのか分からなくなります。
情報が古いまま使われる
登録した時点では正しくても、相手の異動や組織変更で情報は古くなります。
最終接触日を確認し、一定期間を過ぎた情報は確認してから使う運用にしましょう。
古い連絡先に案内を送ると、相手に手間をかけることになります。
更新の仕組みを持つサービスを選ぶことも、対策の一つです。
名刺情報を売上につなげる使い方
名刺管理の価値は、ためることではなく使うことで生まれます。
ここでは、成果につながりやすい2つの使い方を紹介します。
休眠している接点を掘り起こす
過去に接点があったまま連絡が途絶えている相手は、新規よりも反応が得られやすい相手です。
最終接触日が1年以上前の企業を抽出し、状況を尋ねる連絡を入れるだけで商談が生まれることがあります。
以前は予算がなかった相手でも、時期が変われば検討の対象になります。
抽出の条件を決めておけば、毎月同じ作業を繰り返せます。
役職で絞って決裁に近い相手を探す
役職の情報が入っていれば、決裁に近い相手だけを抽出できます。
代表取締役、役員、事業責任者といった層が何社分あるかを数えてみましょう。
枚数が多いのに決裁に近い相手が少ない場合、接点の作り方に偏りがあります。
その場合は、管理を磨くより出会う場を変えるほうが効果が出ます。
決裁者との接点が足りないなら決裁者マッチングがおすすめ
名刺管理を整えても、決裁権を持つ相手との接点そのものが少ないままでは成果につながりません。
不足している接点を増やす手段として、決裁者マッチングの活用がおすすめです。
決裁者マッチングとは
決裁者マッチングとは、経営者や役員など、意思決定の権限を持つ人同士をつなぐサービスです。
名刺交換の機会を待たず、条件に合う決裁者と会う場が用意される点が特徴です。
自社の業種や商材、会いたい相手の条件をもとに紹介を受けられます。
蓄積した接点を活かす打ち手とは別に、接点の総量を増やす打ち手として機能します。
オンリーストーリーの決裁者マッチング
オンリーストーリーは、決裁者同士が出会える審査制の決裁者マッチングプラットフォームを運営しています。
登録には審査があるため、決裁権を持つ経営者や役員と出会いやすい環境が整っています。
担当者が自社の事業や課題を丁寧にヒアリングし、相性の良い決裁者を紹介するため、質の高い商談を始められます。
ただし、社内に眠っている接点を使い切っていない段階であれば、まず名刺管理の整備を進めるほうが先です。
まとめ
名刺管理の目的は整理ではなく、会社としてどの企業の誰と接点があるのかを誰でも確認できる状態をつくることです。
方法は紙での保管、表計算ソフト、名刺管理ツール、営業支援ツールへの取り込みの4つがあり、規模と目的で選び方が変わります。
定着させるには、目的を一つに絞り、登録の時点を決め、過去分と今後分を分け、権限を設計し、登録率を数字で見る手順が有効です。
目的が共有されない、二重管理が残る、情報が古いまま使われるという3つの失敗は、事前に手を打てば避けられます。
たまった情報は、休眠している接点の掘り起こしと、役職で絞った決裁者の抽出という形で売上につながります。
接点そのものが足りないと分かった場合は、決裁者マッチングで接点の総量を増やす方法もあわせて検討してみてください。
よくある質問
Q. 名刺管理の目的は何ですか
A. 会社としてどの企業の誰と接点があるのかを、誰でも確認できる状態をつくることです。
手元の名刺をきれいに並べる個人の整理とは、目指すところが異なります。
担当者の異動や退職で接点が消えてしまう状態を防ぐことが、最初の分かれ目になります。
Q. 管理の方法にはどんな選択肢がありますか
A. 名刺入れでの保管、表計算ソフトへの入力、名刺管理ツール、営業支援ツールへの取り込みの4つです。
紙は費用がかかりませんが、枚数が数百枚を超えると分類の維持が難しくなります。
表計算ソフトは共有できる一方、表記のゆれや重複が蓄積していきます。
Q. どうすれば現場に定着しますか
A. 名刺管理で何を解決したいのかを一つに絞ることから始めます。
商談が終わった直後にその場で撮影するところまで、登録の時点を具体化します。
過去分の登録を待たず、今後交換する分から運用を始めるほうが着手が早くなります。
Q. たまった名刺情報はどう使えばよいですか
A. 最終接触日が1年以上前の企業を抽出し、状況を尋ねる連絡を入れる使い方があります。
役職の欄が埋まっていれば、代表取締役や役員だけを抜き出すこともできます。
枚数が多いのに決裁に近い相手が少ない場合は、接点の作り方に偏りがあります。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

