監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
商談の中身には自信があるのに、所作や段取りで相手を不快にさせていないか気になることはないでしょうか。
この記事では、訪問前の準備から到着、名刺交換、商談中、オンライン、終了後のお礼までを場面ごとに整理し、失礼になりやすい行動もあわせて解説します。
商談のマナーが結果を左右する理由
商談のマナーは、相手に与える印象を通じて提案の受け取られ方そのものを変えます。
まずは、所作が結果に影響する仕組みを整理しておきましょう。
判断は話す前から始まっている
相手は、入室から着席までのわずかな時間で、こちらの仕事の進め方を推し量っています。
時間に正確か、所作が落ち着いているか、相手を立てられるかは、提案書より先に伝わる情報です。
初対面の商談では、この最初の数十秒が後の説明の聞かれ方を左右します。
反対に、所作が整っていれば、多少の説明不足は好意的に補って受け取ってもらえます。
社内で共有される前提で見られている
商談相手は、その場の印象を社内に持ち帰って共有します。
担当者が上司へ報告するとき、提案内容と同じくらい相手の印象が語られることは珍しくありません。
時間を守らない、資料が足りないといった事実は、本人が思う以上に正確に伝わります。
社内で推してもらう立場の人に、余計な説明の負担をかけない配慮が必要です。
形式より相手の負担を減らす視点
マナーを暗記した作法の集まりと捉えると、場面が変わるたびに迷うことになります。
相手の時間と手間をどれだけ減らせるかという基準に置き換えると、判断が一貫します。
たとえば資料を事前に送るのも、会議室の準備を減らすという意味で立派なマナーです。
細かい作法に自信がなくても、この視点があれば大きく外すことはありません。
訪問前に整えておくこと
商談の良し悪しは、前日までの準備でおおよそ決まります。
ここでは、訪問の前に確認しておきたい項目を挙げます。
日時と場所を前日までに確認する
会社名、所在地、入館の方法、担当者の氏名と連絡先を前日のうちに確認します。
入館に受付票や身分証が必要なビルもあるため、初訪問では条件まで聞いておくと当日あわてません。
複数の入口がある建物では、どの入口から入るのかも確認しておきましょう。
前日に一度、経路と所要時間を調べ直しておくと、当日の遅れを防げます。
持ち物をそろえる
名刺、筆記具、メモ、提案資料、見積の控えを前日にそろえます。
名刺は想定する人数の3倍を用意しておくと、同席者が増えても困りません。
資料は相手の人数より1部多く持参し、こちらの控えも別に用意します。
充電の残量や、オンラインに切り替わった場合の接続手段も確認しておきます。
服装を相手の場に合わせる
服装は自分の好みではなく、相手の会社の雰囲気に合わせて選びます。
初訪問で迷ったらジャケットを選んでおくと、堅い職場でも崩れた職場でも浮きません。
相手の会社がカジュアルな服装だと分かっている場合は、合わせて少し崩す判断もあります。
靴やかばんの状態は意外と見られているため、前日に確認しておきましょう。
遅れそうなときの連絡
交通の乱れなどで遅れる見込みが立った時点で、すぐに連絡します。
到着してから謝るより、見込みの時点で伝えるほうが相手の予定を守れます。
連絡では、遅れる理由と到着できる時刻、商談時間を短縮してよいかを合わせて伝えます。
相手が次の予定を抱えている場合もあるため、日を改める選択肢も示しておくと丁寧です。
到着から入室までの流れ
当日の動きは、決まった順序を持っておくと迷いません。
到着から着席までの流れを確認します。
到着は5分前を目安にする
受付に着く時刻は、約束の5分前が目安になります。
早すぎる到着は、相手の準備を急がせることになるため、10分以上前なら建物の外で時間を調整します。
反対に、1分でも遅れる場合は遅刻として扱い、必ず連絡を入れます。
移動の所要時間は、余裕を15分ほど見て組み立てておくと安定します。
受付での名乗り方
受付では、会社名、氏名、約束の時刻、相手の部署と氏名を簡潔に伝えます。
「〇〇社の〇〇です。14時に営業部の〇〇様とお約束しております」と一息で言える形にしておくと、取り次ぎが早く済みます。
内線で呼び出す方式の受付では、番号を事前に確認しておきます。
待つ間は携帯電話を操作し続けず、資料に目を通す程度にとどめます。
コートと荷物の扱い
コートは建物に入る前に脱ぎ、腕にかけて持ちます。
かばんは床か椅子の脇に置き、机の上には置かないのが基本です。
応接室に通されたら、勧められるまで座らずに立って待ちます。
荷物を広げるのは、着席して名刺交換が済んでからにします。
席は案内に従う
部屋に通されたら、案内された席に座ります。
案内がない場合は、出入口に近い側が訪問した側の席という原則で判断します。
相手が先に入室していた場合は、立ち上がって挨拶してから着席します。
部屋の形が原則に当てはまらないときは、素直に尋ねるほうが確実です。
名刺交換で押さえる点
名刺交換は商談の入口であり、相手が最も所作を見ている場面です。
順番と扱い方の基本を確認します。
訪問した側から先に出す
名刺は、訪問した側、立場が下の側から先に差し出します。
相手より先に名乗る姿勢を見せること自体が敬意の表現になります。
複数人いる場合は、立場の高い人から順に交換していきます。
相手が先に出してきた場合は、受け取りながら自分の名刺も差し出して構いません。
受け取った名刺の扱い
受け取った名刺は、商談が終わるまでしまわず、机の上に置いておきます。
相手が複数人なら、着席している並び順と同じ順に並べると、名前と顔を取り違えません。
名刺の上に資料や筆記具を重ねるのは避けます。
読み方が分からない名前は、その場で尋ねておくほうが後の失礼を防げます。
商談中の振る舞い
商談が始まってからは、話す内容よりも聞く姿勢が印象を左右します。
ここでは、意識しておきたい点を挙げます。
聞く時間を確保する
説明したいことが多いほど、話す時間は長くなりがちです。
商談の前半は相手の話を聞く時間に充てると、提案の精度も印象も同時に上がります。
相手が話している途中で説明をかぶせるのは避け、一区切りついてから話し始めます。
うなずきや相づちは、聞いていることを伝える最も簡単な手段です。
メモの取り方
メモを取る姿勢は、相手の話を大切に扱っている合図になります。
下を向いたまま書き続けず、要点のときだけ手を動かすと、会話が途切れません。
パソコンで記録する場合は、最初に一言断ってから開きます。
数字や固有名詞は、その場で復唱して確認しておくと後の行き違いを防げます。
出された飲み物の扱い
飲み物を出されたら、勧められた段階で一口いただいて構いません。
手をつけないままにしておくほうが、かえって気を遣わせます。
蓋のある湯のみは、蓋を裏返して茶たくの横に置きます。
退室の際に礼を述べると、場の印象が穏やかに締まります。
時間を管理する
約束の時間を超える説明は、どれだけ内容が良くても評価を下げます。
残り時間を自分で把握し、終了の5分前には次の行動を確認する段取りにしておきます。
時間が足りない場合は、続きを別の機会にする提案をこちらから出します。
延長する場合も、相手の予定を確認してから進めます。
オンライン商談のマナー
画面越しの商談では、気を配る対象が物理的な所作から画面の見え方に移ります。
押さえておきたい点を整理します。
入室と表示名
入室は約束の時刻の少し前に済ませ、相手を待たせない状態をつくります。
表示名は会社名と氏名が分かる形に設定しておくと、相手が参加者を把握しやすくなります。
複数人で参加する場合は、冒頭でそれぞれの役割を短く伝えます。
接続の不具合に備えて、電話で連絡できる手段も用意しておきます。
背景とカメラの位置
背景には、社外に見せられない情報が映り込まないようにします。
カメラは目線の高さに合わせ、相手を見下ろす角度にならないよう調整します。
正面から光が当たる位置に座ると、表情が相手に伝わりやすくなります。
音声の品質は映像以上に印象を左右するため、機器の確認を優先しましょう。
画面共有と終了
画面を共有している間は、相手の表情が小さくなり反応を読み取りにくくなります。
要所で共有をいったん止め、相手の表情を確認する時間を取ると一方的になりません。
終了するときは、相手が退出するのを待ってからこちらが退出します。
共有した資料は、商談後にあらためて送っておくと親切です。
商談が終わった後にやること
終了後の動きは、次の機会につながるかどうかを分けます。
ここでは、当日から数日のうちに済ませたいことを挙げます。
お礼の連絡は当日中に送る
お礼の連絡は、当日中、遅くとも翌営業日の午前までに送ります。
話した内容に触れた一文を入れるだけで、形式的な文面とは受け取られ方が変わります。
その場で答えられなかった質問があれば、回答の見込みも添えます。
長文にせず、要点を3行程度にまとめると読まれやすくなります。
宿題の期限を守る
商談中に持ち帰った宿題は、約束した期限より早く返すのが基本です。
期限に間に合わない見込みが立った時点で、途中経過を先に伝えると信頼を損ねません。
回答が複数ある場合は、優先順位をつけて順に返します。
社内の確認が必要な項目は、誰にいつ確認するのかまで伝えておきます。
失礼になりやすい行動
悪気がなくても相手の評価を下げてしまう行動があります。
事前に知っておくと避けられます。
一方的に話し続ける
説明を尽くそうとするほど、相手が話す時間は削られます。
商談の満足度は、相手が話せた時間の長さと相関するといわれます。
資料を順に読み上げるだけの進め方は、特に避けたい形です。
相手の反応が薄いと感じたら、質問に切り替えて流れを戻します。
社名や役職を間違える
社名の表記、役職、氏名の読み方の誤りは、準備不足として受け取られます。
資料と口頭の両方で、相手の正式名称を確認しておくことが欠かせません。
株式会社が前に付くか後ろに付くかも、事前に確認しておきます。
同席者が増えた場合は、その場で名刺を確認してから呼び方を決めます。
直前の日程変更
前日や当日の日程変更は、相手の予定を大きく崩します。
やむを得ない場合は、理由と代替の候補日を同時に伝えるのが最低限の対応です。
変更が重なると、商談そのものの優先度を疑われます。
社内の都合による変更は、上長から一言添えてもらうと受け取られ方が変わります。
所作を整えても決まらないなら決裁者マッチングがおすすめ
マナーを尽くしても、相手が決裁に関わらない立場であれば結果は変わりません。
誰と会うかを変える手段として、決裁者マッチングの活用がおすすめです。
決裁者マッチングとは
決裁者マッチングとは、経営者や役員など、意思決定の権限を持つ人同士をつなぐサービスです。
担当者を経由せずに決裁者と直接話せるため、提案の意図がそのまま届きます。
自社の業種や商材、会いたい相手の条件をもとに紹介を受けられる点も特徴です。
面談の前に相手の事業内容や課題が共有されるため、初回から具体的な話に入れます。
オンリーストーリーの決裁者マッチング
オンリーストーリーは、決裁者同士が出会える審査制の決裁者マッチングプラットフォームを運営しています。
登録には審査があるため、決裁権を持つ経営者や役員と出会いやすい環境が整っています。
担当者が自社の事業や課題を丁寧にヒアリングし、相性の良い決裁者を紹介するため、質の高い商談を始められます。
一方で、既存顧客への追加提案のように窓口が決まっている商談では、従来どおりの訪問と所作が中心になります。
まとめ
商談のマナーは形式を守ること自体が目的ではなく、相手の時間と手間を減らすための手段です。
訪問前に日時と持ち物と服装を整え、到着は5分前、名刺は訪問した側から先に出すという順序を押さえておきます。
商談中は聞く時間を確保し、残り時間を自分で管理して終了の前に次の行動を決めます。
オンラインでは、表示名、カメラの高さ、画面共有中の間の取り方に気を配りましょう。
終了後はお礼の連絡を当日中に送り、持ち帰った宿題は期限より早く返します。
所作を尽くしても話が前に進まないと感じるなら、決裁者マッチングで決める人と直接会う方法もあわせて検討してみてください。
よくある質問
Q. 商談には何分前に着くのが適切ですか
A. 受付に着く時刻は、約束の5分前が目安になります。
10分以上前に着いてしまう場合は、相手の準備を急がせないよう建物の外で調整します。
1分でも遅れる見込みが立った時点で、到着できる時刻を添えて連絡を入れます。
Q. 名刺はどちらから先に出すのが正しいですか
A. 訪問した側、つまり立場が下になる側から先に差し出します。
相手が複数名のときは、上位の役職の人から順に渡していきます。
相手が先に出してきたときは、受け取りながら自分の名刺を差し出して構いません。
Q. 出された飲み物には手をつけてよいのでしょうか
A. 勧められた段階で一口いただいて構いません。
手をつけないままにしておくほうが、かえって相手に気を遣わせます。
蓋のある湯のみであれば、蓋を裏返して茶たくの横に置きます。
Q. オンライン商談で特に気をつけることはありますか
A. 表示名は会社名と氏名が分かる形にしておき、相手を待たせないよう早めに入室します。
カメラの高さは目線に合わせ、相手を見下ろす画角にならないようにします。
画面共有の間は反応が見えにくいため、要所で共有を止めて表情を確認します。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

