監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
商談で部屋に入った瞬間、どこに座ればよいのか分からず迷ってしまうことはないでしょうか。
この記事では、上座と下座の基本から、訪問時・来客時・円卓やソファ・オンラインの場合まで、場面ごとの座る位置の考え方を解説します。
商談で座る位置に気を配る理由
座る位置は、相手への敬意の示し方として受け取られます。
加えて、資料の見せやすさや話しやすさといった実務面にも影響します。
まずは、位置が商談にどう関わるのかを整理しておきましょう。
相手に与える印象が変わる
案内を待たずに奥へ進んでしまうと、配慮が足りない印象を与えることがあります。
反対に、落ち着いた所作で案内を待てる人は、仕事の進め方も丁寧だと受け取られます。
初対面の商談では、話し始める前のふるまいが印象の大部分を占めます。
細かい作法を暗記するよりも、相手を立てる姿勢が伝わるかどうかが大切です。
資料を見せやすいかどうかが変わる
紙の資料を使う場合、向かい合うと相手は上下が逆のまま読むことになります。
同じ資料を一緒に見ながら話したいときは、斜めや隣に座れる配置が有利です。
画面を見せる場合も、角度によっては相手が見づらくなります。
部屋の形を見た段階で、どこから説明するのが自然かを考えておきましょう。
同席者の位置から社内の力関係が読める
相手側の着席順には、社内の序列や関心の強さが表れます。
最も奥に座った人が決裁に近い立場である可能性が高いと考えてよいでしょう。
誰が真ん中に座り、誰が端でメモを取っているかにも意味があります。
この観察は、提案を誰に向けて話すかを決める材料になります。
上座と下座の基本
日本の商習慣では、席に格の違いがあると考えます。
基本の原則を一つ覚えておけば、応用で判断できます。
ここでは、判断の軸になる考え方を解説します。
上座は入口から遠い席
最も基本的な原則は、出入口から遠い席が上座、近い席が下座という考え方です。
人の出入りが少なく落ち着いて座れる場所を、立場が上の人や客に譲るという発想です。
扉が2つある部屋では、主に使われる扉を基準に考えます。
この原則だけで、応接室と会議室の多くの場面を判断できます。
景色や眺望で決まる場合
高層階の会議室などでは、窓の外が見える席を上座とする考え方もあります。
入口からの距離と景色が食い違う場合は、案内する側の判断に従うのが無難です。
絵画や床の間がある和室では、それらを背にする席が上座になります。
部屋の作りによって例外があることを知っておくと、戸惑いにくくなります。
席次に決まった正解がない場合
最近は、フリーアドレスやガラス張りの小部屋など、原則を当てはめにくい部屋も増えています。
迷ったときは、どこに座ればよいか一言尋ねるのが最も確実です。
尋ねることは失礼ではなく、むしろ配慮として受け取られます。
自己判断で奥へ進むより、確認する方が安全です。
形式より目的を優先する判断
商談の目的が資料の説明なら、見やすさを優先する配置に変えて構いません。
その場合も一度は相手に断りを入れてから移動すると、印象を損ねません。
形式を守ることが目的ではなく、商談を前に進めることが目的です。
相手が形式を重視する企業かどうかは、案内のされ方から読み取れます。
訪問して商談するときの座る位置
訪問する側は、原則として下座に座ります。
ただし部屋の形によって、具体的な位置は変わります。
ここでは、よくある3つの場面に分けて解説します。
応接室で向かい合う場合
応接室では、入口に近い側のソファや椅子に座ります。
案内されるまでは座らず、立って待つのが基本の流れです。
上着やかばんは、椅子の脇か足元に置き、机の上には置きません。
相手が入室したら立ち上がり、名刺交換に移ります。
会議室で長机を使う場合
長机が向かい合う形なら、入口に近い列が訪問側の席になります。
議長席にあたる短辺の席には、原則として座らないよう気をつけましょう。
机に資料を広げる場合は、相手側のスペースを侵さない範囲にとどめます。
電源やモニターの位置によって席を変える必要があるなら、確認してから動きます。
複数人で訪問する場合
複数人で訪問するときは、自社で最も立場が上の人が最も入口から遠い席に座ります。
以降は立場の順に、入口へ近づく向きで並びます。
説明を担当する人が画面に近い席に座るなど、役割を踏まえた調整も可能です。
事前に誰がどこに座るかを決めておくと、入室時に迷いません。
案内される前に動かない
部屋に通されても、すぐに座るのは避けます。
どうぞと声をかけられてから着席するのが基本の順序です。
担当者が後から入室する場合も、立って迎えます。
この一連の動きは、慣れてしまえば意識せずにできるようになります。
自社に来てもらうときの座る位置
自社で商談する場合は、迎える側として相手を立てる配置にします。
案内する側の動きが、そのまま会社の印象になります。
ここでは、迎えるときの基本を解説します。
相手を上座へ案内する
来客には、入口から遠い席を勧めます。
こちらへどうぞと手で示しながら、具体的な席を伝えると相手が迷いません。
相手が複数人の場合も、立場の順に奥から座ってもらいます。
相手が席を譲り合っている場合は、重ねて勧めて構いません。
自社側の並び順
自社側は入口に近い列に座り、立場の順に並びます。
議事を進める人が真ん中に座ると、場の進行がしやすくなります。
記録を担当する人は、画面や資料が見やすい端の席が向いています。
全員が同じ側に固まりすぎると、圧迫感を与えることがあります。
飲み物や資料を出す位置
飲み物は、相手の右手側の手前に置くのが一般的です。
資料を差し出すときは、相手が読める向きに回してから渡します。
机の上が狭い場合は、置く前に一度断りを入れます。
こうした細部の積み重ねが、丁寧な会社という印象につながります。
円卓やソファ、社外の場所での考え方
部屋の形が標準的でない場合も、原則の応用で判断できます。
ここでは、判断に迷いやすい3つの場面を取り上げます。
円卓の場合
円卓では入口からの距離が分かりにくいため、出入口から最も離れた位置を上座とみなします。
以降は、上座から見て左右の順に席の格が下がる考え方が一般的です。
人数が多い会食では、案内役を決めておくと混乱しません。
席札が用意されている場合は、それに従います。
ソファ席の場合
長いソファと一人用の椅子が組み合わされている部屋では、長いソファが上座になります。
一人用の椅子が入口側にあるなら、そこが訪問側の席です。
深く沈み込むソファでは、資料を見せにくくなる点に注意が必要です。
必要なら、机の高さに合わせて浅く腰かけます。
社外の場所で商談する場合
喫茶店などで商談する場合は、席の格より居心地と静かさを優先します。
入口や通路から遠く、話の内容が漏れにくい席を選びましょう。
相手には奥の席を勧め、自分が通路側に座ります。
機密性の高い話をする場合は、場所の選定そのものを見直します。
オンライン商談における位置の考え方
画面越しの商談では、物理的な席順という概念がなくなります。
代わりに、画面上の見え方が印象を左右します。
ここでは、意識しておきたい点を整理します。
名前表示と入室の順番
表示名は、会社名と氏名が分かる形に設定しておきます。
入室は相手より少し早めにし、待たせない状態をつくるのが基本です。
自社側が複数人なら、進行役が最初に挨拶して役割を伝えます。
誰が何の担当かを最初に共有すると、相手が話しかけやすくなります。
背景とカメラの高さ
背景は、情報が映り込まない落ち着いたものにします。
カメラは目線の高さに合わせ、見下ろす角度にならないよう調整しましょう。
照明が顔の正面から当たると、表情が伝わりやすくなります。
音声の品質は映像以上に印象を左右するため、機器の確認を優先します。
画面共有中の目線
資料を共有している間は、相手の反応が見えにくくなります。
要所で共有を止め、相手の表情を確認する時間を取ると一方的になりません。
資料の中で今どこを話しているかを言葉で示すと、ついていきやすくなります。
共有を終えたら、必ず全員の顔が見える状態に戻します。
入室から着席までの流れ
座る位置と同じくらい迷いやすいのが、部屋に入ってから座るまでの順序です。
ここでは、名刺交換を含めた一連の流れを整理します。
入室してから名刺交換までの順序
部屋に通されたら、かばんを持ったまま下座側に立って待ちます。
相手が入室したら、先に訪問した側から名乗って名刺を差し出すのが一般的な順序です。
複数人の場合は、立場が上の人から順に交換します。
交換が済んでから、勧められた席に座ります。
受け取った名刺を置く位置
受け取った名刺は、机の上の自分から見て左側に並べて置きます。
相手が複数人なら、着席している並び順と同じ順に並べると名前と顔を取り違えません。
役職が上の人の名刺を、名刺入れの上に置く形も広く使われています。
商談が終わるまでしまわず、名前を確認しながら話しましょう。
着席後に机の上を整える
着席したら、必要な資料と筆記具だけを机に出します。
机の上に物を広げすぎると、相手の資料を置く場所がなくなります。
携帯電話は音を切り、机の上には置かないようにします。
飲み物を勧められたら、一度断らずに受け取って構いません。
相手が資料を配る動きを見せたら、自分の資料を少し寄せて場所をつくります。
相手が書き込みやすい余白を残しておく気配りは、説明の内容と同じくらい記憶に残ります。
座る位置より結果を左右すること
作法を守ることは前提ですが、それだけで商談は決まりません。
最後に、位置以上に重要な点を確認しておきましょう。
誰が同席しているかを見る
同じ提案をしても、聞いている相手の立場によって結果は変わります。
決裁権を持つ人がその場にいるかどうかが、商談の進み方を決めます。
担当者だけの場で完璧に説明しても、社内で再現されるとは限りません。
席次よりも、同席者の役職と権限を確認することに意識を向けましょう。
決裁者が同席していない場合
決裁者が不在なら、担当者に社内の進め方を聞いておきます。
誰が決めるのか、どの会議で決まるのか、いつその会議があるのかの3点が要点です。
次回は決裁者に同席してもらえないか、率直に相談する価値もあります。
断られた場合でも、資料の作り方を決裁者向けに変える判断ができます。
決裁者と同じ席につくなら決裁者マッチングがおすすめ
作法を整えても、相手の席に決める人が座っていなければ商談は前に進みません。
最初から決裁者と向き合う手段として、決裁者マッチングの活用がおすすめです。
決裁者マッチングとは
決裁者マッチングとは、経営者や役員など、意思決定の権限を持つ人同士をつなぐサービスです。
担当者を経由せずに決裁者と直接話せるため、提案の意図をそのまま届けられます。
自社の業種や商材、会いたい相手の条件をもとに紹介を受けられる点も特徴です。
席次を気にする前に、誰と会うかを変えるという発想になります。
オンリーストーリーの決裁者マッチング
オンリーストーリーは、決裁者同士が出会える審査制の決裁者マッチングプラットフォームを運営しています。
登録には審査があるため、決裁権を持つ経営者や役員と出会いやすい環境が整っています。
担当者が自社の事業や課題を丁寧にヒアリングし、相性の良い決裁者を紹介するため、質の高い商談を始められます。
ただし、相手企業の窓口が既に決まっている案件では、従来どおりの訪問と作法が中心になります。
まとめ
座る位置の原則は、出入口から遠い席が上座、近い席が下座という一点に集約されます。
訪問したときは案内を待って下座に座り、来客を迎えるときは相手を奥の席へ通します。
円卓やソファ、社外の場所では、原則を応用しながら話しやすさと機密性を優先して判断します。
オンライン商談では席順の代わりに、表示名、カメラの高さ、画面共有中の目線に気を配りましょう。
作法以上に結果を左右するのは、その席に決裁権を持つ人が座っているかどうかです。
決裁者と最初から向き合いたい場合は、決裁者マッチングという選択肢もあわせて検討してみてください。
よくある質問
Q. 上座と下座はどう見分けますか
A. 出入口から遠い席が上座、近い席が下座という原則で判断します。
扉が2つある部屋では、主に使われている扉を基準に考えます。
和室では床の間や絵画を背にする席、高層階では景色の見える席を上座とする考え方もあります。
Q. 訪問したときはどこに座ればよいですか
A. 原則として、入口に近い側が訪問した側の席になります。
部屋に通されてもすぐには座らず、どうぞと声をかけられてから着席します。
複数人で訪問する場合は、自社で最も立場が上の人が入口から最も遠い席に座ります。
Q. 円卓やソファのときはどう考えますか
A. 円卓では、出入口から最も離れた位置を上座とみなします。
長いソファと一人用の椅子が組み合わされた部屋では、長いソファが上座にあたります。
喫茶店など社外では席の格より、入口や通路から遠く話が漏れにくい席を選びます。
Q. オンライン商談では何に気をつけますか
A. 表示名を会社名と氏名が分かる形に設定し、相手より少し早めに入室します。
カメラは目線の高さに合わせ、見下ろす角度にならないよう調整します。
画面共有の間は相手の反応が見えにくいため、要所で共有を止めて表情を確認します。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

