最終更新日: 2026.10.20
エンプラセールスとは?|大企業の決裁者に届く進め方を12年の実績から解説

エンプラセールスは、大企業の決裁者を起点に、現場との2本の線で接点をつくると前に進みます。中小企業向け営業との違い、進め方、決裁者に届く接点のつくり方、稟議までの流れ、やりがちな失敗を12年の実績から解説します。

監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)

大企業を担当したものの、エンプラセールスの進め方が分からず、商談が現場で止まってしまうことはないでしょうか。

この記事では、中小企業向け営業との違い、進め方、決裁者に届く接点のつくり方、稟議までの流れ、受注後の関係づくりを解説します。

この記事の要約

  • エンプラセールスは大企業を1社ずつ深く攻める営業で、決裁者と現場の2本の線で進めると止まりにくくなります。
  • 関係者が多く検討期間も長いため、組織図を描き、稟議に使える材料を早めに渡すことが受注の分かれ目です。
  • 決裁者には自社の決裁者本人の名前で連絡し、受注後も成果を報告し続けると次の部署へ広がります。

エンプラセールスとは|中小企業向け営業との違い

エンプラセールスは、エンタープライズ(大企業)を相手にする営業を指します。

中小企業向けの営業と何が違うのか、3つの観点で整理します。

大企業を1社ずつ深く攻める営業

中小企業向けの営業は、多くの見込み客から確度の高い相手を絞り込みます。

エンプラセールスは、最初に狙う企業を決め、その1社の中で関係を広げていく営業です。

1件の契約額が大きく、他部署やグループ会社への展開も見込めます。

件数より、1社あたりの関係の深さで成果を考えてください。

意思決定に関わる人が多い

中小企業では、社長との1回の商談で導入が決まることもあります。

大企業では、現場・部長・役員に加え、購買や情報システムの部門も判断に関わります。

1人が賛成しても、別の誰かの懸念で止まることは珍しくありません。

誰が何を気にしているかを、商談の初期から聞き取ってください。

検討期間が長く、稟議と取引審査がある

大企業の導入判断は、社内の稟議を通して進みます。

検討から契約まで、数か月から1年ほどかかることもあります。

新しい取引先には、財務状況や情報セキュリティの審査が求められる場合もあります。

長期戦になる前提で、営業の計画と人員を組んでください。

比較項目中小企業向け営業エンプラセールス
判断する人社長や事業責任者現場・部長・役員・購買など複数
検討期間短い数か月〜1年ほど
進め方多くの相手から絞り込む狙う1社の中で広げる
契約後1契約で完結しやすい他部署・グループへ展開できる

エンプラセールスで決裁者を起点にする理由

大企業の営業は、現場の担当者から始まることが多くあります。

ただし、それだけでは止まりやすい理由が3つあります。

現場から積み上げると止まる場所が増える

担当者から課長、部長へと順に上げていく進め方は、関所が増えます。

承認の段階が1つ増えるたびに、商談が止まる場所も1つ増えます。

担当者が社内説明に慣れていなければ、提案は途中で弱まります。

上の判断者と早めに話す道を、並行して用意してください。

予算をつけるかを決めるのは決裁者

担当者が判断できるのは、多くの場合「どの製品が良いか」までです。

そもそも予算をつけるかどうかは、事業を預かる決裁者が決めます。

決裁者が課題として認めていない案件は、比較の段階で止まります。

決裁者が今期に何を優先しているかを、最初に確かめてください。

担当者を飛ばすのではなく両方とつながる

決裁者と話せても、現場の協力がなければ導入は進みません。

決裁者と担当者の2本の線を同時に持つと、上下から案件が前に進みます。

担当者に黙って上に話を通すと、現場の信頼を失います。

決裁者と話したことは、担当者にも共有してください。

エンプラセールスの進め方|狙う企業選びから横展開まで

エンプラセールスは、場当たりの訪問では成果が出ません。

4つの段階で進め方を見ていきます。

狙う企業を絞って深く調べる

大企業を数多く追うと、1社ごとの準備が浅くなります。

自社が最も役立てる業種と規模から、狙う企業を絞り込んでください。

中期経営計画や決算説明資料には、その会社が力を入れる領域が書かれています。

相手の重点施策と自社の強みが重なる点を、1つ見つけてください。

組織図を描いて関係者を洗い出す

大企業では、同じ課題を複数の部署が別々に抱えています。

決裁者・推進者・利用部門・反対しそうな人を1枚に描くと、次に会う人が見えます。

役職名だけで判断すると、実際の決定権を見誤ります。

商談のたびに分かったことを書き足し、チームで共有してください。

入口と決裁者の2本で接点をつくる

現場の担当者は、課題の細部と社内事情を知っています。

現場の入口と決裁者への接点を、同じ時期に並行してつくります。

片方だけだと、課題が浅いか、現場が動かないかのどちらかになります。

どちらから入ったかに関わらず、もう片方への道を探してください。

小さく始めて横に広げる

大企業は、最初から全社で導入することはまれです。

1部署で小さく始め、成果を示してから他部署やグループ会社へ広げます。

最初の部署の成功が、社内での一番の推薦材料になります。

最初の部署は、成果を数字で示しやすいところを選んでください。

大企業の決裁者に届く接点のつくり方

大企業の役員には、代表電話や問い合わせ窓口からはまず届きません。

決裁者に届きやすい接点のつくり方を3つ挙げます。

自社の決裁者の名前で役員に連絡する

役員は、知らない営業担当からの連絡にほとんど目を通しません。

自社の代表や役員の名前で、相手の役員の役職と氏名を宛名に入れて送ります。

相手の重点施策に触れ、情報交換の場として会う理由を示します。

売り込みではなく、相手に役立つ話題を1つ添えてください。

件名:〇〇事業の新規開拓について情報交換のお願い(弊社代表・田中より)

株式会社△△

取締役 佐藤様

突然のご連絡失礼いたします。

〇〇株式会社で代表を務めております田中と申します。

貴社の中期経営計画で、〇〇事業の拡大を掲げておられることを拝見しました。

同じ業界の企業で進めた取り組みを、30分ほど共有させていただけないでしょうか。

ご関心があれば、ご都合のよい日時をお知らせいただけますと幸いです。

取引先や知人から紹介を受ける

紹介は、大企業の役員に会うための最も確実な道の1つです。

信頼できる第三者が間に入ると、相手は話を聞く理由を持てます。

紹介者には、誰に会いたいのかと会う目的を具体的に伝えます。

紹介者が転送しやすいよう、自社の説明を短くまとめて渡してください。

件名:株式会社△△の佐藤様へのご紹介のお願い

株式会社□□

鈴木様

いつもお世話になっております。

以前お話に出た株式会社△△の佐藤様に、ご紹介をお願いできないでしょうか。

貴社と進めた〇〇の取り組みが、△△様の事業にも役立つと考えております。

ご転送用に、弊社の紹介文を3行で添えております。

ご無理のない範囲で、ご検討いただけますと幸いです。

業界のイベントや経営者の集まりで会う

大企業の役員も、業界のイベントや経営者の集まりには足を運びます。

名刺交換で終わらせず、その場で次に話す理由を1つ決めて別れます。

登壇者や主催者として参加すると、相手から声をかけられやすくなります。

会った翌日までに、話した内容に触れたお礼を送ってください。

商談から稟議までの進め方

決裁者と会えても、稟議が通らなければ契約にはなりません。

商談から稟議までの進め方を3つ見ていきます。

初回の商談で決裁者に確かめる3点

決裁者との初回商談は、時間が短いことがほとんどです。

今期の優先課題、判断に関わる人、検討の時期の3点を必ず確かめます。

製品説明に時間を使うと、確かめるべきことが聞けずに終わります。

3点が分かれば、次に誰と何を話すかが決まります。

稟議に使える資料を先に渡す

稟議書を書くのは、多くの場合相手の担当者です。

導入の目的、費用対効果、他社比較を1枚にまとめて渡すと、稟議が通りやすくなります。

担当者が一から書くと、自社の強みが抜け落ちることがあります。

資料はそのまま稟議書に貼れる形で用意してください。

件名:社内ご検討用の資料のお送り

株式会社△△

佐藤様

先日はお時間をいただき、ありがとうございました。

社内でご説明いただく際に使えるよう、要点を1枚にまとめてお送りします。

導入の目的、費用の見込み、他社との違いを並べております。

稟議の様式に合わせて直す必要があれば、お申し付けください。

試験導入の合格基準を先に決める

大企業は、本導入の前に試験導入を求めることがよくあります。

何を満たせば本導入に進むのかを、試験導入の開始前に決裁者と合意します。

合格基準がないまま始めると、終了後に評価が割れて止まります。

期間、評価する数字、判断する人を書面に残してください。

エンプラセールスでやりがちな失敗

大企業の営業は、中小企業向けのやり方を持ち込むと失敗します。

よくある失敗を3つ挙げておきます。

担当者の前向きな反応だけで進める

担当者が乗り気でも、それは受注の確度を意味しません。

担当者の賛成と、決裁者が予算をつけることは別の話です。

担当者の言葉だけで案件の見込みを高く置くと、予測が外れます。

決裁者の意向を確かめるまでは、見込みを低めに置いてください。

中小企業向けと同じ件数で追う

1人で数十社を追う中小企業向けの動き方は、大企業では通用しません。

1人が深く追える大企業の数には限りがあります。

数を追うほど、1社ごとの組織理解と準備が浅くなります。

担当する企業を絞り、1社ごとの計画を立ててください。

取引の審査を後回しにする

大企業では、契約の前に取引先としての審査があります。

財務情報や情報セキュリティの確認書類を、商談の早い段階で準備しておきます。

審査で時間がかかると、決裁が下りても契約が数か月遅れます。

必要な書類を、相手の購買部門に早めに確認してください。

受注を続けるために決裁者との関係を育てる

エンプラセールスは、受注してからが本番です。

関係を育てる3つの考え方を押さえましょう。

受注後も決裁者に成果を報告する

導入後のやり取りが、現場の担当者だけになることはよくあります。

決裁者に定期的に成果を報告すると、次の予算と他部署への展開につながります。

報告がなければ、決裁者は導入の効果を知らないままです。

四半期ごとなど、報告の時期を最初に決めておいてください。

異動と組織変更に備える

大企業では、数年ごとに担当者や役員が異動します。

1人の窓口だけに頼ると、その人の異動で関係が途切れます。

複数の部署と役職に接点を持っておけば、関係は残ります。

異動の時期を把握し、後任への引き継ぎを手伝ってください。

決裁者と直接つながる場を併用する

自社の連絡や紹介だけでは、大企業の決裁者に会える数に限りがあります。

オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。

12年で築いた8,000名以上の決裁者ネットワークの中で、決裁者本人と対等な入口から会えます。

一方で、商材の単価が低い場合や担当者レベルで決裁が完結する商材では、効果が出にくい傾向があります。

オンリーストーリーの事例▼

北海道でマーケティング支援を行う株式会社one netは、経営の課題を相談し合える相手を探していました。

情報収集と課題解決を目的に、決裁者マッチングを導入しています。

半年間で約50社と出会い、そのうち9社と取り組みに発展しました。

決裁者同士で話せるため、担当者経由の商談より話が早く進むといいます。

導入事例▶ 半年間で9社のビジネスパートナーを発掘した事例はこちら

代表・平野のnote▼

代表の平野は、今すぐ客ではない決裁者との関係を、半年後の受注につなげる考え方を述べています。

一度の返事で接点を終わらせず、関係を資産として積み上げることが大切だと指摘しています。

検討期間の長い大企業ほど、この考え方が生きてきます。

今は動かない相手も、次の予算期に向けた関係の入り口として捉えてみてください。

代表・平野のnote▶ 今すぐ客でない決裁者を半年後の受注につなげる考え方を代表が語ったnoteはこちら

まとめ

エンプラセールスは、大企業を1社ずつ深く攻め、その中で関係を広げていく営業です。

関係者が多く、検討から契約まで数か月から1年ほどかかることもあるため、長期戦の前提で計画を組んでください。

予算をつけるかを決めるのは決裁者なので、現場の担当者と決裁者の2本の線を同時に持ちます。

狙う企業を絞り、組織図を描き、1部署で小さく始めてから横に広げると前に進みます。

決裁者には、自社の決裁者本人の名前で、相手に役立つ話題を添えて連絡します。

商談では今期の優先課題・判断に関わる人・検討の時期の3点を確かめ、稟議に使える資料を先に渡してください。

自社の連絡だけで決裁者に届かないなら、決裁者同士が直接つながる場も考えてみてください。


よくある質問

Q. エンプラセールスとは何ですか

A. 大企業を相手にする営業のことです。

最初に狙う企業を決め、その1社の中で関係を広げていく点が、中小企業向け営業との大きな違いです。

意思決定に関わる人が多く、検討から契約まで数か月から1年ほどかかることもあります。

Q. エンプラセールスは誰にアプローチすべきですか

A. 現場の担当者と決裁者の両方に、同時にアプローチします。

予算をつけるかを決めるのは決裁者で、導入を進めるのは現場です。

片方だけでは、課題が浅いか現場が動かないかのどちらかになります。

Q. 大企業の役員に会うにはどうすればよいですか

A. 自社の代表や役員の名前で、相手の役職と氏名を宛名に入れて連絡します。

取引先や知人からの紹介、業界のイベントや経営者の集まりも有効な接点です。

いずれの場合も、売り込みではなく相手に役立つ話題を添えてください。

Q. 稟議で止まらないためには何をすればよいですか

A. 導入の目的、費用対効果、他社比較を1枚にまとめ、担当者に先に渡します。

稟議書を書くのは相手の担当者であることが多いためです。

試験導入をする場合は、本導入に進む合格基準を開始前に決裁者と合意してください。

この記事の監修者

平野哲也

平野 哲也(ひらの てつや)

株式会社オンリーストーリー 代表取締役

BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。

累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。

「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

ENICXO
メッセージアイコン オンリーストーリー代表 平野からのメッセージ
オンリーストーリーでは、これまで10年以上にわたり、
BtoB営業における「集客の課題」と真剣に向き合ってきました。

経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
想いを届ける手書きの手紙など、独自の形で支援を続けています。

そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。

私たちが大切にしているのは、単なるマッチングツールの提供ではなく、
一社一社の課題に寄り添い、"本当に意味のある出会い"をつくることです。

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