営業担当者の業務管理や顧客データの有効活用に便利なのが、営業管理ツールです。しかし、多くの営業管理ツールはランニングコストが発生し、機能が多く導入の決定打に欠けているために二の足を踏む人も多いのではないでしょうか。無料のツールでトライアルしたいとの声も聞こえてきます。
しかし、無料の営業管理ツールは数が少なく、機能に制限がかかるものが多くあります。どこまでの機能が無料で使えるのか把握するのも簡単ではありません。
この記事では、無料で営業管理ツールを導入する方法や、有料と無料の違いを解説します。おすすめの無料営業管理ツールを紹介します。
無料で営業管理を行う方法
営業管理ツールは便利である反面、初期費用やユーザー数に応じたランニングコストがかかります。無料で営業管理ツールの機能を使う方法は3つあります。
- 表計算ソフトを利用する
- 自社で開発する
- 無料の営業管理ツールを導入する
それぞれについて解説します。
表計算ソフトを利用する
顧客管理やスケジュール管理などの簡単な機能なら、ExcelやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトで再現できます。COUNTIFやCOUNTA等の関数を組み合わせることにより、進捗管理しやすいフォーマットが作れます。また、Googleスプレッドシートならばクラウドでデータが共有できるので、複数人での同時編集ができます。
しかし、表計算ソフトで、すべての商談の進捗把握や、各担当者のタスク分解、日報の共有など高度な機能は使えません。またファイルが増えすぎてしまうと管理が難しくなるというデメリットもあります。ファイルやデータが増えると検索しづらくなり、スマートフォンでの操作性も低下します。
自社で開発する
自社にエンジニアがいる場合は、営業管理ツールを開発すれば開発コストをエンジニアの固定費で吸収でき、欲しい機能を付与することができます。モバイルアプリにすれば、出先からスマートフォンでアクセスすることも可能です。
しかし、高機能な営業管理ツールを作るには時間や労力がかかるというデメリットもあります。エンジニアに働いてもらっている以上、管理ツールの機能を増やすほど工数もかさんでいきます。
社内で固定費として雇うエンジニアがいる場合は外部の応援者を雇わない限り、費用は増えません。増えるのはエンジニアが担当する作業工数です。また、エンジニアがいない場合はそもそも選択肢に入りません。
無料の営業管理ツールを導入する
営業管理ツールの中には無料で使えるツールも存在します。有料の営業管理ツールほど機能は充実していませんが基本的な機能を備えています。無料のツールはユーザー数などに制限がかかっている場合もあるので、導入する前に必ず確認しましょう。
有料版と無料版があるツールでは、無料版を利用してより機能を充実させたい場合は有料版に移るのもおすすめです。
無料の営業管理ツールに備わっている機能
無料の営業管理ツールにもさまざまな機能が備わっています。無料の営業管理ツールの主な機能を以下に解説します。
- 顧客情報や案件の管理機能
- 業務報告機能
- 名刺の管理機能
それぞれについて解説します。
顧客情報や案件の管理機能
よく使われる営業管理ツールの機能に、顧客情報や案件の管理が挙げられます。無料ツールでも有料のものと同様に、会社名・所在地・電話番号・担当者・役職など、顧客に関する情報を細かく管理できるものもあります。
顧客情報や案件を管理することにより、営業をかける顧客をリスト化でき、効率良い営業活動につながります。さらに商談前に顧客情報を確認したり、商談中に必要な情報をすぐに確認できたりするため、先方の課題に寄り添った提案ができます。
業務報告機能
商談の内容や営業の履歴を残し、社内で共有できる機能もあります。ツールを使うことで報告書や日報が手軽に入力できるようになり、あとから見返す場合も簡単に欲しい情報にアクセスできます。
ただし、有料のツールと比べると、無料ツールは使えるフォルダの容量が少ないといった制限があります。取り扱う顧客や担当者の情報量が多い企業は、無料ツールだとそれらすべてを管理しきれない場合があるため、事前に現在保存しているファイルの容量を把握しておくとよいでしょう。
名刺の管理機能
自社の社員が他社の社員から入手した名刺の情報を保存、管理できるアプリもあります。名刺が多くなると管理が難しくなりますが、アプリを使えば簡単に整理できます。スマホやタブレットで写真を撮影し、データ化するものもあります。アプリを使うことによって、出先でもすぐに連絡先を取り出すことができます。社内で名刺の共有ができ、効率的に営業活動が行えます。
無料と有料の営業管理ツールの違い
営業管理ツールは、無料のものと有料のものでは違いがあります。具体的にどのような違いがあるのかを解説します。
- 機能面の違い
- 容量の違い
- 利用できるユーザー数の違い
- カスタマーサポートの有無
それぞれについて解説します。
機能面の違い
無料版のツールは、有料版の一部の機能しか利用できないことが多いです。例えば無料の営業管理ツールは顧客情報を管理する機能など少数の機能に限定されるものが多いですが、有料ツールは社内SNS機能が備わっている「Sales cloud」や顧客管理と営業支援のツールが一体化した「Senses」など多機能なツールが揃っています。機能面で充実した営業管理ツールを求めている人は、有料の営業管理ツールを検討してもよいでしょう。
容量の違い
業務記録や日報を記録するツールの場合、有料版と比べると無料版のほうが容量が少なくなることもあります。そのため、営業担当者が多い場合、有料ツールと比べて早くに容量が限界になり、過去の記録を削除しないといけない場合があります。
利用できるユーザー数の違い
無料のツールはユーザー数に制限があるものがほとんどです。有料版を導入するとユーザー数の上限が多くなります。営業チームの人数が多い場合、無料版だと業務遂行が難しくなるでしょう。
カスタマーサポートの有無
有料の営業管理ツールにはメールやチャット、電話応対でのカスタマーサポートが用意されていることがほとんどです。カスタマーサポートが用意されていると、ツールの不具合や不明点ができたときに即座に質問できます。一方、多くの無料のツールにはカスタマーサポートが備わっていません。そのため不具合や不明点があっても、自社で解決する必要があります。
おすすめの無料営業管理ツール5選
無料で使用できる営業管理ツールにも便利なものはあります。以下におすすめの無料営業管理ツールを5つ選定しました。それぞれ詳しく説明するので、導入を検討する際に参考にしてください。
- Stock
- Saleshub
- NICE営業物語Smart3
- Eight
- Fullfree
それぞれについて解説します。
1.Stock
Stockは株式会社Stockが提供する営業チームの情報を記録できるツールで、無料版と有料版があります。無料版はメモ帳形式で簡単に情報を記録でき、検索で即座に欲しい情報にアクセスできるなど、十分な機能性を備えています。
チャットツールだとすぐに情報が流れてしまい過去の情報を探すのは一苦労です。しかし、情報をデータにしてクラウドのファイルで管理するのも手間がかかります。一方、Stockを使えば時間をかけずに情報を管理し、見返したいときにすぐ情報を取り出せます。操作性がシンプルで誰でも簡単に扱える点も魅力です。
社外のクライアントも人数無制限で招待できるため、社外の人との連絡ツールとしても利用可能です。
また、タスクの機能を利用すれば案件の管理も簡単に行えます。
スマホ対応 | iOS、Android |
招待メンバー数 | 無制限 |
ノート数 | 累計20ノート |
ストレージ | 1GB |
無料機能 | ノートへの記録、タスク管理機能、社外との連携 |
Stock
2.Saleshub
SaleshubはHubSpot Japan株式会社が提供するCRM(顧客関係管理)ツールです。無料版では、顧客とのコンタクト履歴や取引の進捗を一元管理することが可能です。営業活動のタスクも管理できます。また、無料のウェブチャットやミーティングの機能も備えており、社内コミュニケーションツールとしても有用です。
無料でも多機能であるため、複数の営業管理機能を試してみたいという場合におすすめのツールです。Hubspot社は請求書のテンプレートやEメール用署名の作成ツールなど、他にも様々な無料業務効率化ツールを提供しています。ツールと他のサービスとを併用することによっても、日々の業務改善が進むでしょう。
スマホ対応 | iOS、Android(HubSpot社の別途アプリ利用) |
有料機能トライアル期間 | 要問い合わせ |
無料機能 | コンタクト管理、取引パイプライン管理、見積もり作成、ミーティング設定、ウェブチャット、レポート作成、ダッシュボード |
Saleshub
3.NICE営業物語Smart3
NICE営業物語Smart3は株式会社システムズナカシマが提供する、完全無料で使えるスマートフォン向け営業支援アプリです。営業報告作成、手書きや音声でのメモ、スケジュール管理ができる他、SNSを利用したチーム内での情報提供が強みです。
またApple watchとの連携が可能で、スケジュール報告と営業報告が手軽に行える他、ふとしたときに手軽にスケジュール管理が行えます。インターフェースも使いやすく、文章を入力せずにドロップメニューだけで手軽に営業報告を行うことも可能です。
LINEやEvernoteなど外部アプリとも連携しており、営業報告をこれらのアプリで手軽に共有できます。これらの機能がすべて無料で利用できるので、iOSを導入している営業担当者にはぜひ検討してほしいツールです。
スマホ対応 | iOS |
無料機能 | 営業報告作成、手書きや音声でのメモ、スケジュール管理 |
NICE営業物語Smart3
4.Eight
EightはSansan社の提供する名刺管理アプリです。スマートフォンで紙の名刺を撮影するだけで、簡単に情報を記録できるため、名刺の管理が効率化します。登録した名刺は検索で容易に確認できます。
また、名刺登録した相手との共通の知り合いを見つける機能もあり、人脈形成にも役立ちます。さらに、名刺登録をした相手が転職や昇進をした際には、連絡を受け取ることもできます。無料ながら大量の名刺を管理しなければならない営業担当者にとって、使い勝手の良いアプリです。
スマホ対応 | iOS、Android |
無料機能 | 名刺情報の管理、キャリアプロフィールの作成 |
Eight
5.Fullfree
Fullfreeは株式会社フリースタイルが提供する無料で使えるCRM(顧客管理システム)です。自社オリジナルのデータベース型顧客管理システムを簡単に作ることができ、エクセルと同様の計算式で集計が可能です。クラウド共有機能も用意されており、複数人で同時編集ができます。
また、電話着信時に電話番号から情報を検索して、自動的に顧客の情報を表示するCTIシステムも搭載されており、既存顧客から電話がかかってきた際の対応がスムーズになります。
スマホ対応 | なし |
レコード数 | 3,000件 |
無料機能 | 顧客情報の管理CTIシステム |
無料の営業管理ツールを選ぶポイント
最後に無料の営業管理ツールを選ぶポイントを解説します。
- まずは使ってみる
- 解決したい課題の明確化
- 使いやすさの確認
それぞれについて解説します。
まずは使ってみる
無料の営業管理ツールは解約料もかからないので、まずは使ってみて営業チームにフィットするか試してみましょう。営業チームにツールを導入する旨を理解してもらうことが大事です。試用であること、日々の業務を効率化する施策であることを、事前に説明しておきましょう。
解決したい課題の明確化
チーム内のどのような課題を解決したいのかによって、導入する営業管理ツールは変わります。例えば、社員の業務の管理や記録をしたい場合は「NICE営業物語Smart3」の営業管理ツールを、顧客との関係を管理したい場合は「Sales Hub」のようなCRMツールを導入すればよいでしょう。
使いやすさの確認
営業管理ツールが使いにくいと、業務効率化につながらない場合があります。営業担当者が直感的に使えるか、必要な機能のみに絞られているか等を確認しておきましょう。実際に営業管理ツールを使ってもらって、その後に営業担当者に使い勝手を聞いてみるとよいでしょう。
まずは無料のツールを使って営業管理を効率的にしよう!
営業管理ツールは無料でも顧客情報や案件を管理できるもの、業務報告ができるものが揃っています。そのため無料の営業管理ツールでも十分な成果を見込めるでしょう。
一方、機能面や容量、利用できるユーザー数については、無料のツールは有料のものに劣ります。自社の営業体制や営業管理ツールを使う状況を見直して、無料でも十分なのか、有料のツールを使う必要があるのかを検討しましょう。
コストを抑える目的で無料ツールを使っても、成果が挙がらなければ意味がありません。費用がかかっても適切な営業管理を行い利益を上げれば、無料ツールを使用するよりも費用対効果は高くなります。