監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
資金調達の進め方が分からず、準備や調達後の関係づくりで迷うことはないでしょうか。
この記事では、調達中の準備、完了後の伝え方、投資家との関係づくりを解説します。
調達中の準備|資料・体制・期間の使い方
調達中の準備が、面談の質と調達の速さを左右します。
4つの準備を挙げます。
投資家が知りたい情報を全て資料に書く
面談の時間は限られており、質問に追われると本題に入れません。
投資家が絶対に知りたい情報を、全てスライドに書いて渡しました。
売上、市場、競合、資金の使い道は、質問が出る前に答える形で書きます。
面談で聞かれた内容を、そのつど資料に足してください。
デューデリジェンスに備えて担当をもう1人つける
DD(デューデリジェンス)は、投資家が会社の財務や事業を調べる確認作業です。
DDは負担が大きいため、対応する担当をもう1人つけました。
契約書、財務、事業の資料など、確認を求められる範囲は広くなります。
資料の保管場所と回答の窓口を、社内で先に決めてください。
前回の宿題を完了させて会いに行く
面談では、次回までの宿題が出ることがあります。
前回の宿題を完了させてから会いに行くことを、徹底しました。
宿題が残ったままの面談は、準備不足の印象を与えかねません。
宿題は面談の当日に一覧にし、期限を決めて担当に割り振ってください。
調達期間を改革期間にする
調達の活動中は、社内の動きが止まりがちです。
調達期間中を「改革期間」と位置づけました。
改革期間と決めれば、調達中の忙しさを、会社を良くする時間に変えられます。
面談で指摘された点を、改善の一覧にして社内で共有してください。
調達完了の伝え方|社内・投資家・顧客へ
調達は、決まったあとの伝え方で、周囲との関係が変わります。
社内、投資家、顧客の3方向に分けて挙げます。
社内にはサプライズで発表する
調達の完了は、社内への発表の仕方で、社員の受け止め方が決まります。
社内で資金調達の完了を発表するときに、サプライズを用意しました。
資金が入ること以上に、これまでの頑張りが報われた場として、社員に伝わります。
発表の場では、調達に関わった社員の名前を挙げて、感謝を伝えてください。
投資家には社内メンバーで色紙を書く
投資家への感謝は、メールだけでは伝わり切りません。
投資家宛てに、社内メンバーで色紙を書いて贈りました。
社員一人ひとりの言葉が入ると、投資家は出資先の顔ぶれを具体的に思い浮かべられます。
色紙は、調達の完了後、早い時期に届けてください。
顧客には資金の還元とnoteで感謝を伝える
調達した資金は、顧客のおかげで事業が続いた結果でもあります。
調達した資金を顧客に還元することと、日頃の感謝をnoteに書きました。
顧客への還元を示すと、調達のニュースが、顧客にとっても良い知らせになります。
還元する内容を先に決めてから、感謝の文章を書いてください。
投資家との関係づくりでやりがちな失敗|株主と社員の分断
調達後は、株主と社員の間に、目的のずれが生まれやすくなります。
3つの視点を挙げます。
株主と社員を別々の立場のまま放置する
株主は利益や成長を求め、社員は働きやすさや成長を求めます。
株主と社員が対立したまま放置されると、会社の中に戦争が生まれます。
オンリーストーリーでは、この状態を冷戦時代の例えとして、株主をアメリカ、社員をロシアに見立てて整理しています。
調達後の方針が決まらないまま報告だけが続いていないか、確認してください。
共通の目的を決めて一緒に戦う
突飛な例えですが、ハリウッド映画のように、アメリカとロシアが争っていても、宇宙人が攻めてくれば、一緒に戦わざるを得ません。
株主と社員が、同じ目的に向かって一緒に戦う形をつくります。
「アメリカ・ロシア・宇宙人理論」は、共通の目的が立場の違いを超えるという考え方です。
会社が目指す状態を、株主にも社員にも同じ言葉で伝えてください。
調達後も報告と感謝を続ける
調達が決まると、投資家への連絡が減りがちです。
調達後も、近況の報告と感謝を、定期的に続けます。
近況が分かる相手のほうが、困ったときに相談に乗りやすくなります。
月に1回など報告の頻度を決め、良い話も悪い話も同じ形式で送ってください。
調達した資金を成果につなげる視点
調達後は、資金の使い方と、人のつながりの使い方が問われます。
3つの視点を挙げます。
投資家の紹介体制を営業に生かす
投資家は、出資先の事業に、顧客や提携先を紹介できる立場です。
投資家の顧客紹介体制を確かめ、調達後の営業に生かします。
オンリーストーリーでは、決裁者を人から直接紹介してもらう方法が、営業で一番成果につながりました。
紹介してほしい相手の条件を、投資家にあらかじめ伝えておいてください。
調達した資金は成約に近い指標で評価する
調達した資金を営業やマーケティングに使うと、成果の測り方が問われます。
リードの単価ではなく、決裁者商談や成約に近い指標で、施策を評価します。
オンリーストーリーでは、当時リード単価が3,000円でも、商談単価は9万円、決裁者商談単価は30万円でした。
施策は、成約に近い指標ごとに、費用を並べて比べてください。
決裁者と直接つながる場を併用する
調達後は、投資家や既存の人脈だけでは、会える相手が広がりにくくなります。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
12年・8,000名以上の決裁者が集まる場で、提携や出資の相手とも出会えます。
一方で、商材の単価が低い場合や担当者レベルで決裁が完結する商材では、効果が出にくい傾向があります。
まとめ
調達中は、投資家が知りたい情報を全て資料に書き、DD担当を増やし、宿題を終えてから会いに行きます。
調達期間は「改革期間」と位置づけ、社内の改善に使います。
調達が決まったら、社内、投資家、顧客の3方向に、感謝と成果を伝えます。
株主と社員が同じ目的に向かって一緒に戦う形をつくり、調達後も報告を続けます。
調達した資金は、リード単価ではなく、成約に近い指標で評価します。
出資や提携の相手を広く探すなら、決裁者と直接つながる場も考えてみてください。
よくある質問
Q. 資金調達の進め方を教えてください
A. 資料に投資家が知りたい情報を全て書き、前回の宿題を完了させて面談に行く流れで進めます。
DDに備えて担当をもう1人つけ、調達期間を改革期間として社内の改善にも使ってください。
Q. 資金調達が決まったあとは何をすべきですか
A. 社内、投資家、顧客の3方向に、感謝と成果を伝えます。
オンリーストーリーでは、社内発表でのサプライズ、投資家への色紙、顧客へのnoteでの感謝を行いました。
Q. 株主と社員の対立を防ぐにはどうすればよいですか
A. 株主と社員が同じ目的に向かって一緒に戦う形をつくります。
会社が目指す状態を同じ言葉で伝え、調達後も定期的に報告してください。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。



