最終更新日: 2026.10.14
雇われ社長の年収はどう決まる?オーナー社長との違いと報酬の仕組み

雇われ社長の報酬は役員報酬として株主総会の枠内で決まり、給与とは違う制度の上に成り立っています。オーナー社長との違い、定期同額給与の縛り、退職金の扱い、就任前に確かめる条件まで解説します。

監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)

雇われ社長という立場に声がかかったとき、報酬がどう決まるのか分からず判断に迷うことはないでしょうか。

この記事では、雇われ社長の報酬が決まる仕組み、オーナー社長との違い、引き受ける前に確かめる条件、辞めるときの扱いまでを解説します。

この記事の要約

  • 雇われ社長の報酬は役員報酬として決まるため、給与とは違う制度の上に成り立っています。
  • 株式を持たない以上、会社が大きく成長しても報酬がそれに比例して増えるとは限りません。
  • 引き受ける前に、任期、権限の範囲、株主との関係、辞めるときの条件を書面で確かめることが欠かせません。

雇われ社長とはどういう立場か

社長という肩書は同じでも、立場によって中身がまったく違います。

まず前提を整理しておきましょう。

所有と経営が分かれている

雇われ社長は、会社の株式を持たないまま経営を任された人を指します。

会社を所有しているのは株主で、社長はその判断で選ばれ、交代もさせられる立場です。

創業者が引退して外部から招く場合もあれば、親会社が子会社へ送り込む場合もあります。

肩書は代表取締役でも、最終的な決定権は株主総会にあります。

従業員とも違う契約で働く

社長は雇用契約ではなく、委任契約で会社と結ばれています。

労働基準法の保護を受けないため、残業や解雇の扱いが従業員とは異なります。

就業規則も原則として適用されません。

失業給付の対象にもならないため、辞めたあとの備えを自分で用意する必要があります。

責任は株式の有無と関係なく負う

株式を持っていなくても、代表取締役としての責任は同じです。

会社が損害を出したときの賠償責任や、第三者への責任は免れません。

金融機関から個人保証を求められる場面もあります。

引き受ける前に、保証の有無は必ず確認しておきます。

オーナー社長との最大の違い

オーナー社長は、報酬に加えて株式の価値そのものを受け取れます。

会社を売却したときの利益は株主のものになり、雇われ社長には配分されません。

その代わり、自己資金を投じるリスクも負いません。

どちらが得かは、会社の成長段階と自分の資産状況によって変わります。

報酬が決まる仕組み

社長の報酬は、話し合いだけで自由に決まるものではありません。

制度上の枠組みを知っておきましょう。

役員報酬は株主総会で枠が決まる

役員の報酬総額は、株主総会の決議で上限が定められます。

その枠の中で、取締役会が各人の金額を配分するのが一般的な流れです。

社長が自分の報酬を一存で引き上げることはできません。

枠の変更には、改めて株主の承認が必要になります。

定期同額給与という縛りがある

役員報酬は、原則として毎月同じ額で支払う必要があります。

途中で増減させると、税務上の経費として認められない部分が出ます。

変更できるのは、事業年度の開始から三か月以内が原則です。

業績が急に落ちても、期の途中では下げにくい仕組みです。

業績連動の部分は設計が必要

成果に応じて報酬を増やす形も取れますが、要件が細かく定められています。

算定方法をあらかじめ開示し、客観的な指標に基づける必要があるため、中小企業では採用が少なくなります。

賞与の形で払う場合も、事前の届け出が要ります。

口約束で成果報酬を期待すると、受け取れないことがあります。

退職金の扱いは別に決める

役員の退職慰労金は、在任中の報酬とは別の制度です。

規程がなければ支給されないため、就任前に有無を確認する必要があります。

支給には株主総会の決議が必要になります。

中小企業では、保険を使って原資を準備している会社もあります。

オーナー社長との違いを数字以外で見る

報酬だけを比べても、二つの立場の差は見えません。

四つの観点で並べてみます。

使える時間の自由度

オーナー社長は、自分の判断で時間の使い方を決められます。

雇われ社長は株主への報告や会議に時間を取られ、裁量が狭くなりがちです。

報告の頻度と形式を就任時に決めておくと、負担を抑えられます。

社外活動への参加も、事前に了解を取っておくと動きやすくなります。

失敗したときに失うもの

オーナー社長が失敗すれば、自己資金と会社の両方を失います。

雇われ社長が失うのは職と信用であり、個人の資産は原則として残ります。

ただし個人保証を差し入れていれば、この前提は崩れます。

保証の有無が、立場のリスクを決める最大の分かれ目です。

社内での見られ方

創業者は、過去の実績そのものが求心力になります。

外部から来た社長は、最初の判断の積み重ねで信用を作るしかありません。

就任直後に大きな人事を動かすと、反発が先に立ちます。

小さな約束を守り続けるほうが、結果として早く通ります。

辞めたあとに残るもの

オーナーは株式を手放すことで、まとまった資金を得られます。

雇われ社長に残るのは、在任中の実績と人脈だけです。

その実績をどう説明できる形にしておくかが、次の機会を左右します。

数字で語れる成果を、在任中から記録しておきます。

報酬の水準は何で変わるか

金額そのものは、会社の規模や業種で大きく振れます。

決まり方の軸を押さえておきましょう。

会社の規模が最も効く

従業員数や売上の規模が大きいほど、報酬の水準は上がります。

同じ社長という肩書でも、十人の会社と千人の会社では桁が変わります。

上場しているかどうかでも、水準と開示の義務が違います。

具体的な金額の目安は、規模別の調査を見るのが確実です。

前任者の水準に引きずられる

新しく就任する場合、前任の社長の報酬が基準になりがちです。

創業者が低く抑えていた会社では、後任も上げにくくなります。

逆に高く設定されていた会社では、業績が落ちても下げにくくなります。

就任前に、前任者の水準を確認できるかどうかを尋ねておきます。

招かれた理由で交渉力が変わる

立て直しを期待されての就任なら、条件を交渉しやすくなります。

後任が他にいない状況で招かれたのか、候補が複数いたのかで立場が違います。

自分にしかできない役割があるなら、その点を根拠に話せます。

焦って引き受けると、後から条件を変えるのは難しくなります。

税と社会保険の負担を忘れない

報酬の額面が上がっても、手取りは比例して増えません。

所得税は累進で重くなり、社会保険料の負担も増えます。

会社側の負担も増えるため、高い報酬ほど合意が難しくなります。

手取りで考えるなら、退職金や保険の形も含めて設計します。

引き受ける前に確かめること

条件は、就任してからでは変えられません。

四つの項目を書面で確かめましょう。

任期と再任の条件

取締役の任期は定款で定められています。

任期が終わったときに再任されるかどうかは、株主の判断次第です。

短い任期で区切られている場合、腰を据えた改革は進めにくくなります。

再任の基準があるなら、就任前に聞いておきます。

権限の範囲

社長という肩書でも、決められることには制限があります。

人事、投資、借入のどこまでを自分で決められるのかを明文化しておく必要があります。

取締役会や親会社の承認が要る金額の線引きも確認します。

権限がないまま結果だけ求められる状態は、最も苦しい立場です。

株主や親会社との関係

日常の報告をどの頻度で、誰に行うのかを決めておきます。

口を出す株主が複数いる場合、意見が割れたときの調整役が必要になります。

創業者が会長として残る場合は、役割分担をはっきりさせます。

関係が曖昧なまま始めると、意思決定のたびに止まります。

辞めるときの条件

辞任や解任のときに何が起きるかを、先に確かめます。

個人保証、退職慰労金、競業避止の約束の三点は特に重要です。

解任は株主総会の決議でいつでも可能である点を理解しておきます。

正当な理由がない解任では、損害賠償を請求できる場合があります。

就任後に起きやすいこと

条件を確かめて就任しても、現場では別の難しさが出てきます。

四つ挙げておきます。

創業者が現場に残り続ける

前任の創業者が会長や相談役として残ると、社員はどちらを見ればよいか迷います。

発言権の線引きを、社員の前ではっきりさせておく必要があります。

曖昧なまま進めると、決めたことが現場で覆ります。

就任の挨拶の場で、役割分担を言葉にしておくのが有効です。

社員から外様として扱われる

外部から来た社長は、最初から信用されるわけではありません。

最初の数か月は決めるより聞く時間に充てるほうが、後の決定が通りやすくなります。

前任者のやり方を頭から否定すると、反発だけが残ります。

変えるものと残すものを、理由とともに示します。

短期の数字で評価される

株主は、任せた以上は結果を求めます。

何をもって成果とするかを、就任時に合意しておくと評価がぶれません。

長期の投資が必要な施策は、前もって説明しておきます。

四半期ごとの報告の形も、最初に決めておきます。

相談できる相手が社内にいない

判断の責任を一人で負う立場になると、社内では弱音を出せません。

社外に同じ立場の相手を持っているかどうかで、消耗の度合いが変わります。

前職の同僚や取引先とは、利害が絡んで話しにくい場面もあります。

利害のない経営者とのつながりを、意識して作っておきます。

雇われ社長という選択の向き不向き

立場の良し悪しは、本人の目的によって変わります。

三つの観点で考えてみましょう。

向いている人

自己資金を投じずに経営の経験を積みたい人には適しています。

事業の立て直しや、仕組みづくりそのものにやりがいを感じる人は力を発揮しやすい立場です。

他人の資本で大きな事業を動かせるのは、創業では得にくい経験です。

そこで得た実績は、次の機会につながります。

向かない人

自分の思うままに事業を決めたい人には窮屈に映ります。

会社の成長をそのまま自分の資産に変えたい人は、株式を持つ立場を目指すほうが合います。

株主との調整に時間を使うことを、無駄だと感じる人も続きません。

短期の業績で評価される環境に耐えられるかも、見極めが要ります。

経験を次につなげる視点を持つ

雇われ社長の在任期間は、必ず終わりが来ます。

在任中に築いた人脈と実績を、どう次に持っていくかを考えておく必要があります。

社外の経営者とのつながりは、会社を離れても残ります。

その接点を在任中に作っておくかどうかで、次の選択肢が変わります。

決裁者同士のつながりを持っておく

社長同士で相談できる相手がいるかどうかは、判断の質を左右します。

オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。

同じ立場の経営者と直接話せるため、社内では相談できない論点を持ち込めます。

一方で、商談の相手を探す目的が中心であり、個人の相談だけを求める使い方には向きません。

オンリーストーリーの事例▼

ある企業では、新規リード獲得の中心だったタクシー広告の効果が伸びず、別の有効な施策を探していました。

決裁者マッチングを導入したものの、最初の3か月はまったく成果につながらなかったといいます。

それでも決裁者との関係を継続的に築いた結果、約150社とマッチングし、投資の2倍以上の利益が出ています。

出会ってから時間がたって受注に至るケースもあり、中長期での関係づくりが成果を押し上げています。

導入事例▶ 継続的な関係づくりで投資の2倍以上の利益を得た事例はこちら

代表・平野のnote▼

オンリーストーリー代表の平野は、決裁者マッチングを10年続けるなかで「つながりは多い方がいいのか」とよく質問を受けてきました。

平野は、つながりには投じた時間やエネルギー以上のリターンがある「資産性の高いつながり」と、その逆の「負債性の高いつながり」があると考えています。

数を増やすことよりも、資産性の高いつながりの密度を高めることが大切だと述べています。

共通点や規模・ステージが近い相手と出会うことで、同じ時間でも得られる学びや関係の深さが大きくなるとしています。

代表・平野のnote▶ 経営者にとって価値あるつながりとは何かを代表が語ったnoteはこちら

まとめ

雇われ社長の報酬は給与ではなく役員報酬として決まり、株主総会の枠と定期同額給与の制度に縛られます。

株式を持たないため、会社が成長しても売却益は受け取れず、報酬が成長に比例して増えるとは限りません。

金額の水準は会社の規模に最も強く左右され、前任者の水準や招かれた理由によっても変わります。

引き受ける前には、任期と再任の条件、権限の範囲、株主との関係、辞めるときの条件を書面で確かめてください。

特に個人保証、退職慰労金の規程、競業避止の約束の三点は、就任後では変えられません。

自己資金を投じずに経営を経験したい人には適した立場ですが、成長を資産に変えたい人には合いません。

在任中に社外の経営者とのつながりを作っておくと、任期が終わったあとの選択肢が広がります。


よくある質問

Q. 雇われ社長の報酬は自分で決められますか

A. 決められません。

役員報酬の総額は株主総会の決議で上限が定められ、その枠内で取締役会が配分します。

枠を変えるには、改めて株主の承認が必要になります。

Q. 業績が良ければ報酬は上がりますか

A. 自動的には上がりません。

役員報酬は毎月同額で支払う制度が原則で、変更できるのは事業年度の開始から三か月以内です。

成果に応じた支給を望むなら、算定方法を事前に定めて開示する設計が要ります。

Q. 雇われ社長にも退職金はありますか

A. 役員退職慰労金の規程がある会社に限られます。

規程がなければ支給されないため、就任前に有無を確認してください。

支給には株主総会の決議も必要になります。

Q. 解任されることはありますか

A. 株主総会の決議によって、いつでも解任される可能性があります。

正当な理由がない解任であれば、損害賠償を請求できる場合があります。

個人保証を差し入れている場合は、辞めたあとの扱いも確認しておいてください。

この記事の監修者

平野哲也

平野 哲也(ひらの てつや)

株式会社オンリーストーリー 代表取締役

BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。

累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。

「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

ENICXO
メッセージアイコン オンリーストーリー代表 平野からのメッセージ
オンリーストーリーでは、これまで10年以上にわたり、
BtoB営業における「集客の課題」と真剣に向き合ってきました。

経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
想いを届ける手書きの手紙など、独自の形で支援を続けています。

そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。

私たちが大切にしているのは、単なるマッチングツールの提供ではなく、
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