監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
立ち上げは、電話をかける部隊を作れば済むという単純な話ではありません。
役割設計やKPI、育成や他部門との連携まで論点は多岐にわたります。

インサイドセールスの立ち上げ手順を、目的設定と役割分担、リード整理、シナリオ作成、ツール整備、KPI設定、振り返りまで段階別に解説。人材の確保と育成、よくある失敗も扱います。

インサイドセールスとは、電話・メール・オンライン商談ツールなどを活用し、訪問せずに見込み客とコミュニケーションを取る内勤型の営業手法です。
主な役割は、マーケティングが獲得したリードを育成し、確度の高い商談を創出してフィールドセールス(訪問型営業)に引き渡すことです。
分業体制の中で「リードと商談の間」をつなぐ存在といえます。
立ち上げの話に入る前に、インサイドセールスの型と導入メリットを整理しておきましょう。
インサイドセールスには、大きく2つの型があります。
SDR(Sales Development Representative)は、問い合わせや資料請求など、入ってきたリードに対応する「反響型」です。
BDR(Business Development Representative)は、ターゲット企業を定めてこちらから仕掛ける「新規開拓型」です。
SDRはリードの取りこぼし防止に、BDRは大手企業などの戦略的開拓に向いています。
自社がどちらの型から立ち上げるのかを、最初に決めておくことが重要です。
導入のメリットは、まず営業活動の効率化です。
移動時間がなくなることで、1人あたりの接触件数は訪問営業の数倍になります。
また、リードへの対応スピードが上がることで、機会損失を減らせます。
さらに、活動がデータとして蓄積されるため、営業プロセスの再現性と改善のしやすさも高まります。
立ち上げの成否は、着手前の設計で大半が決まります。
ここを曖昧にしたまま走り出すと、後から必ず手戻りが発生します。
以下の3点を、立ち上げプロジェクトの最初に固めましょう。
「なぜインサイドセールスを立ち上げるのか」を明確にしましょう。
リードの取りこぼしを減らしたいのか、新規開拓を強化したいのか、営業コストを下げたいのかによって、組織の設計は変わります。
目的に対応する数値ゴール(月間商談創出数など)まで定義できれば、立ち上げの羅針盤が完成します。
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスの間に位置する機能です。
「どこからどこまでをインサイドセールスが担うのか」の線引きを明確にしましょう。
特に重要なのが、フィールドセールスへ商談を引き渡す基準(BANT情報の充足度など)の定義です。
この基準が曖昧だと、「質の低いアポを渡された」「せっかくの商談を放置された」という部門間対立の火種になります。
立ち上げ初期は、専任の責任者を置くことを強くおすすめします。
兼任だらけの体制では、トークスクリプトの改善やメンバー育成が後回しになり、成果が出る前に組織が疲弊します。
最初は責任者1名+メンバー2〜3名程度のスモールチームで始め、勝ちパターンを掴んでから拡大するのが定石です。
設計が固まったら、実際の立ち上げに移ります。
ここでは、標準的な立ち上げの手順を5つのステップで解説します。
まず、アプローチ対象となるリードの供給源を整理します。
過去の名刺、問い合わせ履歴、セミナー参加者、Webからの資料請求など、社内に眠るリードを棚卸ししましょう。
そのうえで、優先的にアプローチすべきターゲット像(業種・規模・役職)を定義します。
リードが不足している場合は、リード獲得施策の強化やターゲットリストの購入も並行して検討します。
次に、リードの状態別のアプローチシナリオを設計します。
初回接触、資料送付後、セミナー参加後など、状況ごとに「何を目的に、何を話すのか」を決めましょう。
トークスクリプトは、ヒアリング項目(課題・予算・時期・決裁プロセス)を必ず組み込んで作成します。
完璧を目指すより、まず作って実践し、改善し続けることが大切です。
インサイドセールスの生産性は、ツール環境に大きく左右されます。
最低限、顧客管理(CRM/SFA)、オンライン商談ツール、メール配信の仕組みは整えましょう。
余裕があれば、MAツールや電話の自動記録ツールも生産性を高めてくれます。
ただし、立ち上げ期からツールを盛り込みすぎると運用が回らなくなるため、必要最小限から始めるのが賢明です。
運用開始にあたり、活動を測るKPIを設定します。
架電数・接続数・商談化数といった行動指標と、商談化率・受注貢献といった成果指標をバランスよく置きましょう。
立ち上げ初期は行動量を重視し、データが溜まってきたら質の指標へ重心を移すのが自然な流れです。
KPIは「メンバーを詰める道具」ではなく「ボトルネックを見つける道具」として使うことが、健全な組織運営の鍵です。
運用開始後は、週次での振り返りを習慣化しましょう。
うまくいったトークの共有、つまずきポイントの特定、スクリプトの更新を繰り返すことで、組織全体の再現性が高まります。
録音データをもとにしたロールプレイングも、立ち上げ期の育成には非常に効果的です。
立ち上げの設計と同じくらい重要なのが、人材の確保と育成です。
インサイドセールスは「誰でもできる電話番」ではなく、ヒアリング力と仮説構築力が求められる専門職です。
ここでは、人材面で押さえるべきポイントを解説します。
立ち上げメンバーは、外部採用と社内異動のどちらでも確保できます。
社内異動なら商材理解が早く、フィールドセールス経験者であれば商談の質も高くなります。
外部採用なら、インサイドセールス経験者を迎えることで、立ち上げノウハウごと獲得できる利点があります。
理想は、社内の商材理解者と外部の経験者を組み合わせたハイブリッドチームです。
育成の基本は、トークスクリプトという「型」を渡したうえで、実践と振り返りを高速で回すことです。
通話の録音を教材に、良い例と改善点をチームで共有する文化を作りましょう。
週1回のロールプレイングを仕組みにするだけでも、立ち上げ期の成長スピードは大きく変わります。
インサイドセールスは、成果が数字で見えやすい反面、断られ続けるストレスも大きい仕事です。
フィールドセールスやマーケティング、マネージャーへのキャリアパスを示し、「次につながる仕事」であることを伝えましょう。
小さな成功を称賛する文化と、適切な目標設定が、チームの定着率を支えます。
多くの企業が同じような失敗を経験しています。
先回りして対策しておきましょう。
アポ数だけを追うと、確度の低いアポを量産し、フィールドセールスの工数を奪う結果になります。
商談化の質を測る指標(受注率・有効商談率)を必ずセットで見ましょう。
立ち上げ後しばらくすると、社内の保有リードを掘り尽くし、アプローチ先が枯渇する問題が起こります。
リード獲得施策との連動と、新規開拓(BDR)の仕組みづくりを、早い段階から並行して準備しておきましょう。
インサイドセールスの接触相手は、窓口の担当者になりがちです。
担当者経由の商談は、社内稟議のプロセスが長く、失注理由も見えにくいという課題を抱えます。
特にBDRで大手や重要顧客を狙う場合、「決裁者への到達」が最大のボトルネックになります。
インサイドセールス立ち上げ期の悩みは、「リードが足りない」「決裁者に会えない」「成果が出るまで時間がかかる」の3つに集約されます。
この3つを同時に解決できる手段が、決裁者マッチングです。
決裁者マッチングとは、審査を通過した企業の社長や役員など、決裁権を持つ人物同士を直接つなぐサービスのことです。
インサイドセールスと組み合わせることで、立ち上げ期から質の高い商談を安定供給できます。
決裁者マッチングでつながる相手は、全員が意思決定権を持つ経営層です。
受付突破や担当者経由の稟議待ちといった、インサイドセールスが最も苦労するプロセスを丸ごとスキップできます。
立ち上げ期に「質の高い商談」を早期に作れることは、社内でのインサイドセールスへの信頼獲得にも直結します。
月額制で継続的にマッチング候補が提供されるため、アプローチ先が枯渇する心配がありません。
保有リードへのSDR活動と、決裁者マッチングを起点としたBDR活動を並行させることで、商談パイプラインが安定します。
多くの決裁者マッチングサービスでは、AIが自社と相性の良い企業を提案してくれます。
反応の良い企業属性のデータは、インサイドセールス全体のターゲティング改善にも活かせます。
決裁者マッチングは、大量の架電リソースを必要としません。
マッチングした相手に絞って丁寧にアプローチすればよいため、少人数のスモールチームでも十分に運用できます。
立ち上げ期の限られたリソースで成果を出す手段として、非常に相性が良いのです。
インサイドセールス立ち上げの手順から、よくある失敗、そして商談創出を加速する決裁者マッチングまで解説してきました。
立ち上げ成功の鍵は、目的と役割分担を明確にした設計、スモールチームでの開始、KPIを使った改善サイクルの3つです。
一方で、立ち上げ期には「リード不足」「決裁者に会えない」「成果が出るまでの時間」という壁が必ず立ちはだかります。
その壁を乗り越える武器になるのが、審査済みの決裁者と直接つながれる決裁者マッチングです。
質の高い決裁者商談を早期に、安定的に、少人数でも創出できる決裁者マッチングは、インサイドセールス立ち上げ期の最強の相棒といえます。
体制づくりと並行して、決裁者マッチングの導入をぜひ検討してみてください。
正しい設計と強力な商談創出手段が揃えば、インサイドセールスの立ち上げは必ず成功に近づくはずです。
A. 見込み客を育てて商談化する型と、既存リストへ能動的に接触する型があります。
自社のリード供給源と目的に合わせて選びます。
リードの数や質によって向く型が変わるため、立ち上げ前に自社の状況を確認しましょう。
A. どちらでも確保できます。
自社商材や顧客を理解している社内異動は立ち上がりが早く、外部採用は経験者を迎えやすい点が利点です。
両方を組み合わせると、商材の理解と営業手法の経験を補い合えるチームになります。
A. アポ数だけに偏らせないことが重要です。
接触数や有効商談数、受注への寄与まで段階を分けて置きます。
段階ごとに指標を置くことで、どこで商談化が止まっているかを見つけやすくなります。
A. 社内の保有リストは早い段階で掘り尽くします。
新しい供給源の確保を、立ち上げ時点から計画に入れておきます。
マーケティング部門とも連携し、新しいリードを継続的に確保する仕組みを作っておきましょう。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。