監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
新規事業を任されたものの、何を基準に進めれば形になるのか掴めないまま時間だけが過ぎることがあります。
先行して成果を出した企業の動き方を分解すると、自社に足りない視点が見えてくることもあります。

新規事業の成功例として富士フイルムやラクスルなど10社の取り組みを紹介し、人材育成やターゲット設定など成功例に共通する5つのポイント、失敗例に共通する3つの落とし穴、撤退基準の決め方までを解説します。
監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
新規事業を任されたものの、何を基準に進めれば形になるのか掴めないまま時間だけが過ぎることがあります。
先行して成果を出した企業の動き方を分解すると、自社に足りない視点が見えてくることもあります。
新規事業とは、企業が新たに立ち上げる事業のことです。
今まで携わっていなかった分野に挑戦したり、独立して新たな事業を展開したりすることを指します。
新規事業に成功すると今まで以上の利益が見込まれるため、企業としても大きく成長できるでしょう。
新たな価値を生み出すことによって、世の中に必要とされる企業へと成長していけます。
なお、新規事業の戦略策定については、以下の記事で詳しく解説しています。
新規事業の戦略策定5ステップ|必要なことや役立つフレームワークを紹介

まずは、新規事業の成功例10選を紹介します。
富士フイルム株式会社は、写真関連の商品やサービスを提供しているメーカーです。
以前はフィルムで撮影されることの多かった写真も、デジタル化によるメモリーカードの活用によって市場規模が縮小しています。
その中での新規事業の一環として、化粧品の開発をスタートさせました。
化粧品は肌への浸透力を高めるために、素材の粒子を細かくする必要があります。
その技術を富士フイルムが持っていたのがきっかけです。
長年培ってきた写真撮影用フィルムの製造技術を応用し、化粧品の開発に成功した富士フイルムは、今では多くの化粧品を販売しています。
参考:富士フイルム株式会社 ホワイト ジェリー アクアリスタ 開発の軌跡
ユニ・チャーム株式会社は、不織布・吸収体関連製品の専門メーカーです。
生理用品やおむつなどの製品を販売しています。
不織布とは、繊維同士を癒着したり科学的に絡み合わせたりして製造する布を指します。
同社は不織布を製造する技術を活かして、ペット用品の開発に乗り出しました。
高分子吸収体が封入されたシートを作り出し、大幅な水分を吸収できるペットシーツを実現したのです。
特に近年は、リモートワークの普及などにより在宅の時間が増えたことから、ペットを飼う人も増加傾向にあります。
そのため、より一層の商品の需要が見込まれます。
参考:プレジデントオンライン 最大254億円市場!ペットの“4大潮流”を狙うユニ・チャーム
現代の日本はどの業界も人材不足が深刻化しており、特に運送業界は慢性的な人手不足に陥っています。
そこで日本郵政は、配送業務の負荷を軽減するために、Yper株式会社と協力して、置き配バッグ「OKIPPA」を開発しました。
置き配は以前から導入されていたものの、宅配ボックスが高価であることや設置場所の確保が難しいことを理由に、あまり広まっていませんでした。
そんな中、OKIPPAは低価格な上に場所を取らず、配送大手8社の専用アプリを使えば配送状況も確認できる便利さから、利用者数を伸ばし続けています。
その結果、配達員の人材不足の解消につながることも期待できます。
参考:Yper株式会社 【プレスリリース】日本郵便、置き配バッグOKIPPAを10万個無料配布へ
自動車メーカーのダイハツ株式会社は、通所介護事業者向けの送迎支援システム「らくぴた送迎」というサービスを展開しています。
通所介護、いわゆるデイサービス施設では、職員が送迎時の運転を担当するケースも珍しくなく、利用者を時間通りに送迎しにくいという悩みを抱えている場合が多いです。
この問題に着目したダイハツ工業は、効率的に送迎できるルートを作成する通信サービスとして「らくぴた送迎」をスタートさせました。
専用アプリを使えば、巡回ルートがわかるだけでなく、施設と運転手が連絡を取り合うことも可能です。
また、利用者が自宅や施設に到着したら自動で通知する機能も搭載されており、利用者の家族も安心できる環境を整えています。
テクシアマシナリー株式会社は、昭和22年創業の金属加工会社です。
主力製品である印刷機で紙を送る際に使用されるローラーのほか、さまざまな精密機器を製造しています。
新型コロナウイルスの蔓延によって手芸市場が拡大していることに着目した同社は、布製品をカットする機械の品質向上に注力し始めました。
紙と布ではローラーの仕様に大きな違いが見られ、開発に時間がかかったものの、無事、布用ローラーの開発に成功しています。
確かな技術力を持つ同社が開発した布用ローラーは、メーカーからの新規受注にも成功しており、事業の柱にもなっています。
ラクスル株式会社は、印刷業界を代表する企業です。
紙への印刷が見直される中で、同社は既存の出版物への印刷の他に、ネット印刷という新たな市場を生み出しました。
元々の印刷技術を活かし、紙に限らずノベルティやアパレルへのオリジナル印刷など分野を広げ、ネット印刷の会員登録数No.1を達成しています(2022年11月時点)。
ラクスル株式会社では、既存事業の業界の中にある余白を見つけて、顧客のニーズを満たす新規事業を展開しました。
その結果、新たなプラットフォームを構築でき、企業として大きな成果を出しています。
参考:ダイアモンドオンライン 「ラクスル」が印刷業界を席巻できた理由、創業メンバーが明かす新規事業立ち上げの極意
ソニー株式会社は、大手の総合電機メーカーです。
その大手メーカーが新たに参入した事業は、新規事業支援プログラム(SSAP)です。
SSAPとは、事業の進め方がわからない企業を対象に、アイデアの創出から事業化までを支援するプログラムのことを指します。
SSAPを活用すると、技術力があるのに事業化できないという悩みを抱える企業でも新規事業を展開でき、新たな収入源を確保できます。
現にソニー株式会社のSSAPは、7年間で17の事業化を実現しています。
大手の企業も利用しており、今後さらなる活躍を期待できるでしょう。
ヤマト運輸では、配送サービスの経験を活かして家電修理サービスを提供しています。
一般的に家電が故障した場合、販売店やメーカーに連絡して修理を依頼する必要があります。
製品によっては自ら梱包しなければならないため、利用者に負担となることもあるでしょう。
この課題に着目したヤマト運輸では、故障した家電製品の回収から返却までをワンストップで行うサービスを開始しました。
また、パソコン宅急便というサービスでは、パソコンもしくはデジタルカメラを安全に輸送できます。
既存のリソースを活用しながら顧客のニーズを満たせる事業といえるでしょう。
株式会社ヤマダホールディングスでは家電量販店・ヤマダ電機を全国展開しており、その店舗網を駆使してリフォーム業界に参入しています。
いずれIoT(モノのインターネット)が普及すると、ほとんどの家電はインターネットに接続されると考えられています。
そのため、ヤマダ電機は家電と住宅の融合に可能性を感じて、まずはリフォーム事業から参入しました。
ヤマダ電機の各店舗の一角にショールームを構えることにより、ユーザー目線を重視した新規事業の展開ができています。
既存の店舗を活用しているため、企業が負うリスクの軽減にもつながります。
自動車やオートバイのメーカーである本田技研工業株式会社は、自社が持つ技術を活かして小型ジェット機を開発しました。
2021年まで5年連続で、同クラスにおける納入機数が世界最多を記録しており、多大なる人気を集めています。
本田技研が開発した小型ジェット機は他社には真似できない独自技術で製造しており、スピードが速い、高く飛べる、遠くまで飛べるといった点が魅力です。
また、超軽量ジェット機の中では比較的低価格である点も、人気の要因といえるでしょう。
ジェット機を活用すると、新型コロナウイルスの蔓延によって人との接触を避けたいと考える顧客ニーズも満たせます。
世の中の流れを的確に把握しながら事業を展開していることが、成果からもわかるでしょう。
参考:本田技研工業株式会社 航空機の次世代を切り開く性能と快適性への挑戦

新規事業の成功例に共通するポイントは、以下の5つです。
それぞれの共通点を解説します。
新規事業を成功させるためには、人材の育成が欠かせません。
いい人材がいなければ、いい事業が生まれないからです。
例えば、人材育成の行われていない現場で新たな事業を展開しようとしても、アイデアが生まれなかったり、必要な情報を収集できなかったりします。
いい人材によりいい事業が生まれ、いい事業が生まれるところにいい人材が集まってきます。
このサイクルを実現できれば、新規事業は成功を収めやすくなるでしょう。
新規事業を展開する際は、詳細なターゲット設定が重要です。
ターゲット設定を見誤ると、新規事業で成果を出せず撤退しなければいけない可能性も生まれます。
なお、ターゲットをより細かく設定するためには、ペルソナを活用するのがおすすめです。
ペルソナとは、ターゲットよりも具体的な人物像を描くことです。
年齢や性別だけではなく、家族構成や年収などを設定すると、より具体的な顧客をイメージできます。
新規事業に必要となるヒントも得やすくなるでしょう。
ペルソナは一度設定した後も定期的に検証していき、随時更新や改善を繰り返すと、市場を判断する際の役に立ちます。
スピード感を持って取り組むことによって、新規事業の成功につながります。
完璧な事業を展開することに注力しすぎると、他の企業に先を越される可能性があります。
例えば、時間をかけて事業を展開しても、スタートする頃には世の中とのズレが生じている可能性が高いでしょう。
そのため最低限の準備でスタートを切り、その後は事業を展開しながら仮説検証を繰り返すのがポイントです。
素早く仮説検証をすると、そのうち新規事業を軌道に乗せられるでしょう。
新規事業を成功させるためには、顧客視点を重視する必要があります。
例えば、顧客のニーズを深掘りすると、新規事業の成功が見えてきます。
顧客と向き合う時間を確保しなければ、ニーズのズレた事業を展開する恐れもあるでしょう。
そのためには、事業に直接関係しない業務を簡素化するなどして、顧客と向き合う時間を作るのがおすすめです。
新規事業の成功には、システム化思考も重要です。
事業のシステム化が進めば、生産性をアップさせて事業の質を向上できるからです。
ちなみに、システム化すべき事業は企業によって異なります。
販売やマーケティングなど幅広い視点を持って、どこをシステム化すべきなのかを見極めるといいでしょう。
新規事業の失敗例に共通するポイントは、以下の3つです。
それぞれの共通点を解説します。
市場を把握していなければ、新規事業が成功する可能性は低いでしょう。
例えば、顧客が必要としてない商品やサービスを開発しても、誰も購入しません。
思いつきで事業を展開することが悪いわけではないものの、あまりにも主観的な経営判断をすると、結果を生み出せないでしょう。
新規事業に参入する際は、しっかりと市場調査をして、顧客のニーズを理解しておくことが重要です。
人材不足の中で新規事業を展開しようとすると、うまく成果が出ない場合が多いです。
なぜなら、担当者が元々持っている仕事と平行しながら新規事業を展開しなければいけなくなるからです。
アイデアがなかなか生まれなかったり、新規事業に割ける時間が少なかったりするでしょう。
新規事業と平行しながらでも、日々の業務をこなしていけると思えるかもしれません。
しかし、実際は成功するかどうかもわからない新規事業に注力する余裕はなく、既存の事業に手がいっぱいになる可能性もあります。
そのため、新規事業を展開する際は、外部から人材を確保するか、優秀な人材を新規事業に抜擢するなどの対応が必要となります。
撤退基準を設けていないと、成功の見込みが低い事業の運営に企業のリソースを割き続け、損失が大きくなります。
新規事業はスタートこそ簡単にできたとしても、辞めるのは困難です。
そもそも、新規事業は企業を大きく成長させるためのものであるため、成長や収益が見込めないときは潔く撤退するのも大切です。
そのために、あらかじめ撤退の基準を設けておくと、見切りを付けやすくなります。
撤退のタイミングを見極めるには、貢献利益を確認するのが効果的です。
貢献利益とは、売上高から直接固定費と変動費を引いたもののことです。
貢献利益の黒字化が見込めない場合は、撤退を検討すべき状態にあります。
新規事業が赤字になると他の事業にも悪影響を及ぼすため、撤退のラインはあらかじめ決めておくといいでしょう。

新規事業を成功させるコツは、主に以下の2つです。
それぞれのコツを解説します。
あらかじめ新規事業を行う目的を明確にしましょう。
どんな課題を解決するかを明確にしておくことにより、どのような商品やサービスを提供できるかがわかってきます。
新規事業の中にブレない軸が生まれるため、事業成功に向けてさまざまな検討を重ねられます。
社内のコミュニケーションを大切にしましょう。
新規事業に携わる従業員同士でコミュニケーションが取れていないと、意思疎通がうまくできずに他人任せになる可能性も否定できません。
反対にコミュニケーションが活発な職場であれば、さまざまな意見が飛び交ったり従業員同士が協力し合ったりと、よい環境が整いやすくなります。
すると新規事業にもよい影響が生まれて、よりよい商品やサービスを作り出せるでしょう。
新規事業の成功例には、以下のような共通点があります。
今自社が持っている最大限の力を発揮しつつ、顧客ファーストな事業を展開すれば、成功への道は開けるでしょう。
ただし、新規事業にこだわり続けるのではなく、撤退のタイミングを決めておくのも大切です。
他の事業に悪影響を及ぼすことのないように、企業にとって最善の選択ができるようにしましょう。
新規事業を展開する際には、新たな取引先や、事業の展開を助けてくれるビジネスパートナーとの出会いも重要です。
特に、企業の決裁者とつながることにより、新規事業のヒントを得ることができます。
チラCEOは、決裁者同士をマッチングするプラットフォームです。
登録者数は6,000名を超えており、あらゆる業種の決裁者と出会えます。
会いたい決裁者が見つかれば、こちらからメッセージを送信できるため、積極的に出会いを求める方にもおすすめです。
CS(カスタマーサクセス)が自社に合う決裁者を直接紹介することも可能であるため、自分では気付けない出会いも生まれやすいでしょう。
多くの決裁者と出会いたい方は、ぜひご利用を検討してみてください。
A. 記事では富士フイルム、ユニ・チャーム、日本郵政×Yper、ダイハツ工業、テクシアマシナリー、ラクスル、ソニー、ヤマト運輸、ヤマダホールディングス、本田技研工業の10社を紹介しています。
いずれも写真フィルムの製造技術を化粧品に応用する、不織布の技術をペットシーツに展開するなど、既存の技術や店舗網といった自社のリソースを新しい市場へ活かした点が共通しています。
A. 成功例に共通するのは、人材育成に力を入れていること、詳細なターゲット設定が行われていること、仮説検証にスピード感があること、顧客視点を重視していること、システム化思考を持っていることの5点です。
加えて、新規事業を行う目的を明確にして軸を作ること、社内のコミュニケーションを活発にして意思疎通を保つこともコツとして挙げられています。
A. 失敗例に共通するのは、市場調査に力を入れていない、人材が足りていない、撤退基準を設けていないという3点です。
市場を把握しないまま主観的に判断すると顧客が必要としない商品を作ってしまい、人材不足のまま始めると担当者が既存業務と並行することになり成果が出にくくなります。
撤退基準がなければ見込みの低い事業にリソースを割き続け、損失が大きくなります。
A. 撤退のタイミングを見極めるには、貢献利益を確認するのが効果的です。
貢献利益とは売上高から直接固定費と変動費を引いたもので、その黒字化が見込めない場合は撤退を検討すべき状態にあります。
新規事業が赤字になると他の事業にも悪影響を及ぼすため、撤退のラインはあらかじめ決めておくことが大切です。
A. 新規事業が成功すると新たな収入源を確保できるため、企業として大きな飛躍が期待できます。
また、新規事業によって得た知識は従業員や企業にとっての財産となり、今後の事業展開にも応用できます。
優秀な人材が育てば、さらなる企業の発展にもつながります。
A. 世の中は常に変化しているからです。
企業は利益を生み出し続けなければ、存続するのは困難です。
特に昨今はどの業界も競争が激化しており、あらゆる施策を講じなければ競合他社に劣ってしまう可能性があります。
そこで、世の中の流れを把握して顧客のニーズを満たせる新規事業を展開できると、企業にとっての利益を生み出すチャンスとなります。
より顧客のニーズを満たせる事業を展開できれば、スタートアップ企業であっても大きなチャンスを掴めるでしょう。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。