最終更新日: 2026.09.22
NDAを締結する前に必ず知っておくべき重要ポイント16選

NDA(秘密保持契約)を締結する前に確認すべきポイントを、秘密情報の定義、除外事項、保持期間、目的限定、第三者開示、損害賠償、準拠法、返還義務など項目別に整理して解説します。

監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)

内容を理解しないまま締結すると、後からトラブルに発展することがあります。

一方向型と相互型の違いから、確認すべき条項を順に整理します。

この記事の要約

  • 秘密情報の定義と除外事項は、NDAで最初に確認すべき中心的な条項です。
  • 秘密保持義務の期間や利用目的の限定、第三者への開示範囲も必ず確認します。
  • NDAは不正競争防止法を補完し、秘密として管理していた事実の立証を助けます。

Table of Contents

NDA(秘密保持契約)とは何か、基本的な定義と役割を理解しよう

NDAとは「Non-Disclosure Agreement」の略称で、日本語では「秘密保持契約」と呼ばれます。

当事者間でやり取りされる機密情報を第三者に漏洩しないことを約束する法的拘束力のある契約であり、ビジネスの場面では新規取引の開始前や技術提携の協議段階などで頻繁に利用されます。

NDAが必要とされる主な場面

NDAが締結されるシーンは非常に多岐にわたります。

新規取引先との商談開始前、M&Aや業務提携の交渉段階、システム開発の外注時、採用選考においての社内情報の開示時など、機密情報が外部に出る可能性がある局面ではほぼ必須と言えます。

特にスタートアップ企業や新製品の開発を行う企業では、技術情報や顧客リストの漏洩が事業の根幹を揺るがすリスクになるため、NDAの締結は経営上の優先課題となっています。

NDAの種類:一方向型と相互型の違い

NDAには大きく分けて「一方向型(片務型)」と「相互型(双務型)」の2種類があります。

一方向型は情報を受け取る側だけが守秘義務を負う形式で、主に情報を開示する側が強い立場にある場合に使われます。

相互型は双方が互いに機密情報を開示し合う場面で用いられ、対等な立場での協議や業務提携に適しています。

どちらの形式を選ぶかは、取引の性質や力関係によって異なるため、契約前に双方で合意を図ることが重要です。

NDA締結前に確認すべき重要ポイントを項目別に解説

NDAに署名する前に、契約書の各条項を慎重に確認することが不可欠です。

以下では、特に見落としがちなポイントを中心に解説していきます。

ポイント①「秘密情報」の定義範囲を明確にする

NDAの中で最も重要な要素のひとつが、「秘密情報とは何か」を明確に定義することです。

定義が曖昧なままでは、何が保護対象で何がそうでないかを巡って後日紛争が生じるリスクがあります。

一般的には「書面で秘密と明示されたもの」に限定する方法と、「口頭・書面を問わずすべての開示情報」を対象とする広い定義の2パターンがあります。

受け取る側としては範囲が狭い方が望ましく、開示する側としては広く定義した方が安全です。

自社の立場に合わせて交渉し、双方が納得できる定義文を設定しましょう。

ポイント②「除外事項」の条文を必ずチェックする

秘密情報から除外される情報のリストも、必ず確認しなければならない重要項目です。

一般的に除外事項として認められるのは、①すでに公知の情報、②第三者から正当に入手した情報、③受領前から保有していた情報、④法律や裁判所の命令により開示が義務付けられた情報、の4つです。

この除外規定が適切に盛り込まれていないと、既に公開されている情報についてまで守秘義務を負わされる不合理な状況が生まれます。

自社に不利な条件になっていないか弁護士に確認してもらうことを強く推奨します。

ポイント③秘密保持義務の期間を確認する

NDAには、秘密保持義務が課される「期間」が定められています。

契約の有効期間と秘密保持義務の期間は別物であることに注意が必要で、契約終了後も一定期間(3年〜5年が相場)は義務が継続するケースが一般的です。

技術情報やノウハウなど長期にわたって価値を持つ情報を開示する場合は、期間を長めに設定することを検討してください。

一方、受け取る側の立場であれば、無期限や長期間の義務は事業の柔軟性を損なうため、適切な期間での交渉が重要となります。

ポイント④情報の利用目的を具体的に限定する

秘密情報をどのような目的にのみ使用できるかを明記する「目的限定条項」は、情報漏洩を防ぐ上で非常に効果的な条項です。

例えば「〇〇に関する業務提携の検討のためのみに使用する」と具体的に定めることで、受け取った情報が本来の目的以外で悪用されるリスクを大幅に低減できます。

目的が曖昧な表現のまま締結してしまうと、情報が予期しない形で利用されても差し止めが困難になる場合があるため、できる限り具体的かつ限定的な文言を使うことがポイントです。

ポイント⑤第三者への開示制限と従業員への周知義務

機密情報を社内で取り扱う従業員や協力会社(第三者)への開示についても、明確なルールを定めることが重要です。

一般的には「業務上必要な者に限り開示できる」という条件付きの開示許可が設けられますが、その場合も「開示を受けた者に同等の守秘義務を課すこと」が義務付けられるケースが多いです。

契約書に第三者開示に関する条項がない場合や曖昧な場合は、追記または修正を求める交渉を行いましょう。

また、社内に秘密保持に関するルールを周知する体制づくりも、NDA遵守の観点から不可欠です。

ポイント⑥違反時の損害賠償について定める

NDA違反が発生した場合の責任について、どのような形で損害賠償を請求できるかを確認することも欠かせません。

契約書に損害賠償条項が盛り込まれていれば、違反によって生じた損害の賠償を法的に請求する根拠となります。

ただし、情報漏洩による損害額の立証は一般的に困難であるため、「違反1件につき〇〇円」といった形で賠償額を予め定める「損害賠償額の予定」条項を入れることも有効な手段です。

高額の賠償額が設定されていると相手方の抑止力にもなるため、交渉の際に積極的に検討してみてください。

ポイント⑦差止請求権の明記

損害賠償に加えて、「差止請求権」を明記しておくことも重要なポイントです。

差止請求とは、情報漏洩や目的外利用が発覚した際に、相手方の行為をその場で停止させるよう裁判所に求める権利のことです。

損害が実際に発生する前に食い止めることができるため、技術情報や顧客情報など取り返しのつかないダメージにつながる情報の保護には特に有効です。

NDA違反の救済手段として損害賠償だけでなく差止請求も可能とする旨を、明示的に契約書に盛り込んでおきましょう。

ポイント⑧準拠法と管轄裁判所の確認

国内取引のみならず外資系企業や海外企業との間でNDAを締結する場合は、「準拠法」と「管轄裁判所」の確認が特に重要です。

準拠法とは、契約の解釈や紛争解決に適用される国の法律のことです。

日本法が適用されれば民法や不正競争防止法を軸に対応できますが、外国法が適用されると法律の知識や対応コストが大きく異なります。

管轄裁判所も自社の所在地に近い場所を指定する方が、訴訟対応の負担を軽減できます。

海外との取引では必ず専門家の助けを借りながらこれらの条項を確認することを推奨します。

ポイント⑨秘密情報の返還・廃棄義務

NDAの終了後や取引が成立しなかった場合に、開示した機密情報を返還または廃棄させる条項も重要です。

取引が不成立に終わった後も相手方が機密情報を手元に持ち続けることは、リスクの観点から避けたい状況です。

「契約終了後〇日以内に書面または電磁的データを返還・廃棄し、その旨を書面で報告すること」といった具体的な手順を契約書に盛り込んでおくことで、情報管理の実効性を高めることができます。

ポイント⑩電子署名と書面の有効性

近年、契約書の電子化が進む中で、NDAを電子署名・電子契約で締結することも一般的になってきました。

クラウドサインやDocuSignなどのサービスを利用した電子契約は、日本の電子署名法のもとで法的有効性が認められています。

ただし、相手方が電子契約に対応しているか、また海外企業の場合は現地の法律で電子署名が有効とされるかを確認することが必要です。

電子署名を採用することで締結スピードが向上し、契約書の管理・検索も効率化されるため、積極的な活用を検討してください。

不正競争防止法とNDAの関係:法的保護をより強固にする方法

NDAを締結していなくても、不正競争防止法によって一定の営業秘密は法的に保護されます。

しかし、同法で保護を受けるには「秘密管理性・有用性・非公知性」の3要件を満たす必要があり、これらの要件の充足を立証するのは容易ではありません。

NDAは不正競争防止法の補完的役割を果たす

NDAを締結しておくことで、「この情報は秘密として管理されていた」という秘密管理性の立証が格段に容易になります。

万が一情報漏洩が発生した際にも、NDAがあれば契約違反として民事上の損害賠償請求ができるだけでなく、不正競争防止法に基づく損害賠償や差止請求も並行して行える可能性があります。

二重の法的保護を確保するためにも、NDAの締結と社内での秘密管理体制の整備を並行して行うことが重要です。

NDA締結時によくあるトラブルとその回避策

NDAに関するトラブルのほとんどは、契約内容の確認不足または事前の認識齟齬から生じます。

ここではよく見られる失敗例とその対策を紹介します。

トラブル例①定義が広すぎて業務に支障が出る

受け取る側が非常に広い範囲の秘密情報に対して無制限の守秘義務を課された結果、類似した業務や他クライアントとの取引に支障が生じるケースがあります。

この問題を避けるためには、秘密情報の定義を「具体的かつ限定的」に交渉することと、除外事項を適切に設定することが有効です。

特にフリーランスや複数の企業と取引する事業者は、NDAが自身の事業活動を過度に制約しないかどうかを締結前に慎重に確認してください。

トラブル例②口頭での情報開示が後から問題になる

口頭で伝えた情報がNDAの対象となるかどうかについて、後日認識の相違が生じるトラブルも珍しくありません。

対策としては、口頭で情報を開示した場合は「一定期間(例:開示後7日以内)に書面で改めて秘密情報と明示する」という確認手続きを契約書に定めておく方法が有効です。

口頭開示の記録として議事録やメールでの確認を徹底することも、紛争予防につながります。

トラブル例③有効期間終了後の情報管理が曖昧になる

NDAの有効期間が終了した後に、受け取った情報をどのように扱うべきかが明確でないケースも多く見られます。

契約終了後の守秘義務の存続期間と情報の返還・廃棄義務を契約書に明示しておくことで、このリスクを事前に回避することができます。

まとめ:NDAはポイントを押さえた上で戦略的に締結しよう

NDAは単なる形式的な書類ではなく、自社の重要情報を守るための実効的な法的ツールです。

秘密情報の定義・除外事項・利用目的・保持期間・違反時の対応といった各ポイントをしっかり確認した上で締結することが、後々のトラブル防止につながります。

相手方から提示された契約書をそのまま受け入れるのではなく、自社の立場や状況に応じて必要な修正交渉を行うことが重要です。

内容に不安がある場合は、企業法務を専門とする弁護士に事前レビューを依頼することを強くおすすめします。

NDAを戦略的に活用することで、安心してビジネスを進めるための強固な基盤を築くことができます。


よくある質問

Q. 一方向型と相互型はどう使い分けますか

A. 情報を渡す側だけが守秘義務を負うのが一方向型です。

双方が情報を出し合う協業の検討では、相互型が適しています。

どちらが情報を開示するかを事前に整理しておくと、適切な形式を選びやすくなります。

Q. 秘密情報の定義は広いほうが安全ですか

A. 受け取る側にとっては広すぎる定義が負担になります。

他の取引に支障が出る範囲まで含めないよう、双方で調整します。

対象となる情報の範囲を具体的に書いておくと、後からの認識の違いを防げます。

Q. 口頭で伝えた情報は対象になりますか

A. 後から認識の違いが生じやすい点です。

口頭開示分を対象にするなら、一定期間内に書面で特定する運用を定めます。

重要な情報は口頭だけで伝えず、資料などの形で共有するほうが安全です。

Q. 期間終了後の情報はどう扱いますか

A. 返還または廃棄の義務を条文に定めておきます。

定めがないと、終了後の取り扱いが曖昧になりトラブルの原因になります。

返還や廃棄を行った際は、その記録を残しておくと後のトラブルを防げます。

この記事の監修者

平野哲也

平野 哲也(ひらの てつや)

株式会社オンリーストーリー 代表取締役

BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。

累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。

「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

ENICXO
メッセージアイコン オンリーストーリー代表 平野からのメッセージ
オンリーストーリーでは、これまで10年以上にわたり、
BtoB営業における「集客の課題」と真剣に向き合ってきました。

経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
想いを届ける手書きの手紙など、独自の形で支援を続けています。

そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。

私たちが大切にしているのは、単なるマッチングツールの提供ではなく、
一社一社の課題に寄り添い、"本当に意味のある出会い"をつくることです。

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