新規事業を行う際は、倫理的な考えに基づいて戦略を立てる必要があります。企業の主観だけではなく、広い視野を持ちながら集まった情報を分析することで新たな価値を提供できるでしょう。
しかし、ただ闇雲に情報を分析すると情報が散らばってしまい、効率よく事業を展開するのは困難です。アイデアや思考を効率よく分析するためには、さまざまなフレームワークを活用するのがおすすめです。
本記事では、新規事業を立ち上げる際におすすめのフレームワークを19個紹介します。フレームワークを活用するメリットやポイントも紹介しているので、併せて参考にしてください。
新規事業の計画を立てる際に活用できるフレームワーク2選
新規事業の計画を立てる際に活用できるフレームワークは以下の2つです。
- ビジネスロードマップ
- ロジックツリー
それぞれのフレームワークについて解説します。
1.ビジネスロードマップ
ビジネスロードマップとは、最終的な目標を達成するためには何をすべきかを可視化できるフレームワークです。
横に時間軸、縦に事業規模軸や売上を設定して流れを予測します。時間の変化によってどのような問題があるのか、それぞれの問題を解決するにはどのような対策が必要かなどを書き出すと目標ごとの具体的な対策を把握できます。
2.ロジックツリー
ロジックツリーとは、マインドマップ形式で1つの事柄を深掘りするフレームワークです。想定される課題や問題をどのように解決していくかを予測すると、中間目標を設定する際の指標ともなるでしょう。
新規事業でアイデアを出す際に活用できるフレームワーク4選
新規事業でアイデアを出す際に活用できるフレームワークは以下の4つです。
- ペルソナ分析
- マンダラート
- アナロジー分析
- スキャンパー法
それぞれのフレームワークについて解説します。
1.ペルソナ分析
ペルソナ分析とは架空のターゲットを1人思い浮かべて、その人物像から顧客のニーズを深掘りするフレームワークです。「30代・男性」といった漠然とした人物像ではなく、人物を特定できそうなほど細かな設定をするのがポイントです。例えば、以下のような項目を埋めていきます。
これらの項目を埋めていくと、ペルソナが抱える悩みや思考パターンを把握しやすくなります。顧客が抱えている課題が明確になれば、新規事業に必要なアイデアが浮かびやすくなるでしょう。
2.マンダラート
マンダラートとは、アイデアを広げたり、整理するのに役立つフレームワークです。9マス×9マスの升目を利用することで、アイデアや発想を広げられます。マンダラートの手順は以下の通りです。
- 紙を用意して縦9×横9のマス目を書く
- マス目の中心にアイデアを書く
- 2で書き出したアイデアの周りに、関連語句や必要な事柄を記載していく
- さらに外側のマスに関連語句や必要な事柄を書き足していく
3.アナロジー分析
アナロジー分析とは、他業種での成功事例を参考にして新規事業に役立つアイデアを導き出すフレームワークのことです。
例えば他業種の成功事例を自社と置き換えて「自社であれば、どのような事業展開を行ったか」などと分析することで見えてくるアイデアがあります。他にも成功事例と自社との共通点がわかれば、新規事業に活かせるヒントも明確になってくるでしょう。
なお、ここで重要なのは他業種の成功事例を分析することです。自社とは違う業種の成功体験を分析することで、業種の常識に捕らわれない発見ができるでしょう。
4.スキャンパー法
スキャンパー法とは、以下の7つの質問に答えることでアイデアを拡大させていくフレームワークです。
- Substitute(代用):他の方法やモノで代用できるか?
- Combine(組み合わせ):既存のアイデアと組み合わせることは可能か?
- Adapt(適応):他のモノを応用できるか?
- Modify(修正):修正することで新たな価値は生まれるか?
- Put to other uses(他の使い道):他の目的やターゲットに応用できるか?
- Eliminate(削減):不要なモノを取り除くことで新たな価値は生み出せるか?
- Reverse/Rearrange(逆転/再編成):逆転させたり再編成させたりすることで新たな価値は生まれるか?
新規事業でアイデアを整理するときに活用できるフレームワーク3選
新規事業でアイデアを整理するときに活用できるフレームワークは以下の3つです。
- 6W3H
- MVV
- ビジネスモデルキャンバス
それぞれのフレームワークについて解説します。
1.6W3H
6W3Hとは、以下の9つの項目に沿って分析するとアイデアを整理できるフレームワークです。
- Who(なぜ):自社はなぜこの事業をやるのか?
- What(なにを):具体的にはどのような事業を展開していくのか?
- Who(誰が):事業を展開していく担当者は誰か?
- with Whom(誰と):顧客を含めて事業に影響を与える相手は誰か?
- When(いつ):事業のスタートや費用の回収目標をいつにするか?
- Where(どこで):ターゲットとなる顧客はどこにいるのか?
- How(どのように):どのように事業を展開していけばいいのか?
- How much(いくら):コストはどのくらいかかる見込みか?
- How many(どのくらい):どのくらいのボリューム感を想定しているのか?
新規事業に関する事柄をこれら9つに分類しながら決めていくと、抽象的なテーマがはっきりとした情報に変わっていくでしょう。
2.MVV
MVVとは、自社の強みやビジョンを元にアイデアを整理するフレームワークです。以下の3つの軸に沿ってアイデアを整理すると、自社だからこそ成し遂げられる事業が見えてきます。
- Mission(存在意義):組織としてどのような会社を目指しているか?自社にはどのような存在意義があるのか?
- Vision(目標):企業として掲げている目標にはどのようなものがあるのか?その目標に向けてどのような行動をすべきか?
- Value(行動指針):ミッションやビジョンを達成するためには何をすべきか?
新規事業を進めるにあたって、最終的に企業として成し遂げたいことを確認しておくのは重要です。MVVを活用すると自社の社会的な役割を再確認した上で、新規事業を展開できるでしょう。
3.ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスとは、以下の9つに分類することでアイデアを整理できるフレームワークです。
- 顧客セグメント:新規事業のターゲットは誰か?
- 顧客との関係:顧客との関係性をどのように構築していくのか?
- 提供価値:顧客のニーズを満たすためには、どのような価値を提供すべきか?
- パートナー:新規事業のパートナーとなり得る企業は誰か?
- 販売チャンネル:新規事業で生み出した商品やサービスをどのような形で販売するのか?
- 収益の流れ:商品やサービスをいくらで販売するのか?またどの価格帯であれば顧客の満足度を高められるのか?
- 主要活動:新規事業をスムーズに進めるためには、どのような行動を行えばいいか?
- 主要資源:新規事業を進めるにあたってどのような資源(ヒト・モノ・カネ)が必要になるか?
- コスト構造:固定費や変動費など、どこにどれほどの予算が必要となるのか?
ビジネスモデルキャンバスは他の手法よりも多角的な視点でアイデアを整理できるのが特徴です。広い視野を持ってアイデアを深掘りしたいときにも役立つでしょう。
新規事業のために市場調査を行うときに役立つフレームワーク5選
新規事業のために市場調査を行うときに役立つフレームワークは以下の5つです。
- 3C分析
- SWOT分析
- VRIO分析
- ポジショニングマップ
- PEST分析
それぞれのフレームワークについて解説します。
1.3C分析
3C分析とは、以下の3つの「C」を分析することで市場調査を行えるフレームワークです。
- Customer(市場・顧客):市場規模や成長性、顧客のニーズはどうなっているのか?
- Competitor(競合):競合の特徴は何か?ライバルとなりそうな企業はどこか?
- Company(自社):自社の強みやビジョンは何か?
3C分析でもっとも重視すべき項目は顧客です。顧客を中心に競合と比較することで、何を優先すればいいのかが把握できます。
2.SWOT分析
SWOT分析とは、以下の4つに分類することで自社のポジションを可視化できるフレームワークです。
- Strength(強み):自社の強みは何か?
- Weakness(弱み):自社の弱みはどこにあるのか?
- Opportunity(機会):自社のチャンスはどこに隠されているのか?
- Threat(脅威):自社にとっての脅威はどこにあるのか?
Swot分析を行うと、自社にとっての良い影響と悪い影響の両方を把握できます。内部要因と外部要因に分けて分析できるため、主観・客観の両面を持ち合わせた戦略の構築に役立つでしょう。
3.VRIO分析
VRIO分析とは、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を把握するために活用するフレームワークです。新規事業を展開する際、自社がどのような資源を持っているのか事前に把握することは極めて重要です。そうすることで、自社はどのような事業を展開できるかが見えてくるでしょう。
- Value(経済的価値):経営資源がどのような影響力を持っているのか?
- Rareness(希少性)自社の経営資源にはどのような独自性があるのか?
- Imitability(模倣可能性):自社の経営資源の模倣を防ぐためにはどうすればいいか?
- Organizarion(組織):経営資源を最大限活用するための体制は整っているか?
4.ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは、市場全体の中で自社の立ち位置を明確にし、今後狙うべき立ち位置を可視化するフレームワークです。以下の流れに沿ってマッピングすると、自社と競合の立ち位置を把握できます。
- 顧客が商品を購入する際に重視する要素を2つ抜き出す
- 抜き出した要素を縦軸と横軸に設定する
- 競合他社の商品がどのあたりに位置するかを表の中にマッピングする
例えば顧客が重視するべき要素が値段と見た目だった場合、縦軸には高級・大衆を設定し、横軸にはデザイン性と機能性を設定します。すると2つの線が交わるところを中心として4つの空白ができ、そのうちのどこに競合他社の商品が該当するかが可視化できるようになります。
競合の商品といかにして差別化を図るべきかが見えてくるでしょう。
5.PEST分析
PEST分析とは、以下の4つに沿って項目を埋めることで外部環境を分析できるフレームワークです。新規事業の戦略を立てていく上でのヒントが見つかるでしょう。
- Politics(政治):法律や規制緩和などはどうなっているのか?
- Economy(経済):景気や経済成長率はどのようになっているのか?
- Society(社会):人口や世帯数、社会の価値観はどうなっているのか?
- Technology(技術):特許やIT活用はどのようになっているのか?
新規事業でマーケティング戦略を行う際に役立つフレームワーク5選
新規事業でマーケティング戦略を行う際に役立つフレームワークは、主に以下の5つです。
- カスタマージャーニーマップ
- STP分析
- 4P分析
- 4C分析
- 5フォース
それぞれのフレームワークについて解説します。
1.カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、見込み客の購入フェーズを可視化したフレームワークです。
横軸に顧客の購入フェーズ「興味・関心」「比較・検討」「購入・契約」「継続・再購入」「共有」を、縦軸に「自社との接点」「行動」「思考」「感情」を設定します。
各フェーズでの見込み客の反応を予測できるため、どのような戦略が必要となるかを把握しやすくなります。顧客視点を重視しながら、新規事業の戦略を立てられるでしょう。
2.STP分析
STP分析とは、以下の3つの項目に沿って分析することで、多角的にマーケティング戦略を構築できるフレームワークです。
- Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化して分析する
- Targeting(ターゲティング):細分化した市場の中で、どこに参入できるか?
- Positioning(ポジショニング):細分化した市場の中での自社の立ち位置を考える
3.4P分析
4P分析とは、商品やサービスを販売するための行動指針を可視化するフレームワークです。企業側の視点を重視しながら、顧客にとっての価値を見い出すときに用いられます。
- Product(製品):商品やサービスを販売すると、どのような価値提供を行えるか?
- Price(価格):販売価格をいくらにするか?
- Place(販売場所):どのような場所で商品やサービスを販売するのか?
- Promotion(販促):どのように販促を行っていくか?
4.4C分析
4C分析とは、4P分析とは対照的に顧客にとって必要なマーケティング戦略を可視化するフレームワークです。4P分析を活用すると、顧客に受け入れてもらえる戦略を立てやすくなります。
- Customer Value(顧客にとっての価値):機能や性能など、顧客にとっての価値はどこにあるのか?
- Cost(顧客コスト):商品やサービスを購入する際のコストはいくらか?
- Convenience(利便性):商品やサービスは購入しやすいか?
- Communication(コミュニケーション):自社と顧客のつながりはあるのか?
5.5フォース
5フォースとは、業界全体の状況を可視化することで自社の収益性を分析できるフレームワークです。以下の項目を分析することで、収益化が見込めるかを把握できます。
- 業界内の競合:同業他社をはじめ、どのような競合がいるのか?
- 新規参入の脅威:新規事業として展開していく上での障害はあるのか?
- 代替品の脅威:自社の商品やサービスに代わるものはあるのか?
- 売り手の交渉力:原料や部品を提供する企業からはどのような要求があるのか?
- 買い手の交渉力:顧客からの値下げや品質向上など、どのような要求があるのか?
新規事業でフレームワークを活用する3つのメリット
新規事業でフレームワークを活用するメリットは、主に以下の3つです。
- アイデアをまとめやすくなる
- 情報の漏れを防げる
- 社内共有しやすい
それぞれのメリットを解説します。
1.アイデアをまとめやすくなる
新規事業でフレームワークを活用すると、アイデアをまとめやすくなります。頭の中に散らばっている思考を1つにまとめ、新規事業にアイデアを活かしやすくなるからです。フレームワークはある程度の方向性や考え方が決まっているため、短時間で思考をまとめられるでしょう。
アイデアを書き出すことで情報を整理できるほか、それぞれの関係性も明確になりやすいのもメリットです。すると新規事業に関するアイデアの課題も見つけやすくなるでしょう。
2.情報の漏れを防げる
フレームワークはルールに沿って項目を埋めていくため、情報の漏れが起きにくいのが特徴です。何の決まりもなく、思いつくままにアイデアを並べることも可能ですが、そうすると漏れが起きやすくなったり、課題を見落としやすかったりします。
一方、フレームワークはあらかじめ流れが決まっているため、その項目を埋めさえすれば漏れが起きにくく必要な情報を集められます。効率よくアイデアを実現化できるほか、新規事業を展開していく上での問題点も見つかりやすいでしょう。
3.社内共有しやすい
フレームワークは抜け漏れの防止や客観的な視座を与えるため、第三者が見ても具体的なイメージを抱きやすいのがメリットです。社内で情報を共有しやすく、効率的に新規事業を進められます。特に他部門との連携が必要な事業を展開する場合に、有効だといえるでしょう。
新規事業でフレームワークを活用する際の3つのポイント
新規事業でフレームワークを活用する際のポイントは、以下の3つです。
- 事業に合ったフレームワークを選ぶ
- 複数のフレームワークを活用する
- 客観的に分析する
それぞれのポイントを解説します。
1.事業に合ったフレームワークを選ぶ
フレームワークは多岐に渡るため、事業に適したものを選ぶことがポイントです。例えばアイデアを出したいときとマーケティング戦略を構築したいときでは活用するフレームワークは異なります。
フレームワークを活用するときは、今何をしたいかを明確にした上で、その問題を解決できるものを選びましょう。
2.複数のフレームワークを活用する
新規事業を展開する際は、複数のフレームワークを活用しましょう。フレームワークにはそれぞれ役割があります。そのため1つのフレームワークだけでは偏った観点のみしか検討できません。
複数のフレームワークを活用すると、あらゆる観点から検討できるようになります。すると、さまざまな視点から新規事業を検討できるようになるため、より良い事業を展開できるでしょう。
3.客観的に分析する
フレームワークを活用するときは、客観的な視点で分析することも重要です。例えば新規事業を成功させたい想いが強すぎて、主観的なアイデアしか反映されなければ顧客のニーズを満たすのは難しいでしょう。
その結果、顧客からの信頼も得られずに、新規事業が失敗に終わってしまう可能性もあります。顧客のニーズや市場を把握しつつ、客観的に分析できるフレームワークを活用するとより良い結果を得られるでしょう。
Q&A:新規事業のフレームワークに関するよくある質問
ここでは、新規事業のフレームワークについてよくある質問をまとめました。
Q:フレームワークを利用するデメリットは何ですか?
A:フレームワークのデメリットは、主に以下の通りです。
- 革新的なビジネスを作りにくい
- 正しいフレームワークを選ぶ必要がある
フレームワークは既存の課題を解決してきた枠組みであるため、革命的なビジネスを生み出すのは困難です。そのため新規事業を展開する場合は、フレームワークを利用しながら仮説や検証を繰り返して新たな事業を見い出す必要があります。
またフレームワークの種類は多岐に渡ることから適切なものを選ぶのが難しいのもデメリットです。何を検証したいかを明らかにしておき、その目的を達成できるフレームワークを選ぶといいでしょう。
Q:新規事業はどのように始めればいいですか?
A:新規事業は、以下のステップで実行するといいでしょう。
- 新規事業の立ち上げ担当者を決める
- 事業の理念を明確にする
- 市場調査や事業調査を行う
- 顧客のニーズを把握する
- 事業モデルを検討する
- 事業計画を立てる
- 適切な人材をアサインする
- 事業を開始する
新規事業を成功させるためには、適切な流れで実行するのがポイントです。各過程の中で必要な情報を精査したいときに、フレームワークを活用するといいでしょう。
まとめ:新規事業はフレームワークを活用して効率よく展開していこう!
新規事業を展開する際は、フレームワークの活用がおすすめです。理由としては、以下の3つが挙げられます。
- アイデアをまとめやすくなる
- 情報の漏れを防げる
- 社内共有しやすい
フレームワークを活用するとアイデアを効率よく可視化できるため、新規事業を展開していく上での情報を把握しやすくなります。その一方で、主観的な思いがありすぎると情報に偏りが生まれるため、客観的な分析を心掛けることも大切です。
チラCEOでは、決裁者と出会えるプラットフォームを提供しています。会いたい決済者を見つけたらメッセージを送信できるため、新たな出会いも生まれやすいでしょう。また出会った決裁者から紹介をもらったり、意思決定者の生の声を聞けたりするのも特徴です。多くの決裁者と出会うことで、新規事業に役立つヒントも得られるかもしれません。決裁者との関わりを持ちたい人は、ぜひ利用を検討してください。