営業の人材不足を解決したい、自社内での人的コストを減らしたいという営業部門の悩みを解決する上で、営業代行はとても有効なサービスです。
しかし、実際に営業代行を使うとなると、料金体系がわかりにくく、どれくらいの費用が必要になるのか明確に把握しにくいということも少なくありません。場合によっては、利益より費用のほうが高く、自社にとって損失になるリスクもあります。営業代行会社を選ぶ上で費用は入念に確認したい事項です。
この記事では営業代行の費用はどのように決まるのか、営業代行の費用を抑えるにはどのようにすればいいのかを解説します。
営業代行の費用は依頼内容により異なる
営業代行の費用は、営業代行会社の料金体系と依頼する業務内容により異なります。そのため、事前にどのような料金体系で、どのタイミングで支払いが発生するのかを調査しておくことが大事です。
また、どのような業務を依頼するのかもあらかじめ決めておきましょう。
以下では営業代行の主な料金体系と、料金体系によりどのような違いが生じるのかを解説します。
営業代行の料金体系による費用の違い
営業代行の費用は料金体系によって変わります。
営業代行の料金体系には、固定報酬型、成果報酬型、複合報酬型の3つがあります。どの体系が適用されているかは代行会社によって異なります。それぞれの料金体系の違いを把握して、自社に合った料金体系の会社を選ぶようにしましょう。
固定報酬型の費用体系
固定報酬型は、毎月決められた額の報酬を支払う料金体系です。契約期間中、毎月同じ費用を支払い続ける必要があります。
固定報酬型は費用の変動が少ないことがメリットです。想定以上に成果を上げたとしても費用が増えることはありません。予算を超えることがないため、毎月支払える額が決まっている場合にはとてもありがたい制度と言えるでしょう。
また、長期的に見てリターンが大きくなる可能性がある点も、固定報酬型のメリットです。例えば、営業部門の教育や戦略立案など、長期的に取り組む業務にコミットしやすい特徴があります。さらに、営業の実行プロセスを開示してもらえることが多いため、自社内にナレッジを蓄積しやすくなります。
成果報酬型の費用体系
成果報酬型は受注やリード(見込み顧客)の獲得など、あらかじめ決められた成果を達成した際に報酬を支払う料金体系です。
成果報酬型制度の場合、営業代行がどれくらい成果を上げたかにより、毎月の費用は変動します。成果を上げる営業代行ならば、必然的に支払う額が多くなるでしょう。
また、営業代行によっては、扱う商材の専門性の高さによって報酬が変わる場合もあります。専門性の高い商材だと商材理解に時間がかかることや、契約や受注の難易度が上がることなどが理由です。
そのため、専門性が高い内容を依頼すると固定報酬型より費用がかさむ傾向があります。このような場合、自社が依頼したい業務だけを部分的に申し込めば、コストを抑えやすいでしょう。
成果報酬型は成果達成後にはじめて報酬が発生するため、成果が出ないと費用がかからないというメリットもあります。また、成果報酬型の場合は単発で依頼できるため、「来月だけ」「上半期だけ」と集中して売上を伸ばしたいときだけ依頼するなど、より柔軟に依頼できる点もメリットです。
複合報酬型の費用支払い体系
複合報酬型は、固定報酬型と成果報酬型を組み合わせたものです。毎月一定額を支払うと同時に、代行会社が成果を挙げた際にも上乗せして報酬が発生する料金体系です。固定で支払う額は固定報酬型より少ないことが多いですが、成果が出た場合に別途で報酬が発生するため、月の費用は変動します。
固定費が抑えられることがメリットですが、成果が出た場合にはより高額な費用がかかることもあります。また、成果報酬型と違い、成果が出なくても固定費がかかることを把握しておきましょう。
営業代行の業務内容による費用の違い
依頼する業務内容も営業代行の費用相場の違いに影響します。営業代行に委託する業務内容には以下のようなものがあります。
- テレアポ
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- 営業部門の採用
- 営業部門の教育
- 営業戦略立案
- 市場調査やテストマーケティング
代行業務や委託する人数を増やすほど、費用は上がります。自社がどのような業務を必要としているのか、どれだけの人数を必要としているのか、事前に確認しておくとよいでしょう。
以下ではそれぞれの業務内容について、費用制度の違いや、依頼する際の注意点を解説します。
テレアポ・インサイドセールス
テレアポ代行会社の料金体系は、企業によって固定報酬型か成果報酬型か異なります。成果報酬型の場合、電話をかけた回数で費用が算出されるコール課金型と、アポイント件数によって費用が決まる成果報酬型の2つがあります。
既に広く知られている商材や独自性の高い商材の営業のようにアポイントにつなげやすい場合は、アポイントの獲得数が増えても費用が増えないコール課金型を選ぶとよいでしょう。逆に商材がアポイントにつなげにくい場合は、コール回数が増えても費用に大きく影響しない成果課金型がおすすめです。
また営業代行会社によっては、市場調査、リードにコミュニケーションを取るリードナーチャリング(見込み顧客育成)を含めたインサイドセールス、インサイドセールスに関する戦略立案も行っています。その場合、追加費用がかかる場合もあります。
長期的な戦略の実施やデータの集計分析をしたい際には、テレアポ代行を長期で依頼することとなります。その場合、テレアポ代行のみを依頼しても、テレアポ代行以外のさまざまなインサイドセールスを依頼しても、料金体系は固定報酬型や複合報酬型になることが多いです。
フィールドセールス
顧客の元を訪問して営業するフィールドセールスの報酬体系も、固定報酬型か成果報酬型かは営業代行会社によって異なります。具体的な費用も営業代行会社によって異なりますので、興味のある会社の料金体系がどうなっているのかを確認しておきましょう。
また、代行会社の営業担当者を増やす場合、クロージングや受注後の顧客フォローなどのサービスを追加できる場合があります。サービスを追加すると報酬も高くなるので、自社がどこまで依頼したいのか、どの程度の報酬を支払えるのか、確かめてから決めるとよいでしょう。
営業部門の教育や営業戦略立案
自社の営業担当者の教育や営業戦略立案を営業代行会社に依頼することもできます。ただし、これらを依頼するとなると長期間協働する必要があるため、固定報酬型や複合報酬型になることが多いでしょう。
営業部門の教育を依頼する場合と営業戦略の立案を依頼する場合、費用について、以下のような特徴があります。
営業部門の教育
教育においては、研修の日数や開催場所、講師派遣やeラーニングなど講義の形式などによって費用が変わってきます。それぞれにかかる費用は営業代行会社によって異なるので、自社にはどのような教育が必要か把握し、費用と併せて相談しながら決めるとよいでしょう。
また、自社の営業担当者の採用代行サービスを行う営業代行会社もあります。面接だけを行う会社もあれば、求人広告から選考、結果連絡まで一貫して担う会社もあり、業務の範囲によって、費用が異なります。
営業戦略立案
営業戦略立案の費用体系は、毎月の固定報酬で契約し、決まった回数だけ相談に乗ってもらう「アドバイザリー契約」が一般的です。依頼したい業務や回数が変化するので、依頼したい内容によって料金が異なります。多くの場合、営業課題に応じて事前に中長期戦略を練るとともに、戦略に応じてサービス内容が調整されます。
その他の費用
営業代行会社によっては、代行業務に対する報酬の他にも支払うべき費用があります。具体的にどのような費用が必要なのかを解説します。
初期費用
営業代行会社に依頼する際、成果報酬型である場合を除き、初期費用を支払う場合が多いです。初期費用は、資料作成やスタッフの研修費、トークスクリプト作成費などに充てられます。固定報酬型や複合型の料金体系を採用している営業代行会社に依頼する場合は、初回の支払いに備え、初期費用を含む金額を予算として用意する必要があります。
また、成果報酬型は初期費用がかからないため、その分費用を抑えられるように感じられますが、必ずしもそうとは限りません。実際の成果によって、固定報酬型と成果報酬型のどちらが費用対効果が高いかは変わってきます。
初期費用が無料の固定報酬型の代行会社もありますが、毎月の報酬が他社と比べて高めに設定されている場合もあります。料金体系を選ぶ際には、初期費用も考慮しながら慎重に検討する必要があるでしょう。
コンサルティング・戦略立案費用
営業代行会社によっては、営業戦略設計のコンサルティングや戦略立案が固定費として含まれている場合があります。コンサルティング・戦略立案が固定費に含まれているかどうかは営業代行会社によって異なるので、営業代行会社に確認を取るとよいでしょう。
営業の課題を分析して戦略的な営業活動を行うことを売りにしている代行企業は、コンサルティングや営業戦略立案の料金が固定費に含まれていることが多いです。もし自社の営業戦略に不安があると言う場合は、専門家から意見を貰える貴重な機会なので、積極的に利用してみましょう。
交通費・通信費
報酬とは別に、営業活動にかかった交通費・通信費を請求する営業代行会社も存在します。サービス料金に交通費・通信費が含まれるかどうかは営業代行会社によって異なります。
フィールドセールスが多くなる場合や遠方から営業担当者を呼ぶ場合は、交通費がかさむので、自社が費用を負担するのか、負担する場合はいくらにかかるのかを事前に確認すべきです。
営業代行の費用を抑える方法
最後に営業代行の費用を抑える方法を解説します。費用を抑えつつ営業代行を利用して成果を出すことによって、費用対効果の良い営業活動ができます。
KPIと顧客獲得単価を明確にする
目標を明確にすることにより、不必要な施策をカットして費用を抑えることが可能です。
営業代行会社に依頼する際は、まず自社商材のKPI(目標に対してどれほど達成に向かい進んでいるかを測る指標)を明確にしましょう。目標をアポ獲得と受注のどちらに設定するのか、また目標達成に定める時期と獲得件数によって、電話をかける人員や必要な施策が異なります。
また、顧客獲得単価(CPA)を計測することも重要です。営業代行に依頼したのに思うような成果が出なかった場合、営業代行による顧客獲得にかかった費用が、自社だけで営業を行った場合に比べて割高になる可能性があります。
その場合、施策を見直すことにより営業代行の費用対効果を上げることができます。営業代行に支払う報酬が少額でもKPIさえ達成できれば、費用対効果は高いと言えます。
固定報酬型の営業代行会社に依頼すると、営業の成果を報告してくれることが多いです。KPIやCPAの参考にするとよいでしょう。
自社で営業戦略を策定する
営業コンサルティング費用が別途かかる場合には、自社で営業戦略を定めるのがおすすめです。営業コンサルティング費用を抑えられるからです。ただし、自社に営業戦略を練るリソースやナレッジがない場合、立案した営業戦略が失敗する場合や不必要なコストがかかる場合があるため注意が必要です。
自社で立案した営業戦略で成果が出ない場合、コンサル費用を支払ってでも、ノウハウのある代行会社に施策を策定してもらう方が費用対効果が高くなる場合があります。営業戦略を策定する際は、自社のリソースやナレッジを把握し、実行可能か判断した後に決めることが大事です。
委託する人数や業務を絞る
委託する人数や業務を絞ることも、コストの削減につながります。必要な人数や業務を絞り込むには、自社の施策やKPIを見直し、どの業務にどれだけ人員が必要かを判断することが大事です。
また、その業務を本当に営業代行会社に依頼する必要があるのかも吟味すべきです。リードを集めることが目的なら、テレアポに頼らず、自社でセミナーを開催するという方法もあります。
営業代行の費用は依頼内容で大きく変わる
営業代行の費用は、依頼する代行会社の料金体系や、任せる業務内容により変わります。まずは自社の商材の特徴や依頼したい業務内容、達成したい目標を定め、その上でさまざまな営業代行会社の料金体系と照らし合わせて検討するとよいでしょう。
営業代行の料金体系には、固定報酬型、成果報酬型、複合報酬型の大きく3種類あります。毎月かけられる費用が決まっている場合や、長期的に代行を依頼し営業戦略を練りたい、または自社に営業のナレッジを蓄積したい場合は、固定報酬型がおすすめです。
一方、多少費用が変動しても確実に費用対効果を見込みたい場合や、単発で依頼を申し込みたい場合には成果報酬型がおすすめです。どちらを申し込むべきかわからない場合には、まずは複合報酬型を申し込み、どちらが自社に合っているのか確かめるのもよいでしょう。
営業代行会社に申し込む際は、すぐに申し込み先を決めるのではなく、KPIやCPAを算出した上で、さまざまな営業代行会社に必要な施策や費用の見積もりを取ってもらうのがおすすめです。