営業研修プログラムは、個人のスキル向上と組織全体の営業力強化を実現する重要な施策です。階層や課題に応じた体系的なプログラム設計により、売上向上につながる実践的なスキルを習得できます。本記事では、効果的な営業研修プログラムの構築方法から具体的なカリキュラム例、成功のポイントまで詳しく解説します。

営業研修プログラムの目的と必要性
営業研修プログラムを設計する前に、その目的と必要性を明確に理解することが重要です。なぜ今、営業研修が求められているのかを見ていきましょう。
営業研修を実施する2つの目的
営業研修を実施する目的は、売上や利益を向上させることにあります。具体的には、個人の営業スキル向上と組織の営業力向上という2つの目的があります。
個人の営業スキル向上は、営業研修の第一の目的です。
営業担当者一人ひとりの持つスキルが、売上や利益といった営業成績に大きな影響を与えます。営業はどうしても個人戦になるため、個々の営業スキルの差がそのまま売上や利益の差になります。
営業研修を実施すれば、商談の型やコミュニケーションスキル、信頼関係構築スキルなどを磨くことで、個人の営業力を底上げできます。
組織の営業力向上も重要な目的です。
最終的には個々の営業スキルが業績に直結する営業職ではありますが、組織としてデータを活用したり、情報共有を仕組み化したりすることで、組織全体の営業力を高めることができます。
組織全体でノウハウを共有したり、組織として集めたデータを活用したりすれば、組織全体としての営業力向上が個人の営業力向上に寄与することも多いです。
特に営業組織をマネジメントする管理職は、組織の営業力をどのように向上するかという視点が強く求められています。
営業研修が必要とされる背景
営業活動の環境は急速に変化しており、営業研修の必要性が高まっています。
近年、Webマーケティングの発達とECが普及する中で、営業職に求められる能力はより高度化しつつあります。単なる「御用聞き」や「商品紹介」は、WebサイトとECで代替されつつあります。
顧客自らインターネットを使って情報収集を行うことが一般的になり、営業の難易度も上がりました。単なる御用聞きはECに吸収され、一般的なレベルの情報収集はネット上で完結し、さらに基本的なサービス説明もインターネット上でのやり取りと資料送付が当たり前になっています。
その結果、現在の営業には、いわゆるソリューション営業や提案営業など、見込み客のニーズを的確に把握して、ニーズに合わせた提案や見せ方をする力が求められています。
商品やサービスのコモディティ化が進み、単なる機能や品質だけでは差別化が困難になりつつあります。
商品やサービスそのものを売り込むのではなく、顧客の課題解決にどう役立つかを提示することが重要です。つまり営業研修の目的は、営業組織全体の「価値提供力」を高めることだと言えるでしょう。
営業パーソンがこうした能力を身につけるには、営業研修を利用することが有効です。こういった提案営業やソリューション営業を可能にし、それぞれの課題に応じた営業研修を受講することでスキルアップにつなげることができます。
営業研修の効果を示すデータ
営業研修の有無は、企業の業績に明確な差をもたらす可能性があります。
ソフトブレーン社が実施した調査(2011年)によると、社内に営業研修プログラムがある企業では、売上が「増加」と回答した割合が43.4%に達し、研修がない企業に比べて10ポイント以上高い結果となりました。
一方で、「研修は不要」とする企業では売上が「減少」と答えた割合が50.0%と最も高く、営業人材育成を軽視することが減収要因の1つである可能性が示されています。
こうしたデータから、営業研修を実施することで業績向上につながる可能性が高いことが示唆されています。
組織における研修の実施によって営業活動を体系的に学ぶ機会を設けることで、営業プロセスの標準化が期待できます。従来の営業組織においては、営業パーソン個人のスキルに依存する傾向がありました。
顧客の新規開拓から商談、受注、アフターフォローまでの一連の営業プロセスを一人に任せるケースが多く、個人の経験や勘によって進行しがちでした。しかし経験や勘によって業務を属人化させてしまうと、組織全体のスキルアップは見込めません。
階層別営業研修プログラムの内容
営業研修の内容は、各階層によって異なります。それぞれのレベルに応じた適切なプログラムを設計することが重要です。
新入社員向け営業研修プログラム
新入社員に対して実施する営業研修は、営業の基礎を固めることが中心となります。
ビジネスマナー研修では、顧客からの信頼を獲得する上で必要不可欠な基本動作を学びます。時間を守る、挨拶や言葉遣い、身だしなみや名刺交換といった基本動作を徹底させることが大切です。
営業研修におけるビジネスマナーは単なる身だしなみや名刺交換だけでなく、顧客に会社やサービスを信頼いただくための基本行動を身につけることが目的です。
お客様との信頼関係を構築し、自分の話に耳を傾けてもらえるようになるためには、正しいビジネスマナーができていることが大前提になります。これに加えて、報連相やスピード感、納期を守るといった基本行動の徹底も大切です。
営業プロセスの基礎理解も重要です。
商談や受注につなげるための顧客との関係構築、顧客のニーズを引き出し課題を顕在化する方法など、営業の一連の流れを体系的に学びます。アポイント獲得、初回訪問、ヒアリング、提案、クロージング、フォローアップといった各段階での基本的な行動を習得します。
商品・サービス知識の習得も欠かせません。
自社の製品やサービスの特徴、競合との違い、顧客にもたらす価値などを深く理解することで、自信を持って営業活動に臨めるようになります。もちろん、営業研修でこれらを学んだだけでは実践で使えるようになりません。
先輩の商談に同行して自分の目で見て、ロールプレイで実践してみるといったOJTも含め、新入社員の育成計画を立てる必要があります。
若手・中堅社員向け営業研修プログラム
若手から中堅社員に対して実施する営業研修は、さらに高い売上や利益を出せるようになるために、自身のボトルネックとなっている能力を向上させることが目的です。
ヒアリング・ニーズ把握研修では、顧客の潜在ニーズを引き出す技術を学びます。
提案営業のキモは「顧客ニーズヒアリング力」です。仮説検証で潜在ニーズを掴むコツを習得します。顧客の課題を顕在化し、サービスの利用イメージを顧客に合わせて説明する力を磨きます。
顧客のニーズを引き出し、課題を顕在化する方法を身につけることで、より効果的な提案が可能になります。
ソリューション営業・提案力強化研修も重要です。
説得力のある提案や資料作成に必要なロジカルシンキング、提案力を高めるためのテクニックを学びます。提案力には商品知識と、課題と商品・サービスを結びつける力が必要になってきます。
「顧客の課題はわかるが商品知識が不足している」「商品知識はあるが提案を考えられない」ということにならないよう、商品知識・思考力を身につけていきます。
プレゼンテーション・クロージング研修では、商談を成約に導くスキルを磨きます。
効果的なプレゼンテーション技術や、クロージングの適切なタイミング、価格交渉のテクニックなどを学びます。「価格が高い」という理由で簡単に引き下がらないための対応力も養います。
個人で受講する研修内容を決められる場合は、自身のボトルネックを解消できる能力・スキルを受けます。その際には、1on1などで上長と自身の課題をすり合わせしておくとよいでしょう。
管理職向け営業研修プログラム
管理職に対して実施する営業研修は、組織全体の営業力を高めるためのマネジメントスキルの習得が中心となります。
営業戦略策定研修では、商談の機会を創出し成約まで導くための戦略を描くノウハウを学びます。
営業戦略の立案に必要なデータ収集と分析、論理的な分析に基づく戦略構築のスキルを身につけます。既存顧客の対応に追われ新規顧客開拓ができない、取引社数が増えても顧客単価が向上しないといった課題を解決するための戦略を学びます。
アカウントプランニング研修も効果的です。
重点顧客企業のビジネス分析、ニーズ把握、キーパーソン分析などを各種分析ワークシートを使って行い、攻略方針や拡販シナリオ、アクションプランや提案方針をアカウントプランとして実際に策定します。
個別顧客ごとに攻略・拡販の戦略を立てる力を養います。
営業組織マネジメント研修では、チーム全体のパフォーマンスを最大化する方法を学びます。
組織におけるハイパフォーマーを選定し、ハイパフォーマーが保有している意識・行動を抽出し、その意識・行動を他のメンバーに対して展開することで組織全体のパフォーマンスを高めます。
データに基づく営業管理、メンバーの育成・コーチング、モチベーション管理などのスキルを習得します。
営業研修で習得すべき5つのスキル
営業研修で習得できるスキルは多岐にわたりますが、特に業績アップに直結する以下の5つのスキルを身につけることが肝心です。
1. コミュニケーションスキル
営業はコミュニケーションのプロセスであり、顧客との信頼関係を築くためには優れたコミュニケーションスキルが必要です。
社内では、製品やサービスの情報共有や営業戦略の立案を行い、社外では、顧客やパートナー企業との交渉や連携を行います。営業研修では、これらのコミュニケーション能力を強化することができます。
効果的な対話やプレゼンテーションの技術を向上させ、顧客との良好な関係構築に寄与します。
傾聴力、質問力、説明力といった具体的なスキルを磨くことで、顧客のニーズを正確に把握し、適切な提案ができるようになります。また、社内のチームメンバーとの円滑なコミュニケーションも、組織全体の営業力向上に欠かせません。
2. 課題発見・分析スキル
顧客の課題を発見し、分析する能力は、ソリューション営業において最も重要なスキルの一つです。
顧客自身が気づいていない潜在的な課題を発見し、それを顕在化させることで、単なる商品販売ではなく、真の課題解決パートナーとしてのポジションを確立できます。
データ分析や市場分析のスキルも含まれます。
顧客の業界動向、競合状況、内部データなどを分析し、客観的な視点から課題を特定する力を養います。仮説検証のアプローチを学ぶことで、効率的に本質的な課題にたどり着けるようになります。
3. 提案構築スキル
課題を発見した後は、それを解決するための提案を構築する力が必要です。
論理的思考力(ロジカルシンキング)を基盤に、顧客の課題と自社の商品・サービスを結びつけ、説得力のある提案を組み立てます。提案書作成のテクニックや、データを活用した説得力のある資料作成方法も習得します。
顧客の業界や事業特性に合わせて提案をカスタマイズする力も重要です。
汎用的な提案ではなく、その顧客にとって最適な解決策を提示できるようになることで、受注率が大きく向上します。競合他社や競合製品との違いを明確に示し、自社の優位性を効果的に伝える技術も磨きます。
4. 交渉・クロージングスキル
提案を成約に結びつけるための交渉力とクロージング力も、営業に欠かせないスキルです。
価格交渉、条件交渉、契約条件の調整など、Win-Winの関係を築きながら成約に導く技術を学びます。クロージングの適切なタイミングを見極める力、決裁者へのアプローチ方法、最後の一押しのテクニックなども習得します。
顧客の懸念や反論に対処する力も養います。
「価格が高い」「競合と比較したい」といった顧客の反応に対して、適切に対応し、最終的な成約につなげる方法を学びます。諦めずに粘り強く交渉を続けるメンタル面の強化も重要です。
5. 戦略的思考スキル
単発の商談ではなく、中長期的な視点で顧客との関係を構築し、売上を最大化する戦略的思考力も重要です。
営業戦略の立案や実行に必要なスキルを習得し、顧客のニーズに合わせたアプローチを構築します。市場セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングといったマーケティングの基本概念を営業活動に活かす方法も学びます。
顧客ライフタイムバリュー(LTV)を最大化するための戦略も重要です。
新規獲得だけでなく、既存顧客からのアップセル、クロスセル、リピート受注を計画的に実現する力を養います。データを活用した営業活動の優先順位付けや、リソース配分の最適化も戦略的思考に含まれます。
効果的な営業研修プログラムの設計ポイント
営業研修プログラムの効果を最大化するには、いくつかの重要なポイントがあります。設計段階から意識すべき要素を見ていきましょう。
実践型プログラムの重要性
営業研修プログラムの最終的なゴールは、売上という成果を出すことにあります。
そのため、単なる知識のインプットを目的とするレクチャー主体の研修にとどまらず、実務直結型のプログラムが重要です。受講生である営業責任者や営業パーソンは、営業研修プログラムに参加することで、戦略立案やヒアリング、提案書作成といった実務を遂行できるようになることを目指します。
ロールプレイングや実践的な演習を通じて学びを定着させ、実際の営業シナリオに適用できるようサポートします。
多くの場合、受講者が学んだスキルや知識を実践につなげることが難しいと感じることがあります。そのため、研修中に実際の案件や顧客を題材にしたワークショップを取り入れることが効果的です。
単なる「研修」ではなく「営業業務の一環」として新規開拓ができるような実践型営業研修を行うことで、研修期間中にも成果を出すことが可能になります。
自社の課題に合わせたカスタマイズ
営業パーソンのスキルは座学のみで学ぶものではありません。しかし、現場でのOJTだけで足りるわけでもありません。
自社の営業スタイル、商材の特性、顧客層、現状の課題などに応じて、研修内容をカスタマイズすることが重要です。有形か無形か、売り切りかサブスクか、高価格帯か低価格帯かといった商材のタイプ、オンラインか対面か、BtoCかBtoBかといった営業手法の違いによって、営業担当者に求められるスキルは異なります。
研修会社に依頼する場合も、ヒアリングを行ったうえでプログラムを提案してくれる会社を選ぶことで、潜在的な課題解決にも有用です。
自社に最適化された方法論が確立されていないと、成果につながらない活動が多く見受けられます。数字や事実に基づいた分析から成果につながる行動を抽出し、企業に合った営業の方法論を設計することが重要です。
ナレッジ共有の仕組み化
営業のノウハウは個人が抱え込んでしまい、組織に共有されていないことが多いものです。
営業研修では、講師からのレクチャーだけでなく、グループワークなどを通じて営業パーソンが日頃行っている様々な行動や営業ノウハウを共有する場としても有効です。
営業研修としてプログラム化されたグループワークを通じて、受講生同士が新しい発見や学びを与え合うといった相乗効果を発揮します。
研修で学んだ内容を組織全体に浸透させるための仕組みも必要です。
研修後のフォローアップ、実践状況の共有、成功事例の横展開など、継続的な学習環境を整えることで、研修の効果を持続させることができます。営業研修中も、以前より営業部員同士の質問水準が高くなり、仮説検証スキルがレベルアップして営業力強化につながります。
段階的な育成プログラムの設計
営業研修は一度実施すれば終わりではありません。
階層別、課題別で体系的に研修を実施することで、人材・組織の成長につながります。新入社員向けの基礎研修から始まり、若手・中堅向けのスキルアップ研修、管理職向けのマネジメント研修まで、段階的に育成プログラムを設計することが重要です。
定期的なフォローアップ研修も効果的です。
研修受講後、一定期間経過してから振り返りや追加研修を実施することで、学んだ内容の定着度を確認し、さらなるスキルアップにつなげます。継続的な学習機会を提供することで、モチベーションの維持にも貢献します。
まとめ
営業研修プログラムは、個人のスキル向上と組織全体の営業力強化を実現する重要な施策です。ソリューション営業や提案営業が求められる現代において、体系的な研修による人材育成は不可欠となっています。効果的なプログラムには、階層別の適切な内容設計が必要で、新入社員には基礎、若手・中堅には専門スキル、管理職には戦略とマネジメントを学ばせます。コミュニケーション、課題発見、提案構築、交渉、戦略的思考という5つのスキルをバランスよく習得させることが重要です。実践型プログラム、自社課題に合わせたカスタマイズ、ナレッジ共有の仕組み化、段階的な育成設計により、研修効果を最大化し、持続的な営業力強化を実現できるでしょう。
BtoB営業における「集客の課題」と真剣に向き合ってきました。
経営者同士が信頼でつながるマッチングプラットフォームや、
想いを届ける手書きの手紙など、独自の形で支援を続けています。
そして最近では、経営者同士を直接つなぐ「顧問&コミュニティサービス」も新たにスタートしました。
私たちが大切にしているのは、単なるマッチングツールの提供ではなく、
一社一社の課題に寄り添い、"本当に意味のある出会い"をつくることです。
もしBtoB集客でお悩みの決裁者の方がいらっしゃいましたら、
まずはお気軽に、代表の私とお話してみませんか?
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