株式会社Freewill
麻場 俊行
POSTED | 2018.10.26 Fri |
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TAGS | 従業員数:101〜300人 業種:IT・情報通信業 創立:11〜14年 決裁者の年齢:40代 商材:BtoB |
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右手にIT、左手に日本の心、胸には自由意志を。
業界不問。日系企業のグローバル進出を強力支援Topics
今回は、業界を問わず、主にグローバル案件を中心としたICTサービスの構築・運用を行う株式会社Freewillの代表取締役・麻場氏にお話を伺う。
日系企業のグローバル化を支援する麻場氏の信念は強く、そこに寄せられる信頼は厚い。
まずは、現在展開するその事業から詳しくお聞きする。
株式会社Freewill 代表取締役 麻場 俊行氏のONLYSTORY
日本発スタートアップ企業だからできることがある
麻場氏らが、今一番やりたいこと。それは、これから新しく誕生していく日本発のスタートアップ企業やそのサービスを世界に提供していくこと、その支援をしていくことだという。
「今、僕たちが注力している活動の1つにピッチイベント運営があります。ここでは、何かを成し遂げるために精力的に活動している中で資金や人材等の不足に悩む人たちが集い、プレゼンテーションを行っていただきます。それに対して、僕たちが支援をさせていただくというものです。
例えば、そのプロジェクトに人材が不足しているというのであれば、僕たちが立ち上げたプラットフォームから当社の社員の人材リソースをシェアする形で提供することができます。これにより、プロジェクトに関わる優秀な人たちがよりご自身の役割に集中できる環境を作ることができると考えています」
株式会社Freewillの社員はグローバル経験が豊かで、英語も堪能。その他、新規立ち上げプロジェクトを円滑に遂行するにあたって必要な能力も備えているため、プロジェクトリーダーたちとしては非常に心強いことだろう。
「今後300名規模の会社に成長させ、そのうち100名ほどは先ほどお話しした形でシェアリングをしていきたいと思っています。当社には、地球規模で貢献していきたいと思っているメンバーが非常に多く、英語が話せる上、多文化を理解することもできるので、日本から世界へサービスやプロダクトを提供していく際にはきっとお力になれるはずです」
この人材のシェアリング先として麻場氏らが注目しているのが、日本発のスタートアップ企業である。
「まず、イノベーティブな世界基準のアイディアが生まれやすいスタートアップ企業というところに着目しています。
加えて、日本発というところにもこだわっています。というのも、今後企業には『社会的なインパクトを生み出すことができるか』『本当に必要とされるサービスを生み出すことができるか。』というところが求められていくと僕たちは考えているんです。
そのような中にあっては、その土地の文化・宗教観を壊さず、これまで大切にされてきた部分を守りながらビジネスができる姿勢が必要不可欠でしょう。
それができるのは、誰か。
世界各国を見てきた当社のメンバーは口を揃えて言います。
『それは、日本人だ』と」
しかしながら、麻場氏らは日系企業への可能性に期待を示す一方で、世界進出を目指す日系企業が抱える課題も挙げた。
「日本で作られているサービスのほとんどはグローバル向けではない、というのが現実です。というのも、グローバルレベルのサービス開発を行うにあたっては、世界基準の感性やコミュニケーション、他者理解が求められるんですよね。もしこれらを兼ね備えたチームや組織があったとしても、やはり日本では品質を重視するあまり世界レベルのスピードについていけないということも少なくない。
僕たちとしては、実際にそうした現場で苦労されている企業様を支え、日系企業のグローバル化というのを支援していきたいと思っています」
ITという武器を持っていなければ、世界では戦えない
言葉の端々に感じる使命感と尽きない想いの源はどこにあるのか。さらに詳しく伺うと、麻場氏の原体験にそれはあった。
「バックパックを背負って日本を飛び出した19歳の頃、僕には強く抱いていた疑問がありました。
『なんで、日本の人ってこんなに英語を話さないんだろう』
『なんで、日本では自国の中の話でほとんど集約されてしまうんだろう』
実際に日本を出た僕が見た世界というのは本当に広く、行く先々で目にしたのは世界のニュースでした。そして、世界の公用語は英語。それに対し、日々自国のニュースを報道し続け、英語を使う機会もあまり無い日本がまさに『ガラパゴス化』していることを痛感しましたね。
その後、僕はこれまで様々な経験をさせてもらった世界に恩返しがしたいという気持ちを胸に、まずはヨーロッパへ。何か世界の役に立てればと考え、24歳で貿易関連の会社を立ち上げました。その頃、周りにはその国の中でもトップクラスに入るような優秀なメンバーが揃い、業績も悪くなかったのですが、あることをきっかけに25歳でその会社をたたむことに。
この当時、日本の一部上場企業とやり取りをしていて、一度日本からの送金が遅れたことがありました。それによって、会社のメンバーに『給与の支払いができない』と説明せざるをえない状況に…。すると、家族を抱えるメンバーからは『それでは、家賃が払えない』という声が上がり、その頃一緒に働いていたメンバーを非常に不安にさせてしまったことがあったんです。
この時、経営において人を雇うということはその人の家族を抱え、その命を抱えるということであると知りました。そして、日本よりも物価の低い国でビジネスをしていて、どこか驕りのようなものを持っている自分がいることも感じました。浅はかな気持ちで会社経営をしていたことを反省し、25歳の頃の僕は会社をたたみます」
その後、国内外の様々な企業に勤めるも自身のグローバルな視点や経験を生かしきれる場所はなかなか見つからなかった。
「正直この間には、どこのタイミングでも挫折しましたね。でも、『世界へ恩返しするまでは死ねない』という想いが僕を支えてくれて、やがてIT業界と出会いました。
実際に外資系IT企業で勤め始めると、ITが世界の共通言語であることを痛感しました。よほど何か光る一芸がない限り、ITという武器を持っていなければ世界では周りと同じスタートラインに立つことすらできないのだ、と。
このIT業界との出会いが、僕にとっては現在につながる転機の1つ」
世界、そしてIT業界での経験を原点に、現在展開する事業領域に関わり始めた麻場氏。その目から見て、日本人はもっと世界で活躍すべきだという。
「日本には、きめ細かい良質なサービスとおもてなしの文化があるじゃないですか。これは、やはり日本ならでは、日本人ならではだと思うんです。世界の中で明らかに秀でている。
そうした特性を持った日本人の中に英語が話せて、ITに精通している人物がいたらどうですか?非常に希少価値の高い人材になることができ、世界で活躍できるでしょう。
より多くの日本の企業や人物が世界で活躍できるよう、僕たちは今の事業と働き方を選びました」
フリーウィル(自由意志)を貫いた先にある“本当の幸せ”
今後、株式会社Freewillはどのような事業展開をしていくのだろうか。麻場氏に伺うと、アイディアや構想が次々と語られていく。
「どんどん推し進めていきたいサービスがたくさんあって、1億かけても、2億かけても、それらのサービスは形にするんだと決めています。
例えば、先ほどお話しした人材のシェアリングプラットフォームもそうですし、『キャリアジャーニー』というサービスも今作りたいと思っていて。この『キャリアジャーニー』というのは、自分でゴールを設定したら、AIがその道筋に必要なメンターと教授、大学、コースを全部算出してくれるというサービスです。
志半ばで夢を諦め、安定した道を選んでいる人の中には、自分が目指すゴールへの道筋が見えないために心が折れてしまったという人が少なくないと思うんですよね。このサービスがリリースされたら、夢を持ち、進学を控えた学生等に利用していただきたい」
こうしたサービスは、あくまでもその人の意思を尊重し、守るためのものに過ぎない。大切なのは、その人自身が見出した意思だという。
「株式会社Freewillにとって “フリーウィル(自由意志)”と“エクストラオーディナリー(非日常)” が大きなキーワードなんですが、僕にとってもこの“フリーウィル(自由意志)”というのは人生最大のテーマなんです。
というのも、今の日本の社会は意識していないと自然に周りの“一般的な価値観”に同調してしまう社会だと思うんですよね。そうした中で、自分自身の本当の幸せというのはお金では買えないし、他人の真似をしているだけでは届かない場所にあると思っています。
その本当の幸せを手にするためには、このフリーウィル(自由意志)を貫くということが何よりも大切。その上で、その“一般的な価値観”と正しいことを見極められるモラリティ(常識)や非日常的なことを受け入れられる幅広い価値観も求められてくるでしょう」
ある社員の事例を元に、意思を大切にすることで人が変化を遂げていった様子についても伺うことができた。
「例えば、26歳の時に入社したある男性社員は来年ドイツに関連会社を立ち上げることになっています。30歳となった今、現地の大手銀行とも事業を行っている。本当に日々臆することなく挑戦と変化を繰り返し、今もなお、誰よりも早く前に進み続けています。出会ったばかりの頃の彼はどこか迷いや不安を抱えているような顔をしていましたが、今の彼にはもうその頃の面影はありません。
20代の若者に対し、何の偽りもない人生のきっかけを与えてあげると、彼らは水を得た魚のように泳ぎ始める。その姿が、重なるんですよね。ずっと突破口を探し続け、もがいていた頃の20代の自分自身と…。
誰の、何の利害関係もないリーディング(導き)があるだけで、フリーウィル(自由意志)を持っている青年たちは世界に羽ばたけるのです。これからも、彼のような人をどんどん輩出していきたい」
個人のフリーウィル(自由意志)を尊重する姿勢は、株式会社Freewillの柔軟な働き方の構想にも表れている。
「僕はよく『人は場所で作られる』という言葉を使うんですが、やはりその場その場の環境からインスピレーションや気づきを得ることで、その場所で、それを感じとった、その人だからこそ生み出せるものがあると思うんですよね。
そのため、そこにその人の意思があって、パフォーマンスも上がるのであれば(モラルを踏まえた上で)、働き方の選択肢は無限にあっていいと思います。例えば、当社でいえば複数の拠点からその時の職場を自由に選択できるロケーションフリースタイルやコワーケーションのような働き方も推奨していきたいと考えています」
最後に、麻場氏らが思い描く株式会社Freewillの展望について伺った。
「私たち、株式会社Freewillは日系の小さな会社です。お金を借りず、株主もそんなに集めていない会社です。しかし、そんな私たちは世界を舞台に5〜6つのサービスをOEMなどで抱えており、グローバル事業を展開する企業様をサポートしています。その分野もRPA、AIプラットフォーム、データクレンジングなど、多岐に渡る。
このようにして事業を成長させていくと、気づくんです。世界を変えていこう、世界のために働こうと思った時、会社の規模や名声などはあまり重要なことではないということに。
私たちは、これからもITで世界を変えていく姿を見せていきたいと思っています。そして、僕たちができるということはみんなもできるんだということを伝えたい。
そのために、やりたいことをいろいろと実現しながら、今はまだ誰も想像できないような会社 ––株式会社Freewillを形にしていくことが、僕のミッションですね。」
執筆=山崎