一般社団法人キッズM
野垣 貴子
POSTED | 2019.01.18 Fri |
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TAGS | 従業員数:51〜100人 業種:研修・コンサル 創立:5〜6年 決裁者の年齢:50代 商材:BtoC |
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子供の主体性を育み、AI時代を生き抜く人材を育成
商品開発を行うキャリア教育で、社会経験を積むTopics
今回のインタビューは、小学生のキャリア教育事業を行う一般社団法人キッズMの野垣氏にお話を伺います。次世代を担う子供たちの主体性を育み、将来社会で必要とされる人材を育成する同社が生まれたきっかけ、そして今後の発展について語っていただきます。
一般社団法人キッズM 代表取締役 野垣 貴子氏のONLYSTORY
【経歴】
大学卒業後、国内航空会社に勤務。国際線客室乗務員として12年間勤務。ベンチャー企業の社長秘書を経験後、人材研修会社の講師として、人材育成のキャリアをスタート。外資生命保険会社の教育部門で、リーダーシップ、部下育成の研修に携わり、チェンジマネジメント、組織風土改革などを実施。現在は、管理職の経験、母親としての経験より、小学生時代の経験が大事と痛感し、こども対象のキャリア 教育のキッズMを起業。一般社団法人親子コーチング協会認定コーチ。
商材を開発し、実際に企業へ提案する
–一般社団法人キッズMの事業内容を教えてください。
野垣氏:一般社団法人キッズMは、自己肯定感を育むことで、新しいことに主体性を持ってチャレンジできる子供を増やすことを目的とした教育事業に取り組んでいます。具体的には、お菓子の開発提案を実際の企業にプレゼンテーションする、という子供のキャリア教育を行っています。
–実際の商品開発の流れについて教えてください。
野垣氏:一連の流れは、企業の商品開発プロセスに則っており、まずは子供たちが自分でスーパーにお菓子を買いに行って、なぜそのお菓子を選んだのか理由を深掘りします。
次に、他のメンバーと話し合い、お客様がその商品に惹かれるポイントを見つけ、そこからアイデアを出し合い、企画書を作成します。プロトタイプの企画書が完成したら、さらに調査を重ね、最終提案のための商品を作ります。
この商品は実際にお菓子を作るわけではなく、紙粘土やモールやビーズなどを使って作ります。完成した作品を持って、食品企業にプレゼンテーションをしに行くという形です。
–商品開発はチームで行うのでしょうか。それとも、お子様一人一人で行うでしょうか。
野垣氏:1クラス3人編成なのですが、3人でひとつの商品を作ることもあれば、一人がひとつの商品を作ることもあります。そのあたりの計画もすべて子供自身にまかせています。
たとえば、教室の時間に関係のない遊びを始めても止めたりはしないんです。ただ、彼らが作ったものをしっかりと褒めて、認めてあげる。すると、子供たちもやりがいを感じてきちんとスケジュールの中で作品を仕上げてくれるので、なんの心配もいらないんです。
–他社と差別化をはかっている点はどのようなところですか。
野垣氏:子供たちに「仕事経験」をしてもらうところですね。工程を順番に辿っていく「職場体験」とは違って、子供たちが主体性を持って企業に営業をかけて、初めて会う人にプレゼンテーションをする。企業からフィードバックをもらえるため、改善点を次の作品に活かせる。そうやって「社会経験」を積んでいけるという点も、私たちの教室の強みだと言えます。
–保護者の方からはどのような声をいただいていますか。
野垣氏:端的に言うと、通わせて良かったと好評をいただいています。なぜかというと、親御さんも忙しいので、子供の作るものをゆっくり見てあげたり、子供の自由な発想を待つということがなかなか難しいんですよね。
教室の中では、そういった普段できないことを存分にしてもらえるので、子供たちが認められたり、子供がやりたいと思ったことを最後までできる。そのような行程を丁寧に踏めることがとてもありがたいという声がとても多いですね。
管理職の経験と、母としての思いから起業
–事業を立ち上げたきっかけについて教えてください。
野垣氏:この事業を立ち上げた理由は2つあります。ひとつは、以前の会社で管理職を勤めていたのですが、自分たちのチームに必要だと思った人材は「主体性のある人」で、そういった人を育てたいと思ったからです。
これからAIが仕事を担う時代になってきますが、そうなると自分で考えない、アイデアのない人は社会に必要とされなくなります。だからこそ、次の時代の担い手は、主体性のある人材でなければならない。そういう人材を育てたいと思ったんです。
もうひとつの理由は、私自身の母親としての経験です。たとえば、私が管理職に就いているとして、娘を部下にほしいかと言うと、そう言い切れなかったんですね。それは、私が主体性を育てるということを考えて娘に接していなかったからです。
主体性は、幼少期の小学2年生~3年生の間に育まれるものです。そのときに娘にしてあげたかったことが、現在の一般社団法人キッズMのコンセプトに繋がっています。
小学生のときに自己肯定感を磨いて、子供の「自分でやりたい」という想いを育てていけば、将来社会の中で必要とされる人材になっていく。そう考えて、一般社団法人キッズMを立ち上げました。
–起業してから印象的に残っているエピソードは何ですか。
野垣氏:一番嬉しかったことは、最初はプレゼンテーションが嫌いで、初対面の人と話すことに抵抗があった子が、最終的に「プレゼンテーションをまたやりたい」と言ってくれたことです。
辛かったことは、子供達の考えを尊重することです。子供の主体性を大切にしたいと思いつつも、口出しをしたくなったり、感情的になってしまうことがあり、それをぐっと堪えることは大変でした。
しかし、そこで怒ってしまったら、ここはただ工作をするだけの教室になってしまう。それでは意味がないと思い、子供たちがやりたいときにやりたいことができる環境作りを何より大切にしてきました。
キッズMのメソッドを社員研修に応用
–今後の目標について教えてください。
野垣氏:短期的には、一般社団法人キッズMの事業を、学童や学校などに広めていきたいですね。年内に学童1社にアプローチをかけて、来年度には最低でも1つには入っていきたいと思います。
長期的な目標は、新規事業の展開です。まだ具体的なプランニングは立てていないのですが、私たちのメソッドはおそらく子供だけではなく、法人の新人社員研修などにも活かせると考えています。
社員教育の場で、例えば営業担当が商品開発のプロセスを体験し、そこで生まれる思考やプロセスを知ると、新たな知識が増えて業績アップにも繋がるでしょう。また。消費者調査なども行って、自分たちで新しい商品を考えてプレゼンテーションしていく。きっとニーズのある分野だと思うので、今後ビジネスとして確立させていきたいと思います。
–最後に読者に向けてメッセージをお願いいたします。
野垣氏:私たちは子供たちに、自分の将来に心からワクワクしてもらいたいんです。
実際には、社会に出ることや仕事をすることにマイナスイメージを持っている子供が多いと思うのですが、やはり仕事は楽しいものだと感じているので、そういったものを伝えられる会社や世の中にしていきたいですね。
執筆=スケルトンワークス
校正=笠原